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神経・生理心理学

第12回 情動と脳

1.第9回レポートの振り返り
2.情動とは
3・扁桃体のはたらき
4.ホルモンによる調節
5.報酬系回路

1.第9回レポートの振り返り
2.情動とは
3・扁桃体のはたらき
4.ホルモンによる調節
5.報酬系回路
第9回
右 レポート課題
(注意と脳)

ノルアドレナリン

2.スライドに出てきた以下の質問に答え注意について理解を深めましょう。
(1-1)全体的に注意は保たれているか? (1-2)眠くはないか?
(2-1)いま、何に注意を向けているか?
(2-2)それに注意を向け続けられるか?
(3―1)「注意を向けなくてはいけない」と思っているものは何か?
(3-2)うまく配分できているか?

1-2)
2時間かけて帰宅してから講義を視聴したのでちょっと眠かった
2-1)
数分前、周囲から聴こえてくる環境音が気になり、そちらに注意が向い
た。しかし、今は本講義動画に注意を向けている。/スマホの授業動画/他
のレポート/来月いくら貯金できるのか
3-1)
本講義動画、なのでネットサーフィンした履歴に注意が向かないようにタ
ブを閉じた/複数の学生が近くで談笑しているため時折注意がその会話に
行ってしまうが、授業も聴けている/今現在であるが、先のことや未来のこ
とばかり気にしてしまっている/正しい言葉遣いをすること/時間/SNSに
注意を向けてはいけないと思っている
感想ありがとうございます。
● 注意機能は30代~40代がピークだと思っていたが、20
代ー30代で、自分がいまピークと知って驚いた。
● 音楽や周囲の音で集中できなくなるがPosnerの3つの注意で
その理由がわかるようになった。
● 授業内の質問で身を引き締めて授業に意識的に取り組めた。
● 自宅より大学のほうが注意して講義動画を試聴できる。
● 家でよくものにぶつかるのは、注意力が関係していると思う

質問(1)
● 左脳が右半身を、右脳が左半身を司っているということが分
かってきたが、なぜ人間はこのような形に進化していったの
だろうか。

たまたま首と体がねじれて対側支配する個体が生じ、それが
生存にとって有利だった説(「知識のサラダボウル」)
https://salad-bowl-of-knowledge.github.io/hp/neuroscience/2020/03/07/contralateral_brain.html

質問(2) (注意の)コンポーネントとは?
(答え) (注意の)構成要素のことです。

質問(3)人間の注意力の総量はどのくらい?
(答え)「注意の総量」を、「外界からの刺激を一度に
明瞭化できる意識の範囲」または「一次的に把持して操作
できる情報量」とすれば、短期記憶と同じと考えてよい。
短期記憶は平均7チャンク(7つのかたまり)くらい。

質問(4)注意力は増やせる?
(答え)注意力の総量はそれほ
ど大きく増やせないと思われま
すが、うまく使うことで注意機
能は上がるかも。
障害で減ったぶんは回復しま
す。
1.第9回レポートの振り返り
2.情動とは
3・扁桃体のはたらき
4.ホルモンによる調節
5.報酬系回路

「情動」と「気分」の違い

◆「情動」emotion
短期的な、強い生理的・身体的変化を伴う感情体験。
例えば「喜び」「悲しみ」「恐怖」「怒り」。
行動反応(身をすくめるなど)、生理的反応(発汗な
ど)を伴うことも。

◆「気分」mood
ある期間(数日~数週間)持続する、比較的弱い感情
の状態。「ゆううつ」「浮かれ」など。

例)脳に傷のあるAさんは、親に叱られ「カッとなって怒
り」壁を壊した。すぐに反省し、僕はこんな人間じゃな
かったのにと、その後しばらく「落ち込む」。
主観的情動の起源に関する2つの理論
1)ジェームズ・ランゲ説(情動の末梢起源説)
主観的な情動は、身体的・生理的変化が脳に届くことに
よって起こる。「泣くから悲しい」「笑うと楽しい」

2)キャノン・バード説(情動の中枢起源説)
目にゴミが入って涙が出ても悲しくならないように、
生理的変化から情動が生じるわけではない。主観的情動
は、刺激が視床に入り皮質に届くことで起こるとした。

情動に関する脳部位としては大脳辺縁系が重要

帯状回(たいじょうかい) 脳弓

この中で、情動
を引き起こすの
に最も重要な役
割を担っている
のは・・・?

