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Jutakutokushu 2022.04
Jutakutokushu 2022.04
Jutakutokushu 2022.04
建築家の夢のタイル
新しい風景をつくるエレメントを創作せよ
平田晃久 板坂留五
(建築家) (建築家)
『新建築住宅特集』ではLIXILと協働して、住宅のエレメントを考え直す企画として、その機能 100年前、私たちの身の回りの環境には、まだまだたくさんの襞や皺、汚れ
だけではなく、それぞれのエレメントがどのように住宅や都市や社会に影響をもたらしてきたの
かを探り、さまざまな記事を掲載してきました。 とか闇、匂いとかぬめりのようなものがたくさんあっただろう。100年も遡ら
2022年4月12日は、日本で「タイル」という名称に統一されてから、ちょうど100年目にあたりま
す。今回はそれを記念した企画として、気鋭の建築家2人にこれからの住宅・建築・都市を踏 なくても、僕の幼い頃(というと50年近くの昔になるのだが)、祖父母の家に行くと、
まえた、夢のタイルを構想いただき、実際にLIXILやきもの工房により制作をしました。既存概
念にとらわれず可能性を模索したプロセスと共に、その思想とかたちを見ていただきます。 (編) 長い年月を経た環境に染みついた、何とも表現し難いいろいろな匂いがした
ものだ。そんな環境の中では、ツルツルピカピカの未来は、やはりひとつの
からまりタイル ── 平田晃久 夢であり得ただろう。タイル、という言葉の響きが、来るべき明るい未来と
日本で「タイル」という名称に統一されて、今年で100年だという。もちろん 結びついた、憧れを含んだ見知らなさの感覚と結びついていた頃。
古代エジプトからタイル的なものはあったようだが、何か100年前くらいに、 100年後、私たちの環境は、ツルツルピカピカのものに覆い尽くされつつある。
タイル的なものをめぐってある種の盛り上がりがあったことは確かなのだろう。 もはや誰も、そういう滑らかな表面だけでできた未来について、憧れをもっ
1920∼30年代といえば、いわゆるモダニズムの建築のスタイルが出揃う頃 て語ることはない。むしろ今、現代のパンデミックによって、半ばディストピ
だ。そう考えてみると、モダニズムが世界に広まったのと、公衆衛生の概念 アのように、そういうツルツルピカピカの現実を生きることを余儀なくされてい
が関係していたことを思い出す。たとえばアルヴァ・アアルトのパイミオのサ るわけだ。しかも私たちは、そんな無菌環境が自らの生そのものを脆弱なも
ナトリウムのように、結核などの病原菌を避ける、埃が溜まりにくいツルツル のにしてしまうということをすでに知っている。人間の身体のあらゆる表面に
としたシンプルな表面をもった建築や調度品のあり方が追求されていたわけ 微生物はおり、むしろそのような他者との良き共存こそが、生きているという
だ。タイルというのは、そういう考え方にぴったりの素材だったのかもしれな ことの根幹をなしているからだ。
い。LIXILの製品に「衛生機器」という呼び名があるのも、そういうことと関 そんな時代における、
「夢のタイル」とは何か。
「ツルツル」した「衛生的」な
係しているのだろう。そうしてみると、結核やスペイン風邪が流行した100年 表面をつくり出すタイルというものが、同時に、ある毛深さをつくり出すような、
ほど後、コロナ禍の只中で、夢のタイルについて考える機会をいただいたこ 多孔質なからまりしろになったとしたら。この「からまりタイル」は、そんな夢
とは、何か偶然ではないような気がしてくる。 想をかたちにしたものである。
平田晃久氏「からまりタイル」による建築と都市の構想スケッチ。
002 2022 04
からまりタイル
平田晃久
2022 04 003
塊の中に穴をあけて多孔質にしていき、その中に植物がからまる「多孔質案」
。 タイルに必ず現れる目地。目地も面白く見える貼り方を模索した「目地案」
。
+ =
やわらかなからまりのかたちを検討していく中で「多孔質案」と「目地案」を合わせることに。
回転させながらタイリングしたり、またタイリングする人の個性によっても変化するため、単一的ではなく多様な現れ方をする。
27
88
27
27
形状は平面的な0ユニットから最も高さの高い3rdユニットまで4種類を制作。
単純な立体格子というよりは、さまざまな葉の形やからまりかたを想像して、格子を部分的に抜いたり面を設けるなどしてかたちを決めた。
高さは平面形をよりも抑え最高でも88mmとし、格子や板の厚みは最小寸法の7mm とした。
左2点提供:LIXILやきもの工房
右1点提供:平田晃久建築設計事務所
常滑にあるLIXILやきもの工房にて3Dプリンティングでタイルをつくる先端技術により制作。
004 2022 04
1 未満タイル
板坂留五
2022 04 005
1未満タイル──板坂留五 いる。格子状であることで輪郭に凹凸があり、ずらして噛み合わせたり、棒
絵を描く時、絵具を塗り重ねながら徐々に全体をかたちづくるように、建築も、 を揃えて並べ一様な格子柄をつくったりなど、いくつかの並べ方がある。ま
風景の中にどうにあるべきかを都度考えながら、要素を足し引きすることで た、90度回転させると表面となる棒の縦横方向が変わり、光の反射によっ
全体をかたちづくっていきたい。街の中でも、自宅の部屋の一角でも、あら て色が変化して見える。平面展開だけでなく、格子の隙間で立体的に噛み
ゆる要素が絡み合いながらその場はできている。そのような風景の中で、全 合わせると、下地にはない出っ張りをつくったり、新たな輪郭をかたちづく
体像がすぐに想像できてしまうような唯一の方法を選ぶのではなく、いくつも ることができる。さらに表裏にも凹凸があり、ずらして重ねることで格子の
の状況に対する選択の積み重ねによってまとまりをつくっていく必要がある。 隙間から見える下地の面積が変わり表面に濃淡が生まれる。荷重やジョイ
タイルは、複数枚の集合として床や壁に敷き詰める建築材料であり、その ントの検討は必要だが、色数や重ねる枚数によって面の中にムラや奥行き
ほとんどが1枚ごとにはっきりと輪郭を持ち、目地で仕切り、繰り返し並べ をつくり出せる。構造や設備など機能により設計された骨格と、そこにいる
られる。1枚の単位が覆われる面積と一致していることで、面積から必要 人のふるまいや周りの環境との間を、柔軟に取りもつ役割を担うだろう。
な枚数を計算できるので、タイルの形状や柄をカタログから選ぶことがその 1枚のタイルがひとつの単位に満たないことで、全体のあり方を思考し続け
まま集合体の姿と直結する。それに対して、私はタイルを選んでからも試行 ることができると夢見て、
「1未満タイル」と名付けた。このタイルでできた
錯誤できるよう、隙間だらけで凹凸のある、輪郭が曖昧なタイルを考えた。 集合体の姿もまた、おかれた風景と共にあることでようやく満たされるのだ
このタイルは、鋳込み製法により格子状に成形し、表面に釉薬を塗布して と思う。
*提供:LIXILやきもの工房
特記なき提供:板坂留五
溝が掘られた型を直交に重ねて、格子の型を制
作した。*
127
13
10
127
「谷」の部分に生地色がうっすら見えるように、
モノクロ
茶×白
白の色味や濃さを調整。
蒲鉾型を利用して、片側から吹き付けてみたが、
重ねての使用では複雑になりすぎると感じ、今回は断念。
バイカラー
ピンクの釉薬は、釉薬をよく融かす成分によって班が
黄 ピンク
できてしまうことが判明。この成分を含まない釉薬に
変えると、斑点はないが、縁に生地色が出てこなくなっ
た。最終的には、釉薬の融け方を極限まで調整する
ことで斑点を抑えつつもバイカラーらしさを出した。
白×ブルー
単色
透明感を出しながらもブ
ルーの色味を感じるように、
透明釉に顔料を数%配合
する。
006 2022 04
「タイル名称統一 100 周年記念プロジェクト」
LIXIL は応援します。
1922年東京・上野で開催された「平和記念東京博覧会」において全国
タイル業者大で、敷瓦・腰瓦・張付煉瓦・化粧煉瓦・タイルなどさま
ざまに呼ばれていた建築装飾材の名称が〈タイル〉に統一されました。今
年2022年4月12日(タイルの日)に100周年を迎えます。
タイルの起源は、古代エジプトのピラミッド地下空間の装飾にあります。
焼きものの持つ装飾性に加え、建物の壁や床を保護する機能性の価値
も認められ建築装飾材として世界各地に広まっていきました。588年頃、
せん
仏教建築と共に伝来した瓦や塼は、中国の製造技術をもとに日本初の
本格的な寺院、飛鳥寺が建立され、建材として用いられた瓦が日本に
おけるタイルのルーツだといわれています。その後、西洋文化が流入す
る明治期以降、西洋建築に用いられたタイルや煉瓦、テラコッタの建築
装飾材に学び、日本独自のタイル文化が花開しました。
LIXILは、日本のタイル文化の一翼を担うものとして、先人たちに敬意を
払い、また、すべての関係者の方々への感謝を込めて、全国タイル工業
組合が主催する「タイル名称統一100周年記念プロジェクト」を応援する
と共に、これからもタイルの未来を考えていきます。 (編)
左:「帝国ホテル旧本館(ライト館)」のスダレ煉瓦(スクラッチタイル)、黄色い煉
瓦の表面を引っ掻いたスクラッチ模様。
右:「伊奈のタイル」カタログ、岡本太郎も使ったアートモザイクタイル。
全国タイル工業組合「タイル名称統一100周年記念プロジェクト」サイト
https://touchthetiles.jp/
板坂留五「1未満タイル」でつくるこれからの建築・都市のイメージ。
LIXILタイル名称統一100周年スペシャルサイト
提供:LIXILやきもの工房
流れ 左からの 〈展覧会〉
やすい 一方向
釉薬
タイル名称統一100周年記念 巡回企画展
「日本のタイル100年――美と用のあゆみ」
会期:2022年4月9日(土)∼ 8月30日(火)
会場:INAXライブミュージアム
「土・どろんこ館」
企画展示室
企画:INAXライブミュージアム
多治見市モザイクタイルミュージアム
流れ 左右から
江戸東京たてもの園
にくい 上下なし 監修:藤森照信(建築史家、建築家)
釉薬
https://livingculture.lixil.com/ilm/
LIXILやきもの工房でサンプル試験ごとに作成された資料の一例。手元に届いた現物サンプルと
併せて検討の指標となる。
2022 04 007
© 新建築住宅特集 2022 年4 月号/第432 号
2022 年3 月19 日発行 毎月1回 19 日発行
定価 2,420 円 本体 2,200 円
振替:00150-6-30658
[編集発行人]吉田信之
[編集長]西牧厚子
[表紙・誌面フォーマットデザイン監修] K2
[発行所]株式会社新建築社
東京都千代田区霞が関三丁目2 番5号
霞が関ビルディング17 階 〒100-6017
tel. (03)6205-4380(代表/総務・出版)
(03)6205-4381(編集部直通)
(03)6205-4382(広告部)
(03)6205-4392(写真部)
fax. (03)6205-4386(代表/総務・出版)
432 2022 04
(03)6205-4387(編集部・広告部・写真部)
CONTENTS
青山ハウス
東京都港区南青山二丁目19 番14 号 〒107-0062
tel. (03)6455-5596
fax. (03)6455-5583
e-mail jt@japan-architect.co.jp
URL https://japan-architect.co.jp
[印刷所]大日本印刷株式会社
[取次店]トーハン 日販 楽天ブックスネットワーク
鍬谷 西村
リノベ ー シ ョン の 自 由 ── 新 し い 価 値 を 創 造 す る 1 7 の アイデ ア
特集作品 17 題
0 52 ロードサイド・ロッジア アトリエ・ワン
0 70 特集論考:老いることに向き合う都市・住宅 藤村龍至
0 72 となりはランデヴー 湯浅良介
0 80 ハウス/ミルグラフ 西澤徹夫建築事務所
0 8 8 モリスハウス 渡邊大志研究室
1 1 0 光のあみの家 miCo.
1 1 8 東寺の住居 タトアーキテクツ
1 2 6 蓮華蔵町の長屋 魚谷繁礼建築研究所
CONTENTS
特別記事
002 住宅をエレメントから考える
建築家の夢のタイル
新しい風景をつくるエレメントを創作せよ
平田晃久 板坂留五
M O N T H LY R E V I E W
156 座談月評 貝島桃代 中山英之 藤村龍至
NEWS
158 2021 年度 JIA 日本建築大賞・JIA 優秀建築賞発表/ 2021 年度 JIA25 年賞発表/弘前市が前川國男建築を保存活用/
伊東豊雄氏が日本芸術院の新会員に/ヴォーリズ建築保存・活用に向け関西学院大学と滋賀県・近江八幡市が連携
協定締結/岸和郎氏が AIA の 2022 年名誉フェローに選出
EXHIBITION
159 猫目線の家/
實構築 2022 in 京都 レポート:松本尚子
BOOKS
160 五十嵐太郎 菊地尊也 編『現代建築宣言文集[1960-2020]』/小野芳朗 編『〈妄想〉する未来 アート思考の挑戦』/
谷尻誠 著『職業=谷尻誠』/日本建築学会 編『都心周縁コミュニティの再生術 既成市街地への臨床学的アプローチ』
CONSTRUCTION P R O F I L E・編 集 後 記
161 162
TOPICS
166
国立競技場の建築・都市的な魅力を、
豊富な写真と詳細な図面で紹介 !!
2022 年 3 月 別 冊
013
特集
新しい価値を創造する17 のアイデア
今月号は、住宅のリノベーションを特集します。
今や、建築家の主戦場であるリノベーションですが、その根本には、痛んだところに手を入れ経年に耐え古い
ものを慈しむ日本の住まいのしなやかさがあるでしょう。そこから建築家がどのような視座と想像力で建築作品
に昇華したか、そして住宅を個人の生き方と社会の間で改変していく自由の表現、毎年のリノベーション特集
ではその鮮やかな回答が見えてきます。
今回掲載する17の住宅も、手法はさまざまに、真に豊かな暮らしとは何か、時間を尊ぶ日本の美しい住まい
のあり方が根底に見えてきます。用途転用や長屋の再生、自力で建設を試みた建築家の取り組みは、増大し
た過剰な住宅ストックの再生と、消失が加速する伝統建築を守る意味でも、現代の都市に必要な一手といえ
ます。そしてそこには、この状況をポジティブにとらえ、既存概念にとらわれない創造力を感じます。ここで思
考されたさまざまな建築家のアイデアは、大きなうねりとなってこれからの建築を開いていく自由を示すもので
す。その可能性を見ていただきます。 (編)
特集作品 17 題
2/5
家の重心を外におく 柳室純+魚谷みわ子
ファサード設計:Schenk Hattori+studio archē
ゴンダンチ
接道しない環境のトランスフォーメーション 吉永規夫/ Office for Environment Architecture
ロードサイド・ ロッジア
建物も生活も軽く アトリエ・ワン
特集座談会:ものを手放し生きることと向き合う 桑田光平 塚本由晴 貝島桃代
母 の 家(HAHA・NO・IE)
大きなテーブルと小さなキッチン 藤村龍至/ RFA
特集論考: 老 いることに向き合う都市・住宅 藤村龍至
となりはランデヴー
空っぽの秘密 湯浅良介
ハウス /ミルグラフ
計画と切実さの間で 西澤徹夫建築事務所
モリスハウス
余暇を纏う構法の現れ 渡邊大志研究室
茗荷谷 の 舎
地域と繋ぎ、時間とかたちを継承する 間田真矢+間田央/ MAMM DESIGN
土蔵と補う増築
土蔵の長所を活かし、足りないものを補完する 澤秀俊設計環境/ SAWADEE
光 のあみの 家
関係性が生む現象を扱う miCo.
東寺 の 住居
リノベーションの表現の幅を広げる タトアーキテクツ
蓮華蔵町 の 長屋
部材と共に長屋を継承する 魚谷繁礼建築研究所
浅草 Base
屋根に大きな孔を開けて建物に息吹を与える 末光弘和+末光陽子+宍戸優太/ SUEP.
いろえのいえ
時間と風景を紡ぐ 比護結子/ ikmo
路地 の 回廊
路地の長屋に住まう 市江龍之介/ ICE
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
2/5
Two-Fifths
京都府京都市
柳室純+魚谷みわ子
ファサード設計:Schenk Hattori+
studio archē
Jun Yanagimuro+Miwako Uoya
facade design:
Schenk Hattori+studio archē
016 2022 04
3軒長屋の2軒を改修した設計者の自邸。袋小路の奥にあり、通りからの私道と、
私道を挟んだ向かいの共用洗面所も合わせて計画した。路地に面した開口部に
中空ポリカーボネートによる半透明の建具を採用し、間仕切りのように位置付け
ることで内外が溶け合う。夜間には建具を介した淡い光が路地を包む。
2022 04 017
018 2022 04
食堂から路地側を見る。建物の奥行きは約3mで、長手方向を仕切って
いた既存の戸境壁や建具を除き内部を一体的にし、カーテンなどでシー
ンによって緩く仕切る。開口を開け放つと幅約1.4mの路地と連続する。
2022 04 019
家の重心を外におく 境界を繋ぐ装置としてのファサード
家を所有することは、大きな葛藤が伴うものだ。 都市・建築・ランドスケープの中に新たな構築を なく、
「しっかりとした面材と薄い木枠」
という構成
都市の一部を占有する責任と、所有物となる場 設える際、異なる物質や空間同士のあるべき関 とした。面剛性を木枠ではなく面材で取っている
所で個性を発揮したい欲求の間で、家を構成す 係性を顕在化するための装置としてそれを考えて ため、木枠は従来の構造材から、錠や戸車を取
るどの要素までを個人的なものとして扱うべきか みる。 り付けるための二次部材へと、その意味を変えて
をためらう。ここ京都で辿り着いた路地奥の築 トンネル路地の奥にひっそりと建つ既存長屋は、 いる。構造材ではないから、断面は小さく軽くなり、
80年の小さい長屋は、既に多くの人の手で更 その奥行きの浅い全諸室が1枚の土壁を隔てて 結果的に建具の厚みを抑えることができる。
新されており、家と共用空間が近接していたた 路地と接していた。内/外の物理的距離が限りな そうしてつくられた内部建具のように軽やかな引き
め、そういった葛藤と向き合うためには格好の く近い一方、それらを隔てる重責を担った土壁が、 戸の連なりで既存外壁面を覆う。内/外を仕切っ
場だった。 必要以上に外壁然としているように思えた。そこ ていた外壁面が内部空間に取り込まれ、新旧ファ
通りからトンネル路地を進むと、右手に2階建て で、この土壁をその責務から解放し、路地と長屋、 サードの間に生まれた隙間が、バルコニー・玄関・
の3軒長屋と、左手に共用洗面所を挟んで建つ つまり都市空間と建築を繋ぐ、より気軽なファサー 出窓といった建物と路地の関係性を場所ごとに最
2軒長屋がある。狭い路地を挟んで、片流れ屋 ドを計画した。 適化する緩衝帯となる。
根の長屋が向かい合って建っており、長屋群の 木枠と面材から成る一般的な屋外建具の構成を 大きく開け放つことができる引き戸だが、閉じてい
重心は路地の方にあった。このうちの右手の奥 見てみると、風雨や日照・温度変化といった厳し ても中空板と縦桟越しに適度に外部の気配を感じ
2軒を入手したが、路地奥空間が潜在的にもっ い環境にさらされることから、その木枠は屋内建 られ、昼夜を通し路地と一体の生活が展開され
ている一体性に魅かれ、共用洗面所と路地全 具に比べてより厚く・太くなっている。この計画の る。境界を繋ぐ装置としての引き戸を介し、ここ
体も合わせて改修することに決めた。 屋外建具では、中空ポリカーボネート板を面材と での暮らしが路地奥という最小単位の都市空間
住宅の設計において、意匠設計者が構想した することで、
「しっかりとした木枠と薄い面材」では へと溶け出していく。 (服部大祐+甲斐貴大)
案を中心に設計が展開していくのが一般的であ
るが、今回は構造設計者である私の自邸となる 旧市街の路地奥に棲む
街区寸法の大きな京都の旧市街では、街区の中央にアクセスするため路地を引き、長屋を建て
敷地境界線
ため、平面計画の確定以前に構造のシステムを て居住してきた。路地に面して建つ長屋群は面積も小さなものが多く、その生活は建物内に留
まらず、人びとは路地に棲み込んできた。現在旧市街では、建築基準法上再建築不可の老朽
提案することを試みた。構造体に一過性の欲求 化著しい長屋と路地を含む敷地がオモテの街路に面する敷地に回収されるかたちで大きな敷地
となり、そこに集合住宅やホテルが新築される風景がよく目にされる。
をぶつけることが避けられ、住まい方が変化す 旧市街の路地奥の長屋を選択する際には、既存プランや建物の状況以上に、路地の中での立地
る次の世代へも、この家が引き継がれてほしい N が計画に大きく関わる。この長屋は、カギ型の路地の最奥で路地に面して間口が大きく奥行き
が短い長屋であり、路地には元洗面所や祠などの共用空間も豊富にあった。向かい側が空き家
と考えたからだ。また、私たちだけでなくほかの であることやほかの長屋所有者の将来的意向も含め、新たに路地に棲み込むには、非常にポテ
配置図 縮尺1:2,000 ンシャルのある立地で、
計画にはこのポテンシャルを最大限活かすことが期待された。
(魚谷繁礼)
誰かを住み手として想像し始めたことが、複数
の設計者に依頼する契機にもなった。町家を再
生させるためには、改修の腕利きの存在が必須
980
であったし、この建物にとって重要なファサード
吹抜け
と共用部は、その要素だけで設計対象に成り得
3,450
和室 室1 室2
2,040
たため、それぞれに相応しい知人建築家を頼っ
た。複数の設計者が、設計における中心人物 ブリッジ
をつくらず自律的にも関わり合いながら家づくり
430
インナーバルコニー
に取り組んだ。家の重心を外におくことで、都
2階平面図
市としての路地奥空間を豊かにするとともに、家 11,130
3,030 2,520 2,550 3,030
自体の魅力も拡張することを目指した。
(柳室純)
980
トイレ
洗面所
和室 板間 和室
板間
3,450
2,040
居間 食堂 厨房
浴室
430
改修前2階平面図 祠
1,415
板間
和室 板間 和室
玄関土間
玄関土間
N
2,400
共用トイレ・洗面所
N
改修前1階平面図 縮尺1:400
2022 04 021
室2。向かいの屋根を見下ろす開放的な寝室として活用。既存開口部の外側には、増設した窓枠に新設建具が 和室。天井面と一部の内壁は新しく仕上げ、部分的に既存のままとすることで新旧の対
嵌め込まれ、内部化した既存枠部分は腰をかけたりできる窓辺となる。 比を印象強く表す。2階の天井高は1,875∼2,960mm。
差鴨居:120×210mm(1階) 暮らしに溶け込み建物を延命する耐震補強
120×150mm(2階)
柱:溝形鋼100×50mm(二重) 奥行きが3mの長屋には、間口方向に2.5mまたは3m間隔で主要な柱と差鴨居があり、その軸上に戸境壁、あるいは奥側
1mの袖壁が設けられ、建具により空間が区切られていることが分かった。このグリッド上の架構に可能性を感じながらも、
耐力壁:鋼板 t =2.3mm(二重)
隣り合う空間との連続性を確保するために、建具を開いても奥行の2/3が閉じてしまう状況を打破したいと考えた。そこで、
差鴨居を挟むように両側に扁平な鉄骨柱と薄い鋼板を設けることで、時々刻々変化する建具やカーテンが、恒常的な構造
体の隙間をすり抜ける仕組みを用意した。この挟み柱と差鴨居を基礎に先立って設け外壁部を片持ち支持することで、煉瓦
から鉄筋コンクリート造の基礎に置き換えるための施工装置として利用している。差鴨居と中柱に集中して手を施すことで、
頼りない既存部の大半を残しながら、既存躯体の可能性を増幅させる更新をし建物の延命を図った。 (柳室純)
▽最高高さ
屋根:既存瓦葺き
1,490
既存下地 天井:EP
PB t=9.5mm
床:構造用合板 t=24mm
着色オイル塗装 ▽軒高さ
木製建具 壁:既存土壁補修
屋根:
1,880
ポリカーボネート波板 ブリッジ
構造アクソノメトリック 床:FRP防水
耐水合板
t=12+12mm千鳥張り 床:スギ Jパネル t=27mm
床着色オイル塗装
2FL
北側外壁:ガルバリウム小波板貼り
横胴縁 t=15mm
上桟: 透湿防水シート
ホワイトアッシュ t=21×57mm 木製建具 構造用合板 t=9mm
2,385
洗面所
居間
竪子(木桟下地) :
ヒノキ t=9×9mm
面材: 1FL
265
中空ポリカーボネート板 t=10mm GL
戸先鎌錠
下桟:
ホワイトアッシュ t=21×45mm
天井:EP
PB t=9.5mm
調整戸車
壁:土壁中塗り
PB t=12.5mm
建物南面の建具 構造用合板 t=9mm
床:縁なし畳 t=15mm 和室 室1 室2
構造用合板 t=12mm 床:フローリング
t=15mmオイル塗装
構造用合板 t=12mm
新旧の架構に寄り沿い意匠性を高める気配り
差鴨居によって4 2層に区切られた空間に、8つの機能を想定す 天井:根太・床合板現し
壁:露出FRP防水 着色オイル塗装
ることは容易だったが、廊下がないため隣接関係の重要度は高く、 耐水合板 t=12mm
構造用合板 t=9mm
すべての場所が路地に面し既存開口を考慮する必要もあったため、 壁:EP
洗面所 居間 食堂 PB t=12.5mm
機能の配置の検証には注力した。そのうえでグリッドから機能の 厨房 構造用合板 t=9mm
境界部分をずらす変則箇所を1カ所だけ設けることで、架構の大ら
かさに委ね空間にメリハリをつけている。既存の柱梁は、倒れや 床:カチオン
歪みが激しかったが、交換する構造材をはじめとして、箱階段の t=3mm+ウレタン塗装
合板 t=12mm
段板、ベンチ、下駄箱、厨房吊棚、などにスケールダウンした線 床暖房パネル t=15mm
材を多用し同色で整えることで、既存部材の存在感を相対的に弱
めた。既存土壁は単体では綺麗なものではなかったが、既存土壁
床:フローリング t=15mm オイル塗装 床:フローリング t=15mmオイル塗装
と入隅で隣接する四面は新たに仕上げ、新旧の対比を誘発するこ パーティクルボード t=20mm 床暖房パネル t=12mm
フリーフロア 合板 t=9mm
とで、既存土壁をありがたい存在に高めている。 パーティクルボード t=20mm
(魚谷みわ子+柳室純) 長手断面図 縮尺1:100 フリーフロア
022 2022 04
和室から室2を見通す。新旧2重のファサード面の隙間はインナーバルコニーとし
て使われる。もともとは外部だった空間を半内部化し、路地と長屋の関係をより
豊かにすると同時に、内部の熱環境の調整装置としても機能する。建物北側に
構造補強のために設けた鉄骨柱と鋼板の間に建具が引き込まれる。
路地の最奥に面した浴室。
2022 04 023
2/5 工事期間 2020年10月∼2021年3月
所在地/京都府京都市 敷地条件
主要用途/専用住宅 近隣商業地域 準防火地域
家族構成/夫婦+子 道路幅員 南1.4m(非道路)
外部仕上げ
設計 屋根/既存瓦葺き(土無し)
本体意匠設計 柳室純+魚谷みわ子 外壁/既存外壁(西側) 既存仕上げを撤去 土
本体構造設計 柳室純構造設計 担当/柳室純 壁中塗補修(南側) ガルバリウム鋼板(北側)
