ドラゴンボール超 スーパーヒーロー 映画ノベライズ みらい文庫版 ドラゴンボール超 映画ノベライズ みらい文庫版 (集英社みらい文庫)

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集英社eみらい文庫

ドラゴンボール超 スーパーヒーロー
映画ノベライズ みらい文庫版
原作・脚本・キャラクターデザイン 鳥山 明
著 小川 彗
この本は縦書きでレイアウトされています。
また、ご覧になる機種により、表示の差が認められることがあります。
Contents もくじ

てん さい

天才 ドクター・ヘド
ぞう にん げん しゅう らい

造人 間の 襲来
ぐん さく せん

その3 レッドリボン軍の作 戦
せい たたか

その4 ビルス星の闘い
シェン ロン

その5 いでよ神 龍
ゆう かい

その6 パン 誘 拐される
てき

すべき敵はだれだ
ざ かい ぶつ

覚める 怪物
し とつ げき

死の突撃
そん ご はん ほん とう ちから

孫悟飯の本 当の 力
あした

それぞれの明日
こう だい せい やく しき ち だい くるま すす

広大なレッド製薬の敷地を、1台のグレーの車が進んでいく。
おか さき た えん とう けい ほん しゃ

むかう丘の先に建っているのは、円筒形のりっぱな本社ビルだ。
げん かん まえ とう ちゃく くるま じょう ぶ ぴき と

玄関前に到着した車の上部には、いつのまにか1匹のハチがのぞきこむように飛んでいた。
「…………」
くるま お おお おとこ め うつ

車から降りた大男を、ハチの目が映しだす。
うえ おお あたま あか は で

くるんと上に大きくあがったリーゼント頭に、赤の派手なスーツ。
いろ ひ にく くち もと

色つきメガネをかけ、皮肉げにゆがんだ口元。
め おとこ かお こま ぶん せき じょう ほう て

ハチの目が男の顔のパーツを細かく分析し、あらゆる情報データベースと照らしあわせる。
おとこ な まえ

みちびきだされた男の名前は、カーマイン。
せい やく かん ぶ

レッド製薬の幹部だ。
じ まん な あし ど しゃ ない すす

自慢のリーゼントをクシでとかしながら、慣れた足取りで社内を進む。
しゃ ちょう しつ はい おく おとこ すう まい しゃ しん

社長室に入ると、奥のデスクでふんぞりかえっている男へ、数枚の写真をわたした。
「ふ~ん……」
しゃ しん み おとこ せい やく しゃ ちょう

まじまじと写真を見つめるこの男は、レッド製薬社長のマゼンタだ。
たい かく くち きん いろ

がっしりとした体格で口ひげをたくわえ、金色のネックレスをつけている。
まご

「これがドクター・ゲロの孫か……?」
は まき まゆ

葉巻をふかしながら、マゼンタが眉をひそめる。
しゃ しん うつ せ ひく こ ぶと わか もの

写真に写っているのは、背の低い小太りの若者だった。
かみ たい わり あい き せ お

髪を7対3の割合でぴたりとなでつけ、パーカーを着て、リュックを背負っている。
かい さん か しゃ しん

どうやら、ヒーローショーのサイン会に参加しているときの写真のようだ。

まるでただのヒーローオタクにしか見えない。
りょう て く し せい しず

けれど、カーマインは両手をうしろに組んだ姿勢で静かにうなずいた。
さい

「ドクター・ヘド。24歳です」
はかせ い しゃ

「こいつも博士なのか。それとも医者か」
し かく も

「どちらの資格も持っています。ごらんください」
い そう さ かべ かたち きょ だい ぐん えい が

そう言って、カーマインがリモコンを操作すると、壁のリボンの形をした巨大なモニターに、レッドリボン軍のロゴが映画のオー
とう えい

プニングのように投影される。
どう じ けい かい おん がく おん せい なが

同時に、軽快な音楽と、「カーマインプレゼンツ」という音声が流れた。
つく

「おまえが作ったのか?」
「ハイ」
すこ とく い かお

カーマインが少しだけ得意げな顔で、にやりとうなずく。
お か けい ず しゃ しん うつ

それからピッとリモコンを押し、モニターにヘドの家系図と写真を映しだした。
ちち おや せん さい じ なん しょう がく せい りょう しん じ こ た かい こ ども

「父親はドクター・ゲロの先妻の次男で、ヘドが小学生のときに両親はそろって事故で他界。ヘドは子供にもかかわらず、そ
い さん ぐ さい はく し ごう と てん さい つよ せい かく けん きゅう しつ

の遺産でひとり暮らし。14歳で博士号を取るほどの天才ですが、そのあとは、クセの強い性格のせいか、どこの研究室にも
なじめず」
わら そつ ぎょう しき しゃ しん けん きゅう しつ じ だい ひょう じょう しゃ しん か

モニターでは、あどけなく笑う卒業式のヘドの写真が、研究室時代のひねくれた表情の写真に変わっていく。
い さん どく じ けん きゅう つづ

「のこされたわずかな遺産で、独自に研究を続けているようです」
こう つ ごう と

「それは好都合じゃないか。さっそくこちらに取りこむんだ」
わら

マゼンタはニヤリと笑って、かきまぜていたコーヒーをすすった。
「うげっ!」

どうやらシナモンパウダーを入れすぎたらしい。
おも した よ お

思わずベッと舌をだし、すぐにデスクの呼びだしボタンを押す。
ちゃ も

「お茶を持ってきてくれ」
「カシコマリマシタ」
じゅ わ き どう じ い

おてつだいロボットが受話器ごしにこたえたのとほとんど同時に、カーマインが言った。
か げつ ま

「3ヶ月お待ちください」
ちゃ

「お茶をか?」
げん ざい けい む しょ ふく えき ちゅう

「ちがいます。ドクター・ヘドは、現在、刑務所に服役中です」
「シツレイシマス」
せつ めい あたら ちゃ も

説明のあいだに、おてつだいロボットが新しいお茶とせんべいを持ってくる。
ふく えき ちゅう

「服役中? なにをしたんだ?」
「それが」
お かん し えい ぞう

カーマインがリモコンを押すと、コンビニの監視カメラ映像にきりかわった。
かお いろ わる おとこ う

顔色の悪いツギハギだらけの男たちが、コンビニでレジを打っている。
ぶ き み おどろ きゃく に よう す うつ

その不気味さに驚いた客が、あわてて逃げだす様子が映っていた。
れい あん じょ し たい たい ぬす かん たん じん ぞう にん げん か こう はたら し きん え

「霊安所にしのびこんで、死体を3体盗み、簡単な人造人間加工をして、コンビニで働かせて資金を得ていたようです」
てん さい

「ものすごい天才のような、そうでもないような……」
じん ぞう にん げん ごう とう ばや

人造人間に強盗でもやらせたほうが、てっとり早くかせげるだろう。
はたら つか い み

それを、まじめに 働かせて捕まったようだ。まったく意味がわからない。
てん さい かみ ひと え

天才となんとかは紙一重というやつなのか。
り よう か ち

けれど、利用価値はある。
おな じん ぞう にん げん ぎ じゅつ たく えつ

「どちらにしても、ドクター・ゲロと同じく、人造人間の技術は卓越していそうだ――」
い お つくえ あたま み しん ちょう ひく

そう言ってイスから降りたマゼンタは、机から頭がかろうじて見えるくらいの身長の低さだ。
まど そと み ちゃ なが ちゃ き かん はい せい だい

窓の外を見ながら、かじったせんべいをお茶で流しこもうとすると、お茶が気管に入って、マゼンタは盛大にむせた。
「グフッ、ゴフッゴフッ! エゲェッ!」
「…………」
のう りょく ぐん ふっ かつ ふ か けつ

「とっ、とにかく、ヤツの能力はレッドリボン軍の復活に不可欠だ!」
き い

気まずさをごまかすように、いさましく言いはなったマゼンタだが――
「あちっ!」
ちゃ うで あつ

お茶を腕にこぼしてしまい、その熱さにとびはねたのだった。
か げつ ご

それから3ヶ月後――
プリズン エイト けい む しょ しゅっ しょ ひ

『PRISON 8』刑務所からドクター・ヘドが出所する日がやってきた。
おも おも とびら いき むらさき いろ み むね

重々しい扉から、ため息をついてでてきたヘドは、 紫 色のヒーローコスチュームに身をつつんでいた。胸には「H」のマークが
ついている。
けい む しょ なか しゅう じん と

