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燃料と燃焼 20201112 佐々木

燃料について
燃料(木質チップ)の品質を表す指標の一つとして、三成分(工業分析)で表す。
水分 可燃分 灰分
(温度 105℃で減量) (600℃または 800℃で完全燃焼させ (乾燥、燃焼
て減量) を経た残さ)

可燃分は、揮発分(熱が加わるとガス化するもの)、固定炭素(ガス化せずに固体のま
ま、おき燃焼するもの、焼き肉屋で使う炭のようなもの)に分けられる。
木材は、一般的な石炭に比べて、揮発分が多く着火はしやすい。

また、可燃分を元素の割合い(元素組成)で表す場合もある。
(炭素 C、水素 H、酸素 O、硫黄 S、窒素 N、塩素 Cl)(下表参照)

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燃料と燃焼 20201112 佐々木

燃料の組成変動の影響
元素組成は樹木の種類ではそれほど変わらず、この割合が分かると必要空気量、発熱量
が決まるので、可燃分単体では燃焼に対して大きな変動を与えないが、水分、灰分の割合
が変化するので燃焼に対して変動を与える。

水分が蒸発するには 大量の熱量(25℃の水の場合 584kcal/kg)が必要。

例えば、水分(湿ベース)30%と 40%では、
燃料 1t中(灰分を無視して)
水分 30% 水分 300㎏ 可燃分 700㎏ 水分1に対して可燃分2.3
水分 40% 水分 400㎏ 可燃分 600㎏ 水分1に対して可燃分1.5

水分 40%の場合は、30%に対して 1.5/2.3=約 65%少ない可燃分で蒸発させなければな


らないが、可燃分が少ない分、熱量が不足するので、同じ発電量を得るにはトータルより
多くの燃料が必要。(単純に発熱量比例とすると 1.2 倍の燃料、例えば 80→96 t/日)
また、排ガス中の水分量が増えガス量が増加するので、 ID ファン等の動力も増え、売電
量が減少する。

また、木材の灰分は通常1%程度だが、樹皮(バーク)では多く、燃焼には直接大きな
影響がないが、灰分1%が2%となると灰の量が2倍となる。

燃焼とは、酸化反応(鉄が錆びる等)が光と熱を伴って起こること

燃焼の 3 要素(酸素:Oxygen、可燃物:Fuel、熱:heat)。別名:火の三角形(英語版)

燃焼に必要な要素として、次の 3 要素が挙げられる[1]。

1. 可燃性物質
2. 酸素
3. 発火点以上の温度

燃焼が継続するには、上記3つが継続して連鎖反応する必要がある。

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燃料と燃焼 20201112 佐々木

完全燃焼に必要な3 T

完全燃焼の要素として、次の 3 つの「T」が挙げられる[2]。

1. 燃焼温度(Temperature) 高いほうが良い。800℃以上
2. 滞留時間(Time) 高い温度を保って 2 秒以上
3. 空気(酸素)との混合状態(Turbulance) 燃料と酸素が良く反応(接触)するため
① 水分の蒸発
② 揮発分から
可燃ガスの発生と
その燃焼

燃 料 ( 木
材) 火炎
③ 固定炭素のおき燃焼

火格子

燃焼空気(酸素は空気中の 21%体積、再循環ガスでは更に低い)

火格子式燃焼炉について
上記は、燃焼炉を横から見た図で、燃料は左側から投入され、右側から灰となって排出される。

投入された燃料は最初に、①燃料中の水分が炉内の熱を受けて蒸発する。(排ガス中へ)

次に、②更に炉内の熱を受けて燃料の温度が上がると、燃料中の揮発分から可燃ガス(CO や
炭化水素等)が発生し、そのガスと燃焼空気中の酸素が反応し火炎をあげて燃焼する。