ファサード設計 Schenk Hattori 開口部/木製建具(木枠:ホワイトアッシュ+
担当/服部大祐 服部さおり 縦桟:ヒノキ+面材:中空ポリカーボネート)
studio archē 担当/甲斐貴大 共用トイレ・洗面所
建築企画 魚谷繫礼 床/土間コンクリート金ごて仕上げ
不動産 いえ屋 担当/田中淑久 壁/構造用合板 t=12mmオイル塗装
施工 天井/既存垂木+ポリカーボネート波板現し
ふじさき組 担当/藤崎智一 藤崎公久 便器・洗面器/既存移設・再利用
電気 石田電気通信 担当/石田文彦 内部仕上げ 南側立面図 縮尺1:150
水道 五光商会 担当/若井浩司 食堂 厨房
設備 大同陶器 担当/笹井仁 床/合板 t=12mm PB t=12.5mmカチオン塗り 天井/根太・床合板オイル塗装 階段
左官 上田左官 担当/吉田恭介 壁/既存土壁補修 ペンキ塗装 黒皮鉄板み 便器/ネオレスト(TOTO) 床/ Jパネルスギ t=30mmオイル塗装
塗装 成影塗装 担当/成影仁司 つろう塗り 和室 壁/既存土壁補修 PB t=12.5mm ペンキ塗り
建具 studio archē 担当/甲斐貴大 天井/根太・床合板オイル塗装 床/畳 黒皮鉄板みつろう塗り
左官(和室など) 森田一弥 建築金物/木製建具(studio archē) 壁/既存土壁補修 土壁中塗り仕上げ 天井/ PB t=9.5mm ペンキ塗り
カーテン アルク 担当/井上博乃 居間 天井/ PB t=9.5mm ペンキ塗り ブリッジ
構造・構法 床/スギ無垢板フローリング t=15mmオイル塗装 建築金物/既存建具再利用 床/ Jパネルスギ t=30mmオイル塗装
主体構造・構法 木造 壁/既存土壁補修、PB t=12.5 ペンキ塗り 木製建具(studio archē) 壁/既存土壁補修
基礎 べた基礎 天井/根太・床合板オイル塗装 室2 天井/ PB t=9.5mm ペンキ塗り
規模 浴室 床/スギ無垢板フローリング t=15mmオイル塗装 設備システム
階数 地上2階 最高高さ 6,020mm 床/ FRP防水 タイル(長江陶業) 壁/既存土壁補修 シナランバー ペンキ塗り 空調 暖房方式/エアコン 床暖房
2
敷地面積 40.981m 壁/ FRP防水 天井/ PB t=9.5mm ペンキ塗り 冷房方式/エアコン
2
建築面積 34.900m 天井/スギ羽目板 t=12mmオイル塗装 建築金物/中古建具(井川建具) 換気方式/第3種換気
2
延床面積 67.600m バスタブ/ホーロー浴槽(大和重工) インナーバルコニー 給排水 給水方式/上水道直結
1階 34.9m2 2階 32.7m2 トイレ 洗面所 床/ FRP防水 排水方式/下水道直結
工程 床/スギ無垢板フローリング t=15mmオイル塗装 壁/既存土壁補修 新設部土壁中塗り仕上げ 給湯 給湯方式/ガス給湯器
設計期間 2020年4月∼2020年9月 壁/ PB t=12.5mm ペンキ塗り FRP防水 天井/既存軒天オイル塗装 撮影/新建築社写真部
共用洗面所から路地を介して食堂・厨房を見る。左の祠は修繕し残した。
024 2022 04
路地奥から見通す。
2022 04 025
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
Row House in
Nishinotoin
京都府京都市
Schenk Hattori
026 2022 04
東棟広間1。空き家となっていた3軒長屋の両端2棟を、短期宿泊ができる
多目的スペースに改修。各棟は周辺環境に合わせて計画され、隣家の建ち
方や日射、通風などわずかな条件の違いが内部空間の差異として現れる。
2022 04 027
西棟広間2。2棟に共通する平断面の計画は、通り土間を復活させて南
側接道と連続させ、その中に気積の大きな広間を挿入すること。広間は
シルバー塗装することで建物内に日差しを拡散させる。既存の建物形状
から、西棟は建物中央に、東棟は建物北側に広間を配置。
028 2022 04
都市の体験に歪みをもたらす接続と断絶
京都旧市街、2本の通りを結ぶ路地に面した築 諸室においては土や漆喰で仕上げられた真壁造
80年ほどの3軒長屋。この計画は、そのうちの りの既存部をなぞるように、形状・質感・色味
両端、空き家となっていた2軒の改修である。 といった要素を整えていく。同時に、それらの
新築・改修の別に関わらず、設計対象とそれを 重心に、路地・長屋の文脈から切り離された、
取り巻く周辺環境をいかに接続するか、というこ 比較的大きな気積をもった室を挿入する。
「広
とを考えながらこれまでの設計活動を行ってきた。 間」と名付けたこの室は、既存の物質たちから
一方、この敷地のように物理的コンテクストの豊 アルミアングルの見切材で縁を切られ、シルバー
かな都市空間における改修計画の場合、既に の大壁で覆われた抽象度の高い空間となってい
設計対象と関係を取り結ぶべき要素が至るとこ る。唐突に埋め込まれ、周囲との関係を拒絶す
ろに溢れている。そういった与条件の中にあって るこの空間によって、建物内外の空間同士の距
は、丁寧に関係を繋いでいき、周辺環境に馴染 離感に歪みが生じる。諸室と通り土間、よく見
んだ空間をつくるのみに留まらず、何か「その場 慣れたはずの窓越しの風景も、広間を介すこと
の何物とも結びつかない空間」を挿入することで、 で、どこか遠くの風景を眺めているような感覚を
より一層空間に拡がりをもたせることができるの 覚える。
ではないかと考えた。 京都の旧市街、路地に面した3軒長屋という強
まず2棟の共通事項として、長年の増改築で失 い文脈をもつ与条件への特殊解として、接続と
われた通り土間を再配置する。これにより「アス 断絶の両者を内包させることで、周辺環境まで
ファルト敷きの表通り」から「石畳の残る路地」を を含めた建物内外の関係性を変容させる。その
経て「土のままの通り土間」へと、質を変えなが 結果として「ここではないどこか」との接続までを
らシームレスに続く地面のシークエンスによって、 予感させる、そんな拡がりのある空間体験を目
都市との連続性を取り戻す。 指した。 (服部大祐)
2022 04 029
西棟通り土間から南側を見通す。床や天井、内壁は剥がして土間や架構を現しにしたうえで、機能によって床を新設。設計者の事務所として活用される
西棟では、執務空間となる板間の諸室に加え、機能を限定しない土間空間が、制作の実験場や小規模なレクチャースペースとして使われる。
1,535
天井:
既存小屋組現し
天井:
既存木軸下地現し
壁:
PB t=12.5mm シルバー塗装
既存土壁 既存土壁 新規木軸下地
2,590
室4
7,100
床:
スギフローリング t=15mm
構造用合板 t=24mm
不陸調整材
2,410
室2 広間2 室3
壁:
壁: TSボード t=15mm 無塗装 目透し貼り
PB t=12.5mm AEP PB t=9.5mm
断熱材 グラスウール 24k t=75mm 断熱材 グラスウール 24k t=100mm
床: 床:
スギフローリング t=15mm スギフローリング t=15mm
温水式床暖房 t=12mm 温水式床暖房 t=12mm
構造用合板 t=24mm 構造用合板 t=24mm
350
350
床: 地面現し
030 2022 04
東棟広間1を見下ろす。大きな箱階段の中に最低限の滞在機能を納め、それ以外は吹抜けの一室空間として建物全体がひとつの舞台装置となる。
東棟はイベントスペースやギャラリーとして使われる予定で、箱階段は舞台を見る客席にもなり、物が置かれる展示台ともなる。
ディテールとマテリアルとテクスチャー
京町家では、木・紙・土・石といった自然素材が多く用いられ、これらの素材は時間の経過と共に経年変化し、その時間の重な
りが大きな魅力のひとつとなっている。この京町家に家具を制作するにあたり、やがて劣化してしまう機能性塗料で木材を覆って
しまうのではなく、化学変化による木材の変色や、経年による組成の変化をそのまま仕上げにできないかと考えた。スギを主材と
したマテリアルと仕上げ方のリサーチと実験を行い、スギ・神代スギ・スギ合板・スギストランドボードというマテリアルに対し、
うづくり・銀箔押し・和紙貼り・鉄媒染といった複数の仕上げ方を試みている。棚については、棚板と角材、楔による分解可能
なディテールを設計した。角材と楔は共通の仕様とし、棚板は室によって仕上げ方を変えている。角材と楔によるディテールと、
スギというマテリアルのフォーマットが、それぞれの室に呼応する棚板のテクスチャーを繋ぎ止めている。
時間の経過と共に、木材は飴色に変化し、銀箔はゆっくりと酸化し、和紙は擦れてうづくりした木地が少しずつ露わになってくる。
竣工時をもって完成とするのではなく、これからの生活や補修といった時間を内包するような家具のあり方を目指した。
(甲斐貴大)
1,535
天井:
既存小屋組現し
床:
ラワン合板 t=4mm 着色塗装
構造用合板 t=24mm
4,870
天井:
構造用合板
t=24mm 着色塗装
壁:
壁・天井: ラワン合板 t=4mm 着色塗装
PB t=9.5mm AEP 広間1 壁:
グラスウール 16k t=50mm PB t=12.5mm シルバー塗装
2,625
壁:
構造用合板 t=12mm 着色塗装 造作カウンタートップ:
スギ荒板 t=15mm クリア塗装
構造用合板 t=30nn 小口スギ荒板張り
床: 黒皮鉄階段:
構造用合板 t=24mm 着色塗装 段板 t=9mm 蜜蝋ワックス
350
50
室4
2階平面図
改修前2階平面図
西棟 東棟
N
2,465
2,530
室3
改修前1階平面図 縮尺1:300
広間1
2,970
2,970
9,065
2,970
2,970
室2 室1
トイレ2
トイレ1
N
595
595
032 2022 04
N
カウンタートップ/既存天井荒板転用
造作カウンター脚/黒皮鉄 t=9mm 蜜蝋ワック
ス塗り
階段踏板/モンキーポッド無垢材 t=30mm ク
リア塗装
階段ささら桁・造作柱脚金物/黒皮鉄 t=9mm
蜜蝋ワックス塗り
箱階段/ラワン合板 t=4mm OSUC
ベンチ/モルタル金ごて仕上げ
広間2
床/三和土仕上げ(予定)
壁/ PB t=12.5mm シルバー塗装 土壁中塗
り仕上げ
吹抜け上部/既存床梁現し 既存垂木トントン現し
建具/既存木製引戸
床間/既存天井荒板転用 表面カンナ掛けの上
クリア塗装
室1
床/構造用合板 t=24mm OSUC
壁・天井/構造用合板 t=12mm OS
カウンタートップ/既存天井荒板転用 表面カ
ンナ掛け OSUC
シンク・水栓/ SANEI
室2
床/スギ無垢フローリング t=15mm(丸嘉)
壁/既存土壁塗り PB t=12.5mm AEP
天井/既存天井荒板現し
室3
床/スギ無垢フローリング t=15mm
壁/高圧木毛セメント板 t=15mm 目透し張り
(竹村工業)
天井/構造用合板 t=12mm OS
室4
床/スギ無垢フローリング t=15mm
壁/既存土壁塗り
天井/既存天井下地板 表面サンダー掛け OS
トイレ1
床/構造用合板 t=24mm OSUC
壁/構造用合板 t=12mm OS 土壁中塗り仕上げ
天井/構造用合板 t=12mm OS
トイレ2
床/モルタル金ごて仕上げ
壁/ PB t=12.5mm AEP
天井/ PB t=9.5mm AEP
設備システム
空調 冷暖房方式/エアコン
換気方式/第3種換気
その他/温水式床暖房
給排水 給水方式/上水道直結
排水方式/下水道直結
給湯 給湯方式/ガス給湯器
撮影/新建築社写真部
西棟南側全景。
2022 04 033
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
Sayko Dayo
House
静岡県沼津市
メラニー・ヘレスバック
+セバスチャン・ルノー/ 2m26
Mélanie Heresbach
+Sébastien Renauld / 2m26
南東側外観。もともと漁港の倉庫であった写真家の西野壮平氏の
自邸兼スタジオの増改築。2層高さ4mのL字のヴォリュームを増
築し、縁側を内部化したような空間が室内に光を取り込む。*
034 2022 04
2022 04 035
ダイニングから見る。増築部は設計者が自主施工してつくり上げた。地元の木材会社から提供されたスギ板を使い、3枚のスギ板の間に厚さ
30mmの小さな板を挟みひとつの柱としている。2階には梯子で上がる。右手壁側の棚や丸テーブル、椅子のほとんども設計者による制作。
036 2022 04
2022 04 037
A
寝室 書斎 客室
ダイニング
1,715
4,820
洗面所 リビング
1,820
浴室
N
キッチン
トイレ
A
平面図 縮尺1:150
1,820 1,820 1,820 1,820 1,820 1,820
10,920
縁側のような内部空間
写真家である西野壮平氏の自邸兼スタジオの増
築である。静岡県戸田漁港の倉庫として使われ
ていたこの建物は、ふたつの空間が壁で仕切ら
れていた。西野氏が住み始めて数年は西側半
分を住宅として改修しながら暮らしており、東側
半分は使われず一部が風雨に晒された手付か
ずの状態であった。そこで、東側のスペースを
スタジオとして拡大し、風雨に晒されていた部分
には壁を立てるのではなく、分厚いファサードの
ようなヴォリュームを挿入することで自然光など
の外部環境を取り込む縁側のような場所とする
ことを考えた。
東側は、建物に囲まれたプライベートな庭に面
していたため外側に引き戸を設け、L字型のヴォ
2階。天井高は1,130mm。*
リュームの短手方向は開放的なリビングとし、長
手方向の空間はスタジオに面した内部空間とし
ての縁側、またはスタジオのバルコニーとして作
業の合間にひと息つけるように設計した。
施工は、増築部分を描き足したスケッチを元に、
2カ月間実際にわれわれが住み込みながら行っ
た。一部の解体作業と清掃の後、地元の木材
会社から提供してもらった770枚のスギ板を使
用し、ネジだけで組み立てている。また、余っ
たスギ材で椅子や机といった家具も制作した。
この高さ4mの2層の空間は、元の工場の木架
構と調和しながら気積の大きな空間に住宅らし
いスケールを与え、外部と内部、また倉庫から
住宅兼スタジオへの転換というコンテクストを繋
ぐものになったと思う。
(メラニー・ヘレスバック+セバスチャン・ルノー)
東側から見る。左手奥にキッチンや水回りがある。
038 2022 04
テラスを見通す。1階部分の天井高は1,895mm、右手リビン
グの天井高は3,235mm。リビングのテーブルは西野氏が制作。
増築したヴォリュームの長手方向を見る。*
2022 04 039
Sayko Dayo House. 外壁/スギ板 t=105 30mm
所在地/静岡県沼津市 開口部/スギ板 t=105 30mm アクリル
主要用途/住宅+アトリエ 外構/スギ板 t=105 30mm
家族構成/ 1人 内部仕上げ
キッチン 浴室 トイレ 洗面所
設計 床・壁・天井/スギ板 105 30mm アクリル
2m26 担当/メラニー・ヘレスバック (トイレ、洗面所)
セバスチャン・ルノー 家具・照明/制作
構造・設備・電気・外構・造園 2m26 リビング テラス
施工 床・天井/スギ板 105 30mm
2m26 壁/スギ板 105 30mm アクリル
設備・電気・外構・造園 2m26 家具・照明/制作
構造・構法 設備システム
主体構造・構法 木造 空調 暖房方式/床暖房
基礎 コンクリート 石 給排水 排水方式/溝メタル
規模 給湯 給湯方式/電気温水器
階数 地上2階 撮影/新建築社写真部
*
軒高 1,895mm 最高高さ 3,265mm 提供/ 2m26
2
敷地面積 284m
建築面積 26m2
延床面積 39m2
1階 26m2 2階 13m2
工程
設計期間 2017年5月∼ 6月
工事期間 2017年7月∼ 8月
敷地条件
道路幅員 西6.0m 駐車台数 3台 N
外部仕上げ
屋根/防水シート 砂
上・下:改修前の様子。* 配置図 縮尺1:5,000
1,130
210
3,780
1,895
2,425
320
増築部分BB'断面詳細図 縮尺1:80
AA'断面詳細図 縮尺1:80
040 2022 04
ダイニングから増築部分を見る。
2022 04 041
北東側全景。敷地は準工業地域であり、私道が3本接するのみの建て込んだ街区中央に位
置する。増改築が繰り返された結果、敷地西側には木造平屋、東側には鉄骨造2階建てが
既存で建ち並び、それぞれを居住スペース「オモヤ」と画家のアトリエ「ハナレ」に改修する計
画。この写真は竣工時に撮影されたもので、現状では手前の空き地に隣家が建つ。*
042 2022 04
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
ゴンダンチ
House for GONDA
兵庫県
吉永規夫/
Office for Environment Architecture
Norio Yoshinaga /
Office for Environment Architecture
2022 04 043
044 2022 04
オモヤの書斎からキッチン側を見渡す。間仕切りのない一室空間で、
床高の差により緩やかに領域を分ける。浴室は勾配天井の高さを活
かしロフトに配置、書斎から緩勾配の階段で土間を渡りアクセスする。
2022 04 045
改修前は倉庫として使われていたオモヤには、構造補強のため梁・柱
と構造用合板による内壁を新設。色の濃い梁・柱が既存のもの。ピロ
ティから連続し内部を横切る土間には、既存柱の礎石が残されている。
アトリエ1からオモヤ側を見通す。オモヤと同様に断熱
材を充填した構造用合板で補強。屋根を一部くり抜き
天窓を設けることで建物内部に光を取り込む。
046 2022 04
ピロティから土間を見る。既存の板間を
剥がしてコンクリート土間を挿入した。
2022 04 047
接道しない環境のトランスフォーメーション はあるが、街全体を家と考えると暮らしは豊かに
人の家のお風呂に富士山を描く画家から、3棟の 感じることができる。家族の新しい生活がスター
倉庫物件を破格で見つけたから見に来てほしい トしてすぐに、野良猫がこの家に顔を出し始め、
といわれた。住まいとして使われた履歴はなさそ 数カ月後には夜はこの家で寝るようになった。現
うであったが、ホームセンターのお買い上げテー 場である環境に身を置き修理したことは、既存へ
プの貼られたままの簡易キッチンと新品の便器が 働きかけ価値を発見し、次の時代へ継承してい
設えられていたことは、
「住まいとしても使えるよ」 く野蛮で原始的なフロンティアがそこに広がって
アトリエ2
という不動産的付加価値の便宜に思えた。 いることを確信させた。 (吉永規夫)
敷地は大阪湾から200mほどの準工業地域にあ
る。周辺は、古くからの酒蔵や工場、作業所な
どの施設と戸建てやマンションなどの住居が混在
している。大通りや建築基準法上の道路に面し
天井:
ポリカーボネート波板
た敷地はマンションや分譲戸建てに再編が進み、 壁:
FRP防水
店舗・施設系建築物も建て替わる更新スピード 外壁:
浴室 ポリカーボネート波板
は早かった。今回の敷地は街区の真ん中に位置
し路地である私道が3本通っているだけで再建築
床:
不可の条件であった。隣近所も接道していない FRP防水
構造用合板 t=24×2mm
木造家屋は取り残されたように高齢者が住み続
壁:
構造用合板 t=9mm
けていていたが、路地を介してご近所付き合いも グラスウール 24K t=90mm充填
可動式天窓:
壁: ポリカーボネート波板
ほどよく残っていた。 構造用合板 t=9mm
グラスウール 24K t=90×2mm 充填
既存建物は、1975年築で幾度も改修され、増
築も減築も繰り返していた。素人が関与したと思
われる箇所もたくさん見られ、構造的にも不安定
補強梁
であった。改修予算が限られていたこともあり、
住人と仲間たちで毎週末に日曜大工で1年強の
キッチン
和室
時間をかけて住める環境へ修理した。コロナ禍
の2020年春先に着工すると、時間と共に海から 屋根:
ガルバリウム鋼板 小波 t=0.4mm
収納 グラスウール24K t=50mm 充填
山からと変化しながら吹く風の心地よさを体感し、 既存屋根
補強柱
土間
既存引き違い窓を可能な限り外気を取り込めるよ
うに引き込み窓に取り替え、四方八方から風が リビング
流れ込むようにした。夏になると、トタン屋根の
下は猛烈な暑さになり、天井に十分な断熱材の 壁:
構造用合板 t=9mm
グラスウール 24K t=90mm 充填
ピロティ
充填を急いだ。秋になると損傷が大きかった外
外壁:
ガルバリウム鋼板小波 t=0.4mm
壁を下地材で使う胴縁の重ね合わせで仮の仕上 胴縁 15×45mm
透湿防水シート
既存外壁下地
げとした。冬には住める設えになっていたが、残
アトリエ1
外壁:
工事も多く、まだ住み始めることはなく2回目の春 アカマツ胴縁張り t=15mm(亜麻仁油塗布)
透湿防水シート
構造用合板 t=9mm
間柱 30×90mm(グラスウール 24K 充填)
を迎えた。春になると再び心地よさに誘惑され、 既存外壁下地
雨仕舞いの悪かったハナレの1階の屋根の一部
を取り払い可動式の天窓を設置した。
接道条件は満たさないが、周囲のさまざまな環
境とは接している。小さな修繕が周辺を巻き込み、
生きられる場所へと紡いでいく。小さな1街区で アクソノメトリック
減築
既存屋根と壁に
トタンが上から張られる
2017年建主が
購入
増築 減築
1975年以降の建物の変遷
048 2022 04
オモヤ西面の窓からアトリエ1まで見通す。
5,620
▽最高高さ
ハナレ
830
▽軒高 屋根:
ガルバリウム鋼板 小波 t=0.4mm
グラスウール24K t=50mm 充填
既存屋根
床:
琉球畳 t=30mm
構造用合板 t=24mm
2,550
オモヤ 屋根:
アトリエ2 ガルバリウム鋼板 小波(既存)
可動式天窓: ▽最高高さ
ポリカ波板
天井:
ラワン合板 t=5.5mm
▽2FL ラスウール24K t=75×2mm 充填
1,415
7,105
壁:
FRP防水
955
▽軒高
▽軒高
浴室 壁:
構造用合板 t=9mm
補強梁 グラスウール 24K
959
和室
t=90mm 充填
4,423
ピロティ
166
アトリエ1 ▽浴室FL
3,725
▽和室FL
2,260
560
3,008
2,770
書斎 ▽踊り場高さ
1,513
リビング
2,049
953
補強柱
▽1FL
収納 ▽1FL
510
270
▽GL ▽GL
△土間FL
100
壁: 床: 壁:
構造用合板 t=9mm 床: 外壁:
ラワン合板 t=5.5mm オークフローリング t=15mm 構造用合板 t=9mm AEP アカマツ胴縁張り t=15mm
グラスウール 24K t=90mm 充填 既存床下地調整 グラスウール 24K t=90mm 充填
既存床下地調整 (亜麻仁油塗布)
1,840 1,840 1,840 2,005 1,000 1,990 960 透湿防水シート
5,520 5,955 構造用合板 t=9mm
間柱 30×90mm
(グラスウール 24K充填)
長手断面図 縮尺1:80 既存壁下地
2022 04 049
土間からピロティを介してアトリエ1を見る。 ピロティはハナレの階段と2階床が覆う半屋外空間。増築されていた水回りは撤去し、アトリエ1の西面半分を大きな開口とした。
デイサービス施設
(接道)
福祉施設
(接道)
3,905 2,050
3,005 900
隣地1
(非接道)
1,640
洗面室/トイレ 1,640
FL+305
N
5,620 1,285
2,810 2,810
1,955
リビング 緑化条例の植栽
FL+370
キッチン
3,920
7,565
土間
1,965
5,925
FL±0
隣地2
(接道) ピロティ
3,995
3,710
アトリエ1
FL+610
和室 書斎
2,005
2,005
FL+1,883 FL+370
5,520
ハナレ オモヤ
コンビニ
(接道)
1階配置平面図 縮尺1:120
050 2022 04
ハナレ2階 N
オモヤ
ハナレ1階
北東側鳥瞰。工場や施設、マンションなどの中規模建築と木造住宅が混在する。*
2022 04 051
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
ロードサイド・
ロッジア
Roadside Loggia
広島県府中市
アトリエ・ワン
Atelier Bow-Wow
北側全景。国道沿いに建つ住宅と店舗、倉庫から成る築46年の鉄骨ラーメン造
3階建てのビルを2階建てに減築し、高齢の両親と離れて暮らす建主家族の別荘
とする計画。ファサードは店舗だったガラス張りを維持している。
052 2022 04
2022 04 053
東から見る。1階の一部をロッジアに、2階のほぼ半分をテラスとして外部化し、
内外が連続する回遊動線としている。ロッジア右手の扉は旧家のもの。
054 2022 04
建物も生活も軽く いと相談があった。建物の骨組みは単純かつお やステンドグラスを再利用している。3階を切除す
広島県府中市の国道486号は、緊急輸送道路 おらかで、スケルトンとして利用しがいがあった ることで生じる「傷口」は、ロードサイドの建築で
ネットワークの一部に指定されており、県は新耐 ので、私たちは3階を切除し2階建てにする減築 よく見られる、庇を模したパラペットを四周に回
震基準以前に建てられた沿道建物の耐震性向 による耐震改修を提案した。東側の庭のアスファ して癒した。
上を促すため、改築や耐震補強工事に助成する ルトを剥がして土に戻し、隣接する1階を抉って 図らずも地元に2拠点目が確保された建主は、
仕組みを用意している。1976年築の鉄骨ラーメ ロッジアとし、2階は風呂と倉庫を収めた小屋を 自身の現代美術コレクションや蔵書、旧友との
ン構造で、1階が衣料品商店、2階が店主家族 入子にしてテラスとギャラリーを分けることで、 ネットワークを資源に、まちの活性化を模索し
住居、3階が倉庫のこのビルもその対象であった。 隣接するコンビニエンスストアの駐車場側の立 始めているようだ。 (塚本由晴)
この助成を使ってビルを解体し、高齢の両親の 面にスケルトンの抜けを強調した。寝室など個室
住まいと東京在住の建主家族の別荘に改築した には天井を吊り、旧家からサルベージした引き戸
2022 04 055
笠木:
ガルバリウム鋼板
捨て笠木 292 98 286
アスファルトルーフィング
下地合板 t=12mm
326
パラペット:
171
ガルバリウム鋼板 t=0.4mm
アスファルトルーフィング
下地合板 t=12mm
シート防水立上り
横つなぎ材 鉄骨下地
□-40×40×1.6mm □40×40×1.6mm
666
@1.5∼2.0m
1,0
410
63
耐水合板 t=12mm
1
柱切断部分: 2
錆止め塗装
40 85
60
40 50 300 190
120
▽最高高さ
L-100×75mm 鉄骨柱に溶接(通し) GL+7,600
25 89 10 239
124 軒天:
硬質木片セメント板 t=12mm
850
水切り
面戸 ▽軒高さ=
GL+6,750
外壁:
ポリカーボネート波板 t=0.7mm
ツーバイフォー格子下地 天井:
@450mm(縦材通し) 既存コンクリートスラブ
胴縁 t=18mmで隙間埋める
面戸(ポリカーボネート内側) 木製ダクトレール