そんなヘドに、刑務所の中から囚人たちのヤジが飛んだ。
に ど

「二度とくるんじゃねー!」「バカヤロー!」
はや

「うんこたれー!」「早くあっちいけー!」
しゅう じん な

ヘドにむかって、囚人たちからボールやトマトが投げられる。
けい む しょ

ヘドはギロリと刑務所をにらみつけると、スーツケースをあさりはじめた。
と しゅ だん ぬ む ぞう さ けい む しょ な い

そして取りだした手りゅう弾のピンを抜いて、無造作にポイッと刑務所へ投げ入れる。
ある すう びょう ご

なにごともなかったかのように歩きはじめた数秒後。
だい ばく はつ お

うしろでドカンッ! と大爆発が起こった。
ある すがた だい す

マントをなびかせ歩く姿は、まるで、ヘドの大好きなスーパーヒーローのようだ。
「へっへっへっ……」
じ ぶん えん しゅつ まん ぞく ある くるま だい

自分の演出に満足しながら歩くヘドのうしろから、車が1台やってきた。

「ドクター・ヘドだね。待っていたよ」
よこ へい そう くるま した こえ

ゆっくりと横に並走した車から、いかにも親しげに声をかけてきたのはマゼンタだ。
うん てん せき よう す ね ぶ

運転席では、カーマインがヘドの様子を値踏みするようにうかがっている。
む ごん あゆ と あい そ こと ば つづ

無言のまま歩みを止めないヘドに、マゼンタは愛想よく言葉を続けた。
しつ れい わたし

「これは失礼。私は――」
せい やく しゃ ちょう

「レッド製薬の社長だろ」
「!」
しょう たい い おも ふ

とつぜんマゼンタの正体を言いあてられて、カーマインは思わずアクセルを踏みこんだ。
み す うす わら い き き かん おぼ

なにもかもを見透かしたようなヘドの薄ら笑いに、言いようのない危機感を覚えたのだ。
「オイッ!」
つよ け よこ

けれどマゼンタからシートを強く蹴られて、しかたなく、ヘドの横につけなおす。
わたし

「なぜ私のことがわかったのかね?」
しつ もん わら

マゼンタの質問に、ヘドはにやりと笑った。
しら

「……調べたんだよ」
しら

「調べたとは?」
うん てん まえ けい む しょ うん どう じょう てい さつ おも

「運転しているあんた。この前、刑務所の運動場にいたとき、ボクのことを偵察してたよね? あやしいと思ってあとをつけさせ
たんだ」
「……どうやって……」
し てき まゆ

指摘されたカーマインが眉をよせる。
さい しん ちゅう い び こう

細心の注意をはらったはずだ。尾行だってされていない。
ひだり て まえ

くやしそうなカーマインをしりめに、ヘドはとつぜんバッと左 手を前につきだした。
ま たん まつ はな

スッとひじを曲げ、グローブにしこんだ端末にむかって話しかける。
まる

「ハチ丸! おいで!」
とく ちょう は おと き

どこからともなく、ブーンという特徴のある羽音が聞こえてきた。
め まえ ぴき かた と

マゼンタたちの目の前で、1匹のハチが、ヘドの肩におとなしく止まる。
とく い え う て こう お へん けい

ヘドが得意げな笑みを浮かべて、手の甲を押すと、グローブが変形してモニターがでた。
が めん か げつ まえ よう す うつ

その画面には、3ヶ 月前のマゼンタとカーマインの様子が映しだされている。
かい ぞう つく

「ヘヘヘ……ハチを改造して創った、サイボーグエージェントだよ」
まる な ごえ おと

ハチ――ハチ丸がこたえるようにピロピロと鳴き声のような音をだした。
かい はつ てい さつ き

ヘドがナノテクノロジーで開発した偵察機らしい。
せい やく がい しゃ しゃ ちょう しつ はい ほう こく

「あんたをつけていったら、レッド製薬会社の社長室に入り、ボクのことを報告した」
おどろ しら り ゆう

「驚いたな……でもキミを調べていた理由まではわからないだろ?」
そう ぞう き き

「だいたいの想像はつくかな……ちょっと聞きとりにくかったけど、かすかに『レッドリボン』って聞こえていたからね」
かた

マゼンタがぴくりと肩をゆらした。

そこまで知られているのなら、いまさらごまかしきることはむずかしい。
くるま の こう ぶつ しら

「まあ、とりあえず車に乗りたまえ。好物はいろいろ調べてあるんだよ」
「!」
い み め ひか な

言いながらジュースを見せると、ヘドの目がきらりと光り、のどがごくりと鳴った。
けい む しょ か し

刑務所にいたヘドにとって、ジュースやお菓子はひさしぶりだ。
おく

「ちょっと奥にいってくれる?」
の ば しょ はな

あっさりと乗りこんできたヘドに場所をあけ、マゼンタはやさしく話しかけた。
けい む しょ ぐ しゅう じん

「刑務所暮らしはどうだったかね? ほかの囚人にいじめられたりしなかったか?」
はい し

「入ったころはそんなヤツもいたけど、みんななぜかナゾの死をとげていなくなったよ……ひひひ」
「そっ、そうか……」
ぶ き み わら き も お は まき と

不気味に笑うヘドのとなりで、マゼンタは気持ちを落ちつかせようと葉巻を取りだす。
ほん だい

本題はここからだ。
の どう じょう し せん

ジュースをおいしそうに飲むヘドに、同情するような視線をむける。
ざん ねん

「おじいさんのドクター・ゲロは残念だった」
しょう じき こ ども し あ

「正直、どうでもいいね。ボクはまだ子供だったし、なんで死んだのかもわからないし。会ったことさえなかったんだ」
ほん とう きょう み の お こおり た

本当に興味がなさそうだ。飲み終わったジュースのフタをあけ、のこった氷をガリガリと食べはじめる。
ひ は まき い

なかなか火のつかない葉巻をあきらめ、マゼンタは言った。
き ぐう おな じん ぞう にん げん けん きゅう ねっ しん

「しかし、奇遇なことに、キミもおじいさんと同じく人造人間の研究に熱心なようだね」
さい きょう じん ぞう にん げん けん きゅう

「最強の人造人間の研究をね」
わたし のぞ てん さい うしな いた で ちち わたし けん

「ハハハ! すばらしい、それこそ 私が望むものだ。天才を 失ったのは痛手だったよ……父のレッドがなくなったあと、私が研


きゅう し きん

究資金をだしていたんだがね」
てん さい こん ど ちょう てん さい み

「なるほど。天才ドクター・ゲロにかわって、今度は超天才のドクター・ヘドを見つけたってわけだ」
「そういうこと……」
わら まど した お

ふっと笑ったヘドに、マゼンタは窓の下のボタンを押した。
ひら

アームレストがカパリと開く。
なか

中からバニラクリームをはさんだココアクッキーがあらわれた。
て か けん きゅう ひ よう せつ び のぞ ほう しゅう たい おく

「どうかね、手を貸してくれないか? 研究費用や設備はキミの望みのまま。報酬は1体につき三億はらおう!」
い まい み

言いながら、マゼンタはクッキーを3枚とって見せる。
こま かっ て まい

だがヘドは「うーん……困ったな……」とつぶやいて、勝手にクッキーを1枚とった。
こま

「おや? なにが困るんだね」
せ けん し せい やく がい しゃ ぐん おもて かお し きん げん こ ども

「世間には知られていないけど、レッド製薬会社はレッドリボン軍の表の顔であり、資金源だったでしょ? まだ子供だったこ
ぐん えい きょう う そ ふ りょう しん きら

ろ、レッドリボン軍の影響を受けた祖父のことを、両親は嫌っていたからね」
し おも

「ほう、そこまで知っているとは思わなかったな……」
つぎ つぎ くち い たん たん つづ

次から次へとクッキーを口に入れながら、ヘドは淡々と続ける。
つよ ぐん もく てき むかし おな せ かい せい ふく

「それにボクは、強くてカッコいいスーパーヒーローのマニアなんだ。レッドリボン軍の目的が昔と同じく世界征服だとしたら、
しゅく てき どう し

スーパーヒーローは宿敵同士じゃないか」
おとこ せ かい せい ふく み わたし しん もく てき き けん れん ちゅう れん ちゅう いっ そう

「ハッハッハッ、おもしろい男だ。世界征服に見えるかもしれんが……私の真の目的は、危険な連中やたてつく連中を一掃
しゃ かい ちゅう じつ へい わ せ かい きず い み せい ぎ み かた

し、社会に忠 実で平和な世界を築きあげることだよ。ある意味、正義の味方だ」
り ゆう こえ あか

いかにもな理由をならべたてるマゼンタの声は明るい。
ゆう しゅう ず のう ほん しつ み ぬ

けれどヘドは優秀な頭脳で、あっさりと本質を見抜いてしまった。
ちから じ ぶん おも せ かい けん りょく きょう み けん きゅう い がい

「ようするに、力ずくで自分の思いどおりの世界にしたいってことかなぁ。まあ、権力に興味のないボクにとって、研究以外はど
うでもいいことなんだけどね」
しん そこ い つぎ て の