扁桃体 乳頭体

海馬
「脳と心のしくみ」
外界からの感覚情報に対して情動反応を引き起こすのは
(扁桃体 amygdala)でしたね。

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2.情動とは
3・扁桃体のはたらき
4.ホルモンによる調節
5.報酬系回路
扁桃体のはたらき

● 感覚入力された情報を吟味し、それに対応する情動
を作り出したり、快・不快を評価したりする。

● 怖い思いをしたり、怖い映像をみたりすると、扁桃体
が働く。一方、喜びや快感を感じるときもはたらく。

● 扁桃体の障害で「むかし怖がったものを、怖がらなく
なる」などの変化がある。

● ラットの扁桃体への強い刺激で、「嫌悪刺激を用いた
記憶」が消失したという実験結果があります。ただし
弱い刺激では嫌悪刺激の記憶が増強された。
(マッガウ「記憶と情動の心理学」)

扁桃体を通る情報の流れ「ぜんぶわかる脳の辞典」



1.第9回レポートの振り返り
2.情動とは
3・扁桃体のはたらき
4.ホルモンによる調節
5.報酬系回路

細胞の調節には2通り
体内の恒常性(ホメオスタシス)を保つための調節には
2通りある。

1.神経系の調節(第3回講義の課題)

シナプスを経由して標的細胞に向かい調節する。
作用が速い。

2.内分泌系(ホルモンによる調節)

ホルモンとは身体の働きを調節する化学物質。
からだの外側・内側で環境の変化が起きても同じになる
ように保つ働きをもつ。
血液を通して作用するので作用はゆっくり。
内分泌系に重要な視床下部と下垂体(中外製薬ウェブサイト)
ttps://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/medicine/karada/karada021.html

視床下部は視床の下部にある小さな組織。
恒常性(ホメオスタシス)の中枢である。
下垂体も小さな組織であるがホルモンを分泌し発育や身体内
部環境の安定維持に重要となる。

下垂体は視床下部によって調整される。

視床下部から放出因子と呼ばれる化学物質が送られると、
下垂体の細胞が刺激され、血液内にホルモンを放出する。

例えば、
● 喉が渇いたときに水を飲ませるホルモン
● 空腹になると食べさせるホルモン
● ストレス状況で出るホルモン
などがあります。

このうち、次スライド以降は、ストレス状況で出るホルモ
ンのはたらきについて説明します。
ストレスを受けたときのホルモンのはたらき

1)ストレスにより視床下
部から「副腎皮質刺激ホル
モン放出ホルモン(CRH、
corticotrophin-
releasing hormone)」が
分泌

2)下垂体から「副腎皮質
刺激ホルモン(ACTH、ア
クス、adrenocorticotropic
hormone)」が分泌

3)副腎皮質から糖質コル
チコイド(コルチゾール)
というホルモンが分泌さ
れ、血糖増加など生命維持
に重要なはたらきを行う

コルチゾールの効果

コルチゾールにより、血圧・脈拍の上昇や覚醒の上昇、血
糖上昇、抗炎症作用、免疫抑制作用などが起こり、ストレス
に対処しようとする。脳の成長を促す側面もある。
この炎症を抑える効果は喘息などさまざまな疾患の治療に
用いられる。

視床下部や下垂体にはフィードバック機構があり、多すぎ
れば抑制するなどの調整を行うことで恒常性が保たれる。

しかし、長期的なストレスにより副腎皮質刺激ホルモンやコ
ルチゾールが過度に分泌されると、不必要な血糖上昇や抵抗
力の低下などを引き起こし、病気にかかりやすくなる。
セリエのストレス学説「汎(はん)適応症候群」

ストレッサーによらず体内で起こる反応の流れ。

(1)警告期 (2)抵抗期 (3)疲労期


(疲はい期)
神経系では交感神 ストレッサーと闘う。
経が興奮。 ストレッサーとの
抗体がつくられ、心理 闘いが慢性化する
内分泌系では、副 的ストレスに対しては と、抵抗力が衰
腎皮質からコルチ 相手と闘うか逃げるか え、病気にかかり
ゾールを分泌して 備えて緊張する やすくなる。
からだの組織を活
性化させ、ストレ
スに備える

1.第9回レポートの振り返り
2.情動とは
3・扁桃体のはたらき
4.ホルモンによる調節
5.報酬系回路
「快感」も情動のひとつでドーパミンが関与する

例えば空腹時にケーキを食べたり、お金が得られた
り、欲求が満たされるとき、脳内では・・・

1)( 腹側被蓋野/ふくそくひがいや)が活性化され

2)( 側坐核/そくざかく )が刺激され

3)神経伝達物質のドーパミンが分泌されます。

それにより幸福感、快感が生まれます。

この回路を「報酬系回路」といいます。

腹側被蓋野(中脳)と側坐核(前頭前野の後ろの奥にあ
り基底核に属する)の場所を確認しましょう。

側坐核
情動回路と報酬系回路(図の右側)
Neurogenesis Webサイトよりhttp://www.brain-mind.jp/newsletter/04/story.html

扁桃体、視床下部を経由した情
動刺激や、腹側被蓋野を経由した
快感刺激が側坐核で神経伝達物質
ドーパミンの放出を促す。

報酬系回路と依存症

自分の手で報酬系を刺激できることを知ったラッ
トは、食事も睡眠も忘れてひたすら刺激を続けると
いう実験結果がある。

ヒトも麻薬や覚せい剤などの摂取により、報酬系
回路の興奮性シナプス伝達が可塑的に増強されると
考えられている。
報酬系回路を刺激する術を知ってしまうと、その
誘惑に抵抗できなくなり、ひたすらその行動をして
しまう。
ギャンブル、依存症などのほか、SNSがやめられ
なくなるのも報酬系回路から考察できるかもしれな
い。

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