L-100×75 鉄骨柱に溶接(通し) 硬質木片セメント板
ツーバーフォー
柱まわりスラブ除去 水切り:
3,180
フランジ突合せ溶接 既存スラブ端部切断
15 25
水切り: 床:
掘り込み加工 コンクリートワックス
既存コンクリートスラブ
▽2FL=
GL+3,570
下端ハンチリブ補強
150
720
フランジ突合せ溶接 天井:
漆喰塗装
軒天: 既存コンクリートスラブ
硬質木片セメント板 t=12mm
グラスウール t=100mm
ライブラリー
矩計図 縮尺1:20 既存建具再利用
リビングダイニングキッチン
2,500
既存階段 床:
既存ショップウィンドウ スギフローリング t=15mm
減築と梁フランジ溶接補強による改修 下地合板 t=12mm
プラ束
既存建物は1970年代の小規模鉄骨造の典型的なつく 発泡ウレタン吹付け t=50mm
▽1FL=
られ方であり、柱にはH形鋼にカバープレートを付けた GL+420 床:
コンクリートワックス
「日の字形柱」が用いられた靭性の小さい構造である。 既存コンクリートスラブ
350
梁はH形鋼であるが柱との接合部の溶接部は隅肉溶 ▽GL±0
接もしくは部分溶け込み溶接であり強度は十分ではな
い。さらに外壁にCB壁を用いていたことも耐震的には
弱点であった。3階の減築やCB外壁の撤去によって建
物重量が約53%に減少した状況でも耐震性は不足す 3,600 3,600
る。鉄骨ラーメン構造では接合部を強化するためにハ
ンチを用いて補強することもあるが、今回は2階の梁
端部のフランジを再溶接して強度を確保した。3階の
鉄骨柱の撤去方法は、スラブ上部30mmのレベルで 断面詳細パース 縮尺1:75
ガス切断し露出部は錆止め塗装を施した。 (金箱温春)
*提供:元廣建築設計事務所 **提供:アトリエ・ワン
*
上:既存の3階建てだった状態。 左下:3階の鉄骨柱の 2世帯共通の玄関であるライブラリーから既存の階段を見る。
** **
撤去部分。 右下:2階スラブの鉄骨柱と梁を再溶接。
056 2022 04
春日和鉄骨脱皮減量化
屋根: パラペット:
塩ビシート防水 ガルバリウム鋼板 縦葺き t=0.4mm
硬質ウレタンフォーム t=50mm アスファルトルーフィング
モルタル t=70mm 下地合板 t=12mm
スタイロフォーム(かさあげ用)
既存躯体
入れ子屋根:
鋼板波板 鉄板小波 軒天:
垂壁: 野地板 t=12mm 硬質木片セメント板 t=12mm
ポリカーボネート波板 垂木45×45mm 既存鉄骨部
再塗装
色25-90D パイプライト
天井:
VP
浴室 珪酸カルシウム板 t=8mm テラス 既存手摺り
壁: 壁: PB t=12.5mm
ガラスクロス SOP再塗装
FRP防水トップコート 木下地 SUSワイヤー 色45-70P
下地合板 t=12mm 耐水合板 12mm 入れ子外壁:
木下地 ガルバリウム鋼板波板
透湿防水シート
床: 下地合板 12mm
FRP防水トップコート グラスウール 90mm
モルタル30mm∼
コンクリート 床:
スタイロフォーム ウレタン塗膜防水
モルタル ∼30mm
既存躯体
既存階段
天井: SOP再塗装
AEP 27-90P
寒冷紗パテしごき
PB t=12.5mm
LGS下地 腰壁(FL∼+400mm): 外壁:
グラスウール t=100mm コルクタイル t=7mm 鋼板波板
接着モルタル 浴室 通気横胴縁 18×24mm
室1 トイレ 室2 FRP防水 透湿防水シート
壁: 耐水合板 t=12+12mm 構造用合板 t=12mm
ラワン合板 t=5.5+5.5mm グラスウール t=90mm
LGS
床:
コルクタイル t=13mm
FRP防水
モルタル t=50mm∼
耐水合板 t=12mm
撤去部
3,600 3,600 3,600 新築部
18,000 既存
壁、天井に断熱を施した室3。ファサードを維持した結果の大開口がロードサイドの風景 浴室はテラスに向けて全開放できる。
を切り取る。
2022 04 057
スケルトンの状態を残したギャラリー。インフィルの壁はどこでも釘が打てるようになっている。
庭側は透明・半透明の2種類のポリカーボネートを使ったカーテンウォール。
土間のライブラリーとリビングダイニングキッチン。障子は再利用。
排煙のためガラス引き戸の方が背が高い。
058 2022 04
室3からギャラリーを見る。壁は軽量鉄骨の下地を現しとし、
天井はラワン合板を押縁で押さえている。
3,600
室3
3,600
ホール
3,600
22,300
トイレ 浴室 倉庫
3,600
テラス
3,600
4,300
2階平面図
リビングダイニングキッチンとギャラリーを繋ぐ階段。
手摺りもすべて既存のままとしている。
3,600
ライブラリー 駐車場
リビングダイニングキッチン
3,600
室1
18,000
3,600
ロッジア 庭
廊下
トイレ
3,600
室2
洗面室 浴室 納戸
3,600
撤去部
新築部
4,300
既存
1階配置平面図 縮尺1:200
2022 04 059
北から見る夜景。
060 2022 04
特集座談会
ものを手放し生きることと向き合う
桑田光平(東京大学教授、建主) 塚本由晴(建築家) 貝島桃代(建築家)
この家は本当の意味で終の住処です。僕は塚本 あるのでしょう。また、入ってすぐの土間に段差
2022 04 061
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
母の家
(HAHA・NO・IE)
Mother's House
埼玉県所沢市
藤村龍至/ RFA
Ryuji Fujimura / RFA
玄関へのアプローチ。築40年の設計者の実家を改修し、単身の母の住まいに新しい世代のお
母さんたちを支援する公的な領域を追加するため門扉を撤去し、壁に開口を開け、緑地協定
で設置された植栽の一角を40年ぶりに植え替えた。
062 2022 04
室2から玄関越しに室1を見る。玄関脇の壁に開
口を開け新たな向きに視線が抜けるようにした。
2022 04 063
公的領域の室1から私的領域のダイニングへ抜ける視線。
大きなスライディングドアで仕切ることもできる。
記憶の残る空間の構造を補強する
計画敷地は学生時代訪問したことがあり、空間の構成を記憶していた。仕上げ解体後に構造
材の状況を確認したところ、劣化状況は良好で、この時代の住宅としては比較的丁寧に設計・
施工されたものと思われた。浴室回りの腐朽の進んだ柱を柱脚周囲のみ新規の材料に交換(根
継ぎ)して補強し、ワークスペース周囲など改修後のプランで支障となる位置の耐力壁の撤去
を行い、現行基準で不足する壁量を新規の壁位置に合わせて追加(筋交い)して所要の壁量を
確保した。耐力壁端部の柱には新旧とも柱頭と柱脚に金物、アンカーボルトを追加した。
(木下洋介/構造設計監修)
064 2022 04
室1。玄関を介して室2と繋がり、開口部越しに庭の
植栽と道路を挟んだ向かいの家の植栽が連続する。
公的領域側の玄関と室1の利用風景。カウンターやテーブルなど
の家具および枠回りには、通常下地材として用いられるパーティク
ルボードを使用し、ボード類や合板類と色調を合わせている。
2022 04 065
断熱材兼仕上げ材:
t=25mm
珪酸カルシウム板 t=6mm 壁:
強化PB t=12.5mm
高性能グラスウール14K t=85mm
ダイニング
壁:
下地現し
(新設)勝手口ドア
天井:
既存現し
キッチン
トイレ
室1
開口部: 洗面所
内窓
樹脂サッシ FL4+A12+FL4
壁:
強化PB t=12.5mm
高性能グラスウール14K t=85mm テーブル: 玄関
パーティクルボード t=20mm
クリア塗装
(新設)
ウッドデッキ
サッシ: 室2
アルミ樹脂複合サッシ
Low-E4-A12-FL4
カウンター:
(新設)カウンター: パーティクルボード t=20mm
パーティクルボード t=20mm クリア塗装
クリア塗装 (新設)カウンター: トイレ
パーティクルボード t=20mm
クリア塗装
床:
タイル張り t=8.5mm
下地モルタル
断熱材 t=45mm
アイソメトリック 縮尺1:70
HA
HA・
NO・
IE 植栽入れ替え範囲
照明交換
ポスト撤去
(新設)サイン
調和と対比を行き来するカラード・グレイ 植栽入れ替え範囲
椿峰ニュータウンの街並みは全体に穏やかな色調だが、1戸単位の外装色は個別に塗り替えが
進み、彩度が高い。また連続した際の色差は大きく、配色の調和がやや崩れているように感じ (撤去)門扉
られた。周辺の外装色を測色すると、開発当初からの住宅では明度が高く白に近い色が多く選
ばれ、近年新しく建てられた住宅では明度が低く黒い色が多く選ばれていた。
そこで「母の家」では所沢市景観計画の色彩基準や塗装の宿命である時間の経過による退色な 採用した色彩〈日塗工色番号(マンセル値)〉
ども考慮し、「周辺や既存の建具などになじみ、緑が映える色」「際立つのではなく緩衝的な役 屋根:19-30B(10YR 3.0/1.0)
割を果たす色」として10YR(黄赤)系のコーディネートによって既存の環境と新しい低明度の 外壁:19-30B(10YR 6.0/0.5)
住棟とを「繋ぐ」外装色を提案した。さまざまなニュアンスをもつカラード・グレイが今後周囲 窓まわり木部:19-50D(10YR 5.0/2.0)
にも波及し、椿峰のまちの個性や魅力を引き立てる存在となることを期待している。 エントランス:19-80A(10YR 8.0/0.5)
(加藤幸枝/色彩計画)
椿の花と母の優しいイメージのロゴデザイン
余計な角が少ないこと、特にAやOの文字がシンプ
ルにつくられているフォントをベースに、HとEの字
のみを作字した。中黒を丸ではなく、延長上の四角
とし母(HAHA)の家に外からの人が加わっていく様
子を表現した。色は「椿の花」 と
「母」の優しいイメー
ジからややグレイッシュなピンク(C40 M80 Y60)と
し、白壁に映え、玄関先の豊かな植栽の緑と対を
成すことを意識した。
(錦織ひとみ/グラフィックデザイン)
玄関周りの近景。 花壇に設置されたサイン。
066 2022 04
左上:玄関から室2を見る。既存の外観がかつて地
中海集落のような白の壁とオレンジの屋根であった
ことから、イタリア製菱形タイルを用いて過去の記
憶と現在を繋ぐことを試みている。
左下:室2。カウンターに立った時に前庭の植栽越
しに前面道路を歩く人と視覚的コミュニケーション
を取れるよう既存の開口の大きさを少し絞りつつ高
さを下げている。
右:ダイニングから室1方向を見る。新規に開けた
ポーチ横の窓越しに街並みへと視線が抜ける。構造
はできるだけ露出させ、壁面は仕上げる必要のある
部分のみプラスターボードをビス止め現しとし、将
来の再改修に備えている。
浴室
開口部:
内窓
樹脂サッシ FL4+A12+FL4
開口部:
内窓
樹脂サッシ FL4+A12+FL4
屋根:
(新設) ウレタン塗装
19-30B(10YR 3.0/1.0)
33.2
収納の内部の天井も
45
断熱材を増張り
壁:
2,770
47.1
室3 収納 既存 室4
2,375
2,375
(27.4)
▽棚上面
45(開口)
(新設)内窓:
樹脂サッシ
FL4+A12+FL4 50
2,690
FL4+A12+FL4 笠木
(新設)棚:
パーティクルボード t=20mm
(新設)
カウンター クリア塗装
天板はヒイラギの高さと揃える
(新設)サッシ:
アルミ樹脂複合サッシ (新設)テーブル:
800
床: 床: パーティクルボード t=20mm
700
C 既存根太間に断熱材を
充填し床の断熱を強化
▽設計GL±0
(新設)可動棚:
ドウダンツツジ パーティクルボード t=20mm 廊下とのゾーニングを
クリア塗装 天井仕上げで切り替える
床断熱材端部に取り付け、
壁と床の断熱材が接しないようにする
3,636 2,727
45
6,363
エントランス塀:
(新設)弾性シリコン塗装
19-80A(10YR 8.0/0.5) 気流止め
短手断面詳細図 縮尺1:60
1,818
床:
ダイニング キッチン ラワン合板 UC トイレ 洗 洗面所 ラワン合板 UC 浴室
壁:
壁: 強化PB
強化PB 天井:
床: 天井: 珪酸カルシウム板/
ラワン合板 UC 珪酸カルシウム板 一部断熱材兼仕上げ
壁:
強化PB テーブル ゴミ箱収納 収納 床:
天井: ラワン合板 UC
909
本棚 珪酸カルシウム板/一部断熱材兼仕上げ 壁:
壁下地現し 強化PB/一部下地現し 壁下地現し
5,454
天井:
既存現し
可動棚 床:
トイレ 菱形タイル
室2 壁:
室1 玄関 床: 強化PB
FL+350
床: 床: カウンター 菱形タイル 天井:
ラワン合板 UC 菱形タイル 壁: 合板
2,727
壁: 壁: 強化PB/一部菱形タイル
強化PB PB+AEP 天井:
天井: 天井: 珪酸カルシウム板/一部既存現し
テラス 既存現し/一部断熱材兼仕上げ 断熱材兼仕上げ
ウッドデッキ テーブル 踏台
ベンチ
デスク
① ローズマリー
ポーチ ③ ② マルバアキグミ
③ ブルーベリー (新設)サッシ・内窓
④ ラベンダー
② ⑤ グレベリア ラニゲラ (新設)内壁+断熱材
⑥ ④ ⑤ ①
⑥ ホワイトセージ
(新設)内壁
(新設)耐力壁
庭
⑦ ⑩
⑧
⑪
⑫ ⑨
⑬
⑭ ⑮
⑦ メディカルティーツリー
909 909 1,363 909 909 909 909 909 909 909 909 909 909 ⑧ イチゴノキ
N 295 1,818 5,000 1,818 3,636 ⑨ グレベリア ジョンエバンス
12,567 ⑩ ヒメタイサンボク
⑪ ニューサイラン(斑入り)
⑫ ニューサイラン(銅葉)
⑬ カレックス
⑭ ユーカリ ポポラス
⑮ コトネアスター
1階配置平面図 縮尺1:100
中央の区画壁の左手は私的領域で、既存の水回りとダイニングのレイアウトを
見直し区画壁回りをふたつの領域の境界として再定義している。右手の公的
断面詳細図 縮尺1:150
領域とは独立して施錠できるようにしている。左からふたり目が設計者の母。
068 2022 04
洗面所
トイレ 浴室
食堂 台所 洗
ホール
居間 玄関 和室
個と個が重なり合うように全体がひとつになる照明環境
タスク照明とアンビエント照明を複合し、色温度は電球色光を中心とし、生活の豊かさと機
能性を満たす照明環境を目指した。レイヤー上に並ぶ平面に呼応して、室1のカウンターテー
改修前1階配置平面図 縮尺1:200 ブル、ミーティングテーブル、通路部分に線状のライン照明を通した。全体に光源が見えな
い建築と一体化したディテールとし、窓辺に集中的に光が溜まり、外部から見て窓回りの人
の気配が浮かび上がるようにした。 (吉楽広敦/照明計画)
母の家(HAHA・NO・IE) 室1
所在地/埼玉県所沢市 床/ラワン合板 t=12+9mm UC
主要用途/兼用住宅+コワーキングスペース+ 壁/強化PB t=12.5mm
喫茶店(レンタルシェアキッチン) 天井/既存現し 一部断熱材兼仕上げ t=25mm
家族構成/ 1人 (ネオマフォームF)
家具/パーティクルボード t=20mm クリア塗装
設計 (オスモクリア)制作
RFA 担当/藤村龍至 武智大祐 照明/ペンダントライト
(山田照明 PD-2680-L)
佐藤芳和* 万徳友里香*(*元所員) 建築金物/彫込引手(KAWAJUN)
構造設計監修 木下洋介構造計画 室2
担当/木下洋介 床/タイル t=8.5mm(ロンバス LIXIL)
照明計画 ツキライティングオフィス 壁/強化PB t=12.5mm 一部タイル t=8.5mm
担当/吉楽広敦 (ロンバス LIXIL)
色彩計画 クリマ 担当/加藤幸枝 遠藤慧 天井/珪酸カルシウム板 t=6mm 一部既存現し
植栽コーディネート woodsmart 家具/パーティクルボード t=20mm クリア塗装 N
担当/伊藤司貴 (オスモクリア)制作
ロゴデザイン RFA 担当/錦織ひとみ 建築金物/彫込引手 レバーハンド(KAWAJUN)
施工 設備システム 配置図 縮尺1:2,000
クラフトマンスタジオ 空調 冷暖房方式/個別方式
まちに構える小さなグリーンインフラ
担当/清水源太 縄秀行 小寺友理子 換気方式/ダクトレス第1種熱交換換
椿峰ニュータウンは、1980年に制定された緑地協定により豊かなみどりが保全されている住宅地で
設備 西山設備工業 担当/西山勇樹 気方式 計画地周辺にもヒイラギとドウダンツツジによる2段の生け垣が連続性のある街並みをつくっている
電気 長谷川電気 担当/長谷川充男 給排水 給水方式/直結給水方式 が、シンボルツリーが植えられていたエントランス周りはやや乱れていて構えを失っていたため料理
植栽 内田植木 担当/内田皓基 排水方式/分流方式 などに活用可能な有用木を中心に植え替えを行った。僅かな面積ではあるが多くの樹種を植えるこ
とで通り過ぎる近隣の方がたとの間にコミュニケーションが生まれるよう意図した。緑地協定によっ
構造・工法 給湯 給湯方式/ガス給湯器方式
て守られてきた緑が街を変える小さなグリーンインフラとして蘇ることを期待している。
主体構造・構法 木造 撮影/新建築社写真部 (伊藤司貴/ランドスケープデザイン)
基礎 布基礎
規模
階数 地上1階
軒高 6,125mm 最高の高さ 7,550mm
敷地面積 188m2
建築面積 68.16m2
(建蔽率36.26% 許容40%[所沢市椿峰協定
(建築)
])
延床面積 116.49m2
(容積率61.97% 許容80%)
1階 65.68m2 2階 50.81m2
工程
設計期間 2016年6月∼2021年6月
工事期間 2021年7月∼2022年2月
敷地条件
地域地区 第1種低層住居専用地域 法第22
条区域 所沢市椿峰協定(建築・緑地)
道路幅員 南東6.0m 駐車台数 1台
外部仕上げ
屋根/既存スレート葺き ウレタン塗装
外壁/既存外壁 弾性シリコン塗装
開口部/新設:アルミ樹脂複合サッシ Low-Eペ
アガラス 内窓:樹脂サッシ FLペアガラス
内部仕上げ
キッチン
床/ラワン合板 t=12+9mm UC
壁/強化PB t=12.5mm 一部キッチンパネル
天井/珪酸カルシウム板 t=6mm
北東から見る。外壁は近隣の建物を繋ぐ緩衝材となるカラード・グレイを選ぶことでバラバラな街並みに連続性を与えている。
緑地協定により道路沿いに2段の植栽が設けられている。
2022 04 069
特集論考
老いることに向き合う都市・住宅
藤村龍至(建築家)
図1:高齢男性の自立度の変化(秋山弘子論文より引用) 図2:椿峰の自然発生的なリタイアメントコミュニティのイメージ
070 2022 04
*提供:RFA
特記なき撮影:新建築社写真部
左から:
「鶴ヶ島太陽光発電所環境教育施設」(2014年)、「鶴ヶ島中央交流センター」
(2018年)、「小高パイオニアヴィレッジ」 、「鳩山町コミュニティマルシェ」(2017年∼)*。
(2018年)
2022 04 071
072 2022 04
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
となりはランデヴー
Next to Rendezvous
富山県氷見市
湯浅良介
Ryosuke Yuasa
南東から見る。過疎化の進む地方の町の角地に建つ、築約50年の木造
2階建ての改修。これまで改修などされず、ここ5年ほどは使用もされず
に空き家の状態だった。開口部は既存のガラス建具を生かし、内側にラ
ワン合板をくり抜いてポリカーボネートを嵌めた断熱建具を設置している。
2022 04 073
書斎。デスクは柱を支持材として下地の角材を抱き合わせはね出している。
天板の厚みの中にコンセント用配線を仕込み表裏共にラワン合板で塞ぎ、
小口は曲げベニヤを張り全面塗装塗りつぶし仕上げ。柱はささくれなどが気
になった建主自らビニールテープを巻いたものを仕上げとした。
074 2022 04
寝室。ダイニングとはカーテンで仕切る一室空間で、戸棚は両開き扉で取手は角材の加工。
取手という印象よりも大きなサイズ感を有した形状を用いている。吊り元の角材に合わせて
フックが配置され、取手の角材、吊り元の角材・フックが同ピッチで立面に展開する。
2022 04 075
空っぽの秘密
建主夫妻は氷見の海沿いに4階建てのビルを購
入し、
その3階に住みながら宿やギャラリー、
カフェ
として改修し生活を営んでいた。その隣の一軒家
も空き家だったため、何かに使えるかもしれない
としばらくして入手した。しかし何年も空き家だっ
たことで内部は痛み、冬は寒く夏は暑く、そのま
まではとても利用できるものではなかった。
とりあえず不要なものは取り払って断熱材でパッ
キングしてほしい、というのが最初の依頼で2020
年のことだった。この場所が何になるかも決まっ
ていないため、仕上げも後から考えることになり、
とりあえず不燃のボードで断熱材を押さえ、仕上
げはパテ処理でとめておいた。
冬の冷気の大きな原因は昔ながらのシングルガラ 外部から廊下越しにダイニングテーブル横の両開き小窓を見る。 スケッチ。
ス窓だった。それでも、断熱窓への改修は予算
的に難しく、かつ少し古びたこの家の佇まいに愛 らいだった。秘密は街の奥行きとなり、この場所 遮音壁と外気温の影響を軽減する断熱層のよう
着も湧いてきていたため、外観は窓も含めてその を人の意識の向く場所とすること、それによりまだ な役割を果たすことを目論んだ。(結果、それらはう
ままの状態にすることとなり、既存窓の内側に断 何でもないこの家にある種のベールを被すことを まく機能しているらしい)2階は数人がデスクワークに
* *
日常の戸棚の様子。 ダイニングテーブル回り。左手にキッチンがある。
076 2022 04
落書き
各所の特徴的な形状はスケッチをほぼそのまま立ち上げている。スケッチは
設計者からすると意識と身体の距離がもっとも近い、直接的な表現と言え
る。今回、秘密をつくろう、となった時、それを表すものはより内在的な、
個人的な、思惟的なものがふさわしいと思った。すでにあったその窓に、
落書きするように描いた。誰かの家に訪れて見つけたその家の子供が書い 書斎。壁面は断熱を施し、不燃ボードで押さえパテ処理したままの
た壁の落書きに、その家の生あたたかい秘密を垣間見るように。 (湯浅) 状態。開口部には多様なかたちをした断熱建具が設置される。
ダイニングテーブル。食器棚の両開き小窓の窓台が延長されてテー
ブルとなっている。先端は半円形状で、円心に円柱と円盤状の土台
が付いている。食器棚のつまみとフックは同じ形状のものを使用し、
窓台上部のフックはカーテン掛けとして使用されている。
2022 04 077
11,375 5,460
2,275 3,640 2,730 2,730 1,820 3,640
照明 本棚
照明
断熱建具
断熱建具 断熱建具 書斎 断熱建具 書斎
デスク デスク
カーテン カーテン
カーテン 衣類収納
カーテン カーテン
洗面所 ダイニング 寝室
衣類収納
廊下 寝室
食器棚 断熱建具
テーブル 化粧机
シャワー室
トイレ
台所
1FL±0
フローリング
断熱建具 床の間 洋室
断熱建具
洗濯機 トイレ 押入れ 2FL±0
和室
カーペット敷き
1FL±0
2,275
畳敷き
浴室 洗面所 廊下
押入れ 1FL±0
1FL±0 廊下
塩化ビニルシートタイル 断熱建具 フローリング 押入れ 2FL±0
片開戸 フローリング
棚
和室
押入れ 1FL±0 和室 洋室
食器棚 片開戸
畳敷き 2FL±0 2FL±0
断熱建具 畳敷き カーペット敷き
キッチン
玄関
カーテン 両開小窓 和室 1FL-400
テーブル 1FL±0 既存土間仕上げ
3,630
畳敷き
食器棚 本棚
書斎
2FL±0
断熱建具 タイルカーペット
ダイニング 改修前1階平面図 改修前2階平面図
1FL±0 断熱建具
床: 片開戸
縮尺1:200
塩化ビニルシートタイル カーテン
11,375
廊下
1FL±0
OSB合板 デスク
2,765
断熱建具
衣類収納
カーテン
衣類収納
断熱建具
寝室 玄関
2,705
1FL±0 1FL-400
塩化ビニルシートタイル 既存土間仕上げ
化粧机
カーテン
断熱建具
3,640 1,820
5,460
N
配置図 縮尺1:2,000
078 2022 04
となりはランデヴー 建築面積 64.0m2 壁・天井/ PB t=9.5mm EP 寝室
2
所在地/富山県氷見市 延床面積 101.7m 厨房機器/ステンレス作業台 床/塩化ビニルシートタイル(TOLI マチコV)
主要用途/専用住宅 (容積率158% 許容200%) ガスコンロ/置き型(建主支給) 壁・天井/ PB t=9.5mm EP
家族構成/大人2人+子供1人 1階 62.0m2 2階 39.7m2 換気扇(シェード)/建主支給品 家具/クローゼット(制作)
工程 家具/制作食器棚 書斎
設計 設計期間 2020年4月∼2021年11月 浴室 床/タイルカーペット(サンゲツ NT-350)
Office Yuasa 担当/湯浅良介 工事期間 2020年5∼2021年12月 床・壁・天井・照明/ユニットバス 壁・天井/ PB t=9.5mm パテ処理まま
施工 敷地条件 バスタブ・シャワー水栓金物/ユニットバス 家具/制作テーブル
GO 担当/江嵜倫史 地域地区 第1種住居地域 準防火地域 空調機器/浴室乾燥機 照明/制作シェード
設備 カネ設備 担当/金哲治 道路幅員 7.5m 南面接道 トイレ 設備システム
電気 橘電気 担当/橘昌彦 外部仕上げ 床/ OSB合板 空調 冷暖房方式/壁掛けエアコン
構造・構法 屋根/瓦(既存) 壁/ PB t=9.5mm EP 換気方式/自然換気
主体構造・構法 木造軸組工法 外壁/サイディング(既存) 天井/ PB t=9.5mm パテ処理まま その他/床暖房なし
基礎 布基礎 開口部/アルミサッシ(既存) 照明・便器・洗面カウンター/既存利用 給排水 給水方式/直圧直結給水方式
規模 外構/モルタル(既存) 空調機器/エアコン建主支給 排水方式/分流方式
階数 地上2階 内部仕上げ 洗面所 給湯 給湯方式/外部置き型ガス給湯器
軒高 6,500mm 最高高さ 7,800mm ダイニング キッチン 床/塩化ビニルシートタイル(TOLI マチコV) 特記なき撮影/白井晴幸
2 *
敷地面積 70.0m 床/塩化ビニルシートタイル(TOLI マチコV) 壁・天井/ PB t=9.5mm EP 撮影/成定由香沙
北から見る夜景。
2022 04 079
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
ハウス/ミルグラフ
House / millegraph
東京都練馬区
西澤徹夫建築事務所
Tezzo Nishizawa Architects
築約40年の木造住宅の改修。駐車場奥の壁を取り払い、その背後の室内階段
を架け替えて拡張した部分を出版社のオフィスとした。駐車場は在庫の積み出し
や近所の人びととの交流の場となり、生活と仕事が混ざり合う。
080 2022 04
増築したオフィスと鉄骨階段。2階スラブを支えていた梁を
撤去し、鉄骨階段の手摺りとささらで支持している。
2022 04 081
手摺り:
□30×30+OP(指定色)
1,654
850
782 782
2階スラブ支持材:
■30×30+OP ▽2FL
(指定色塗装)
30 1,918
206mm(40×143)mm
ささら①
手摺り支持金物
0
12
3
壁側手摺り:
152.