心底どうでもいいと言いたげに、次のクッキーに手を伸ばす。
が、クッキーはのこっていなかった。
あたら まい つい か み

マゼンタはすかさず新しいクッキーを10枚追加して、ヘドに見せる。
き すす たい じゅう おく

「あまり気が進まないんだったら、1体につき――十憶というのはどうかね?」
し せん つい か くぎ

ヘドの視線は追加のクッキーに釘づけだ。
「ことわれないよね~」
い かた うん てん せき じゅう こう

その言い方に、運転席のカーマインがヘドに銃口をむけた。
「じゃあ、まあ、しょうがないか」
さい ぜん ほう ほう

「そう。それがキミにとっても最善の方法だよ」
て じゅう めい はな た い

手で銃をおろすよう命じながら話すマゼンタに、ヘドはクッキーを食べながら言った。
い じゅう ひ ふ てい ど しょう げき た とく しゅ くすり ちゅう しゃ

「言っておくけど、銃でおどされたからじゃないよ。ボクの皮膚はある程度の衝撃に耐えられるように特殊な薬を注射してある
からね。それに……」
わら し せん さき よこ と まる すがた

ニヤッと笑った視線の先には、いつのまにかカーマインの横を飛ぶハチ丸の姿が。
まる どく ばり じん ぞう にん げん にん げん ぶ ぶん

「このハチ丸の毒針はおそろしいよー。たとえ人造人間でも、人間の部分がのこっていたらイチコロじゃないかな」
「!」
はり ひか まる

キラリと針を光らせるハチ丸に、カーマインはあわてた。
て そう さ くるま はげ かい てん

手ではらおうとしたいきおいで、ハンドル操作をあやまり、車が激しく回転する。
きょう りょく き ばく だい よ さん つか し じょう さい こう じん ぞう にん げん つく み りょく かん

「――っ! ボクが協 力する気になったのは、莫大な予 算を 使って史上 最高の人 造人間を創りだすことに魅 力を 感じた


からさ!」
くるま なか い

ぐるぐるとまわる車の中で、シートにしがみついたヘドが言う。
いち ど い しゃ ちょう や ぼう きょう み

「もう一 度言っておくけどッ、マゼンタ社 長の野望には興 味がない。い、いいね!」


て だま と まる おも ひと すじ なわ

手玉に取ってうまく丸めこんでやろうと思っていたが、一筋縄ではいかないらしい。
てん さい くるま なか しゅ ちょう ま

さすがは天才ドクター・ヘド。まわる車の中でも主張は曲げないようだ。
けん きゅう ゆう せん か がく しゃ き しつ こう つ ごう

けれど、研究をなによりも優先させたい科学者気質は、マゼンタにとって好都合でもある。
「……けっこうだ!」
こた

マゼンタもシートにへばりつくようにして答える。
けい やく せい りつ くるま はし

ひとまず、契約成立だ。車はまたまっすぐに走りだした。
さい だい てき もく ひょう

「――で、最大の敵の目標は?」
あたま はなし

あとはこの頭でっかちのヒーローオタクに、話をあわせてやればいい。
わら み

マゼンタはニヤリと笑ってヘドを見た。
たお れん ちゅう

「セルを倒した連中だ」
「それって、ミスター・サタンじゃ……」
いち み われ われ ちょう さ じく ひ みつ そ しき

「いや、ちがう。ヤツも一味だが、我々の調査ではカプセルコーポレーションのブルマを軸にしたおそろしい秘密組織だよ」
せ かい いち だい ふ ごう わる ぜん ぜん き

「カプセルコーポレーション? 世界一の大富豪の? 悪いウワサなんて全然聞かないけど」


ふ しん こえ み の しん けん かお

不審そうな声をあげたヘドに、マゼンタは身を乗りだして真剣な顔をしてみせた。
ほん しゃ そら と にん げん で い もく げき しゃ なん にん われ われ ちょう さ

「イヤイヤ。カプセルコーポレーションの本社に空を飛ぶ人間が出入りしてるという目撃者は何人もいる。我々の調査では、
う ちゅう じん

おそらく宇宙人だよ……」
う ちゅう じん

「宇宙人!?」
め おお み ひら た て と

ヘドの目が大きく見開かれ、クッキーを食べる手が止まった。
かんが かっ き てき う ちゅう せん う ちゅう じん ぎ じゅつ おも う

「ああ。考えてもみたまえ。あの画期的なカプセルシステムや宇宙船なんて、宇宙 人の技術なしでできたと思うかね? 宇
ちゅう じん り よう ち きゅう の と

宙人がカプセルコーポレーションを利用して、地球を乗っ取ろうとたくらんでいるんだ」
とっ ぴょう し はなし

「……突拍子もない話だな」
い おも み すう ねん まえ

「そう言うと思ったよ。これを見たまえ。数年前のものだ」
むね

マゼンタは胸ポケットからスマホをだした。
スーパー じん さい きょう てき せ なか けん こま ぎ け と うつ

超サイヤ人になったトランクスが、最強の敵であったフリーザを背中の剣で細切れにし、消し飛ばすシーンが映っている。
ち きゅう き き すく

かつておとずれた地球の危機は、トランクスが救ってくれた。
じ じょう し

けれどそんな事情など、ヘドが知るはずもない。
おも う ちゅう じん う ちゅう じん どう し ち きゅう たたか ち きゅう と

「こんなヤツがいると思うかね? 宇宙 人だよ。宇宙人同士が、この地球で闘っていたんだ。おそらく地球の取りあいで
そ しき しょう り

ね……このときはブルマの組織が勝利したようだ」
いち み ぶ りょく いっ き ち きゅう の と

「だが……そうだとしたら、なんでブルマの一味は武力で一気に地球を乗っ取ろうとしないんだ?」
とう ぜん ち きゅう じん ろう どう りょく と ち きゅう かん ぜん らく えん いっ き にん げん なか ま

「当然、地球人を労働力として取りこみたいからだよ。地球を完全な楽園にしあげたら、一気に人間をかたづけて仲間の
う ちゅう じん よ

宇宙人を呼びよせるつもりなんだ」
マゼンタがもっともらしくたたみかける。
そ ふ つく さい こう けっ さく う ちゅう じん ひ みつ そ しき つか せ かい じゅう とみ

「セルはキミの祖父が創りだした最高傑作だ。宇宙 人の秘密組織を使い、世界中の富をほしいままにするカプセルコーポ
いっ し むく おく かえ う じん ぞう にん げん ごう ごう うら

レーションに一矢報いようとセルを送りこんだのだが、返り討ちにあってしまったんだ……そして人造人間17号と18号にも裏
ぎ と

切られ、ヤツらに取りこまれてしまった……」
む ねん かんが うで く

無念さをにじませるマゼンタに、ヘドは考えこむように腕を組んだ。
ふか こし

シートに深く腰をあずける。
てき て

「敵はかなり手ごわそうだな……」
そ しき なか ま じん だい ま おう

「ああ、組織の中にはあのおそろしい魔人ブウやピッコロ大魔王もいる」
ゆう めい はかせ う ちゅう じん

「有名なブルマ博士も宇宙人なのか?」
「……おそらく」
しん けん ひょう じょう た て と しゃ ない ぐん そう

真剣な表情でクッキーを食べるマゼンタに、ヘドもクッキーを手に取った。車内には、カーマインがかけたレッドリボン軍の壮
だい

大なテーマソングがひびいている。
わ ひょう じょう ひ い

クッキーをふたつに割って、クリームをすくってかじったヘドは、表情を引きしめて言った。
で ばん

「ヒーローの出番だな」
たお じん ぞう にん げん つく じ しん

「そういうことだ……ヤツらを倒せるような人造人間を創りだす自信はあるかね?」
あおるように、カーマインがボリュームをあげる。
しつ もん め ざ う ちゅう さい きょう じん ぞう にん げん か