最後に、③燃料中の固定炭素(無煙炭のようなもの)が炎を上げずに赤熱してゆっくり燃焼する。

以上が本プラントで採用している火格子式燃焼のメカニズムで、火格子は燃料を少しず
つ下流に送りながら、火格子下から空気(酸素)を送り①乾燥、②③燃焼、灰化させる。
(他の燃焼炉形式として、流動床方式、ロータリーキルン式などが有る)
火格子式燃焼炉の重要な運転管理
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燃料と燃焼 20201112 佐々木

① 燃料投入量、組成に合わせた空気量の調整(火格子下4分割ホッパからの空気配分、
炉上部への二次空気を含めて)
② 投入量(プッシャ回数)、火格子(4 分割)動作サイクル回数
上記は、原則ボイラー蒸気圧により自動制御されるが 以下の炉内の状況により、設
定の変更や手動での調整が必要となる。
(炉内状況をカメラもしくは現場覗窓で常に監視することが重要)

1) 燃え切り点の調整

1)燃え切り点
火炎

火格子

揮発分由来のガス燃焼が完了し、炎が見えなくなる点を燃え切り点といい、この点が下
流すぎると、未燃分(燃焼しきっていないもの)が灰に交じり、燃料を無駄遣いとなる。

2)灰層の厚さ

2)灰層の厚さ 2)灰層の厚さ
幅方向で厚さが凸凹なのは
良くない
火炎

火格子

火格子(カメラ側から見た断面)

灰層が、炉横から見た場合、下流に向けて段々薄くなるのは良いが、幅方向で厚さが不
均一(凸凹)なのは、その位置での必要空気量が均等に入らなくなるので良くない。
(薄い所に、空気が集中して流れ、厚い所に空気が入りづらく、燃焼が遅れ更に厚くな
るという悪循環になる。)
3)燃料の一時的な過剰投入による燃焼悪化について
火格子上の燃焼が良くないときに、燃料を入れすぎると、燃料が
山となり、更に燃焼が悪化することが多い。
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燃料と燃焼 20201112 佐々木

火炎

これまで説明したように、炉内の温度、燃料の組成と位置(燃焼段階)(4つのホッ
パ毎)に合わせた空気(酸素)量、その位置における灰層の厚さが適切で 火格子上で良
好な燃焼が保てている場合は、燃料を投入すれば、入れた分だけ熱量が増え、蒸気圧、
蒸気量が増える。
しかし、燃焼が悪化(蒸気量、圧力が下がる方向)した場合は、最初の乾燥部分に燃
料が多すぎる、灰層が不均一で空気が均等に入らないなど、 火格子上での燃焼が良くな
い状態の場合は、燃料を入れても更に燃焼が悪化する場合が多い。(上記とは真逆で逆
応答という)
上記の通り、全く反対の反応することを念頭に、 火格子上での燃焼を常に良好に保つ
ため、燃え切り点、灰層の厚さのばらつきが無いよう、炉内を目視で監視し、炉内温度、
O2 濃度の上下動も考慮してプッシャー回数、火格子サイクル、空気量の配分を調整する
必要がある。

理論空気量と空気比について
燃焼に必要な空気量は、燃料中の各元素量が分かれば理論上の燃焼空気量は計算でき
る。
(C(炭素)+O2(酸素)→CO2(二酸化炭素)、2H2(水素)+O2(酸素)→2H2O(水)
これらのモル比で量が計算される)

都市ガスなどの性状が均質で気体の場合は、理論燃焼空気量の 1.05 倍程度供給すれば


完全燃焼可能であるが、木材のような固体で均質でない場合は 1.2~1.5(もしくは~2)
倍(空気比)の空気が必要。(その場合 O2 濃度が 3~6%となる)
実際の空気量=理論空気量×空気比
通常、廃棄物燃焼など有害物質が多い燃料の場合、完全燃焼(CO 濃度が最低)が最優
先であるが、本発電所では燃料中の有害物質が多くは無く、売電量を最大にすることが
目的であるので、所内電力を低減するためできるだけ空気比が小さいことが望ましい。
逆に小さすぎると未燃分が大量となり、燃料消費が多くなるので、適切な量の見極め
が重要である。(今後の課題)

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