ツガ30×30mm
段板 +オイルフィニッシュ
ささら③ St PL-9+指定色塗装
8段目支持材:
St FB 9×16mm 指定色塗装
ささら受け:
ささら② t=9mm コーチボルト2-2/M
ささら:
St PL-12mm
オフィス +指定色塗装 ライブラリー
850
300
5
13
206mm(40×143)mm
デスク: 棚:
シナランバー t=24mm シナランバー t=24mm
+オイルフィニッシュ +オイルフィニッシュ ツガ材 t=12mm
75 階段塗装色にて塗装
断熱塗料ヒートカット+EP(白) 12
130
見切り: 440
ツガ15×15mm B-PL:
100×100mm t=12mm
510
▽書斎GL
184.46
▽(既存設計GL)
▽車庫GL
F-01:
パンチカーペット 換気口ふさぎ:
ラーチ合板 t=12mm ラワン合板 t=9mm
ラーチ合板 t=12mm
根太45×45mm
スタイロフォーム t=40mm
モルタル
新築部
既存
階段回り矩計図 縮尺1:40
新しいオフィスの開口部は上階や暗かった廊下へ光を届ける。
計画と切実さの間で
1980年代に建設されたハウスメーカーの枠組壁
工法による住宅の改修では、予算によっては大き
く構造から見直すことは叶わないのだが、しかし
次の世代の家族が引き継いで住むとなった時、
実のところそれほど間取りに変更が必要なわけで
はないのかもしれない。このプロジェクトで行った
ことは、駐車場の一部と階段下のスペースを利用
した4m2に満たないオフィスの増築、浴室・洗面
の断熱化や設備の更新、リビングの掃出し窓の
複層化と廊下への採光のための建具取替え、キッ
チンの改修、本棚の整理、駐車スペース周りの
塀や雨除け屋根の撤去、といったささやかな、そ
れでいてとても切実な、設えの変更だ。生活的に
も身体的にも十分に馴染んだ住空間をより快適に
082 2022 04
オフィス。座って窓からの自然光で色校正ができる配置とし、色温度が調光できる照明器具も窓上に設置。
*
アイキャッチとなる階段のイエローと植え込みとのバランスを見て、床カーペットはくすんだグリーンとした。
アップデートするためのチューンナップと言ってい き伸ばししつつも、否応なく即興的な「現場」感
い。それを2期に分けて行った。建築は、建主、 がドライブしていく時には、目の前の生活にまつわ
敷地、予算、材料、機能、構造・設備、光・熱・ るモノの配置や規模の決定に計画理論は役に立
風、街、時代、といった諸要素の関数であるから、 たない。ある決定の妥当性は、
常に現在からちょっ
その検討リストは多岐におよび、優先順位は都度 と先の未来にかけての生活のイメージが決めるこ
変わっていく。それに追いついていこうとすれば自 とになるからだ。したがってこのプロジェクトを駆
ずと即興的瞬間的で絶え間ない判断の繰り返し 動するのは、家事と仕事を両立させる働き方や、
が必要となる。一方で、どういうわけかやはり計 まだ小さな子供のための新しい環境、限られた開
画とは予め綿密に組み立てられたエレガントな解 口部から最大限の光を採る方法、といったいくつ
法であるべきで、建築ができ上がる前に素晴らし かの切実なテーマであった。それが切実であるほ
いイメージを共有できるものでなければならない、 ど共有できるイメージは強固になっていき、計画
というある種の美学のようなものは依然としてある。 がもつイメージの共有可能性との境界は曖昧に
このような強迫観念との間で、計画の計画「性」 なっていく。そうして40年近く経った規格化住宅
は揺れ動いていく。計画が先行し現場が遅れて に、断片的だが網羅的な要素の関数が固有なイ
やってくる、その時間差がゼロにならないように引 メージとなって重ねられていく。 (西澤徹夫)
オフィス周りの夕景。鉄骨階段が浮かび上がる。
2022 04 083
ライブラリー。押入と本棚で圧迫されていた廊下は、クロークを撤去して収納を
新設のキャビネットで確保し、本棚をその上に置いて再利用した。
084 2022 04
2022 04 085
扉大手:
吊り戸棚 アイカ小口テープKWS6112S レンジフード前板:
扉表: ポリエステル化粧材IC-709
ポリエステル化粧材IC-709 底面:
内部: メラミン化粧材ICM-101NE レンジフード:
支輪 白ポリ仕上げ 底板小口: TLR-3S-AP601(リンナイ)
既存廻り縁 ポリエステル化粧材IC-531(黄色)
ダボ+可動棚×1
35
18 35
35
支輪:タモ小口テープ
237.8
35
吊り戸棚
18
3 463 3 166.5 3 605 3 166.5 3 291 3 291 15
540
237.8
710
2,016
食器(日常皿③) 換気口
(普段使わない鍋)
18
お茶
お菓子
乾物
砂糖
塩パン など
237.8
1,570
棚A 494
棚A
18
背面: 手元照明:
シナ合板+オイルフィニッシュ ERX9637S(L500、非調光) 棚B
(ライトグレー) 手元照明用トグルスイッチ 見切り:タモ小口テープ
家具用コンセント1口
210.5
302
棚板:
ポリエステル化粧材IC-103
アース端子付
トースター 1口家具用コンセント
18
(移設)
壁: ポリエステル
18
クロス貼り
(LW-2247) 化粧材IC-103 キッチンツールハンガー:
210.5
473
枠: ポリエステル化粧材IC-103
タモ集成材+ウレタンクリア塗装 オーブンレンジ
棚板小口:
背板 メラミン化粧材ICM-101NE
300
見切り: コンセント
タモ挽板+オイルクリア コンロ:RD641STS(リンナイ) アース端子、200V
壁面(棚C側板延長)
:
120
シナ合板+オイルフィニッシュ 5 295 (新設)
(ライトグレー) 70
35 18
18
35
無印カトラリーケース 幅85×5=425mm
棚C
110
クリアランス3.5mm オープン収納
天板小口: 棚板:
タモ挽板+オイルクリア ポリエステル化粧材IC-103
240
棚小口:
メラミン化粧材ICM-101NE
366
110
ポリエステル化粧材IC-103
棚C ボウル、鍋(OPEN) 960 560
30
木目
棚板: ボウル、鍋(OPEN)
タモ集成材+オイルクリア オープンの棚内:
ポリエステル化粧材IC-103
189.8
845
給気 φ=100mm
18
209.5
タオル
奥板: 布巾
シナ合板+オイルフィニッシュ ボウル、鍋(OPEN) 缶詰
(ライトグレー) ボウル、鍋(OPEN) 棚板: 洗剤ストック
366
ポリエステル化粧材IC-103 ビニール袋 など
189.7
棚小口:
メラミン化粧材ICM-101NE
台輪:
18
18
既存巾木 シナ合板+オイルフィニッシュ
(ライトグレー)
60
キッチンカウンター展開図 縮尺1:15
リビング。サッシはカバー工法で断熱性を上げ、室内はクロスを張り替えた。 採光と寝ている子供へ目が行き届くようにするため、襖をガラス
框戸に置き替えている。
086 2022 04
キッチン。既存のレイアウトを踏襲しつつ、収納を効率化して吊戸棚を撤去し、光を呼び込む。タモの天板と一体と
なるカウンターはリビング側の小口を木にしてソファ後ろの背板にかけて連続させる。廻り縁も新旧を対比させつつ
*
同幅で仕上げている。手かけやタイル目地は黄色に、扉はグリーンにしてオフィスとの繋がりをもたせている。
ハウス/ミルグラフ 設計 施工 食洗器・ガスコンロ・レンジフード/リンナイ
所在地/ 東京都練馬区 西澤徹夫建築事務所 工藤工務店 担当/小田切仁 松本造 家具/制作
主要用途/住宅+出版社 担当/西澤徹夫 添田いづみ 家具 石川製作所 担当/石川徳摩 建築金物/
家族構成/夫婦+子供1人 構造 TECTONICA.INC オーディオ棚 studio archē 担当/甲斐貴大 シンク水栓金物/ GROHE
担当/鈴木芳典 鶴田翔 塗装 杉本塗装店 担当/岡部憲一 浴室
設備 ケンテック 担当/小曽根健一郎 床/タイル(水野製陶園)
電気 赤石電気 担当/佐藤裕三 壁/タイル(水野製陶園) ベイヒバ材(共栄
看板 中村仲製作所 担当/橋本吉史 木材)
構造・工法 天井/珪酸カルシウム板 t=6mm GEP
主体構造・構法 木造ツーバイフォー工法 照明/パナソニック
塀、自転車置場 基礎 布基礎 バスタブ/ CELA
の屋根などを撤去 オフィス
駐車場 納戸
浴室 規模 シャワー水栓金物/ TOTO
階段と外壁を撤去し 階数 地上3階(改修部分は1階と2階の一部) 洗面所
オフィスとして拡張 2
洗面 1階 96.97m (改修部分) 床/ベイヒバフローリング(共栄木材)
2
2階 11.58m (改修部分) 壁・天井/クロス貼替え
工程 家具/制作
玄関 ライブラリー クロークを撤去し本棚と 1期工事 照明/ ENDO(カウンター上) 既存(天井)
キャビネットを設置 トイレ
設計期間 2019年3∼8月 洗面カウンター/ LIXIL
工事期間 2019年9月∼2020年1月 洗面用水栓金物/ GROHE
木框戸・襖を
ガラス框戸に変更 2期工事 オフィス
設計期間 2020年3∼9月 床/パンチカーペット
リビング 工事期間 2020年10∼12月 壁/クロス(新規部分) クロス貼替え(既存)
和室 外部仕上げ 天井/クロス貼替え
上部の吊り戸を撤去
外壁/ウレタン塗装(新規・既存補修) 家具/制作
開口部/木製建具 アルミサッシ 木製サッシ 照明/ ENDO
既存 枠にカバー工法 階段/木・スチール
外構/デッキ(建主による施工) ライブラリー
撤去部
内部仕上げ 床/既存フローリング(補修部分:ラワン合板
デ キ
新築部 リビング 既存部分:木色塗装)
畑 既存
庭
床/既存フローリング(補修部分はラワン合板 壁・天井/クロス貼替え
既存木色塗装) 家具/制作(既存本棚以外)
壁・天井/クロス貼替え 照明/既存
N
照明/既存 特記なき撮影/新建築社写真部
*
厨房機器/ 撮影/富井雄太郎
1階配置平面図 縮尺 1:150
2022 04 087
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
モリスハウス
Morris House
東京都渋谷区
渡邊大志研究室
Taishi Watanabe Laboratory Architect
リビングダイニングから廊下を見る。築40年のヴィンテージマンションの1室の改修。
建主が集めたアンティーク家具や建具に合わせて、さまざまな市場と流通価格をも
つ部品をアッセンブルして空間を構築。既存の住戸の間取りはほぼ変えていない。
088 2022 04
2022 04 089
4種類の部品と全体アーツアンドクラフト
部品が出回る流通市場、特に値段における付加価値のあり方の違いによっ
てA∼Dの部品に分類した。さらに、この4種類の部品を既存マンションに
嵌め込む際に生じる工夫を「全体アーツアンドクラフト」と呼び、それぞれの 全体アーツアンドクラフト 設計行為=表現因子βによる表現因子αの強弱の調整
部品に内在する手仕事を「部分アーツアンドクラフト」と呼んでいる。全体
アーツアンドクラフトが生む表現因子βは、余暇部品がもつ意匠性(表現因 A∼Dの部品を既存マンションに嵌め込
子α)をいかに調整するかという点に作用する。 (渡邊) む際に生じる工夫
α β
=
設計者による表現因子β
29,700円
余暇市場(付加価値あり) Xover市場(付加価値自由)
Pilvi
ヴィンテージ アンティーク家具・扉 西陣織 不織布 和紙 Cuckoo Acropolis Riukuaita Mitosis Imago Halo 初花
マンション
〈市場自体の設計〉
流通相場 流通相場 約12,600円/m2 約3,500円/m2
本質的に空間と無関係な構造体
N
(鉄筋コンクリート ラーメン構造)
住戸のフレーム
浴室 洗面所 玄関 書斎 台所
トイレ
廊下
個室1
主寝室 リビングダイニング
防音室
個室2
余暇部品 Xover 部品
工業部品 湿式部品
部品配置図・天井伏せ図 縮尺1:150
B:工業部品 D:湿式部品
コーナーレリーフ
建築専門市場と流通価格(付加価値ゼロ)をもつ 約280,000円 基本的に規格化・工業化できない
規格化・工業化された建築部品
既存建築市場(付加価値ゼロ) 市場の不在(付加価値ゼロ)
※現場で初めてかたちづくられる左官などの湿式には部
品としての市場が存在しない
約1,000円/m2 工業部品との組み合わせや
規格化によって部品化
600
約12,900円/m2
クローゼット 防音扉
約1,300,000円 約1,100,000円 部分アーツアンドクラフト
600
部品に内在する手仕事
(時に付加価値あり)
090 2022 04
リビングダイニングからキッチン方向を見る。梁下1,970mmまで迫る梁を壁紙と
モールディング、木材で装飾。天井には木格子を敷き、漆喰と壁紙で仕上げた。
リビングダイニング。右手の壁の仕上げは和紙銀河。壁の装飾はモールディングと不織布でソファ職人が制作。
092 2022 04
A
玄関 書斎 台所
浴室 洗面所
トイレ
廊下
B B
防音室
個室2
A
平面図 縮尺1:150
リビングダイニング キッチン
AA'断面図 縮尺1:75
BB'断面図 縮尺1:75
2022 04 093
2階から正面に吹抜けを、左手に寝室2と洗面を見る。もともと印刷工場
兼住宅だった建物を、設計者の自邸兼事務所に改修。前の所有者によっ
て1度建物全体が住宅に改修されていたため、今回で2度目の改修となる。
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
茗荷谷の舎
House in Myougadani
東京都文京区
094 2022 04
2022 04 095
3階。右手にリビング、ダイニングを見る。建物の中でパブリックな場所は
レンガタイルで床を仕上げている。階段やトップライトは新たに開口を開けた。
096 2022 04
地階から吹抜けを見上げる。塔屋の屋根には開閉式のトッ
プライトを設けており、チムニー効果で自然換気を促す。
2022 04 097
階段から下にアトリエ2、上にアトリエ1を見る。階段はデジタルファブリケーションを用いて制作。 2階と3階の間の階段から見る。
地域と繋ぎ、時間とかたちを継承する
文京区小石川・白山エリアは、古くから製本・
印刷関連の町工場が建ち並ぶ地域で、この築
1,835
吹抜け 吹抜け
33年、地上3階地下1階の鉄筋コンクリート造
キッチン
の住宅も、新築当初は下半分は印刷工場、上
可動カウンター
半分は住宅として使われていた。そして、10年
トイレ
ダイニング
上部トップライト 前に2番目の所有者によって住宅として使われ
7,600
た後、われわれの自邸兼事務所として改修した。
4,890
アトリエ1
改修前は中から外を感じることができない暗く風
通り
通しの悪いつくりだった。通風や採光といった
リビング
環境的な面でも、地域との繋がりにおいても周
辺環境への開放性が必要だと感じた。また、最
875
初からすべてを設計するのではなく、解体が進
むにつれて現れてくる新築当初のかたちや素材
1,000
を読み解き、時には新たな意味を与えながら集
積するように設計と工事を並行して進めた。
1階平面図 3階平面図
4,800 印刷工場であった頃の地下への搬出入のための
マシンハッチとその上の階段室を解体し、地階
から塔屋までを風や光、事務所と住宅の気配を
繋ぐ吹抜けとした。階段は完全に撤去するつも
2,452
吹抜け
寝室2
りだったが、解体途中で鉄筋が思いのほか綺麗
に現れたため鉄筋を残し、植物を絡ませた「緑
洗面
の階段」とした。光の落ち方や緑が日々変化す
浴室
1,798
トイレ
る場所であると共に、過去の面影を残す場所と
7,600
7,600
脱衣
なった。マシンハッチのあったところにはデジタ
収納 通り
アトリエ2
ルファブリケーションを用いて金具を極力使わな
い階段を制作し、この建物の時間軸を繋いでい
3,348
寝室1 る。1階はシャッターで閉ざされていたが、設計
事務所がコミュニティに積極的に関われるよう
オープンな構えとした。近所の子供たちが事務
所の模型を興味深そうに覗き込むところからコ
1,000
1,000
ミュニケーションが生まれ始めている。
(間田真矢+間田央)
地階平面図 縮尺1:120 2階平面図
098 2022 04
寝室1から階段を見る。もともとあったコンクリートの塊をきっかけとし、その上に踏
板が木の鉄骨階段を、下にレンガタイルを鉄板で浮かせたベンチのような階段を設け
た。外壁、柱、梁に新しく仕上げを施した箇所は下地に断熱材を付加。
アトリエ1。もともと車庫だった1階は設計事務所として地域に開いている。
2022 04 099
茗荷谷の舎 家具 松本家具製作所 地域地区 準工業地域 準防火地域 第3種 家具/キッチンカウンター(SieMatic)
所在地/東京都文京区 担当/松本勝一 鈴木智貴 高度地区 可動作業台:ヒノキ合板 OS 天板:モールテックス
主要用途/住宅兼事務所 構造・構法 道路幅員 南4.0m 照明/オーデリック OS 256 589BC
家族構成/夫婦+子供1人 主体構造・構法 鉄筋コンクリート造 外部仕上げ 浴室
基礎 べた基礎 屋根/シート防水 床・壁・天井/ FRP防水
設計 規模 外壁/タイル 45mm 95mm(既存利用) 照明/コイズミ AD1103W27
MAMM DESIGN 担当/間田真矢 間田央 階数 地下1階 地上3階 撥水性塗材(Sto) バスタブ/デュラビット 700333
構造 多田脩二構造設計事務所 軒高 11,300mm 最高高さ 11,600mm 開口部/木製サッシ(アルス) アルミサッシ トイレ
2
担当/多田脩二 廣幡啓祐 敷地面積 60.84m (LIXIL) 床/カバザクラフローリング(マルホン)
2
照明 灯デザイン/早川亜紀 建築面積 36.48m 外構/レンガタイル(スカラ) 壁/ヒノキ合板 OS
造園 季織苑 担当/時松克史 (建蔽率59.96% 許容60%) 内部仕上げ 天井/ FRP板
施工 延床面積 143.15m2 キッチン 照明/モーガルソケットE26+ボールランプ
分離発注 (容積率235.29% 許容240%) 床/カバザクラフローリング(マルホン) φ=70mm
建築 建築集団海賊 担当/高柳鉄平 地階 42.24m2 1階 32.47m2 壁/モザイクタイル(名古屋モザイク) EP 便器/ GROHE 39381SH1
設備 今井設備工業 担当/木村文昭 2階 33.36m2 3階 32.62m2 天井/コンクリート直天 洗面
2
電気 福電 担当/福島忠行 塔屋 2.46m 厨房機器/ 床/レンガタイル(スカラ)特注品
左官 八幡工業 担当/八幡俊昭 八幡吉彦 工程 食洗器/リンナイ RSW-F402C 壁/ EP
金属 制作美術研究所 設計期間 2019年8月∼ 2020年3月 ガスコンロ/リンナイ 天井/コンクリート直天
担当/山本鍾互 根本由和 工事期間 2019年8月∼ 2020年5月 RHS31W31E14RCSTW 照明/モーガルソケットE26+ボールランプ
造園 季織苑 担当/時松克史 敷地条件 換気扇(シェード)/富士工業 ASRL-3A-6010L φ=70mm
355
45 60 25 225
470
2,500
テラス 下面欠込み
▽RL
踏面パーツ 縮尺1:15
10
リビング
2,900
134.6
キッチン
78.8
451.5
138.2
▽3FL
60 30
45 60 25
13,800
130
2,900
寝室1 洗面 寝室2
蹴込みパーツ 縮尺1:15
▽2FL
2,900
アトリエ1
玄関
▽1FL
▽GL アトリエに新設した階段の取付け図
アトリエの中に回遊性を生み出したいと考え、
吹抜けに新たに階段を設置した。
既に建設業界の課題となっている労務者不足
への対応も視野に入れ、3Dモデルデータを元
2,600
に加工された部材を自分たちで組み立られる手
収納スペース 法を検討していった。斜材、踏面、蹴込みの3
アトリエ2 種類の部材を互いに相欠きによって組み合わせ、
トラスを形成する。組み立て方は、斜材と蹴込
▽BFL みを井桁状に組み合わせた後に踏面部材を横
から差し込み固定し、ビスを各段に1カ所ずつ
1,000 7,600
留めている。組み立て時間はふたりで1時間強
で、難しい作業もほとんどなく制作できた。
(間田真矢)
断面詳細図 縮尺1:75
100 2022 04
アトリエ1越しにエントランスを見る。 南東側全景。外装は改修時に外壁を剥がすと竣工当時の外壁が現れたため、それを活かしている。
もともとシャッターで閉じられていた1階部分を開放し、地域に開いた構えとした。
床/モルタル金ごて仕上げ
壁・天井/ EP
▽RF
照明/オーデリック OS256 575BC
設備システム
空調 冷暖房方式/エアコン
2,900
寝室 換気方式/ 24時間換気
給排水 給水方式/上水道直結
▽3FL
排水方式/合流方式
給湯 給湯方式/ガス給湯器
撮影/新建築社写真部
2,900
13,800
▽2FL
2,900
トイレ 車庫
▽1FL
2,600
納戸
N
▽B1FL
土蔵と補う増築
Earthen Storehouse and
Complementary Extension
岐阜県高山市
澤秀俊設計環境
SAWADEE
築150年の土蔵を住居に改修。これまで増築が繰り返され、土蔵
の周囲に取り付いていた木造家屋や下屋などを解体し、土蔵内部
へ住居機能を挿入した。木造密集地にある敷地で唯一日当たりの
よい位置に、5層のスキップフロアからなる木造2階建てを増築し、
土蔵と接続。土蔵の屋根は既存の損傷が深かったため新設した。
102 2022 04
2022 04 103
サンルーム。増築部南面に大きな開口を設け、日差しや風を
受け止めることで建物全体の環境を調整する。天井付近に集
まった暖気は、壁面上部の吸込口より土蔵へ送られる。
土蔵東面の近景。サンルームで温められた空気は土蔵
の床下に流れ、冬場は床下暖房として機能する。観
音扉は既存を活用し、新たに漆喰で仕上げている。
104 2022 04
増築部南面の夕景。構造躯体には尺貫の寸法体系を用
いることで、材料の無駄を抑えると共に、土蔵のような
伝統建築に精通した宮大工が扱いやすいものとした。
2022 04 105
土蔵の長所を活かし、足りないものを補完する
「築150年の土蔵を壊し家を建てることになった
夏期 冬期
が、立派な梁があるからもらってくれないか。
」と
サンルームに
集まった熱
いう相談を受けた。この土蔵は飛騨高山の伝統
直射日光が
煙突効果を促す
保存地域である古い町並みの南端部、市街地を 送風ダクト
晴天日の太陽を
流れる宮川沿いの小道に面し、景観の美しさから サンルームの
窓を開放
取り込む
写真を撮る人びとを多く見かける場所にある。こ
の伝統的風景を保存・更新し、歴史を繋ぐことは、
この地で建築に関わる者として当然の使命に思え 宮川からの
涼しい風 土蔵1階床下へ
蓄熱性能の高い ファンで送り吹き出す
た。そこで解体を止めるよう説得し、長年物置と 土蔵内部に保温
なっていたこの土蔵を住宅として転用した。
敷地とその周辺は、歴史的価値が高いものの高
環境ダイアグラム
密度に町家が密集しているため、日当たりや風
通しが悪い傾向にある。また、一尺の厚みの土 夏期は、最上階の建具を開放することで重力換 たと解体されてしまう土蔵や古民家は全国無数
壁で構成された蔵は、高い防音性能をもつもの 気を促し、宮川からの冷涼な風を土蔵に穿った に存在する。実際、難易度が高く手間の掛かる
の、住空間とするには暗く、光や風が不足して 窓から取り入れる。反対に冬期は、サンルーム この土蔵の施工は1年という歳月を要したが、
いた。そこで、蔵に隣接して存在した朽ちかけ に集まる暖気を天井部から吸い込み、土蔵の1 経験に富んだ大工技術と建主家族の辛抱強さ
た小さな土蔵(昔は味噌や漬物の貯蔵庫だったという)を 階床下へ送風する。床下エアコンによる暖房も に支えられ、無事完成を迎えることができた。
解体することで手に入れた3.5坪程の小さな土 適宜併用し、蓄熱性能の高い土蔵内部で保温 不足するものを補い、現代の暮らしへとアップ
地に、太陽を捕まえるように背の高い増築をす することで、飛騨のような寒冷地でも快適な住 デートすることで、伝統建築が紡いできた尊い
ることで、光と熱を取り込み土蔵内の空気を動 環境を生み出すことが可能となった。 時間をひとつでも多く次世代へ繋ぐことができれ
かすことを試みた。 この計画の発端時と同様、時代にそぐわなくなっ ばと切に願う。 (澤秀俊)
▽増築棟軒高さ
(GL+8,187.5)
2,272.5
サンルーム ▽土蔵棟高さ
(GL+6,516)
▽増築棟RFL(GL+5,944)
1,363.5
▽土蔵軒高さ
(GL+5,193)
3,339
▽増築棟2.5FL(GL+4,580.5)
8,725
1,977
1,363.5
▽土蔵2FL(GL+3,216)
6,516
▽増築棟2FL(GL+3,227)
トイレ 洗面2
1,363.5
▽増築棟1.5FL(GL+1,863.5)
3,094
1,363.5
収納スペース
▽増築棟1FL(GL+500) ▽土蔵1FL(GL+495)
378
▽GL+83(既存犬走り高さ)
83
▽既存犬走り高さ
(GL+83)
△平均地盤面の高さ
(設計GL)
△平均地盤面の高さ
(設計GL)
増築部分
大きな特徴は、階段を介したスキップフロア(計5層)である。これにより構造的に建物がふた
つに分断されている(地震時などに力の伝達、やり取りができない)。これに対応するためには、
ゾーニングして検討するか、一体として検討するかになるが、階段・吹抜け周りは開放空間で
あり、ゾーニングの検討は難しいため、床の連続性を確保することにより、一体として検討した。
もうひとつの大きな特徴は、できる限り木造であること、木造躯体を美しく現したい、そして
地元産材を使いたいという要望からの現しの筋かいである。筋かいを現しで使うためのポイン
トは、いかに接合部(接合金物)をきれいに見せるかであり、綿密な打合せと意匠設計者の
発案により対応した。 (河本和義/ TE-DOK)
106 2022 04
土蔵1階ダイニング。大黒柱や梁は残し、壁は耐震補強のため構造用合板のうえ漆喰塗り仕上げ。 天井高1,800 ∼ 2,700mmの土蔵リビング1、2。西側は
右の開口部は既存の簀戸(すど)を補修、目の細かい網へと張り替えることで網戸として再利用している。 畳座とし、その下の床下収納は1階から上る暖気の通気口
となっている。
改修部分
蔵(倉庫用途)→居住スペース(住居用途)に変更のため、構造的な安全性をしっかりと担保する必要があった。よって、改修ではあるが、
耐震補強のみの範疇ではなく、現行の基準法レベルに近づける構造計画とした。また、通常4号建物は、壁量計算を行えば安全性が確
認できるが、より精緻に安全性を確認するため、許容応力度計算を行った。壁量計算と許容応力度計算の大きな違いは、建物重量に
あるといえる。壁量計算はある一定範囲であれば特に気にする必要はないと考えるが、蔵の場合、屋根は土葺きで非常に重たい。かつ、
壁も一般的な古民家の土壁と比べ、壁厚さは倍程度あり、その分建物重量(連動して地震力)がある。これらを考慮するには、許容応
力度計算が適していると判断した。 (河本和義/ TE-DOK)
集めた暖気を土蔵の床下へ送る
▽増築棟最高高さ
(GL+8,725)
▽増築棟軒高さ
(GL+8,187.5)
送風ダクト