「くだらない質問だな。たったいま、ボクが目指すのは、宇宙で最強の人造人間に変わったんだよ」

言いながら、ヘドはフードをぐいっとかぶった。
あたま さき かん ぜん へん しん

頭からつま先まで、完全に変身ヒーローのようなかっこうになる。
こ ぶと に あ

しかし、小太りのヘドにはまるで似合っていなかった。
「カッコイイだろ」
「あっ、ああ……」
とく い き ぶん がい

だがヘドは得意げだ。ここで気分を害してはいけない。
はな わら も こぶし

バックミラーごしに鼻で笑うカーマインのうしろで、マゼンタは盛りあげるように拳をにぎる。
ぐん ふっ かつ ちか

「よし! レッドリボン軍の復活は近いぞ!」
「おー!」
き たか だか こぶし

その気になったヘドも、マゼンタといっしょに高々と拳をつきあげたのだった。
こ び なか みずうみ たき なが おと

木もれ日の中、 湖から滝が流れる音がする。
しず そう ちょう

静かでおだやかな早朝だ。
「…………」
はい ご かん け はい

ピッコロは背後に感じる気配をうかがっていた。
パシャン――
みずうみ きょ だい ぎょ おお おと た と しゅん かん

湖で、巨大魚が大きな音を立てて飛びはねた 瞬 間。
もう か あたま ちい しょう じょ

猛スピードで駆けだしたのは、おかっぱ 頭の小さな少女。
ご はん むすめ

――悟飯の娘、パンだ。
さい み がる どう さ じ めん りょう て

まだ3歳だというのに、身軽な動作で地面に両手をつき、ばねのようにくるりとまわる。
と き ぎ すがた

そのいきおいでピッコロを飛びこえ、木々につっこみ姿をかくす。
「…………」
な は おと き き い どう

ザザ、ザザザ、と鳴る葉の音は、木から木へと移動しているのだろう。
うで く け はい め お

ピッコロは腕を組んだまま、しっかりとその気配を目で追った。
ふと みき け じ めん お よこ と

太い幹を蹴ったパンは、地面に降りていきおいをつけ、ピッコロの横に飛びだしていく。
「――――」
げ わら りょう て がん めん

すかさずくりだされたピッコロのまわし蹴りを、パンはニッと笑って両手でつかんだ。そのままくるりとまわり、顔面めがけてすかさ
ずキック!
「!」
く うで と かえ うご

スキをつかれたピッコロは、組んでいた腕をあわてて解くと、返す動きでパンをはじいた。
ガンッ!
ふ と いわ おと

吹っ飛ばされたパンが岩にぶちあたる音がする。
こ ども あい て すこ ちから い

とっさとはいえ、子供相手に少し力を入れすぎてしまった。
「いった~……」
つち けむり なか お あたま おお

土 煙の中から起きあがったパンの 頭には、大きなガレキがのっていた。
「……だいじょうぶか?」
「へいきへいき!」
しん ぱい も わら

心配するピッコロに、パンはガレキを持ちあげてニカッと笑った。
おお

大きなケガはないようだ。
きょう

「よし。今日はここまでだ」
いわ すわ じ ぶん と え がお じ ぶん よう

岩に座ったピッコロに、パンは自分のリュックからミネラルウォーターを取りだして、「ハイ」と笑顔でさしだした。自分用とピッコ
よう よう い

ロ用のふたつを用意していたらしい。
そら や ちょう こえ き ふたり みず の

空に野鳥の声を聞きながら、二人ならんで水を飲む。
ご はん ちち おや

「なかなかいいぞ。悟飯……というか、おまえの父親よりもスジがいいくらいだ」
「だったらそろそろ――」
しゅ ぎょう かん そう つた いわ お

修業の感想を伝えるピッコロに、パンは岩からぴょんと降りた。
りょう て は

両手をつきだし、かめはめ波のようなポーズをきめる。
て き こう は ご てん

「手からとびだす気功波とかおしえてよ。悟天くんやトランクスくんみたいに」
い き ほん かん そら と

「言ったはずだ。そういうのは基本が完ぺきにできてからだと。まだ空も飛べんくせに」
いき い かた お

ため息をつきながらそう言われて、パンはしゅんと肩を落とした。
「むずかしんだよ~」
とう ぜん

「むずかしいのは当然だ。やってみろ」
けい かい うご き

あれだけ軽快に動くことのできるパンだが、気をコントロールするのはへたくそだ。
い こぶし め と

ピッコロに言われてむくれながらも、パンは拳をにぎって目を閉じる。
ひ しゅうちゅう あし もと は う ちゅう しん

あごを引いて集中すると、パンの足元で葉が浮きあがり、パンを中心にまわりはじめた。
りき ねが き

「力むな。願え。そうすれば気がコントロールしてくれる」
すこ う き

かかとが少しだけ浮いた気がする。
――が、それだけだった。
「はぁ……、だめだー」
さい じ かん じん ち なが いち ど

「ふん。いそぐこともないだろう。まだ3歳だ。時間はたっぷりある。それにおまえにもサイヤ人の血が流れている。一度コツをつ
かん たん

かんでしまえば簡単だ」
かた お み

肩を落とし、トボトボともどってきたパンがピッコロを見あげる。
「……ねぇ、ピッコロさん」
「なんだ?」

「パパってその気になったらジィちゃんよりつよいってホント?」
ご くう

「ジィちゃん? ……悟空のことか。ああホントだ。いまはどうかわからんがな」
むかし ご はん こ ども しゅ ぎょう

その 昔、まだ悟飯が子供だったころ、修業をつけたのはピッコロだ。
せん ざい のう りょく ご くう こ おも ご ま じん きょう てき たたか ご

潜在能力はあの悟空をも超えていたとピッコロは思っている。その後も、魔人ブウやセルなどといった強敵と闘うたびに、悟
はん のう りょく かい か め

飯の能力開花は目をみはるものがあった。
ちち すがた し

けれど、そんな父の姿をパンは知らない。

「パパがたたかってるとこ見たことないけど」
たたか ひつ よう たたか

「闘う必要がないからだろう。そのときがくれば 闘うさ」
「ふーん」

パンは、よくわからないとでもいうように、クルリとその場でターンした。
かえ ち こく

「もう帰れ。遅刻するぞ」
わら み

パンはニコッと笑ってピッコロを見あげた。
よう ち えん

「じゃ、幼稚園がおわったらまたね」
まん ぞく じ めん け

うなずくピッコロに満足して、ヨーイ、ドン、とばかりに地面を蹴る。
まるでロケットスタートだ。
つち ま すがた み

あたりに土ぼこりが舞って、パンの姿はあっというまに見えなくなった。

パンを見おくってから、しばらくあと。
きょ だい いわ うえ めい そう しゅ ぎょう

ピッコロはいつものように、巨大な岩の上で瞑想の修業をしていた。
みみ おと き

と、その耳に、ブブブ、というバイブの音が聞こえてきた。
かん かく いえ うえ お な

感覚をすませば、どうやら家のテーブルの上に置いてきたスマホが鳴っているようだ。
「…………」
な も ご はん つま

ピッコロのスマホを鳴らすのは、これを持たせた悟飯の妻のビーデルか、はたまたブルマくらいだろう。
と かえ でん わ

しかたなしに飛んで帰れば、やはりそれはビーデルからの電話だった。ペンギンのようなネコのようなかわいいキャラクター、ペ
はい な つづ

ネンコのケースに入ったスマホが鳴り続けている。
な うご つう わ お

慣れない動きでスマホをつまみあげ、通話ボタンを押す。
「なんだ、ビーデル」
ご ご

「あっ、ピッコロさん! おはよう! あのさぁ、ピッコロさんて午後からヒマってあります?」


おお こえ かお

あたりにひびくほど大きな声がとびこんできて、ピッコロはスマホから顔をはなした。
ご ご しゅ ぎょう

「午後? 修業でいそがしいといえばいそがしいが。なんだ?」
わたし きょう おし かく とう ぎ きょう しつ たい かい よう ち えん むか い

「私 今日、教えている格闘技教室の大会があってね。パンの幼稚園のお迎えに行けないの。それでもしよかったら、ピッコロ
むか い おも

さんに迎えに行ってもらえないかなぁ、と思って」
ご はん

「悟飯はどうした?」
はじ

こういうたのみごとは初めてじゃない。
も おも

むしろそのためにスマホを持たされたのかと思うくらいだ。
しゅ ぎょう よう き け すわ ほん らい むか い ちち おや な まえ くち

ピッコロは修業用のターバンとマントを気で消すと、イスに座って、本来迎えに行くべき父親の名前を口にだした。
ご はん こん ど はっ ぴょう けん きゅう づく なん にち へ や