サンルーム
3,636
▽増築棟2.5FL(GL+4,580.5)
2,112
リビング2 リビング1
母屋2階
床下収納 洗面スペース
2,727
▽ 道路境界線
▽増築棟1.5FL(GL+1,863.5)
2,682
脱衣室 ダイニング 玄関
母屋1階
1,363.5
収納スペース
▽増築棟1FL(GL+500)
378
▽既存犬走り高さ
(GL+83)
床下AC併用 暖気吹出し口
909 909 909 909 909 909 909 909 909 909 909 909
6,363 4,545
東西断面図 縮尺1:100
3点提供:澤秀俊設計環境 / SAWADEE
左:改修前の土蔵見下げ。増築が繰り返され、土蔵の周囲には老朽化した木造家屋や下屋が取 改修前の西側外観。土蔵に木架構が取り付き、
り付いていた。 右:解体中の様子。隣接していた小さな土蔵を解体し、その跡地に増築した。 内部は倉庫で、その下は車庫となっていた。
2022 04 107
床フローリング:ヒメコマツ自伐材 t=15mm]
(産地:高山市赤保木町)
PS
▽2.5FL
+1,363.5 ▽増築棟2.5FL
=GL+4,580.5
サンルーム
外壁:アカマツ自伐材 t=15mm
(産地:高山市国府町)
階段:アカマツ自伐材 t=36mm
(産地:高山市赤保木町)
踏み板:モミ自伐材 t=200mm
(産地:高山市赤保木町)
3階平面図
階段:モミ自伐材 t=200mm
(産地:高山市赤保木町)
床フローリング:ヒメコマツ自伐材 t=15mm 階段:アカマツ自伐材 t=36mm
(産地:高山市国府町) (産地:高山市赤保木町)
床フローリング:ヒメコマツ自伐材 t=15mm
(産地:高山市赤保木町)
洗面台:モミ自伐材 t=200mm
(産地:高山市赤保木町)
PS
洗面スペース2
床下収納 ▽増築棟1.5FL=GL+1,863.5
▽増築棟2FL
=GL+3,227
トイレ
増築部の2、中3階を繋ぐ階段。各層の高さを4.5尺モデュールとすることで、
階段などとの寸法を揃え、現しとした構造体が端整に見えるようにした。階
段室中央の手摺りは30mm角のマツ材を組み上げ、熱や風の通りを阻害し
リビング2 リビング1 ないよう意図している。
▽ 2FL+250 ▽土蔵2FL=GL+3,216
外壁:アカマツ自伐材 t=15mm
(産地:高山市国府町)
階段:モミ自伐材 t=200mm
(産地:高山市赤保木町)
既存 土蔵 [小](解体)
階段:アカマツ自伐材 t=36mm 車庫上部
(産地:高山市赤保木町) (解体)
蔵
既存下屋(解体)
廊下
既存木造2階建(解体)
床フローリング:ナラ自伐材 t=15mm
(産地:高山市 上岡本町)
既存住宅(保存) 既存住宅(保存)
2階平面図
改修前2階平面図 縮尺1:300
床フローリング:ヒメコマツ自伐材 t=15mm
(産地:高山市国府町)
階段:モミ自伐材 t=200mm
洗面カウンター:アカマツ自伐材 t=36mm (産地:高山市赤保木町)
(産地:高山市赤保木町)
6,363
階段:アカマツ自伐材 t=36mm
300 909 909 909 909 909 909 909 255 (産地:高山市赤保木町)
式台:モミ自伐材 t=200mm
(産地:高山市赤保木町)
PS 909
下部
脱衣室 収納 AC 収納
606
909
洗面 収納スペース
909
2,272.5
454.5
ダイニング
外壁:アカマツ自伐材 t=15mm
▽GL-394
909
(産地:高山市国府町)
パントリー
▽GL+83
909
▽GL+83
(既存犬走り 高さ) 縁側
910
1,820 母屋
土蔵鎧壁:アカマツ自伐材 t=15mm ベンチ:モミ自伐材 t=200mm 1,961.6
(産地:高山市国府町) (産地:高山市赤保木町) 1,820 上:洗面スペースの洗面台。 下:土蔵1階ダ
イニングのモミのベンチ。間伐材の多くは木質
▽GL-394 燃料として利用するが、中には立派なものも採
駐車スペース
れる。それらを用いて、設計者自ら建材をつく
り活用している。今回は事務所から徒歩1分の
赤線:増改築部
山林で採れた樹齢140年のアカマツと樹齢100
年のモミを、階段・ベンチ・洗面台などに使用
隣家の外壁:アカマツ自伐材 t=15mm した。比較的柔らかい樹種であるため、あまり
910
N
(産地:高山市赤保木町)
門扉:アカマツ自伐材 t=15mm 1,820 建築には使用されていないモミだが、厚めに挽
1階配置平面図 縮尺1:120 (産地:高山市国府町) 1,820
1,820 いて使用することで、十分に価値があることを
108 2022 04
示した。 (澤)
南側鳥瞰。町屋の屋根が連なる中、突き出た増築部が光や風をとらえる。
施工 床/磁器質タイル t=9mm(sanwa)
いもと建築 担当/井本俊介 壁/構造用合板 t=24mm 漆喰塗り
設備 アクアテック 担当/濱口嵩欽 天井/構造用合板 t=24mm 現しOS
電気 中央電気 担当/桑田健幸 厨房機器/システムキッチン(タカラスタンダード) 配置図 縮尺1:2,000
構造・構法 浴室
東側外観。
主体構造・構法 土蔵造+木造在来工法 ユニットバス(TOTO) 壁/構造用合板 t=24mm 漆喰塗り
基礎 べた基礎 トイレ・洗面スペース 天井/構造用合板 t=24mm+ラワン合板
規模 床/無垢フローリング t=15mmワックス仕上げ t=5mm OS
階数 地上2階 (ヒメコマツ自伐材) 照明/ LEDスポットライト(ENDO)
軒高 8,188mm 最高高さ 8,725mm 壁/ PB t=12.5mm 漆喰塗り サンルーム
2
敷地面積 327.06m 天井/構造用合板t=24mm 現しOS 床/無垢フローリング t=15mmワックス(ヒメ
建築面積 48.32m2(本住宅) 家具/洗面台(モミ自伐材) コマツ自伐材)
2
164.77m (既存母屋) 照明/ LEDスポットライト(ENDO) 壁/ PB t=12.5mm 漆喰塗り
(建蔽率65.16% 許容90%) 便器/ TOTO 天井/構造用合板t=24mm 現しOS
2
延床面積 98.83m (本住宅) 洗面カウンター・洗面用水栓金物/ sanwa 照明/ LEDスポットライト(ENDO)
2
267.57m (既存母屋) リビング1 設備システム
(容積率112.03% 許容300%) 床/無垢フローリング t=15mmワックス(ナラ 空調 暖房方式/床下エアコン
2 2
1階 47.99m(本住宅)162.32m(既存母屋) 自伐材) 暖気送風ファン
2 2
2階 47.57m(本住宅)105.25m(既存母屋) 壁/構造用合板 t=24mm 漆喰塗り 換気方式/第3種換気
工程 天井/構造用合板 t=24mm+ラワン合板 給排水 給水方式/上水道直結
設計期間 2020年2月∼2020年11月 t=5mm OS 排水方式/下水道直結
工事期間 2020年11月∼2021年11月 照明/ LEDスポットライト(ENDO) 給湯 給湯方式/ガス給湯器
敷地条件 リビング2 撮影/楠瀬友将
都市計画区域内(区域区分非設定) 近隣商 床/畳 t=42mm
2022 04 109
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
光のあみの家
House of the Net of Light
東京都
miCo.
110 2022 04
南から見る。築約50年の木造住宅の改修。1階の既存の庇を撤去し、新たに
大きく張り出すエキスパンドメタルの庇を設置。2階は空気層として機能させる
ため、雨戸と手摺りを撤去して、光と風が直接内部へ届くようにしている。
2022 04 111
主室から庭を見る。内部はスケルトンにして主室の両側に寝室(左)やキッチン
(右)を配置。2階床は一部を残して細かなグレーのドットをプリントした2mm厚
のアクリル板を張り、光を双方向に柔らかに透過させる。
112 2022 04
空気室となった2階。アクリル板による光の効果のほか、
窓の開閉により断熱層としても機能する。
2022 04 113
関係性が生む現象を扱う れらを踏まえ、南北に大きく抜ける空気の塊を メタルを加えることによって、上下に分断されて
築約50年の木造住宅の改修である。3世帯で つくりつつ、そこを主室とした。2階の洋室は人 いた立面が統合されたように感じられ、梅の木
住んでいた140m2 の住まいを、3人家族で住む のための空間ではなく、熱と光を調整する空気 も位置はそのままに、庇が媒介するようなかたち
ために改修が求められた。 の室に変えた。主室の庭側に庇を設けて、主室 で建物と一体的に感じられるようになった。1枚
以前から感じていたが、新しいものがあるから は3次元的に空気に囲まれた状態にした。空気 のアルミの面が加わることで、既存の外壁も立
古いものがより魅力的に見える関係性がある。 室の境界面である既存の2階床を撤去し、
グレー 派に見え、梅の木も特別に感じられ、庇自体も
それは対立でも統一でもない、差異を受け入れ のドットを印刷したアクリル板に置き換えた。ア 元からそこにあったかのように佇んでいる。
つつ個々が生き生きとし、全体として系を成す クリルの面は熱と空気の流れを調整する一方で、 付加したものが元からあるものと相互に引き立て
状態である。そこで今回の改修では、その状態 主室から見て高窓のように見える2階の開口から あう関係をつくる、という意識により、ひとつ手
を自覚的につくり出し、関係性が生む光や風の 入る光を、柔らかく拡散して主室に届ける。また、 を加えるとそれ以外のところに波及するという気
現象に着目をした。 南側の庭に設置したアルミエキスパンドメタルの づきを得た。建主の話では、近隣の住人の方に、
庇は、自然光を反射し空気室内を一層明るくし、 向かいの2階のリビングから見ると、きらきらし
空気の塊を配列してつくられる住宅 逆に1階に直接入る光を粒状に変えて抑える。 た庇が取り付いて美しくなったと喜ばれたという。
まず、既存の大きな気積を切り分け、互いに影 周囲の空気との関係性でつくられる主室では、 空気や素材の関係性の調整によって生じる現象
響し合う空気の塊をつくることにした。 多様な光の状態が生まれ、絶えず変化し、必 は、既存建物の潜在的にある構成や魅力が顕
既存建物は、3人で住むには少し広すぎると感 要で十分を超えた空気の豊かさがある。 在化したものと言え、最終的には街並みを形成
じたため、既存の気積をそのまま活かしながら していくと感じた。現象として相利共生な関係が
延床面積を減ずる方向で考えた。また、元の建 街並みへの波及 現れると、普段見慣れた風景も少し美しくなる
物は壁と床で細かく空気が区切られていたが、 外から見ると、エキスパンドメタルの庇は既存の のではないか、と思う。
(河合伸昴+今村水紀)
建具をすべて開けると風が緩やかに抜けた。こ ファサードも一変させた。アルミのエキスパンド
空気室
配置図 縮尺1:1,500
2階平面図
N
サンルーム 洋間
1,820
玄関 キッチン 和室
サンルーム 洋間
3,640
改修前2階平面図 主室
庭
玄関 納戸
ホール
洗面室
寝室
3,640
濡れ縁 書斎
和室 A
居間 中庭 浴室
脱衣所
和室 B
台所
浴室
6,370 2,730 1,820
114 2022 04
主室を北に見る。南北に細長く、光と風が抜ける。 主室から寝室方向を見る。光は刻一刻と表情を変える。
主室。本棚の向こう側にキッチンと和室、
左手扉の奥に2階へ続く階段と寝室がある。
2022 04 115
光のあみの家 内部仕上げ
所在地/東京都 キッチン
主要用途/専用住宅 床/フローリング(イクタ)
家族構成/夫婦+子供 壁/ラワン合板 G-EP 構造用合板
天井/構造用合板
設計 厨房機器/システムキッチン(TOTO ザクラッソ)
miCo. 担当/今村水紀 篠原勲 河合伸昴 食洗器/ miele
構造 yAt構造設計事務所 担当/森部康司 浴室
施工 ユニットバス/ TOTO サザナ
フジイ工務店 担当/藤井直樹 寝室 トイレ 洗面所
庇 仁瓶鉄工 担当/仁瓶稔 床/フローリング(イクタ)
駐車場屋根 戸崎鐵工所 担当/戸崎格 壁・天井/ラワン合板 G-EP塗装
構造・構法 主室
主体構造・構法 木造 床/フローリング(イクタ)
基礎 布基礎 壁/ラワン合板 G-EP塗装 構造用合板
規模 天井/アクリル板グレープリント 構造用合板
階数 地上2階 和室
軒高 6,195mm 最高高さ 7,555mm 床/畳
2
敷地面積 247.56m 壁・天井/ラワン合板 G-EP
2
建築面積 89.89m 空気室
(建蔽率36.31% 許容50%) 床・壁・天井/構造用合板
延床面積 105.41m2 設備システム
(容積率42.58% 許容100%) 空調 暖房方式/ルームエアコン、温水式
1階 86.12m2 2階 19.29m2 床暖房
工程 冷房方式/ルームエアコン
設計期間 2019年4月∼2021年9月 換気方式/第3種換気
工事期間 2019年10月∼2021年9月 その他/床暖房
敷地条件 給排水 給水方式/上水道直結方式
地域地区 第一種低層住居専用地域 排水方式/下水道分流方式
準防火地域 給湯 給湯方式/ガス給湯器
道路幅員 南6m 撮影/新建築社写真部
外部仕上げ
屋根/コロニアル(既存)
外壁/下見板張り(既存)
開口部/アルミサッシ(既存) アルミ樹脂複合
サッシ(新設)
庇/エキスパンドメタル(MARIANI)
南西から見る夕景。空気室が明るく浮かび上がる。
▽最高高さ=GL+7,335mm
コロニアル(既存)
アスファルトルーフィング(既存)
1,360
▽軒高=GL+6,195mm
292
▽2CL=GL+5,903mm
野縁(既存)
アルミサッシ(既存) 既存天井仕上げ
調整材
ラーチ構造用合板 t=9mm
空気室
FL=GL+3,443mm
2,460
アクリル t=2mm
スミ7%印刷
▽2FL=GL+3,443mm 断熱材
ラーチ構造用合板 t=9mm ラーチ構造用合板 t=9mm
断熱材 梁(既存)サンダーがけ
ラワン構造用合板 t=9mm 断熱材
エキスパンドメタル G-EP ラワン構造用合板 t=9mm 下見板張(既存)
G-EP 間柱30×105mm(既存)
垂木角棒32mm角
アングル
2,982
梁32×50mm
柱32mm角 主室
FL=GL+461mm フローリング t=12mm
CH=2,900mm 捨て張り合板 t=12mm
床暖房 t=12mm
パーティクルボード t=20mm
1,840
断熱材 t=45mm
支柱
土間コンクリート t=100mm
▽1FL=GL+461mm 防湿シート
461
▽GL=0mm 基礎(既存)
新規基礎
910 910 910 910 910 910 910 910 910 910 910 910
2,000 10,920
断面詳細図 縮尺1:75
116 2022 04
庭からエキスパンドメタルの庇越しに主室を見る。壁や床に光の
粒が映り込む。庇は同時に反射光を2階の居室へと届ける。
2022 04 117
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
東寺の住居
House in Toji
京都府京都市
タトアーキテクツ
Tato Architects / Yo Shimada
118 2022 04
東側全景。ハウスメーカーによる商品化住宅を改修した夫婦と犬1匹のための住宅。
東西を道路に挟まれており、東側は建築の延長のようなカーポートや花壇を設けている。
2022 04 119
リビングダイニングと吹抜け。持ち物や置き場を精査して2階の1室を吹抜けとした。1階の壁と天井はマーブルフィー
ルこて押え。吹抜けは銅板で仕上げている。最高天井高は5,155mm。2階に設けた開口は1,100 1,100mm。
120 2022 04
2階リビングから吹抜けを見る。銅板が自然光を反射し増幅させる。
2022 04 121
9,786 8,674
2,364 110 2,364 110 2,364 110 2,364 1,112 1,252 110 2,364 110 2,364 110 2,364
リノベーションの表現の幅を広げる
一軒家のリノベーションは、若い世代から慎まし
押入 床の間 床脇
浴室 収納 やかな予算で依頼されることが多く、構造を現
板の間 洋室1
しにした質素な表現が定番化しつつあるように
3,740
和室1 洋室2
洗面所
和室2
思える。しかしリノベーションが市民権を得た今、
トイレ
110
通路
多様な世代や嗜好に応える幅広いリノベーショ
ンのあり方を考えていく必要があるだろう。
ホール
この住宅は長年、地方都市の大きな住宅で暮ら
4,640
バルコニー 和室3
ダイニングキッチン
玄関
してきた夫婦が、都市部の実家近くに移り住む
N
押入れ 押入れ
必要から依頼された。今後足元が不自由になる
ことなどを考えて、暮らしの基本機能は1階に集
約すること、明るいことなどが望まれた。改修前
改修前1階平面図 縮尺1:200 改修前2階平面図
の軽量鉄骨造の商品化住宅は、構造的には健
全だったが、木造のように融通無礙に構造を変
8,674
2,064 183.5 1,252 110 2,364 110 2,364 110 2,364
更することも難しく、この既存住宅の枠組みの中
で以前の大きな住宅での暮らし方をいかに着地
させるかが課題だった。建主の暮らしにふさわ
しい優雅さと空間的な拡がりをどうやって感じさ
2,775
廊下 張りの空間は窓からの光を取り込み、絶えるこ
とのないぼんやりとした反射光が無限を感じさせ
8,490
テラス
る異質な装置として、暮らしの空間に浮かび、
825
トイレ 押入 隣接する。
外観は街路の雰囲気をつくり出す、街の内装と
もいえる。通り沿いに花壇を設けて、鉢植えを
2,849
寝室
置いたフラットルーフの住宅が多く建ち並ぶ風景
に倣いつつ、東西それぞれ性質の異なる街路に
即した半外部空間を増築した。東の車道側に
2階平面図
追加した屋根はL字型のヴォリュームの角から対
角線方向に勾配をとって軒先を極力低くし、隣
地側も含めて光を孕むようなポリカーボネート複
9,786
2,364 110 2,364 110 2,364 110 2,364 層板で覆って、やや単調にも思えた外観に動き
をつけた。狭隘な道に面した西側のベランダは
工事の終盤に急遽要望されたもので、どちらも
ステンレス製の簾と有孔波板を使い、洗濯物干
し場などが設けられた近隣のファサードラインに
揃えた。外部に増築したふたつの空間はそれぞ
3,740
キッチン
リビングダイニング
れの周辺環境に対してフィルターを掛けて光を
取り込みつつ、緩やかな境界をつくり出している。
(島田陽)
110
8,490
パントリー
提供:タトアーキテクツ
2,816
階段室
庭
サニタリー
物干し
玄関
1,824
浴室
122 2022 04
廊下から2階リビング2を見る。窓から取
り込んだ自然光が開口越しに吹抜けに届く。
玄関と階段。階段と一体化した箪笥は制作。
2022 04 123
キッチンからダイニングキッチンを見る。 サニタリーから物干しを見る。
H-100×100×6×8mm
▽最高高さ GL+6,200
△最高軒高 GL+6,060
廊下
吹抜け
壁:銅板 t=0.5mm
PB t=12.5mm
胴縁 16×40mm
気密シート 屋根:
押縁 St-FB 3.0×30mm
ツインカーボ t=10mmm
垂木 St-□ 30×60×3.2mm @455mm
壁:マーブルフィールこて押え ソープ仕上げ(プラネットジャパン)
KOBAU
PB t=12.5mm
胴縁 16×40mm
2,860
気密シート
リビングダイニング
壁:
庭 ツインカーボ t=10mm
間柱 St-□ 30×30×3.2mm @405mm
床:ナラフローリング 15×75mm
構造用合板 t=21mm
▽1FL GL+605
舗装:
透水レンガ t=60mm(水野製陶園)
クッション砂 t=30mm
クラッシャラン t=150mm
断面詳細図 縮尺1:60
▽GL±0
124 2022 04
西側全景。1階はステンレスパンチング波板、2階は簾状のステンレス金網を張り、緩やかな境界をつくった。
ダイアグラム
オレンジが改修部分。
配置図 縮尺1:2,000 ガラス天井のテラス。
2022 04 125
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
蓮華蔵町の長屋
A Nagaya in Rengezocho
京都府京都市
魚谷繁礼建築研究所
Shigenori Uoya
Architects and Associates
東側外観。路地の突き当たりに建つ4軒長屋をひとつの住宅に改修。瓦間はイベント
スペースや仕事場として開かれる。既存の部材を活かしながら設計と構造補強を行った。
126 2022 04
2022 04 127
板間と瓦間を見通す。長屋1軒の長手方向は約11m、短手方向は3m。新たに挿入された
コンクリートは既存の材と対比がつかないよう、他の現場で使用した型枠を転用している。
左手いちばん奥の柱は白川沿いにあった風車に使用されていた木材と考えられる。
面積の大きな木造の改修で耐震コアを用いる手法
既存建物は2階建ての4軒長屋だが、架構としては片側が入母屋の妻入型の大屋根が全体に架かる
1棟の建物であった。ここに鉄筋コンクリート造のコアを部分的に1層分立ち上げることで、建物全
体の耐震補強をした。コアに必要な耐震性を確保することは難しくないが、コアに至る水平力の経
路を慎重に確保する必要があった。耐力壁上部に水平力伝達用の木梁をコンクリート部材との接触
長が長くなるよう設け、コア上部も構造用合板を張り巡らすことで、応力集中を避けている。吹抜
け部はブレーシングで剛性を確保しつつ、軸力の発生する梁端部へのケアにも気を使った。軒が2
階床から1m程度上まで下りているため、ここまで手摺り壁を設けることで、2階の耐力要素を忍ば
せ上方の解放性を保っている。面積の大きな木造を改修する際、既存建物の特徴を読み補強箇所
を限定することは、意匠性の確保や経済面でも有用性があると考える。 (柳室純)
128 2022 04
2022 04 129
部材と共に長屋を継承する
4軒長屋を1軒の住宅に改修した。町家、特に
路地奥の長屋に使用されている柱梁の木材は、
倉庫 便所 倉庫
においては、既存の柱梁を残しつつ、腐朽して
1階既存平面図 縮尺1:300 2階既存平面図 いた一部の柱梁は新しい木材に取り換え、壁も
既存のものを補修して残し、新設した壁には新
たに土壁を塗るなどした。建具も、既存のもの
を再利用しつつ、一部、ほかの町家や長屋の
外壁b
改修現場から転用している。このように部材を残
外壁a'
冷蔵庫 +3,075
壁掛けテレビ
吹抜け したり取り換えながら、町家や長屋は継承され
厨房 寝室 外バルコニー
+2,775 +3,075 吹抜け
上部カーテンレール設置 ていく。更にここでは、既存の木の軸組みに新
和箪笥 和箪笥 たにコンクリートのヴォリュームを挿入している。
除湿乾燥機
収納3 壁掛TV
このヴォリュームがあるいはもともとここにあった
+2578
居間・食堂 内バルコニー 吹抜け
+2775 +2775 ように感じられるよう、その仕上げはほかの現場
天吊プロジェクタ取付け板
吹抜け で使用した型枠を転用した打放しとした。実際
廊下2
+2578 に、少なくない2階床が撤去されたこの建築の
吹抜け 吹抜け
構造耐力の大部分をこのヴォリュームが担うこと
447.5
となる。このコンクリートのヴォリュームがあり、
吹抜け
吹抜け 吹抜け そこに木の軸組みが架かることでこの建築の構
造要素は構成されているのである。また既存土
壁が残されていた箇所では、土壁を型枠として
コンクリートを打設し、型枠としての土壁をその
まま残している。この土壁が将来的に崩落した
2階平面図
際には、土壁の奥からコンクリートの仕上げが
現れてくる。そしてそのコンクリートには土壁のテ
12,000
3,000 3,000 3,000 3,000
クスチャーが転写されているであろう。
1,000 2,000 1,500 1,500 1,500 1,500 1,998 1,002
(魚谷繁礼)
130
831 355
手水鉢 箪笥 箪笥
1,186
1,056
庭2 演台
3,152
浴室
983
983
上部カーテンレール 吊床
1,966
上部カーテンレール
畳間
983
983
+140
洗面・脱衣室 炉
+300
電動スクリーン
960
960
1,944
上部和室 天吊プロジェクタ台
984
984
+300
天井カーテンレール設置
11,162
11,162
902
902
+300
1,920
850
1,018
1,018
廊下1
カーテンレール設置
2,892
943
収納1 個室
+300
1,874
+300
931
+300 +20
150
390
既存敷石移設 カーテンレール設置
2,272
2,272
玄関 化粧室 土間 便所1
±0 ±0 +20
既設トップライト
便所2 便所3 倉庫
+100 +100 +100
AC
130 2022 04
瓦間の北側から見る。円弧上に重ねた庭1の段差は腰を掛けて瓦間と一体的に使用できる。
板間から正面に廊下1、右手に畳間、左手に土間を見る。
2022 04 131
廊下1から庭1までを見通す。化粧型枠を使 1階個室。上部の開口から既存の梁や棟木、屋根の野地が見える。
▽最高高さ 用したコンクリートに庭1の緑が映り込む。
460
大屋根:和瓦葺き 接着剤止め
断熱材
▽既存棟木天端 粘着層付きゴムアスファルトルーフイング
耐水合板 t=12mm
既存垂木・既存野地板(補修)
10
4
980
▽既存梁天端2
天井:既存野地板(補修)
220
▽軒高2 既存垂木(補修)
45
45
1,200
900
900
壁:土壁中塗り t=7mm
壁:土壁中塗り t=7mm
900
石膏ラスボード t=9.5mm
石膏ラスボード t=9.5mm
構造用合板 t=12mm
900
床:コンクリート化粧打放し 撥水材塗布
▽2FL-2
天井:ラワン合板 t=5.5mm
77
197
△既存梁天端
壁:ラワン合板 t=9mm
148
△2FL-1
43
△新規梁天端
150
AC
壁: 天井:コンクリート化粧打放し 撥水材塗布
既存土壁型枠打放し AC 既存床梁現し 美装
壁:コンクリート化粧打放し 撥水材塗布
壁:既存土壁
2,642
2,200
2,052
収納1 個室 板間
2,316
壁:黒漆喰塗り
石膏ラスボード t=9.5mm
構造用合板 t=9mm
床:スギ板 t=15mm 床着色塗装
パーティクルボード t=20mm 床:セランガンバツ板 t=15mm
フリーフロアEPー30/フクビ パーティクルボード t=20mm
フリーフロアEPー30/フクビ
▽1FL-4
300
170
▽基準敷石天端
100
南側外観。路地に面して既存
の出入り口が3つ残されている。
ガルバリウム軒樋
軒裏:既存野地板(補修)
既存垂木(補修)
壁:黒漆喰塗り
石膏ラスボード t=9.5mm
構造用合板 t=9mm
瓦間
床:敷瓦 20×250×250mm
空練 t=20mm
下地モルタル t=30mm
3,000
2022 04 133
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
浅草 Base
Asakusa Base
東京都世田谷区
末光弘和+末光陽子+宍戸優太/ SUEP.
Hirokazu Suemitsu+Yoko Suemitsu
+Yuta Shishido / SUEP.
134 2022 04
前面道路から見る。もとは印刷所だった鉄骨造3階建てのビルを住宅に改修。2
階の床を抜き2層分の吹抜けを設け、既存のコンクリート土間を踏襲することで
街と連続する大空間を内包する。コールテン鋼調のエキスパンドメタルでファサー
ドを覆い、屋上と地上から植物を繁茂させ街に緑のファサードが現れる。*
2022 04 135
136 2022 04
1階を見渡す。建物が密集するエリアでも十分な採光を確保で
きるよう、リビング直上に大きな孔を開けトップライトを設けた。
2022 04 137
2階から見下ろす。耐火被覆を剥がし、耐火塗装に塗り替えた鉄骨の
力強さが浮かび上がる。鉄骨梁・柱が大空間を緩やかに分けつつ、既
存ブレースをあえて残し、植栽などを吊り下げられるように計画した。
太陽光
水下カバー:
AL t=2.0mm Low-E10+A8+(PHW6.8+30mil+FL5)
塗膜防水立ち上げ
1,000
H-125×60×6×8mm
□-150×100mm
内部ウレタン充填
ウレタン充填
既存ALC切断面現しのうえ ▽3FL
硬化剤
50 100
吹付け不燃断熱材 h=350×175×7×11mm
350
鉄骨:
耐火塗装
トップライト下の鉄骨のみ
断熱塗料を上塗り
天窓部分断面詳細図 縮尺1:25
床:
鉄筋コンクリート増打 クリア塗装(硬化剤)
埋設式温水床暖房
▽1FL
80
120
既存床スラブ t=120mm
320
280
既存耐圧盤 t=280mm
1階床スラブと耐圧盤の間に土が埋め戻されたのを活かし、トップライト下のスラブ一部を切り欠き、シェフレラ
とブーゲンビリアを地植えした。トップライト側面に換気扇を設け、内壁上部の既存の換気扇と共に排気を促す。 基礎部分断面詳細図 縮尺1:25
138 2022 04
屋根に大きな孔を開けて建物に息吹を与える 部に、光に満ち溢れた大きな気積をもつ空間と と別空間が現れる屋根裏部屋のようになっている。
築36年の鉄骨3階建ての印刷工場だった建物 して実現させ、ここを住宅の中心となる居間とし 建物のファサードには、既存のALC外壁をエキス
をリノベーションした住まい。敷地は、浅草の中 た。また、工場の1階の床スラブがコンクリート パンドメタルで覆い、緑化している。時間をかけ
心部から少し離れた工場と住宅が混在する地域 土間でできており、その下が土であったため、 て育っていく緑の壁面は、開放的な1階の内部空
で、東京下町の雰囲気が残るエリアである。既 この居間空間の土間床にも部分的に穴を開け、 間と共に公共空間に滲み出し、下町らしい街の
存建物は長く工場と倉庫として使われていたもの 地植えの樹木を植えることで、緑と人が共存で 風景に参加している。 (末光弘和+末光陽子)
で、鉄骨ラーメン構造+ALC外壁でできた、地 きる環境としている。
域によく見られる平凡な建物であった。一般的 この建物は、隣接建物までの壁面距離が約50cm トップライトあり トップライトなし
に工場建築は、耐荷重が大きく、力強い鉄骨フ と、かなり建て込んでいたため、通風条件もかな 夏至
(6/21) 夏至
(6/21)
レームをもち、大きな空間があることが長所であ り厳しかったが、トップライトの側面に換気口を設
るが、光環境や通風環境が悪く、そのままでは け、溜まった熱気を排出すると共に、隅田川沿い
住空間には適さない。そこで、この長所を生か に流れる涼風を前面道路側から取り入れ、同位
しながら短所である環境改善を行うことで、工 置から排出する風道を計画した。この1階に生ま
場のもつスケール感を活かした住環境ができる れた大空間は、外部がそのまま入り込んだ都市の 冬至
(3/21) 冬至
(3/21)
LUX
1,500
のではないかと考えた。 延長のような空間となっており、電気自動車が置
私たちは、まず、この薄暗い内部空間の上部に かれたり、趣味活動をしたりする場所である。 500
屋上
床:
ウッドデッキ t=15mm
400
▽RFL
天井:
2,950
ラワン合板 クリア塗装
和室 壁:
トップライト: 和紙クロス
アルミフレーム/Low-E合わせペアガラス
換気扇 床:
琉球畳 t=12mm
▽3FL
緑化メッシュ:
アルミエキスパンドメタル
3,150
9,900
ホビースペース
天井:
吹付け不燃断熱材
壁:
コンクリート調塗装
プラスターボード t=12mm
ウレタン吹付け t=60mm リビング ダイニング
床:
アカシアヘリンボーン t=15mm
▽2FL
電気自動車用
充電器
車庫
電気自動車
シェフレラ
ブーゲンビリア
3,300
ペレットストーブ
床:
鉄筋コンクリート増打 クリア塗装(硬化剤)
埋設式温水床暖房
▽1FL
100
土 土 土 土
断面詳細図 縮尺1:80
2022 04 139
浅草 Base 左官・タイル ケンシン 担当/野村正
所在地/東京都台東区 家具 タテシン 担当/石井遼
主要用途/専用住宅 建具 グリーンヒル 担当/若杉正之
家族構成/夫婦+子供5人 古材 山翠舎 担当/田村永
トップライト 大仙 担当/松原俊明 石井幸夫
設計 ファサード 銀河工芸 担当/土井礼子
SUEP. 担当/末光弘和 末光陽子 宍戸優太 構造・構法
構造 oha 長谷川理男 主体構造・構法 鉄骨造
施工 基礎 べた基礎
TANK 担当/土谷豊 規模
大工 sakaKEN 担当/山口伸夫 階数 地上3階
軽量 アイディル 担当/斉藤大祐 軒高 9,350mm 最高高さ 9,900mm
電気 田中電気 担当/田中一弘 敷地面積 147.63m2
設備 オルガンズ 担当/佐藤正 建築面積 136.15m2
空調換気 台栄商会 担当/鈴木規博 (建蔽率92% 許容100%)
金物 マルチクラフト 担当/和泉しげる 延床面積 248.40m2
金属 システムワーク 担当/井上武 (容積率168% 許容400%)
2
植栽 中川緑花園 担当/中川崇 1階 134.07m 2階 44.50m2
2階ホビースペース。床はアカシアのヘリンボーンとし、1階の土間床と対象的な仕上げとした。 塗装 DOOR NAIL 担当/山 大輔 3階 69.83m2
和室 洋間
壁:
和紙クロス
屋上 食堂
洋間
和室 板間
床:
琉球畳 t=12mm 玄関 ホール 洗面所
床:
6,950
クリフローリング t=12mm
8,700
トップライト:
アルミフレーム/Low-E合わせペアガラス
既存3階平面図
ウォークイン 洗面脱衣室
クローゼット
浴室
トイレ
1,550
既存階段
倉庫 事務室
3階平面図
改修前2階平面図
酸素カプセル
ホビースペース
壁: 鉄骨:
コンクリート調塗装 既存耐火被覆撤去のうえ
PB t=12mm 耐火塗装
6,950
ウレタン吹付け t=60mm
8,700
印刷室 印刷室
トレッドミル
床:
アカシアヘリンボーン t=15mm
グレーチング PS
手摺り
(既存利用)
2階平面図
電気自動車用充電器
壁面収納
ペレットストーブ
電気自動車
壁:
コンクリート調塗装
PB t=12mm
6,950
床:
鉄筋コンクリート増打 クリア塗装(硬化剤)
埋設式温水床暖房
ブーゲンビリア 螺旋階段
キッチンカウンター 緑化メッシュ
壁面収納 隅田川
コンクリート調塗装 倉庫 玄関
PB t=12mm
ウレタン吹付け t=60mm
配置図 縮尺1:3,000
1階配置平面図 縮尺1:150
N
前面道路からの夕景。街に開かれた構えとしつつ、間
口のメッシュカーテンにより必要に応じてプライバシー
を確保する。1階は電気自動車の車庫としても機能する。
2022 04 141
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
いろえのいえ
Iroe House
東京都杉並区
比護結子/ ikmo
Yuko Higo / ikmo
時間と風景を紡ぐ
親族が住んでいた築55年の家を引き継いで暮ら に螺旋階段を配置。1階は玄関から螺旋階段
す夫婦と4匹の猫の住宅である。比較的緑の多 がひと続きになる土間とした。土間に開く4つの
い場所に建ち、基礎は無筋、断熱材はなく、屋 窓には窓枠を兼ねた棚をつくり、この家に残さ
根と外壁は以前に改修されていたが内部は55 れていた物や、建主の本、植物が置かれ、猫
年間ほぼ手を加えられていなかった。この時代 たちの居場所となる窓辺をつくった。そこは暮ら
の住宅では一般的だが、鴨居の高さで揃った幅 しと外部、人と猫、過去と現在が重なり合う場
1間の窓が東・南・西面に設けられていて、リ 所になっている。2階の窓にも人と猫が窓辺で
ズミカルに配置された7つの窓から周辺の緑が 過ごす、窓枠を拡張したベンチや猫台を設けた。
それぞれ望め、外から見た印象よりも内部空間 また、韓国雑貨屋を営む建主が集めているカラ
に広がりが感じられた。 フルな雑貨たちとこの家の古い架構や外の緑を
小さくてかわいらしい住宅ではあったが、この家 調和させるため、内外の境界となる壁や雑貨の
を住み継いでいくためには耐震補強や断熱、建 置かれる棚を構成する角材の小口に少しずつ色
具や設備の更新が必要だった。予算の大半は を付けて、建築の要素が雑貨たちの一部となり、
そこに費やされるため、開口部の位置は変えず、 窓の外の景色と室内の色合いが共に移ろうシー
7つの窓を紡いで周辺のゆったりとした環境と暮 クエンスを試みた。
らしを結びつけるように内部空間をまとめていく 窓を介して、時間を越えたさまざまな色が重なる
ことにした。2階の南東側の角に設けられたふた という意味を込めて「いろえのいえ」と名付けた。
つの窓を糸口として、これが家の中心となるよう (比護結子)
142 2022 04
土間の東側を見る。既存の窓の位置を起点に改修。1階は既存の床と天井を撤去して新設のべた基礎スラブと2階
床組架構を現しにし、天井高2,960mmの大らかな空間とした。土間床の色に合わせて少し色味のあるグレーの色
合いを基調とし、親族が置いていったブラウン管テレビや黒電話などと建主の持ち物が窓枠を兼ねた棚に置かれる。
2022 04 143
2階リビング。棚を構成する角材の小口に付けた色が既存の梁と雑貨、窓の外の
風景を調和させる。床はハードメープル、壁はシナ合板で淡い色味に仕上げた。
2階ダイニング。既存と同じ位置に新設したバルコニーの床
はベンチの高さまで上げ、開口を拡大し内外を連続させた。
144 2022 04
1,820
キッチン
ソファ
5,005
ダイニング
2,275
リビング
ベンチ
910
バルコニー
2階平面図
1,365
浴室
1FL+80∼120
トイレ・洗面脱衣 玄関から土間を見通す。既存の柱の足元にロープを巻き付け、猫の爪研ぎとした。
1,820
1FL+180
既存部材
7,280
2,275
収納
土間
3,185
1FL±0
1,820
寝室
1FL+400
前面道路 N
3,185 3,640
6,825
1階東側から玄関を見通す。曲線の小上がりが土間から玄関までを緩やかに繋ぐ。
1階配置平面図 縮尺1:100
1,365
浴室
1,820
キッチン
押入れ
910
トイレ 押入れ
棚
押入れ
1,365
玄関 和室
3,185
洋室
和室
1,820
和室
バルコニー
N
3,185 3,640
2022 04 145
螺旋階段を見下ろす。南東角の窓はモノと猫のための場所。 南側近景。
屋根:
既存鉄板平葺き
▽最高高さ
(推測) 既存発泡スチロール t=10mm
既存野地板t=9mm
既存垂木(40×45mm)
604
グラスウール高性能20Kt=200mm
▽軒高
既存梁現し
壁:
天井: シナ合板 t=4mm
構造用合板 t=12mm
PBt=9.5mm 防湿シート
EP塗装(白) グラスウール高性能24K t=105mm
防湿シート 軒天:
野縁30×40mm 珪酸カルシウム板
既存柱現し
t=8mm
ウレタン塗装(白)
外壁: ベンチ: 新設木製建具 手摺り:
既存サイディングt=14mm シナランバーコア t=24mm
2,845
St-φ=27.2mm
高圧洗浄のうえシリコン吹付け塗装 キッチン ダイニング ウレタンクリア塗装 ウレタン塗装
既存縦胴縁15×45mm
既存透湿防水シート 壁:
既存下地板t=9mm モザイクタイル
既存貫板 t=15mm
床: ウッドデッキ:
フローリング(塗装品) t=9mm エステックウッド
ヒノキ構造用合板 t=24mm スギ(無塗装)
105×30mm
▽新2FL
6,091
既存梁現し 新設根太現し
天井: 天井:
シナ合板 t=5.5mm 壁:
耐水PBt=9.5mm
野縁30×40mm シナ合板 t=4mm
EP塗装(白) 壁: 構造用合板t=12mm 既存庇:塗り替え
防湿シート シナ合板 t=4mm 防湿シート
野縁30×40mm 構造用合板t=12mm グラスウール高性能24Kt=100mm
新設アルミサッシ
3,016
既存木製建具移設
既存木製建具移設 新設アルミサッシ
浴室 トイレ・洗面脱衣 土間 寝室
床:
既存木製建具移設 シナランバーコアt=21mm
ウレタンクリア塗装
床:
スライド丁番 ステー
フローリング(塗装品)t=9mm
根太 45×90mm
耐水合板t=12mm×2枚
大引 90×90mm
根太 45×60mm
床束
スタイロフォームⅠBt=50mm
大引 90×90mm
鋼製束
床下収納 砕石t=50mm
▽新1FL
防草シート
70 230
▽現況外部GL
△内部GL
床:
鉄筋コンクリート金ごて押えt=150mm
撥水剤塗布
D13mm @150mmシングル配筋
既存部材
既存基礎へケミカルアンカー2-D13mm @300mm千鳥
スタイロフォームⅠB t=150mm
防湿フィルム
断面詳細図 縮尺1:60
146 2022 04
いろえのいえ
所在地/東京都杉並区
主要用途/専用住宅
家族構成/夫婦+猫4匹
設計
一級建築士事務所 ikmo
担当/比護結子 三浦桃子 柴田晃宏
施工
渡邊技建 担当/江口孝子 長谷部健太郎
大工 小綿工務店 担当/小綿秀明
基礎 伊藤基礎 担当/伊藤幸正 N
鉄骨 梅原鉄工所 担当/梅原敦
建具 中原木工所 担当/中原文雄
断面図 縮尺1:150 配置図 縮尺1:2,000
塗装 嶋吹付工業 担当/岩橋大輔
左官 岩澤左官 担当/岩澤俊一
設備 岡崎設備 担当/神山勉 敷地条件 床・壁・天井/ FRP防水 珪酸カルシウム板 天井/ PB+EP 梁現し
電気 阿部電機商会 担当/阿部光正 地域地区 第1種低層住居専用地域 準防火地 +ウレタン塗装 家具/棚:ヒノキ角材+シナ合板 ソファクッ
構造・構法 域 高度地区 第1種高度地区 風致地区 トイレ・洗面脱衣 ション(キルト工芸)
主体構造・構法 木造軸組構造 道路幅員 南4m 床 / 複 合フローリング w=120mm(IOC 照明/ペンダントライト(建主支給)
基礎 鉄筋コンクリートべた基礎 外部仕上げ ハードメープル UV塗装) 寝室
規模 屋根/既存鉄板平葺き 既存鉄板瓦棒葺き 壁/シナ合板 オイル塗装 オスモカラー PB+EP 床/シナ合板+ウレタンクリア塗装
階数 地上2階 外壁/既存サイディング+シリコン吹付け 天井/ PB+EP 壁・天井/シナ合板
軒高 6,091mm 最高高さ 6,695mm 開口部/アルミ樹脂複合サッシ 木製建具 土間 設備システム
2
敷地面積 42.97m 内部仕上げ 床/コンクリート金ごて押え+撥水剤 空調 冷暖房方式/エアコン
2
建築面積 33.12m キッチン 壁/シナ合板 PB+EP 換気方式/第3種換気
2
延床面積 56.73m 床/複合フローリング w=120mm(IOC ハー 天井/ヒノキ構造用合板 梁現し 給排水 給排水方式/上下水道直結方式
2 2
1階 32.09m 2階 24.64m ドメープル UV塗装) リビング ダイニング 給湯 給湯方式/ガス給湯器
工程 壁・天井/ PB+EP 一部モザイクタイル 床/複合フローリング w=120mm(IOC ハー 撮影/新建築社写真部
設計期間 2020年7月∼ 2021年1月 梁現し ドメープル UV塗装)
工事期間 2021年2月∼ 6月 浴室 壁/シナ合板 PB+EP
東側夕景。
2022 04 147
特集:新しい価値を創造する17のアイデア
路地の回廊
Cloistered Alley
東京都新宿区
市江龍之介/ ICE
Ryunosuke Ichie / ICE
148 2022 04
南側外観。建て込んだ路地の奥に位置する長屋の改修。建て替えの場合、
2項道路からのセットバックや道路・北側斜線により3階建てとしても、現状
の床面積と同規模しか建てることができない。改修により既存路地のスケー
ル感を残しつつ、開口部はそのまま生かし、外壁の塗装をし直している。
2022 04 149
ハナレから室内を見渡す。中央に大きな吹抜けを設け、光や風を内包した環境を呼び
込む。空間全体を路地と結びつけ、上下階を繋ぐために、繰り返された増築による架
構のレベル差を生かして、さまざまな居場所を吹抜けを中心にした螺旋状に配置。室内
全体を柔らかい光で満ちた状態にするため、既存の型ガラスはそのまま利用した。
150 2022 04
2022 04 151
ダイニングキッチンから北側を見る。柱や梁、筋交い、階段と制作家具
が狭い室内に重なるように配置され、見え隠れする距離感をつくり出す。
北側壁面の開口は既存のまま。左手の図書コーナ、書斎の机や棚は必要
に応じて更新ができるように建主による制作。点検口を兼ねるパイプス
ペースの側面は本棚としている。
4,550
2,730 1,820
ハナレ
リノリウムタイル t=2.5mm
1,270
2FL-632
トイレ
書斎
バスルーム 鋼製ブレース
FRP防水トップコート
2FL-30
片筋交い:
スギ90×45mm
柱撤去
洗面
隣家共有壁
2,730
図書コーナー
広間
スギフローリング t=30mm
蜜蝋ワックス 隣家共有壁
1FL±0
6,835
WM
収納
ライブラリー
ナイロンカーペット t=8mm
910
REF
柱撤去
ダイニングキッチン
105
コンクリート金ごて
ウレタンクリア
1FL±0
寝室
1,820
サンルーム
リノリウムタイル t=2.5mm
2FL±0
バルコニー
2FL+250
庭
RD 1FL-50
▽道路中心線(42条2項)
152 2022 04
路地の長屋に住まう
江戸時代の町名が残る街区の奥、多層化し画
一化しつつある路地に残された長屋を改修した
自邸。南側の住宅は徐々に木造3階建てに建て
替わり、北側も住宅が建て込んでいる路地のひ
と区画で、幾度かの増改築を重ね空き家となっ
ていた築70年を超える長屋と出会った。持ち家・
借家・賃貸併用住宅・空家が入り混じっている
この路地は、さまざまな大きさの部屋が集まっ
たひとつの大きな家のようにも感じられ、自分た
ちの状況やニーズに合わせて、数年だけ借家を
したり、新しく隣家を購入したりというように、
広がったり縮んだりする生活がイメージできた。
大きな都市の中にある小さな部屋のようなこの
場所を基点として、土地に根付いた生活を面的
に拡張できる可能性と、さまざまな都市や町を
行き来しながら生活を多拠点に展開していく可
能性のどちらをも選択できると思い、この長屋を
改修し住み継ぐことを決めた。
周辺環境を纏う回廊
建物の状態が非常に悪かったので、現状確認
のために解体を始めると、長屋の中に隠されて
いた既存の躯体、増築された柱・梁が現れた。
そして南北にある大きな窓からは風が抜け、光
が射し込み、隣家の気配が感じられた。
そこで、周辺環境が流れ込む吹抜けを中心とし
て、新しく追加する柱・梁・筋交い・小さな部屋・
階段・家具を、外壁・窓・少しずつ改変されて
きた架構と噛み合わせをずらしながら、スパイラ
ル状に連続させ、空間全体で路地と緩やかに結
びつく構成を考えた。
路地脇の小さな庭に面したダイニングキッチン、
暗く落ち着いた図書コーナーと書斎、階段と合
わさったライブラリー、朝日の差し込む寝室、サ
ンルームのように明るいクローク、物陰に隠れた
バスルーム、架構の中に浮かんでいるハナレな
ハナレからライブラリーと寝室を見る。ライブラリーはカーペット
ど、すべての空間が吹抜けを立体的に取り囲む 仕上げとし、腰掛けを兼ねた緩やかな階段状に設えている。
ことで、屋内環境に屋外環境が取り込まれ、暮
らしの豊かさを生み出している。家の真ん中にで
きた新しい環境が、昔と今/既存と新規/架構
風呂
と家具/ 1階と2階/内と外/手前と奥、を混 水場
ぜ合わせ、段階的に形成されてきた街や路地や 収納
長屋と新しく埋め込まれる建築との間を取りもっ 居間
部屋
収納
ている。
収納
この小さな部屋のような場所での生活を通して、 食堂
押入 部屋
長屋が積み重ねてきた路地との関係を結び直し、 N
玄関
発展させていきたいと思っている。
(市江龍之介)
改修前1階平面図 改修前2階平面図
縮尺1:200
図書コーナー。左はキッチンで床を土間に切り替えている。
2022 04 153
左:ライブラリーからサンルームを見る。壁や天井、
収納、建具のラワン合板はあえて色味は合わせず、
多様なものを許容するパッチワークのような仕上
げとした。
右:バスルームからサンルームを見る。
上階のマスターベットルーム
寝室やバスルームというプライバシーの高い場所
は上階に配置。バスルームを通った先のハナレや
階段が膨らんで生まれたライブラリーによって地
上階と2階の間をつくり、狭い空間の中に平面的、
断面的な奥行きを計画した。
路地と連続するグランドレベル
グランドレベルは路地から連続する回廊のような
場所である。大きな窓のあるキッチンダイニング、
階段下のラウンジや図書コーナーなど家族以外に
開放していくことが可能な住宅の要素を、架構や
家具により緩やかに仕切りながら、路地から連続
する土間やスギフローリングの上に配置した。
(市江)
2期増築範囲(1階+2階) 2期増築範囲(2階)
天井:
ラワン合板 t=9mm
102
壁:
壁: ポリカーボネート波板
ラワン合板 t=9mm
▽軒高=SGL+5,410 GW16K t=100mm 屋根(改修部):
ウレタンペイント
夏季:
日よけスダレ 鋼製火打
2,476
サンルーム
バルコニー:
ウレタン塗装
本棚: ハナレ
ラワン合板 t=24mm
階段:
床: ラワン合板 t=30mm
6,240
2,390
路地 庭 ダイニングキッチン 広間 トイレ
キッチン正面:
磁器質タイル t=10mm
▽1FL=SGL+150
150
△SGL(既存玄関土間)
床: 本棚: 階段:
コンクリートスラブ t=150mm ウレタンクリア ラワンランバー t=15mm ラワン合板 t=30mm
スタイロフォームIB t=50mm 蜜蝋ワックス
防湿フィルム スギ □105mm
1,820 105 910 2,730 910 360
断面詳細図 縮尺1:60 6,835
窪んだL型のキッチン。路地脇の庭と連続する明るい調理スペース。設備機器の取り付け以外は 図書コーナーから玄関方向を見る。玄関扉はラワン合板による2枚の片開き戸を新設、右側は出入り
建主による制作。ガラス棚は既存引き戸の型ガラスを再利用。 用、左側は通風用。階段の下は天井の低いラウンジスペース。
154 2022 04
外部仕上げ
屋根/改修部:ガルバリウム平葺き 既存部:
アスファルトシングル
外壁/既存モルタル ウレタンペイント
開口部/改修部:木製建具 既存部:アルミ
サッシ
内部仕上げ
ダイニングキッチン
床/コンクリート金ごて ウレタンクリア
壁/カラーフレキ t=4mm(チヨダウーテ)
天井/ GB-R t=12.5mm AEP
家具/ラワン合板 ウレタンクリア
その他/タイル(杉浦製陶)
厨房機器/
食洗器/ BOSCH SPI46M006
ガスコンロ/リンナイ RD640STS
換気扇(シェード)/
パナソニック FY-75DWD4-S
建築金物/
シンク水栓金物/クリンスイ F904C1
SUSシンク/シゲル工業 JSM-FS
広間
床/無垢スギフローリング t=30mm 蜜蝋ワッ
クス(スギゴコチ)
壁/ラワン合板 t=9mm
天井/構造用合板 t=24mm
家具/ラワンランバー t=15mm
照明/ペンダント照明(Petite Friture)
トイレ
床/コンクリート金ごて ウレタンクリア
壁/ラワン合板 t=9mm ウレタンクリア
天井/ラワン合板 t=5.5mm
家具/ラワンランバー t=15mm
便器/パナソニック アラウーノS141
小手洗器/ LIXIL AWL-33
寝室 洗面 ハナレ
床/リノリウムタイル t=2.5 mm(Tajima)
壁・天井/ラワン合板 t=9 mm
家具/ラワン合板 ウレタンクリア
階段/ナイロンカーペット(東リ)
洗面カウンター/ DURAVIT Starck3
洗面用水栓金物/ HANSGROHE TALIS E
バスルーム
床/ FRP防水 トップコート
壁/ポリカ波板 FRP防水 トップコート
天井/珪酸カルシウム板 t=6mm FRPトップ