「それが悟飯くん、今度発表する研究レポート作りでいそがしいって、何日も部屋にこもってるのよ」
「あのバカ……またか」
おも した う

思わず舌打ちがでてしまう。
ご はん けん きゅう しゅ ぎょう はい けん きゅう しゃ はい み

悟飯はいわゆる研究バカだ。修業のスイッチは入らないくせに、研究者のスイッチが入ってしまうと、まわりのことが見えなく
なる。
ねが

「ピッコロさん、お願い」
「……わかった」
が めん うつ

画面いっぱいに映ったビーデルにしぶしぶうなずく。
たす ご ご じ か

「ありがとう! 助かったわ! じゃあ午後1時にね。おいしいおみやげ買ってくるから」


みず の い

「オレは水しか飲まんと言っただろ!」

「あっ、そうか! じゃあまたかわいいヌイグルミでも買ってくるわ」
い いっ ぽう てき つう しん

そう言って、ビーデルは一方的に通信をきった。
「な、なぜヌイグルミ……」
い い

ほしいと言ったことも、もらってうれしいと言ったこともない。

それなのに、ビーデルはなぜかいつもペネンコのヌイグルミを買ってくる。
やま だい しょう み かお

すでに山となっている大小さまざまなペネンコたちを見て、ピッコロは顔をしかめた。
「…………」
げん きょう い き

このいらだちは、元凶にひとこと言ってやらねば気がすまない。
ご はん いえ と げん かん す どお にわ

すぐさま悟飯の家へと飛んだピッコロは、玄関を素通りして庭にむかった。
けん きゅう しゅうちゅう ご はん げん かん な き おお

研究に集中した悟飯は、玄関のチャイムを鳴らしても気づかないことのほうが多い。
まど つめ らい ほう あい ず

かわりに窓ガラスを爪でキィッとひっかくのが、来訪の合図だった。
「あっ、ピッコロさん!」
き ご はん まど で むか

ピッコロに気づいた悟飯が、うれしそうに窓をあけて出迎える。
へ や かべ むし ひょう ほん

部屋の壁には、たくさんの虫の標本がかかっていた。
むか

「すいません。またパンの迎えをたのんじゃったみたいで……」
「ふざけるな! キサマいったいなにをやっているんだ!」
すご ご はん いっ しゅん ひら み

凄むピッコロに悟飯は一瞬きょとんとして、それからすぐにノートパソコンを開いて見せた。
むし まえ みなみ しま はっ けん き けん ひか へん しん

「虫のレポートを……この前 南の島ですごいアリを発見しちゃって。そのアリ、危険がせまるとちょっと光って変身するんです。
スーパー じん

超サイヤ人みたいでしょ!?」
き こ ども むか い けん きゅう だい じ き

「そんなことを聞いているんじゃない! 子供の迎えに行けないくらい研究が大事かって聞いているんだ!」
こう ふん ご はん ひ ど な

興奮してまくしたてる悟飯に、ピッコロはこめかみを引きつらせながら怒鳴りつけた。

「あ、いえ……でも、ピッコロさんが行ってくれるんでしょ?」
くち おも いき

ピッコロの口から、思わずふーっとため息がこぼれる。
すこ き けん おそ

「だいたい少しはトレーニングぐらいしたらどうなんだ! いつ危険が襲ってくるかもわからないんだぞ」
こ ども せい かく おも か ぞく も すこ しゅ ぎょう み い おも けん

子供のころからやさしすぎてたよりない性格だとは思っていたが、家族を持ってもう少し修業に身を入れるかと思ったら、研
きゅう

究ばっかりだ。
きょう てき たたか

これまでだって、あらゆる強敵との闘いがあった。
さい ご おも つぎ きょう てき

これが最後だと思っても、かならず次の強敵があらわれてきたのだ。
ご はん きん ちょう かん こえ

だというのに、悟飯は「えー?」と緊張感のない声をだす。
とう

「そんなことまだありますかね。それにもしあったとしても、お父さんやベジータさんが――」
こと ば お まえ

その言葉が終わる前に、ピッコロはすばやくひじをくりだした!
ご はん まも ひだり うで

が、悟飯はノートパソコンを守るように左 腕でガードする。
「へへ~、まだまだにぶっちゃいませんよ――ングッ!」
こと ば お まえ はら こぶし い

が、やはりその言葉が終わる前に、ピッコロは腹に拳を入れてやった。
ご はん ふく いっ しゅん じ ぶん おな どう ぎ か

うずくまる悟飯の服を、一瞬で自分と同じ道着に変える。
おも

「あっ! お、重い……」
「どうだ、なつかしいかっこうだろ」
どう ぎ おも かた しゅ ぎょう き

道着と重たい肩あてのついたマントは、修業のときに着せていたものだ。
ご はん て おも た わら み

悟飯はひざに手をついて重さに耐えながら、ニヤリと笑うピッコロを見あげた。
し ごと

「これじゃ、仕事やりにくいですよ……」
もん く い むか い じ ぶん こ

「文句を言うな。パンの迎えは行ってやる……ったく。自分の子だろ……」
もん く い ご はん まど み の

ぶつぶつと文句を言いながらもどるピッコロに、悟飯はあわてて窓から身を乗りだした。
こん ど

「ホントすいません。今度またヌイグルミをプレゼントしますから」
す い

「いらん! いつオレがそんなものを好きだなんて言った!」
ご はん くび

けれどもすかさずするどくつっこまれて、悟飯ははてと首をかしげる。
き げん

「機嫌がわるいなぁ、ピッコロさん……」
むか い

それでもパンの迎えに行ってくれるのは、ありがたい。
と さ み ご はん はや どう ぎ

飛び去るピッコロを見おくった悟飯は、早くレポートをしあげようと、道着のままでパソコンにむかったのだった。
やま めい そう しゅ ぎょう はじ

山にもどったピッコロは、ふたたび瞑想の修業を始めた。
むか じ かん

パンの迎えまで、まだ時間はある。
き しゅうちゅう う きょ だい いわ うえ め と

気をコントロールして集中し、浮かせた巨大な岩の上で目を閉じる。
そら ひかり たま

と、その空から、とつじょ光の玉があらわれた。
ひかり たま ばく さん ふ

光の玉は爆散し、レーザーのように降りそそぐ。
「!」
め ひら しゅん かん いわ こう だん ばく はつ いち めん けむり

ピッコロが目を開いた 瞬 間、岩にあたった光弾が爆発し、あたり一面、煙とガレキだらけになる。
しゅ ぎょう じゃ ま

「……オレの修業の邪魔をしたな」
いか ひょう じょう そら み

ピッコロは怒りの表情で空を見あげた。
し せん さき おとこ と

視線の先にはひとりの男が飛んでいる。
き いろ ぐん ぷく じょう げ あお あたま うえ ひか むな もと

黄色い軍服のような上下に青いマント。 頭の上には、トサカのようなものがふたつ、にぶく光っている。胸元には『2』という
すう じ か

数字が書かれていた。
おとこ て じゅう き よう こし

男は手にした銃を器用にクルクルとまわしてから、腰のホルダーにカチリとはめる。
だい ま おう

「フン、ピッコロ大魔王だな」
ざん ねん

「残念。オレはただのピッコロだ」
「どういうことだ?」
こう げき おし

いきなり攻撃をしかけるようなヤツに教えてやるいわれはない。
ふく ざつ ふる

「いろいろ複雑なんだ。で、古くさいヒーローのようなおまえは?」
ぎゃく と おとこ すこ はな な

逆にそう問いかけると、男は少しムッとしてから、また、フン、と鼻を鳴らした。
い ざん ねん しょう たい

「せめてレトロと言ってほしいね。残念ながら、ボクの正体は――」
い おとこ りょう うで ひだり なが うえ も

言いながら、男はスッと両腕を左に流し、それから上に持ちあげる。
さい ご おや ゆび こ ゆび ひと さ ゆび た き みょう

最後に親指、小指、人差し指をビッと立て、奇妙なポーズをきめると――
おとこ ばく はつ お も じ う も じ せ おとこ さけ

男のうしろで爆発が起こり、文字が浮かんだ。その文字を背に、 男が叫ぶ。
「まだヒミツだ!」
ひく

ピッコロは「ぐぅ」と低くうなった。
とう じょう えん しゅつ い と

まるでヒーローアニメの登場シーンのような演出だが、意図がまったくわからない。
おとこ かた あか み

と、男の肩に、赤いリボンのようなマークがついているのが見えた。
しろ じ か

白字で『RR』と書いてある。
かみ み おぼ ぐん

「そのマーク……神だったときに見覚えがある。たしか、レッドリボン軍……」
こと ば おとこ おどろ かお かた て ひたい

ピッコロの言葉に男は驚いた顔をして、片手でぴしゃりと額をおおった。
かみ

「え……? あちゃー、こいつはしくじったな。ところで、神だったとき、というのは?」
ぶ そく おし

「ふん、リサーチ不足だな。教えてやるもんか」
「ケチだなー」
おとこ もん く い

男はぷいっとむくれたように文句を言った。
しん けん い かた

どこまで真剣なのか、いまいちつかめない言い方だ。
おとこ み かお

ピッコロはじっと 男を見つめながら顔をしかめた。
ぐん むかし かい めつ か がく しゃ や ぼう き さ

「レッドリボン軍は、とっくの昔に壊滅した。そしてのこった科学者のドクター・ゲロの野望もそのあとに消え去ったはずだ……セ
ルもふくめて……」
ぐん おとこ かん けい