コート
バスタブ/ LIXIL ABN-1200
シャワー水栓金物/ HANSGROHE 13114000
その他/モザイクタイル(LIXIL)
設備システム
空調 冷暖房方式/ルームエアコン
換気方式/第3種機械換気
給排水 給水方式/上下水道直結
給湯 給湯方式/ガス給湯器
撮影/新建築社写真部
東壁面。既存基礎を補強するため、建物全体にべた基礎を打ち、そのまま床仕上げとした。柱や梁の腐っている部分は交換し、不足していた部分には
補強を加え、耐力壁も全体のバランスを考慮しながら新設している。階段・トイレのヴォリュームが架構とズレて取り合うことで、吹抜けをひと回り大き
く感じさせる。吹抜け高さは6m。 (市江)
2022 04 155
貝島 今月は住宅を木造でつくることにおいて、2022 います。今回も1,365mmという渋いグリッドを設定し
年現在の価値観や技術、環境問題などの背景を感じ ていて興味深く拝見しました。グリッドなら慣習に似て
取れるものが揃ってよい編集だと思いました。しかし誌 非なるもの、尺寸なら910mm、1,820mmグリッドで
面では断面図が先に、平面図が後に出てくる作品が ない保守的かつ挑戦的なものに可能性を感じます。
多いことが気になりました。これは編集指針として、木 貝島 日本の伝統住宅は、間口方向が3、奥行き方
造建築が元来問題にしてきたプランニングではなく構 向が2の間取りで構成されていますが、イタリアンヴィ
造や構法を議論するべきだという提案とも解釈できま ラの3 3間取りのように、社交の空間が入り込むと、
すが、やはり住宅と暮らしは切り離せませんから、月 内/外、中心/周縁といった関係を取り込み階層性
評ではプランニングも議論したいところです。また、次 が増え、グリッド数が増えます。また伝統住宅では断
号がリノベーション特集だからか、木造特集なのにし 面がもたらす環境条件を活かして、小屋裏で蚕を飼っ
なやかに木を使うリノベーション作品が載っていないの たり、干したり、モノを収納していました。
「小屋裏と色」
「Houses」
も気になりました。たとえば畝森泰行さんの でそれを現代的に解釈したり
「house / studio H」は基
の構造材のフレームに真壁のように壁を詰めていくやり 礎に収納を入れたり、断面方向で構造を使いながら
と家」は使っている。尺寸をただ外せばよいというより 久性とは違う強さが得られると思います。
も、渡辺保忠の建築生産から見た歴史意匠論などを 中山 9スクエアグリッドの民家も間取りというより架
藤村龍至 踏まえると、建築家としてのグリッドや尺寸の新しい使 構そのものですね。あとは土か畳かの設えだけ、という
建築家 い方がなされているかどうかをまず見てしまいます。 意味で、間取りの消失はなにも新しい概念ではないの
「house / studio H」の2,000mmグリッドは尺寸の かもしれません。一方で今回、特に断面的に、環境
1,820mmよりわずかに大きく、使いづらいかどうかギ の消失が気になりました。小屋裏の蚕は人間の排熱と
『新建築住宅特集』では、毎月、さまざまな作品や論考、
リギリの設定がスリリングですし、
「川と家」の井端さ 共生しています。つまり、建築の断面形には熱収支とし
記事を掲載し、広い射程をもって住宅から明日を拓く んは
「KAKAMIGAHARA PARK BRIDGE」
(『新建築』 ての生態系があった。現代の住宅ではよくも悪くもそれ
建築の可能性を伝え記録しています。しかし重要なこ
とは、議論の場をつくることにあります。限られた誌幅 2111)に続いて在来構法の世界でできる挑戦をされて らが設備化され、そこにかたちと部材だけがある。
「小
の中で示されたものから何を考えていくべきか、それ
ぞれの読み解きや発見を共有し、建築を取り巻く多く
の事象や環境と共に議論を重ねること。この座談月評
は、その場を広げていくことを目的に掲載します。
2022年1∼12月号は、貝島桃代さん、中山英之さん、
藤村龍至さんを評者として、1年を通して前号への批
評を座談形式で議論いただきます。それぞれの個別の
評と共に、それが相乗して新たな示唆に展開する連載
記事として毎月掲載いたします。どうぞご期待ください。
(編集部)
「Houses」 「house / studio H」 「小屋裏と色」
156 2022 04
M O N T H L Y R E V I E W
座談 月評
その議論に一石を投げ込むために呼ばれている。社会
に議論を起こそうとする時、専門的な言葉に閉じずに
一般の人たちが読んだ時にもディテールやかたちが社
会のどういうものの一部かが分かるように語るのは大事
です。
われわれはもっとそれを磨く必要があると思います。
「函館の家」 「屋の家」 記事「新しい結」
2022 04 157
N E W S
ニュー ス 情報
* 撮影:益永研司 ** 撮影:黒住直臣
拡げる事を目的としている。2018年1月
9605)=益子義弘/益子アトリエ ▷海
1日から2020年12月末までに竣工した
本頁特記なき撮影:新建築社写真部
住宅(集合住宅を含む)と一般建築、保存
再生プロジェクトを対象とし、建築文化
の向上に寄与し、芸術・技術の両面に
おいて総合的な価値を発揮した建築を
左:
「長野県立美術館」
。 右上:
「熊本城特別見学通路」
*。 右下「新富士のホスピス」
**。
左上から時計回りに:「金山町火葬場」 、
「海の博物館」、
「中原中也記念館」
、「黒部市国際文化
センター/コラーレ」
、「サンアクアTOTO本社工場」
。
弘前市が前川國男建築を保存活用
去る2月10日、青森県弘前市は2022 1∼3階は健診センターや医師会館、4
年度の予算案を発表し、前川國男が 階に看護専門学校、5∼6階に地域コ
伊東豊雄氏が日本芸術院の新会員に
設計した「弘前市立病院」(1971年)の ミュニティスペースなどを設ける予定。
去る3月1日、日本芸術院(院長:高階秀 設された芸術上の功績顕著な芸術家
保存活用などを行う「健康づくりのまち 耐震壁以外の壁は撤去・再配置する
は、
爾) 新会員を発表した。第1部(美術) を優遇するための栄誉機関。昨年には
なか拠点整備事業整備事業」に6,377 予定。小規模な空間を6階の一部は減
に4名、第2部(文芸)に3名、第3部(音 そのあり方を見直す検討会議によって
万円を計上した。市立病院は本年3月 築し、耐震性を向上する。2024年度
楽・演劇・舞踊)に2名、計9名となり、 改革案が取りまとめられた。今回の新
に国立病院機構弘前病院と統合し、 に着工し、2027年度の供用開始を目
伊東豊雄氏が第1部第5分科(建築・デ 会員は、新たな分科となってから初の
閉院後に建物の保存活用に着手する。 指す。
ザイン)で選出された。日本芸術院は、 任命となる。
大正8年9月に「帝国美術院」として創
ヴォーリズ建築保存・活用に向け関西学院大学
と滋賀県・近江八幡市が連携協定締結 岸和郎氏がAIAの2022年名誉フェローに選出
去る3月9日、関西学院大学は滋賀県 たって居住し、社会奉仕事業などに尽 去る3月10日、アメリカ建 築 家 協 会 家の卓越した業績と、国際レベルでの
ならびに近江八幡市と「ヴォーリズ建 くした地であり、関係する建築物が多 (AIA)は、2022年名誉フェローに岸和 建築と社会への貢献を称えるもので、
築等を通じた連携協定」を締結した。 数残っている。こうした繋がりから、 郎氏とローラン・デュポールの2名を発 審査員はジェーン・ダンカンら9名。
本学の西宮上ケ原キャンパスはウィリ 研究と保存、さらには観光振興・人 表した。名誉フェローは国際的な建築
アム・メレル・ヴォーリズによる全体 材育成・地域活性化などに連携し、
計画で建設されており、また滋賀県、 さまざまな分野で協働事業を進めてい
近江八幡市はヴォーリズが生涯にわ くことで合意した。
158 2022 0 4
E X H I B I T I O N
展 覧会 レポ ー ト
撮影:Studio Xxingham
猫目線の家
猫と人のしあわせな共生社会を構想する
開催中 2022年2月14日∼3月25日
Karimoku Commons Tokyo(東京都港区)
「キャット・ファースト」を掲げ、猫の健康をサポート
する商品を企画・デザインするRINNの梁原正寛と、
8組の建築家・クリエイターが協働し、それぞれの 1 2
提案する「猫目線の家」を展示。模型やグラフィック
などによって、猫と人のしあわせな共生社会が描か
れる。
川島範久は、夫婦と猫2匹のための家「16の窓とペ
チカの家」を提案。外周には16の窓が出幅と高さを
変えながら螺旋状に連なり、季節や時間によって窓
辺が日時計のように変化する。建物中央にはサウナ
や暖炉を内包したペチカが置かれ、窓とペチカは建
3 4
物内に多様な高低差を生み出すことで、猫と人が等
1:川島範久「16の窓とペチカの家」
。模型のほか、16の窓とペチカの活用例をイラストで紹介。 2:山田紗子「neko」。窓辺
しく自然を楽しめるような住環境が計画された。 の模型では、開口越しに猫が寝ている様子が覗く。 3:能作文徳「猫の王国」。 4:板坂留五「ぶんと私の家」 。飼い猫との
暮らしの実体験から、行為が相関して同居しているシーンを抽出。それらを繋ぎ合わせた家を提案する。
能作文徳「猫の王国」では、大きな1枚屋根の下に
寝室や浴室、キッチンなど人のための小部屋を分散 かたちが変化する家。猫の暮らしに合わせて、窓辺 な奥行きが生まれる。また膨らんだ窓辺の1/3サイズ
配置。各小部屋の上部はピラミッドのように段々状と が膨らんだり、床が凹んだり、壁に小さなトンネル穴 の模型は、ブラックチェリー材を活用し、猫と人が暮
なっており、人が個人部屋をもつように、猫にもそれ が開いたりと、角ばった家が一部溶けたような模型 らす柔らかな雰囲気を演出する。このほか、木製展
ぞれ専用の居場所を生み出している。 が展示される。もともとは人のための家に、猫が生 示物の1部にはカリモク家具が制作協力しており、木
山田紗子が提案する「neko」は、猫が住まうことで み出すかたちが差し込まれることで、家全体に多彩 の表現の豊かさにも注目である。
2点撮影:顧剣亨
實構築 in 京都 2022
2022年2月19日∼3月6日
京都芸術大学 ギャルリ・オーブ(京都府京都市)
台湾建築の今を伝える は、身体性を重視する台湾建築における重要な資源
現代の台湾建築界を代表する16組を紹介する「實構 となっているように思われた。また地域に密着したプロ
築 in 京都 2022」が開かれた。實構築は、台湾で ジェクトも多く、政治や経済、自然環境など変化の多
2009年から開催されている建築のビエンナーレ。これ い国の状況に対し力強く戦略的に立ち向かい建築をつ
までに日本の建築家も多数招待されており、同国にお くってきた先行世代、身の回りの丁寧な観察やまちの
ける最大規模の建築展として重要な場をつくり続けて 人びととの協働と共に、より早い変化に対応する方法
いる。また2019年からは季刊誌實構築を発行し、国 を模索する若い世代のどちらにも、これからの時代に
際的なプラットフォームづくりにも力を入れている。 必要な柔靭さと行動力を感じた。コロナ禍で2年越し
本展では、黃聲遠(田中央聯合建築師事務所)や廖偉立 (立 に開催された同展は、普段目にすることの少ない隣国
建築聯合建築師事務所)など日本でも著名な建築家から、 台湾の建築を知る貴重な機会であった。多くの共通
形態と素材の組合せが特徴的な林聖峰(嶼山工房)、 点をもつ彼らとさらなる交流が深まることを期待する。
木造タイニーハウスなど手がける蕭有志(大合設計)、 会場構成は、異なる専門性をもつメンバーで構成され
人びとの活動の触媒となる建築を目指す沈庭增(沈庭 た京都を拠点とするデザインファームNEW DOMAIN。
、軽やかな素材で幾何学の可能性を広げ
增建築製作) 35mmの細い角材とPPバンドというホームセンターや 上下:会場風景。35mm角の角材とPPバンドで組まれた点
呼空間に、写真や図面のパネルが展示された。
る林佩蓉(大林工作室)など、幅広い世代の豊かな取り 資材置き場などで見慣れたものが、テンションをかけ
組みが見られた。 られ立体フレームとして立ち上がり、気が付けば展示 主催・キュレーション:城戸崎和佐
会場構成:東那摘、川島航平(NEW DOMAIN)
地域的にコンクリートやスチールが多く用いられ、構 や鑑賞など行為の補助線として機能している。材料循 デザイン:丸井栄二 協力:王俊雄、蕭有志、蔣美喬
協賛:ユニオン造形文化財団
造体から繊細なディティールまで内外装問わず多様な 環の可能な日常の材料を用いたファブリケーションに
表現技術が見られる。建築の工業化と並走して、現 は、主体的な行為をサポートするような、つくる人/ 真や図面に加え会場構成全体からも熱気のある台湾
場での手工業を可能にしている多くの職人=つくる人 使う人へのオープンな技術があり、展示されていた写 建築の現在が感じられた。 (松本尚子)
2022 04 159
B O O K S
新刊紹 介
現代建築宣言文集 〈妄想〉する未来
[1960-2020] アート思考の挑戦
職業=谷尻誠 都心周縁コミュニティの
谷尻誠 著 再生術
既成市街地への臨床学的アプローチ
日本建築学会 編
建築設計にとどまらず、さまざまな事業を立ち上げ運営している谷尻誠が自身の幼 インナーコミュニティとは、大都市の都心周縁部にあって、社会的環境の持続性を
少期から現在、これからを綴ったエッセイ。自身の境遇や経験などから、この先の 喪失し、物理的環境も更新されず、停滞・空洞化する地域のこと。本書では、こ
時代を生き抜くために必要なことや、谷尻が考える建築家のフィールドについて語ら うした衰退し開発圧力が弱くなった地域でその潜在力を引き出した好例を紹介、分
れる。共同パートナーである吉田愛をはじめとする身近な人物からの寄稿では、建 析したうえで、インナーコミュニティの再生術を提唱する。たとえば、小さな単位で
築分野外からのインプットを事業や建築にアウトプットするプロセスや、自身の好奇心 の建物の共同化、オープンスペースの創造といった、コミュニティベースの小規模
と時代の動きをシンクロさせ、常に変化し続ける軽やかな生き方などが浮かび上が な事業を積み重ねることで面的に展開させる手法など、マイナスと見られていたイン
る。谷尻は、働らく傍らで没頭していたマウンテンバイクのダウンヒルをきっかけとし ナーコミュニティの「空き・弱さ」を逆手に取り、コミュニティと空間を一体的に再
た出会いを通して、自分がいる世界の外にさまざまな人や事象が存在し、それらと 生させていくためのアプローチが考察される。地方の持続可能性が求められ続け
触れ合うことの可能性に気付いたという。こうした建築のフィールドを超えた現在の る現代社会において、開発と再生を根本に立ち戻って思考し、既成市街地のこれ
活躍に繋がる軌跡から、
建築家の職能の広がりの可能性を見ることができる。(ab) からを考えていくために必要な視点や価値観を見出すことができる。 (noc)
160 2022 04
C O N S T R U C T I O N
施工 会社 & 現場 監 督紹 介
2022 04 161
所在地 神奈川県川崎市宮前区鷺沼1-11-14 いて真摯に対応していただけました。細かい納 工期 厳しい工期の中、自主施工部分の取
路地の回廊 鷺沼パレス804 まり調整や設計変更などについても、現場監督 り合いを含めて柔軟にスケジュールを調整して
掲載:148-155頁 電話番号 044-856-3639 の高木さんや早田さん、大工の小野寺さんたち いただけました。
アクアハウス https://www.aqua1989.com と円滑にコミュニケーションがとれたので、細 コスト 設計時の減額調整、工事中の設計変
代表 奈良 孝佳 COMMENT やかに調整することができました。近隣と距離 更に対しても、適正に粘り強く調整を行なって
今回の現場監督 高木俊雄 施工 解体前の状況確認からご同行いただき、 の近い現場ということもあり、苦情対応含めて いただけました。 (市江龍之介)
規模 6名 設計・施工中合わせて既存建物との調整につ 大変丁寧に施工していただけました。
建築家情報
A R C H I T E C T S 1. 今後予定しているプロジェクトや展覧会、講演会などの情報/ 2. Facebook、TwitterなどのURL
建 築 家プ ロ フィー ル ※1の作品名、竣工時期、展覧会、講演会情報は本誌発売時点での予定となります。
柳室純(やなぎむろ・じゅん)
1980年静岡県生まれ/ 2003年京都大学工学部建築学科卒業/ 2007年京都大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了/ 2007∼15年満田衛資構造計画研究所/
2015年柳室純構造設計設立
服部大祐(はっとり・だいすけ)
1985年神奈川県生まれ/ 2008年慶應義塾大学環境情報学部卒業/ 2012年メンドリジオ建築アカデミー修士課程修了/ 2014年Schenk Hattori設立
メラニー・ヘレスバック セバスチャン・ルノー
(メラニー・ヘレスバック・左)1989年フランス生まれ/ 2013年Nancy Architecture School(フランス)卒業
(セバスチャン・ルノー・右)1982年フランス生まれ/ 2006年Nancy Architecture School(フランス)卒業
▼建築家情報
1.「Roots accommodations」(2022年)
2. Facebook:https://www.facebook.com/deuxmetresvingtsix/ Instagram:https://www.instagram.com/deuxmetresvingtsix/?hl=ja
吉永規夫(よしなが・のりお)
1980年大阪府生まれ/ 2004年和歌山大学システム工学部環境システム学科卒業/ 2008年和歌山大学院修士課程修了(本多友常・平田隆行研究室)/ 2008 ∼ 11年本多環
境・建築設計事務所/ 2011年和歌山大学大学院博士課程単位取得退学(2013年工学博士)/ 2012年Office for Environment Architecture設立/ 2015年∼オープンナガヤ
大阪実行委員会/現在、摂南大学、大阪公立大学非常勤講師/ 2014年「陶器まつりのある家」
(本誌1510)でLIXILデザインコンテスト2013銅賞、2016年「ヨシナガヤ」で住
まいの環境デザイン・アワード2016優秀賞受賞/ 2019年「佐世保のリノベーション」
(本誌1804)で第12回建築九州賞受賞/ 2020年「CONTEXTED」
(『新建築』2108)でウッ
ドデザイン賞2020特別賞受賞/ 2021年「林寺2丁目長屋」(
『新建築』2108)で第34回大阪市ハウジングデザイン賞特別賞受賞
▼建築家情報
1.「宝塚の家」 (大阪府/ 2022年∼)
(兵庫県/ 2022年)「ヨシナガヤ026-048」 「徳島の家」
(徳島県/ 2022年)
「モトゴンダンチ」
(大阪府/ 2023年)
Office for Environment Architecture 〒547-0044 大阪市平野区平野本町2-1-15 tel. 06-7175-4715 fax. 06-7635-5488
info@ofea.jp http://www.ofea.jp
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塚本由晴(つかもと・よしはる) 貝島桃代(かいじま・ももよ) 玉井洋一(たまい・よういち)
(塚本由晴・右)1965年神奈川県生まれ/ 1987年東京工業大学工学部建築学科卒業/ 1987∼88年パリ・ベルビル建築大学/ 1992年貝島桃代とアトリエ・ワン共同設立/
1994年東京工業大学大学院博士課程修了/ 2003、2007、2015年ハーバード大学大学院客員教授/ 2007、2008年UCLA客員准教授/ 2011年The Royal Danish Academy
of Fine Arts客員教授、Barcelona Institute of Architecture客員教授/ 2013年コーネル大学visiting critic / 2015年デルフト工科大学客員教授/ 2017年コロンビア大学客員
教授/現在、東京工業大学大学院教授
(貝島桃代・中)1969年東京都生まれ/ 1991年日本女子大学家政学部住居学科卒業/ 1992年塚本由晴とアトリエ・ワン共同設立/ 1994年東京工業大学大学院修士課程
修了/ 1996∼97年スイス連邦工科大学チューリッヒ校奨学生/ 2000年東京工業大学大学院博士課程満期退学/ 2000∼09年筑波大学講師/ 2009∼22年筑波大学准教授
/ 2003、2015年ハーバード大学大学院客員教授/ 2005∼07年スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ)客員教授/ 2015年デルフト工科大学客員教授/ 2017年コロンビ
ア大学客員教授/ 2017年∼ETHZ Professor of Architectural Behaviorology
(玉井洋一・左)1977年愛知県生まれ/ 2002年東京工業大学工学部建築学科卒業/ 2004年同大学大学院修士課程修了/ 2004年∼アトリエ・ワン/ 2015年∼アトリエ・ワン パートナー
「ミニ・ハウス」(本誌9901)で1999年東京建築士会住宅建築賞金賞、2000年第16回吉岡賞受賞/ 2002年「ハウス・サイコ」
(『新建築』0103)でAmerican Wood Design
Awards 2002受賞/ 2007年「ハウス&アトリエ・ワン」
(『新建築』0605)で2007年度グッドデザイン賞受賞/ 2012年RIBA International Fellowship / 2013年「タマまちや」
(本
誌1405)
「タマロッジア」
(本誌1405)で2013年度グッドデザイン賞受賞/ 2022年WOLF PRIZE受賞/主な著書に『ペット・アーキテクチャー・ガイドブック』(2001年、ワー
ルド・フォト・プレス)『メイド・イン・トーキョー』
(2001年、鹿島出版会)『アトリエ・ワン・フロム・ポスト・バブル・シティ』(2006年、INAX出版)
『図解アトリエ・ワン』
(2007
年、TOTO出版)
『空間の響き/響きの空間』
(2009年、INAX出版)
『Behaviorology』
(2010年、Rizzoli New York)
『図解アトリエ・ワン2』
(2014年、 『WindowScape2
TOTO出版)
窓と街並の系譜学』(2014年、フィルムアート社)『コモナリティーズ ふるまいの生産』
(2014年、LIXIL出版)
藤村龍至(ふじむら・りゅうじ)
1976年東京都生まれ/ 2002年東京工業大学大学院修了/ 2002∼03年ベルラーヘ・インスティテュート(オランダ)/ 2003∼08年東京工業大学大学院博士課程/ 2010∼16
年東洋大学専任講師/ 2016年∼東京藝術大学准教授/ 2012年「家の家」
(本誌1304)で 日本建築学会作品選集新人賞受賞/ 2017年「OM TERRACE」
(『新建築』1707)で
GOOD DESIGN AWARD 2017 BEST100 / 2018年「すばる保育園」
(『新建築』1806)で福岡県美しいまちづくり建築賞大賞受賞/ 2019年「はとやまハウス」
(『新建築』2002)
でGOOD DESIGN AWARD 2019 BEST100 / 2020年「SPBS TORANOMON」
でGOOD DESIGN AWARD 2020受賞/主な著書に
『プロトタイピング̶模型とつぶやき』
(2014年、
『 批判的工学主義の建築 』
LIXIL出版) (2014年、NTT出版)
『ちのかたち̶建築的思考のプロトタイプとその応用』
(2018年、TOTO出版)
▼建築家情報
1.「椿峰テラス」(埼玉県所沢市/ 2022年)「集合住宅プロジェクト」(広島県/ 2023年)
「GOZARE PROJECT」(岐阜県/ 2023年)
「災害対策本部拠点施設」(奈良県/ 2023年)
湯浅良介(ゆあさ・りょうすけ)
1982年東京都生まれ/ 2010年東京藝術大学大学院修了/ 2010年∼18年内藤廣建築設計事務所/ 2019年∼Office Yuasa
▼建築家情報
1.「鎌倉の住宅」(神奈川県/ 2022年5月)
「原宿のギャラリー」
(東京都/ 2022年)
西澤徹夫(にしざわ・てつお)
1974年京都府生まれ/ 2000年東京藝術大学大学院修了/ 2000∼05年青木淳建築計画事務所/ 2007年∼西澤徹夫建築事務所/ 2019年「京都市美術館」
(『新建築』2005)で
日本建築学会賞(作品)受賞、JIA建築大賞、AACA賞、第62回毎日芸術賞ほか受賞/現在、東京藝術大学、日本女子大学、東京理科大学非常勤講師、東京工業大学非常勤講師
渡邊大志(わたなべ・たいし)