そのレッドリボン軍とこの 男に、どんな関係があるのだろう。
し しず き

どういうつもりか知らないが、ひとまずピッコロは静かに気をさぐってみる。
おとこ くう み かた

男は空を見つめ、それからしかたないとばかりに肩をすくめた。
きょう うで

「今日はただの腕だめしのつもりだったんだけど……そうはいかなくなったらしい」
き かん じん ぞう にん げん つく

「……気が感じられない。ロボットか人造人間だな。創ったのはだれだ?」
き おとこ す なお おどろ め み ひら

そう聞くと、男は素直に驚いたように目を見開いた。
「そんなことまでわかるのか? さすがだな。しかしそれも、ヒミツ、さ」
じん ぞう にん げん みと

人造人間だとあっさりと認める。
かる ちょう し い い と

おどけたような軽い調子でそう言われ、ピッコロは意図がますますわからなくなった。
あい て

どこまでもみょうな相手だ。
たたか

「……ふん。ところでまさか、このオレと 闘うつもりなのか?」
せい かい

「正解」
おとこ ひだり て こし みぎ て ゆび わら

男は左 手を腰にあてると、右手でピッコロを指さしてニヤリと笑う。
し けい かく へん こう わる おも めい れい

「そして死んでもらうことに計画を変更したよ。悪く思わないでくれ。そういう命令だ」

「フフン。じゃあ、さっさと終わらせよう」
たい じ おとこ ひ いっ き ま あ

かまえるピッコロと対峙して、男がクッとあごを引き、一気に間合いをつめてきた。
こぶし はら さい しょ

くりだされた拳をよけて、腹に最初のパンチをきめたのはピッコロだ。
つづ け ふ と おとこ くう ちゅう と

続く蹴りで吹っ飛んだ 男だが、まるでなにごともなかったかのように空中で止まると、スピードをあげてまたむかってきた。
おどろ はら こん ど おとこ

驚くピッコロの腹に、今度は 男のパンチがきまる。
しょう げき も じ

衝撃とともに、すぐそばにポップな文字がでた。
「……なに??」
うご おとこ

とまどうピッコロへ、すばやい動きで 男がせまる。
も じ き と あたま おとこ きょう れつ お さく れつ

文字に気を取られたピッコロの頭に、 男の強烈なかかと落としが炸裂した。
「ぐわあーっ!」
いわ やま じ めん はげ

岩山をけずりながら、地面に激しくつきおとされる。
も じ

「くっ……なぜ、文字がでる……」
お おとこ かた て かる

よろよろと起きあがったピッコロに、男はやれやれというように、片手を軽くあげてみせた。
うご おお

動きがいちいち大げさだ。
おも

「ちょっとガッカリだな。もっとすごいって思ってたのに」
い ちょう じゅう りょう ぬ す

そう言われ、ピッコロは超重量のマントとターバンを脱ぎ捨てた。
「うおおおぉ!」
いっ き かる み おとこ

一気に軽くなった身で、スピードをあげて 男にむかう。
おとこ

が、ピッコロのつきは、男にかわされた。

かわりにひざ蹴りをあごにきめられる。
なが どう さ おとこ い

流れるような動作で、男はさらにピッコロのみぞおちにひじを入れた。
も じ

そして、いちいち文字がでる。
「はぁっ!」
りょう うで おとこ なぐ たお かえ うご け と

ピッコロはおかえしとばかりに両腕で男を殴り倒すと、返す動きで蹴り飛ばした。
しかしダメージはまったくないようだ。
み がる ちゃく ち おとこ て

くるりと身軽に着地した 男へ、ピッコロは手をつきだした。
「ハア~ッ!」
き こう は れん だ

気功波の連打をみまってやる。
りょう き こう は おとこ

が、すさまじい量の気功波を、 男はすべてよけてしまった。
じょう くう と がん か じゅう

そのまま上空へ飛びだすと、眼下にいるピッコロへと銃をむける。

「終わりだ」
じゅう こう ねつ りょう ほう しゅつ

銃口から、ものすごい熱量が放出される!
はげ ばく おん くう き

激しい爆音があたりの空気をふるわせた。
いわ やま こう きゅう だい ばく はつ ま

岩山にめりこんだ光球が、大爆発を巻きおこしたのだ。
じょう くう ばく えん み おとこ め よ

上空から爆炎を見おろす男の目が、すばやくあたりのデータを読みこむ。
ば しょ せい めい はん のう

ピッコロがいた場所からは、なんの生命反応もない。
し がお かく にん

「……あれ? こっぱみじんか……? 死に顔を確認したかったな」


はな わら おとこ い どう かい し

ふん、と鼻で笑った男は、そのままどこかへと移動を開始した。
よう す じょう くう け はい み

その様子を、ピッコロははるか上空から気配をころして見つめていた。
ばく はつ すがた

爆発にまぎれて、姿をかくしていたのだ。
「……こいつはほうっておけんな」
しょう たい もく てき しら

正体も目的もわからないが、調べたほうがよさそうだ。
くも ひ と さ おとこ ひく と お

雲を引いて飛び去る男のあとを、きづかれないように低く飛んで追いかける。
もり ぬ はやし い おも

森を抜け、林をわたり、どこまで行くのかとピッコロが思いはじめたとき。
いわ やま ちょう じょう かたち みずうみ

ゴツゴツとした岩山のようなものがあらわれた。頂上にはひょうたんのような形の 湖がある。
やま ほ い ぐち うえ ぐん

その山のふもとはトンネルのように掘られていて、入り口の上にはレッドリボン軍のマークがかかげられていた。
おく たて もの おとこ はい

トンネルの奥にはいくつか建物があり、男はそこへ入っていく。
たて もの

「なんだ、あの建物は……」
おも かお

ピッコロは思わず顔をしかめて、つぶやいた。
なか こう じょう じゅう き うご

トンネルの中では、まるで工場のようにたくさんのロボットや重機が動いていた。
き きょ り おとこ

ピッコロは気づかれないように距離をとりながら、 男のあとをつけていく。
「あっ! ガンマさん」
おく すす おとこ へい し き こえ

奥へと進む 男に、兵士が気づいて声をかけた。
(ガンマ……?)
した て おとこ かた て

親しげに手をふられた 男――ガンマが片手をあげてそれにこたえる。
「おつかれさまです」「おかえりなさい」
「おう!」
へい し き つぎ つぎ き こえ けい れい

ほかの兵士たちも、ガンマに気づくと次々に気さくに声をかけて敬礼をする。
て ぢか へい し ひ

ピッコロは手近にいた兵士にしのびよると、ものかげに引っぱりこんんだ。
「ぐあっ!」
き ぜつ へい し ぐん ぷく き

気絶させたその兵士から軍服をはぎとり、さっさと着こむ。
ぐん ぷく むね すう じ か

軍服の胸には『94』という数字が書かれていた。
せん にゅう かん へん そう し せん お

潜入のための完ぺきな変装をして、ガンマのゆくえを視線で追う。
おく すす すがた き

と、トンネルの奥に進んでいたガンマの姿が、とつぜんかき消えた。

「消えた……?」
けい かい おく すす

警戒しながら、ピッコロも奥へと進んでいく。
き ば しょ はし べつ こう けい

ガンマが消えた場所にくると、ヴン……とノイズが走って、別の光景がひろがった。
どうやらカムフラージュがほどこされていたようだ。
「おおぉ……」
め まえ ふう けい かん たん こえ

目の前にあらわれた風景に、ピッコロは感嘆の声をあげた。
こう じょう いっ てん そう だい せい び きょ だい と し し せつ

工場から一転、壮大に整備された巨大都市のような施設がひろがっていた。
そう ほん ぶ

ここが総本部のようなものだろうか。
たき ふか たに なが すう ほん ふく ざつ はし

滝が深い谷へと流れこみ、数本のモノレールが複雑に走っている。
じょう くう お ひ こう き み

上空からヘリポートへ降りたつ飛行機も見える。
かお たて なが じょう そう ぶ と はい すがた

ふと顔をあげると、縦に長いメインタワーの上層部へと飛んで入るガンマの姿があった。
「あそこか……」
お へい し あか こえ

あわてて追いかけていけば、またまた兵士がガンマに明るく声をかけていた。
「あ! ガンマさん、おかえりなさい!」
「おう、ただいま! ババン!」
ゆび じゅう う き おく すす

ガンマは指で銃を撃つようなしぐさをしながら、気さくにこたえて奥へと進む。
つづ へい し なか

あとに続いた兵士たちにまぎれて、ピッコロもメインタワーの中についていくことにした。
おく いっ しつ せ かい ち ず かざ かべ へい し れつ

奥のひろい一室につくと、世界地図が飾られた壁ぞいに、兵士たちが一列にならんでいた。
むね すう じ じゅん

どうやら胸の数字順にならべばいいようだ。
いち ばん ちゅう おう し せん

一番うしろにならんだピッコロは、中央のくぼみにおかれたソファにチラリと視線をやった。
えん けい こし ふたり

円形のソファにふかぶかと腰をおろしているのは、二人。
はく い き こ ぶと せい ねん きん じ しん まん まん かお ちゅう ねん こ おとこ

白衣を着た小太りの青年と、金ネックレスをした自信満々な顔の中年の小男。
ふたり はい ご た おお おとこ

二人の背後にひかえるように立っているのは、リーゼントの大男。
ヘド、マゼンタ、それにカーマインである。
ごう め み

「さすがだったな、ガンマ2号。すべておまえの目をとおして見ていたぞ」
ぎゅう にゅう た こえ

クッキーを牛 乳にひたして食べながら、ヘドはもどってきたガンマにやさしく声をかけた。
はかせ

「ありがとうございます、ヘド博士! でもテストにしてはちょっとやりすぎだったかも」
ほこ むね み め み

誇らしげに胸をはるガンマのとなりを見て、ピッコロは目を見はった。
に あか じん ぞう にん げん たい

似たようなフォルムで、赤いマントをつけた人造人間がもう1体いるではないか。
あたま むね か すう じ

頭のトサカのようなものはひとつ。胸に書かれた数字は『1』だ。
たい

「なにっ……もう1体いるのか!」
よ かた おそ ごう たい ごう

ヘドの呼び方からして、ピッコロを襲ってきたのは『ガンマ2号』、もう1体が『ガンマ1号』ということらしい。
おどろ こえ へい し ふ し ぎ かお み

驚きに声をあげたピッコロを、となりの兵士が不思議そうな顔で見る。
つづ

あわててヘルメットのアイシールドをさげてごまかすと、ヘドが続けた。
はん だん とう じょう

「いいや、いい判断だった。それよりせめて、登場シーンとフィニッシュくらいはポーズがあってもいいかもな」
き みょう おも

じゅうぶん奇妙なポーズをしていたと思うが、あれはヘドのこだわりだったようだ。
む し は まき まゆ

そんなヘドを無視して、マゼンタは葉巻をふかしながら眉をよせた。
しょう たい

「まさか正体がバレるとはな……」

「ふん。あんたがレッドリボンのマークをつけるなんて言うからじゃないか」
たしかにそうだ。
しょう たい め ぼし

あれがなければ、正体の目星はつけられていなかったかもしれない。
ごう ごう こえ

と、ガンマ2号にガンマ1号が声をかけた。
し たい かく にん

「死体は確認したか?」
し たい ひつ よう

「死体? いや、バラバラでそんな必要もなかったよ」
しん ちょう た

「慎重さが足りないな」
たす み

「あれで助かるわけないさ。見てただろ」
ごう れい せい し てき ごう りょう て こし い

ガンマ1号の冷静な指摘に、ガンマ2号が両手を腰にあてて言いかえす。
ごう そう さ

だが、ガンマ1号はモニターにむきなおると、すばやくキーボードを操作しはじめた。
ごう め き ろく せん とう えい ぞう ひょう じ

ガンマ2号の目をとおして記録された、ピッコロとの戦闘映像が表示される。

「ここを見ろ」
さい ご じゅう いわ やま ばく はつ えい ぞう ま いち じ てい し

最後に銃で岩山ごと爆発させたときの映像を巻きもどし、ピッと一時停止して、ズームアップする。
もう じょう くう い どう ざん ぞう うつ み

なにかが猛スピードで上空に移動した残像が映っている――ように見えなくもない。
び みょう

「えっ。微妙だな……」
てき そ しき か のう せい

「ピッコロだとしたら、敵の組織にバレてしまった可能性もある」
け ねん くち ごう かお み ごう あか こえ

懸念を口にしたガンマ1号と顔を見あわせて、ガンマ2号は明るい声をだした。
すく ば しょ ひ みつ き ち み かり そ しき たお

「だいじょうぶ。少なくともこんな場所の秘密基地は見つからないさ。仮にここがバレたとしても、そのとき組織ごと倒せばいい
かた ごう

だけのことじゃないか。お堅いなー、1号は。ふぅ~」
けい そつ

「おまえが軽率すぎるんだ」
すがた に せい かく

姿かたちはよく似ているが、性格はだいぶちがうようだ。
そ しき

(組織……?)
かい わ はなし み

けれどいまの会話だけでは、まだ話が見えてこない。
む し えい ぞう

そんなガンマたちのやりとりを無視して、カーマインがモニター映像をきりかえた。
けい かい おん がく おん せい なが

軽快な音楽と、「カーマインプレゼンツ」という音声が流れる。
てき ちゅう おも そん ご くう きょう てき ま じん ぶ き み

「敵の中ボスと思われる孫悟空やベジータというヤツは、かなり強敵そうだ。おそろしい魔人ブウもいる。さらに不気味なミス
じつ りょく み

ター・サタンの実力はまだ見えてこない」
お こと ば ご くう ま じん

くいっとメガネを押しあげるカーマインの言葉にあわせて、モニターに、悟空、ベジータ、魔人ブウ、それからミスター・サタンの
しょう かい どう が じゅん うつ

紹介動画が 順に映しだされる。
わら ご くう ひょう じょう あく やく

ニヤリと笑った悟空たちの表情は、まるでとんでもない悪役のようだ。
くち い

けれどヘドは、クッキーを口にほおばりながら「だいじょうぶ」とあっさり言った。
さい こう けっ さく じっ せん しょう めい

「これでボクの最高傑作であるガンマの実戦でのすごさは証明されたからね」
じ しん まん まん ごう ふ し ぎ うご

自信満々のヘドのうしろで、ガンマ2号はなにやら不思議な動きをくりかえしていた。
い とう じょう いっ しょう けん めい かんが

どうやらヘドの言っていた登場とフィニッシュのポーズを一生懸命 考えているらしい。
と ごう ごう くび よこ

ビシッとポーズを取ってみせるガンマ2号に、ガンマ1号は「いまいちだな」と首を横にふった。
ふたり ごう こえ

そんな二人をふりかえると、ヘドはガンマ2号に声をかけた。
だい ま おう らく しょう

「ピッコロ大魔王は楽勝だったろ? ガンマ」
「ええ! ガッカリするほどにね」
あか こた ごう ない しん した う

きめポーズのまま明るく答えるガンマ2号に、ピッコロは内心で舌打ちした。
わら お

カーマインが、ニヤリといやみたらしく笑いながらメガネを押しあげる。
てん さい まご

「さすが天才ドクター・ゲロのお孫さんですな」
ちょう てん さい

「ふふん。ボクは超天才だけどね」
ちょう てん さい のが さく せん はや

「ふん。その超天才のせいでピッコロを逃したのであれば、作戦を早めねばならなくなったな」
い へい ぜん た

マゼンタがさらにいやみを言うが、ヘドは平然と立ちあがった。
しん ぱい じつ りょく りっ しょう つか じ かん なん たい

「ご心配なく。ガンマの実力は立証できた。このデータを使えば、たいした時間もかからずガンマのコピーが何体もできる。ブル
じゃ あく きょう りょく ひ みつ そ しき いっ そう て さき おも ぐん けい さつ と た そん

マをはじめとする邪悪で強力な秘密組織さえ一掃してしまえば、ヤツらの手先とも思える軍や警察などは、取るに足らぬ存
ざい くさ せ かい せい あつ

在。あっというまに、この腐った世界を制圧できますよ」
じ しん せつ めい こえ

自信たっぷりに説明されて、マゼンタはいらだたしげに声をあららげた。
かん せい

「そんなことより、ドクター・ヘド。セルマックスはいつになったら完成するんだ」
(……セルマックス!?)
き ず ふ おん たん ご

聞き捨てならない不穏な単語だ。
むね

ピッコロの胸がひそかにはねる。
しん ぱい ひつ よう

「ご心配なく。ガンマたちがいれば、セルマックスなんて必要ない」

「いつかと聞いたんだ」
かんが かた て じ ぶん ほお くび

ヘドは考えるように、片手を自分の頰にあてて首をひねる。
すこ

「こいつか……そうだな……こっちはもう少しかかりそうだ」

「ほとんどできていると言ったはずだぞ」
まえ た そう さ おお ばい よう うつ

モニターの前に立ったマゼンタがパネルを操作すると、大きな培養カプセルが映しだされた。
べつ ば しょ つく じん ぞう にん げん けん きゅう しつ

別の場所に作られた人造人間の研究室のようだ。
じ たい かん せい のう じ かん

「セルマックス自体はとっくに完成しているが、脳のコントロールプログラムに時間がかかるんだよ」
ま なか まる まど ぶ き み かお おお うつ

真ん中にある丸い窓にズームすると、モニターに不気味な顔が大写しになった。
め と ねむ も よう こん ちゅう すがた み おぼ

目は閉じられて、まだ眠っているようだが、まだら模様の昆虫のような姿には見覚えがある。
――まちがいなく、セルだ。
「ぬおっ!」
きょう がく め み ひら へい し かん たん こえ