1980年神奈川県生まれ/ 2005年早稲田大学理工学術院建築学専攻修了(石山修武研究室)/同年、石山修武研究室個人助手/ 2012年東京大学大学院工学系研究科博士
課程修了(伊藤毅研究室)/博士(工学)
、一級建築士/ 2016年早稲田大学創造理工学部建築学科准教授、専門は建築デザイン・都市史/ 2019 ∼ 2020年フィンランド・ア
アルト大学客員研究員/現在渡邊大志研究室一級建築士事務所主宰、世田谷まちなか観光交流協会委員、港区景観審議会委員、第22期日本建築学会代議員/「節会」で東
京建築士会住宅建築賞2021金賞受賞/ 2021年日本フィンランドデザイン協会賞受賞/主な著書に『東京臨海論ー海からみた都市構造史ー』(2017年、東京大学出版会)
『み
るよむあるく東京の歴史 第5巻』(共著、2018年、吉川弘文館)
『図説 港区の歴史』
(共著、2020年、港区)
『ひとつなぎの建築』(2021年、ADP出版)
▼建築家情報
1.「Red House Ⅱ」
(東京都北区/ 2022年)
「ST Building」
(東京都世田谷区/ 2023年)
「Xover Houses」
(Helsinki / 2023年)
「Helsinki South Port計画」
(Helsinki /竣工未定)ほか
「Synesthesia Scenery」展(バウハウス大学/ 2022年10月頃)「Crossover-Architecture」展(ベルリン工科大学/ 2023年7∼10月)ほか出展
2. 研究室HP:https://www.f.waseda.jp/watanabetaishi/ Xover Products販売サイト:https://www.f.waseda.jp/watanabetaishi/Products-xover.html
間田真矢(まだ・まや) 間田央(まだ・あきら)
(間田真矢・左)1977年山口県生まれ/ 2000年日本大学工学部卒業/ 2000∼01年象設計集団/ 2001∼05年香山壽夫建築研究所勤務/ 2010年MAMM DESIGN設立/
2018∼20年日本大学理工学部非常勤講師
(間田央・右)1973年島根県生まれ/ 1998年東京大学大学院工学系研究科修了/ 1998年大成建設入社/ 2006∼07年KPF勤務/ 2010年MAMM DESIGN設立/アメリカ
建築家協会(AIA)会員
「ミンナノイエ」
(本誌1012)で2010年第31回INAXデザインコンテスト入賞、第14回TEPCO快適住宅コンテスト(作品部門)佳作受賞、2011年モダンリビング大賞モダンリビ
ング大賞、2011 AIA Japan(アメリカ建築家協会日本支部)Design Awards優秀賞、東京建築士会平成23年住宅建築賞受賞
▼建築家情報
(山梨県韮崎市/ 2022年)「大正町の家」
1.「S旅館」 (島根県松江市/ 2023年)「草谷ホテル」(島根県出雲市/ 2023年)
2. Twitter:http://twitter.com/mamm_design Facebook:http://www.facebook.com/MammDesign/
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澤秀俊(さわ・ひでとし)
1983年岐阜県生まれ/ 2005年名古屋工業大学卒業/ 2006 ∼ 07年ミュンヘン工科大学/ 2009年東京工業大学大学院修士課程修了/ 2011年テーラード・デザイン研究所
共同設立/ 2014年∼ NPO法人活エネルギーアカデミー事務局/ 2014 ∼ 17年Vo Trong Nghia Architects ホーチミン事務所パートナー/ 2018年澤秀俊設計環境/SAWADEE
設立/ 2019年∼名古屋工業大学非常勤講師/ 2021年「飛騨古川 雪またじの屋根」
(本誌2002)でJIA東海住宅建築賞受賞/ 2021年「飛騨高山の山林資源による、循環経
済モデルの実践」で第22回JIA環境建築賞優秀賞、crQlr Awards、グッドデザイン賞受賞など
▼建築家情報
1. 「奥飛騨の温泉旅館」
(岐阜県高山市/ 2022年)
「農産物直売施設」(岐阜県飛騨市/ 2022年)「Fキャンププロジェクト」(岐阜県高山市/ 2022年)
「プーケットの染物工房」(タイ・プーケット/ 2022年)
2. instagram:https://www.instagram.com/sawadee_hida/ Facebook:http://www.facebook.com/sawadeehida/
2015年「駒沢公園の家」
(『新建築』1108)で日本建築学会作品選集新人賞受賞/ 2016年第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館特別表彰
▼建築家情報
(神奈川県/ 2022年)
1.「鎌倉の集合住宅」
島田陽(しまだ・よう)
1972年兵庫県生まれ/ 1995年京都市立芸術大学美術学部環境デザイン学科卒業/ 1997年同大学大学院修士課程修了/ 1997年タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所
設立/現在、京都市立芸術大学准教授、京都芸術大学客員教授、神戸大学、神戸芸術工科大学非常勤講師/ 2013年「六甲の住居」(本誌1202)でLIXILデザインコンテスト
第29回吉岡賞受賞/ 2013年「山崎町の住居」
2012金賞、 (本誌1209)
でAsia Pacific 2013 Award Architecture Single Residence Highly Commended / 2016年「石切の住居」
(本誌1306)で日本建築設計学会賞大賞受賞/ 2016年「ハミルトンの住居」(本誌1701)でAIA Brisbane Regional Awards House of the Year Award、2016 Queensland
State Architecture Awards State Award、AIA National Architecture Awards National Commendation / 2018年「 宮 本 町の住 居 」( 本 誌1707)でDezeen Awards 2018
House of the Year受賞/主な著書に『7iP #04 YO SHIMADA』(2012年、ニューハウス出版)
『現代建築家コンセプト・シリーズVol.22 日常の設計の日常』
(2016年、LIXIL出版)
▼建築家情報
(大阪府/ 2022年)「鎌倉の住居」(神奈川県/ 2022年)「白川の住居」(兵庫県/ 2022年)
1.「少路の住居」
2. Twitter:https://twitter.com/youshimada Facebook:https://www.facebook.com/shimada.yo
魚谷繁礼(うおや・しげのり) 魚谷みわ子(うおや・みわこ)
(魚谷繁礼・上)1977年兵庫県生まれ/ 2001年京都大学工学部卒業/ 2003年同大学大学院工学研究科修了/現在、魚谷繁礼建築研究所代表/京都大学、京都府立大学、
京都建築専門学校非常勤講師/ 2020年より京都工芸繊維大学特任教授
(魚谷みわ子・下)「2 / 5」建築家プロフィール(162頁)に掲載
2007年「京都型住宅モデル」
(本誌0804)で都市住宅学会賞業績賞ほか受賞/ 2012年「西都教会」
(『新建築』1212)で関西建築家新人賞ほか受賞/ 2016年「御所西の宿群」で
京都デザイン賞京都市長賞受賞/ 2017年「太秦安井の住宅」
(本誌1305)で京都建築賞藤井厚二賞受賞/ 2020年「コンテナ町家」
(『新建築』2007)で日本建築家協会新人賞受
賞/ 2021年「SOWAKA」で京都建築賞最優秀賞受賞/主な著書に『近代世界システムと殖民都市』
(共著、2005年、京都大学学術出版会)
『世界住居誌』
(共著、2005年、昭
和堂)
『いま、都市をつくる仕事』
(共著、2011年、学芸出版社)
『地方で建築を仕事にする』
(共著、2016年、学芸出版社)
『住宅リノベーション図集』
(2016年、オーム社)
▼建築家情報
1.「Dieulefit近郊の草原の家」(ル ポエト ラヴァル、フランス/ 2022年5月)「妙法院前側町の4軒長屋(宿泊施設3軒+ギャラリー+飲食店)」(京都府京都市/ 2022年5月)
「郭巨山会所プロジェクト」
(京都府京都市/ 2022年 6月)
2. Twitter:http://twitter.com/uoya_shigenori
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比護結子(ひご・ゆうこ)
1972年愛知県生まれ/ 1995年奈良女子大学家政学部住居学科卒業/ 1997年東京工業大学大学院修士課程修了/ 1999年一級建築士事務所ikmo共同設立/現在、桑沢デ
ザイン研究所、芝浦工業大学、日本工業大学非常勤講師/ 2009年「キチ001」で東京建築士会住宅建築賞受賞/ 2015年「cotoiro」でグッドデザイン賞受賞/ 2017年「おかや
まのいえ」でJIA中国建築大賞2017優秀賞受賞/ 2019年「ナガレノイエ」で千葉県建築文化賞入賞/ 2020年「椿庵」で千葉県建築文化賞最優秀賞受賞/主な著書に『建築のし
くみ 住吉の長屋/サヴォワ邸/ファ ンズワース邸/白の家』(共著)(2008年、丸善)
▼建築家情報
1.「羽村の家」(東京都羽村市/ 2022年)「市川の家」
(千葉県市川市/ 2023年)「中野の家」(東京都中野区/ 2023年)
「町田の家」
(東京都町田市/ 2023年)
「田端の家」(東京都北区/ 2023年)
市江龍之介(いちえ・りゅうのすけ)
1985年京都府生まれ/ 2009年京都府立大学環境デザイン学科卒業/ 2012年京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科建築設計学専攻修了/ JRE設計、ブルースタジオを
経て、2018∼22年OpenA / 2021年ICE / ichie architects
▼建築家情報
1.「谷戸のアトリエ」(神奈川県/ 2022年4月)
「久留米の公園施設」
(福岡県/ 2022年6月)「奈良の店舗」(奈良県/ 2022年10月)
執筆者
1971年大阪府生まれ/ 1994年 1974年 広 島 県 生まれ / 1999 1974年 東 京 都 生まれ/ 1996 1975年 京 都 府 生まれ/ 1997
京都大学工学部建築学科卒業 年東京大学文学部英語英米文 年武蔵野美術大学短期大学部 年大阪芸術大学芸術学部建築
/ 1997年京都大学大学院工学 学専修課程卒業/ 2001年東京 グラフィックデザイン専攻卒業 学 科 卒 業( 根 岸 一 之に師 事 )
研究科修士課程修了/ 1997∼ 大学大学院人文社会系研究科 / 1996∼2004年 デ ザイン 事 / 2003年 木 村 松 本 建 築 設 計
2005年伊東豊雄建築設計事務所/ 2005年平 (フランス語フランス文学専修)修士課程修了/ 務所など勤務/ 2019年RFA 事務所を設立/現在、大阪市立大学、大阪市
田晃久建築設計事務所設立/現在、京都大学 2002年リヨン第2大学文学・言語科学・芸術 立大学大学院、京都芸術大学非常勤講師/
教授 学科DEA課程修了/ 2007年パリ第8大学造形 伊藤司貴(いとう・かずき) 2008年「三人の作家のためのアトリエと住宅」
芸術学科修士課程修了/ 2009年パリ第4大学 1989年生まれ/東京農業大学 でSDレビュー入賞/ 2015年「Nの住宅地の住
板坂留五(いたさか・るい) フランス文学・比較文学科博士課程修了(文学 造園科学科卒業/ランドスケー 宅」(本誌1505)でJIA東海住宅建築賞大賞受
1993年 兵 庫 県 生まれ/ 2016 博士)/ 2009∼13年東京外国語大学大学院 プデザイナー/ woodsmart代表 賞/ 2016年「ハイツYの修理」(本誌1702)で
年 東 京 藝 術 大 学 卒 業 / 2018 専任講師/ 2013∼21年東京大学教養学部・ /主な受賞歴に2021年「レ・ジェ CSデ ザ イ ン 賞 グ ラ ン プ リ 受 賞 / 2018 年
年同大学大学院修了/ 2018年 大学院総合文化研究科准教授/ 2022年∼同 イド大倉山」
でGOOD DESIGN賞、
「GOODPARK」 「houseT / salonT」( 本 誌1609)で第33回 吉
∼RUI Architects / 2016年卒 教授/主な著書に『ロラン・バルト 偶発事へ で 都 市 緑 化 機 構 会 長 賞/2022年「OM IYA 岡賞受賞/「houseA / shopB」(本誌1701)
業制作で主席買上賞(東京藝術大学卒業制作 のまなざし』
(2011年、水声社)
、『世界の8大 STREET PLANTS PROJECT」で国土交通大臣賞 で2018年第12回関西建築家新人賞、2019年
最優秀賞)
、JIA全国学生卒業設計コンクール 文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今』
(共 第7回京都建築賞藤井厚二賞受賞
銀賞受賞/ 2019年「半麦ハット」(本誌2001) 著、2016年、立東舎)
、『フランス語I('18)
』(共 吉楽広敦(きら・ひろのぶ)
( 共 同 設 計: 西 澤 徹 夫 )でArchitects of the 著、2018年、放送大学教育振興会)など 1964年 東 京 都 生まれ/ 1990 中山英之(なかやま・ひでゆき)
Year 2019入選(2019)、Under 35 Architects 年桑沢デザイン研究所リビング 1972年福岡県生まれ/ 1998年
exhibition 2021 Gold Medal 受賞(2021) 加藤幸枝(かとう・ゆきえ) デザイン研究科卒業/ 1990 ∼ 東京藝術大学美術学部建築科
1968年生まれ/色彩計画家・ 2012年コイズミ照明/ 2012年 卒業/ 2000年同大学大学院美
金箱温春(かねばこ・よしはる) カラープランニングコーポレー ツキライティングオフィス設立 術研究科建築専攻修士課程卒
1953年 長 野 県 生まれ / 1975 ションクリマ・代表/武蔵野美 業/ 2000∼07年伊東豊雄建築設計事務所勤
年東京工業大学工学部建築学 術大学造形学部基礎デザイン 河本和義(こうもと・かずよし) 務/ 2007年中山英之建築設計事務所設立/現
科卒業/ 1977年東京工業大学 学科卒後、日本における環境色彩計画の第一 1974年 大 阪 府 生まれ / 2002 在、東京藝術大学美術学部建築科准教授
大学院総合理工学研究科修了 人者、吉田愼悟に師事/東京都景観審議会及 年近畿大学大学院総合理工研
/ 1977 ∼ 92年横山建築構造設計事務所/ び景観審議会計画部会委員、品川区・豊島区 究科環境系工学専攻修士課程 能作文徳(のうさく・ふみのり)
1992年金箱構造設計事務所設立/ 2009年∼ 景観審議会委員、山梨県/甲州市景観アドバイ 修了/ 2002 ∼ 04年Ms建築設 本誌アドバイザー/ 1982年富
東京工業大学総合理工学研究科特任教授/ ザー、静岡県景観懇話会委員など 計事務所勤務/ 2006年∼ NPO法人WOOD 山県生まれ/ 2005年東京工
2014年∼工学院大学建築学部特別専任教授 AC理事/ 2008年∼個人事務所(TE-DOK)開 業大学工学部建築学科卒業/
/主な著書に『構造計画の原理と実践』
(2010 木下洋介(きのした・ようすけ) 設/ 2009年∼ NPO法人WOOD AC代表理事 2007年東京工業大学大学院
年、建築技術)
、『力学・素材・構造デザイン』
(共 1978 年 神 奈 川 県 生 ま れ / 理 工 学 研 究 科 建 築 学 専 攻 修 士 課 程 修了/
著、2012年、建築技術)
、『ディテールから考 2003年東京工業大学修士課程 2010年能作文徳建築設計事務所設立/ 2012
える構造デザイン』
(2021年、学芸出版社)な 修了/ 2003 ∼ 11年金箱構造 年東京工業大学博士(工学)学位取得/ 2012
ど / 2009年「 広 島 市 民 球 場 」
(『新建築』 設 計 事 務 所 / 2011年 木 下 洋 ∼18年東京工業大学大学院環境・社会理工
0908)で日本建築家協会賞受賞/ 2015年「戸 介構造計画設立/現在、芝浦工業大学、東北 学院建築学系助教/ 2018∼21年東京電機大
畑図書館」
(『新建築』1407)で耐震改修優秀 芸術工科大学非常勤講師 学未来科学部建築学科准教授/ 2021年∼東
建築賞受賞/ 2016年「耐震改修における構造 京都立大学都市環境学部建築学科准教授
デザインの実践と啓発活動」で日本建築学会賞
(業績)
受賞/ 2017年
「サイエンスヒルズこまつ」
(
『新建築』1404)でTSUBOI AWARD受賞
編集後記
2022 04 165
総合カタログ「PROEX2022 ∼ 2023 上期」発刊 ドイツを代表する高級家具ブランド「ROLF BENZ」
タカショー ロルフベンツ東京
(株)タカショー ロルフベンツ東京
0120-51-4128 tel:03-6419-4321
https://takasho.co.jp/ https://www.rolf-benz-tokyo.jp
製品イメージ。 製品イメージ。Aerial-Delta(左)と1965-Brigitte(右)
。
「クレセント」価格:2,200円、 「サポート引手」(交換用)価格:8,910円。(価格は「Parts
SHOP」(YKK AP部品オンラインショップ)での販売価格(税込)
、送料・組立施工費等別)
166 2022 04
T O P I C S
繊細で柔らかい水の流れを実現したBRAVATのハンドシャワー 新製品カタログ2022-2023を創刊
デザインマネジメントシステム ハンスグローエ ジャパン
デザインマネジメントシステム(株)は、BRAVAT ハンスグローエ ジャパン(株)は、
「ハンスグロー
のハンドシャワー P70301を発売。Air-MIXテ エ・アクサー 新製品カタログ 2022-2023」を
クノロジーにより、空気が水滴を包み込み、肌 創刊。
「hansgrohe」と「AXOR」各ブランドの
に優しい柔らかな水の流れを実現している。ま 製品が 1 冊にまとめられている。ハンスグロー
た、節水タイプでありながら快適な水圧を維持 エのシルキーなシャワーモード「パウダーレイ
することが可能。グリップは人間工学に基づい ン」を搭載した「パルシファイ」や、
アクサーの「ア
た形状で、ヘッド自体も軽量で持ちやすく使い クサーワン」コレクション等、多数の新製品情
勝手もよい。 報と施工事例が掲載。
A4判、312ページ。両面が表紙となっている。
製品イメージ。シャワーの出方は
3種類でボタンで切り替える。 デザインマネジメントシステム(株) ハンスグローエ ジャパン(株)
0120-518-805 tel:03-5715-3073
クロームとブラックの2色展開。
https://www.bravat.jp/ https://www.hansgrohe.co.jp
ミリ単位でサイズオーダーができる「ウッドカスタムカウンター」 耐食性に優れたオールステンレス鋼製隠し丁番
サンワカンパニー スガツネ工業
(株)サンワカンパニーは、
ミリ単位でサイズオー スガツネ工業(株)は、オールステンレス鋼製隠
ダーができる「ウッドカスタムカウンター」を発 し丁番 HGS3D-S160SHを発売。すべての部
売。 奥 行 20 ∼ 60cm、 幅 45cm ∼ 3m ま 材がステンレス鋼製で耐食性に優れ、防火扉
で、それぞれ 1mm 単位でサイズオーダーが可 やホテル等の施設扉、住宅扉等への使用が有
能で、トイレ等の狭小空間に設ける奥行の浅い 効。扉を取り付けた後でも上下・左右・前後
カウンターやキッチンの腰壁を囲む対面カウン 方向に微調整ができる三次元調整機能付きで、
ター等さまざまなニーズに対応できる。 扉側と枠側で丁番の部品を分割でき、施工性
にも優れている。
施工イメージ。素材にはSDGsに配慮した植林 製品イメージ。
木のアカシアを使用。 本体価格:18,150円/個
(株)サンワカンパニー スガツネ工業(株)
価格:9,800円/台∼(税込)
。 (税込)。
tel:0120-468-838 tel:03-3864-1122
https://www.sanwacompany.co.jp/shop/ https://www.sugatsune.co.jp/
2022 04 167
元旦ビューティ工業 表4
広告掲載企業
パナソニック 表2
ユニオン 1
LIXIL 2∼7
ユニオンシステム 8
アルティス 10
スガツネ工業 WhO
スタジオノイ YAMAGIWA
タカショー ロルフベンツ東京
デザインマネジメントシステム YKK AP
新建築社ホームページ https://japan-architect.co.jp
別冊・臨時増刊のご案内
新建築2021年3月別冊 新建築2021年10月別冊
佐藤総合計画創立75周年の特集号。佐藤総合計画はこれまでに建築、都 梓設計の75周年記念号。梓設計の設計スタイルはクライアントと共に悩み、
市、環境などで、さまざまな問題に挑戦し、国内外であらゆる分野の建築設計 向き合い、真摯に取り組むスタイルです。創立から変わらないこのスタイルを
を担う設計事務所へと成長してきました。75年にわたる佐藤総合計画の経 守りながら、梓設計の活動領域は設計行為の充実を図りながらもその枠を超
験・実績・将来のビジョン、建築の設計を通じて変化する社会のニーズにどう えて、大きく広がり続けています。多様性にあふれ、
さまざまな新しいことにチャ
応え、貢献しているかを豊富なビジュアル、図版にて紹介します。 レンジし続け、すべてを自分事として考える。そんな特徴を持った個人の集合
体としての「わたしたち」梓設計の想いがこの特集号『WE ARE』
です。
新建築2021年4月別冊 『a+u』2021年11月臨時増刊号
100年以上の歴史を持つ防水メーカー大手である田島ルーフィングの屋根
ゲスト・エディターに慶應義塾大学名誉教授のダルコ・ラドヴィッチ氏を迎え、
防水「DIPS構法」等が支える軽やかな屋根をテーマとした特集号。
ジョルジュ・ぺレックの言葉「infraordinary( 並−以下のもの)」 ( Perec,
屋根30分耐火認定を取得したルーフデッキを下地とし、高品質な防水層と
“Approaches to What?,”1973)
をキーワードに、
ふだん見なれた
(ordinary)
都
断熱材で軽量屋根を構築する構法である「DIPS構法」
が活用された建築作
市を掘り下げる (infra-)という意図で、 新たな「東京」を多層的に紹介します。
品について、多様な詳細図から軽やかな屋根のつくり出す自由な空間とその
可能性をご紹介します。
詳細はWEBをご覧ください。https://japan-architect.co.jp 新建築ショップでの
ご購入はこちらから
株式会社 新建築社
〒100-6017 東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビルディング17F tel.03-6205-4380(代表)fax.03-6205-4386
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「新建築データ」で作成した
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「いつか旅行で行きたい建築」や 雑誌『新建築』『新建築住宅特集』に
「おすすめの美術館・図書館」
, 掲載された建築プロジェクトを検索・
閲覧いただけます
「気になるディテール集」など,
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新年度に向けて,
「#新建築データのフォルダ公開」で
新建築データの検索や使い方の
投稿してください. TIPSとなるような企画をはじめます.
新入生のかた,新社会人のかた,
フォルダ機能 20年におよぶ建築情報のアーカイブを,
気になる建築作品をフォルダに整理して人と共有することができます. この機会にぜひ,ご活用ください.
フォルダは公開・非公開の設定できるほか,
フォルダ名称や各作品へのメモは任意に変更できます.
https://data.shinkenchiku.online/
2
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年
4
月
号
︿
第
4
3
2
号
﹀
昭
和
61
年
7
月
8
日
第
三
種
郵
便
物
認
可
令
和
4
年
3
月
19
日
発
行
毎
月
1
回
19
日
発
行
定価二、
本体二、四二〇円
二〇〇円