驚愕に目を見開くピッコロのとなりで、兵士たちのあいだからは感嘆の声がもれた。
けれどマゼンタのイライラはなおらなかったようだ。
ま おも

「どれだけ待ったと思っているんだ」
こと ば そう すい すこ じ かん そう ぞう こ つよ ちゅう もん

「お言葉ですがマゼンタ総帥。少しくらい時間がかかっても、とにかく想像を超えた強さに……なんて注文したのはあんただ」
き い

「……どうやらキミはセルマックスが気に入らないようだな」

「スーパーヒーローには見えないからね」

ヘドはおもしろくなさそうにそう言って、ふんとあごをしゃくる。
き い

「それに、ベースがドクター・ゲロのデータというのも気に入らない」
はな れん しゅう つづ

そう話すヘドのうしろでは、ガンマたちがポーズ練習のやりとりを続けていた。
かた か

「ねえ、肩を貸してよ。カッコつけようよ、いっしょに」
かた ごう てい あん ごう む し

肩によりかかり、ポーズをきめたいガンマ2号の提案を、ガンマ1号は無視していた。
ごう

それでも2号はしつこくたのみこんでいる。
て く

そんなやりとりにいらだちながら、マゼンタはうしろで手を組み、ヘドをにらんだ。
じっ しょう とう じ み ふく ざつ われ われ さい げん ふ か のう

「セルのすごさは実証ずみだ。キミも当時のニュースで見ただろう。しかし、データが複雑すぎて我々だけでは再現不可能
おも

だった。キミならさらにパワーアップしてよみがえらせることもできると思ったんだ」
じ かん む だ

「もちろんたやすいことでしたよ。時間は無駄にかかるけどね」
む ちゅう かん せい

「ふん。キミがセルマックスよりガンマに夢中になっていなければ、とっくに完成していたんじゃないのか?」
あん しょく む たい まん

暗に、職務怠慢をついてやる。
な まえ ごう き れん しゅう つづ

名前をだされたガンマ2号は、まったく気にせずポーズ練習を続けていた。
「もたれかからせて、ぜったいカッコいいから、ね?」

「イヤだ。だめだと言っている」
ごう し てき じゅう よう

2号にとっては、ヘドに指摘されたかっこいいポーズをきめるほうが重要なようだ。
よこ め むね はな な

そんなガンマたちを横目に、ヘドは胸をはって鼻を鳴らした。
とく しゅ さい ぼう すこ ふ せい ちょう ま じ かん なが とう ぜん じ かん ゆう

「セルは特殊な細胞を少しずつ増やして、成長させるタイプだから、待っている時間が長いのは当然だ。むしろその時間を有
こう つか かい はつ

効に使ってガンマを開発したことをほめてほしいね」
き どう

「もういい! かまわんからセルマックスを起動してしまえ!」
おも は りょう て さけ

思いどおりにいかない歯がゆさに、マゼンタは両手をつきあげて叫んだ。
はや そう すい か こ かい ぶつ

「早まってはいけないな、マゼンタ総帥。こいつは過去のセルをはるかにしのぐおそろしい怪物だよ」
れい せい て は

が、ヘドに冷静にたしなめられて、あげた手がだんだん恥ずかしくなってくる。
て こと ば つづ

そっと手をもどしながら、マゼンタはごまかすように言葉を続けた。
ちから み さい こう やく しゃ

「レ、レッドリボンの力を見せつけるには最高の役者だ」
じょう たい き どう よ

「しかし、いまの状態で起動して世にだしてしまえば、とんでもないことになるよ」
「なんだ……」
ばい よう うつ み

ヘドはもったいぶって、セルマックスの培養カプセルが映るモニターをじっと見あげる。
せい ぎょ し はい よ なか

「制御がきかず、あんたが支配したがっている世の中そのものがなくなってもいいのか?」
「ぐ……」
つか れん ちゅう き どう よ なか

「セルマックスなんて使わなくても、やっかいな連中はガンマがかたづけてくれるさ。そのあとでセルマックスを起動して、世の中
ちから み

にあんたの力を見せつければいい」
がお い にが ひょう じょう

したり顔でそう言うヘドに、マゼンタは苦い表情になる。
こと ば しん

「……その言葉、信じていいんだろうな」
「もちろんさ」
わら あと

にたりと笑ったヘドのうしろで、ピッコロはゆっくりと後ずさった。
(こっ、こいつはまずいぞ……)
せん にゅう

潜入はいったんここまでだ。
き そと

ピッコロは、だれにも気づかれないようメインタワーの外にでた。
にわ い がき しげ つう しん

庭の生け垣の茂みにかくれて、すぐさまブルマに通信をつなげる。
すう かい おん こえ

数回のコール音のあと、つながったブルマは「なあにぃ?」とのんびりした声をだした。
でん わ

「めずらしいわね。あなたから電話なんて」
「ブルマ、ベジータはいるか?」
かお ちか こ ごえ はな

つまんだスマホに顔を近づけ小声で話す。
れい しゅう かん

「いないわよ。例によって、ビルスさまのところ。もう3週間になるかしら」
ご くう

「悟空もか?」
とう ぜん

「当然よ」
ご くう すこ まえ たたか は かい しん ほし しゅ ぎょう おお

悟空とベジータは、少し前にであったブロリーとの闘いのあと、破壊神ビルスの星で修業をすることが多くなった。おそらくブロ
リーもいっしょなのだろう。
にん しゅ ぎょう ば しょ

パワーのありすぎる三人が修業をするには、場所がなかなかむずかしいのだ。
わる

だがいまは、タイミングがすこぶる悪い。
れん らく そう ち も ふたり かえ つた

「おまえ、たしかウイスさまと連絡する装置を持っていただろ。すぐに二人に帰ってこいと伝えてくれ」
「なあに? なにかあったの?」
はな

「あぁ。いまくわしく話せないが、とんでもないことになりそうなんだ」
れん らく

「ふーん、わかった。連絡してみるわ」
ひっ し ひょう じょう つた かる い つう しん

必死の表情で伝えるピッコロに、ブルマは軽く言って通信をきった。
ご くう れん らく ま

あとは悟空たちに連絡をつけてくれるのを待つしかない。
はや せん ず

「とりあえず、いまのうちに早くなんとかしないと……そうだ! 仙豆がいるかもしれんな」
たたか

闘いにそなえて、ピッコロもできることをしなければ。
おも てい えん と がん か きょ だい ぐん み

思いたち、庭園を飛びたったピッコロの眼下に、巨大なレッドリボン軍のマークが見える。
じょう くう はし き ち こ めん

さらに上空へとあがると、ヴン……とノイズが走り、基地のかわりに湖面があらわれた。
ひ みつ き ち ぜん たい みずうみ

どうやらこの秘密基地全体は、 湖にカムフラージュされているらしい。
「…………」
ぐん わる ち きゅう さい あく じ たい ひ お

レッドリボン軍の悪だくみは、地球にとって最悪な事態を引き起こしかねない。
ひょう じょう もう とう と

きびしい表情でふりかえると、ピッコロは猛スピードでカリン塔へと飛びたっていった。
ち きゅう きょう い き かんが

ピッコロが地球にせまる脅威に気づき、考えをめぐらせていたころ。
とお せい ご くう あい て はげ く て

遠くはなれたビルス星では、悟空がブロリーを相手に激しい組み手をしているところだった。
かん じょう にが て たたか じ ぶん か ご くう むね か

感情のコントロールが苦手なブロリーが、キレずに闘うことができるようにと、自分のトレーニングも兼ねた悟空が胸を貸す
ようになってだいぶたつ。
たん じゅん わん りょく うえ こう げき ご くう

単純な腕力ではブロリーが上だ。が、くりだされる攻撃を、悟空はうまくいなしていた。
おも こう げき たか

なかなか思いどおりに攻撃ができず、ブロリーのイライラが高まってくる。
「――う!」
そのイラだちで、ブロリーのオーラがどんどんとふくれあがってきた。
「!?」
「う! うがが……!!」
しょう こ

ブロリーがキレかかっている証拠だ。
ご くう ま

悟空はあわてて待ったをかけた。
ま ま ま

「ま、待った! 待った待った!!」
かお まえ りょう て み

顔の前で両手をぶんぶんふって見せる。

ブロリーはハッとしたようにオーラを消した。
いき ご くう かた お

あらくなった息をととのえながら、悟空はしゅんと肩を落とすブロリーをしかる。
なん ど い

「おめえ、またキレかかってるじゃねえか~。そいつをおさえろって何度も言ってるだろ?」
「すまない、つい……」
じ ぶん せい かく はん せい

自分でもままならない性格に、ブロリーはじゅうぶん反省している。
ご くう いき ほこ さき か

悟空は、やれやれと息をつくと、矛先を変えた。
いわ うえ すわ まえ

岩の上に、ずっとだまって座っているベジータの前へとやってくる。
なが うご

「おめえさ、いいかげんにしろよ。そんなに長いあいだ動かねえと、なまっちまうぞ」
ご くう まえ かお ちか ひと さ ゆび た

悟空は前のめりに顔を近づけ、びしっと人差し指を立てた。
せい く て さん か

ビルス星にきてからというもの、ベジータはまったく組み手に参加していない。
めい そう つづ

じっと瞑想を続けているのだ。
よ なか

「世の中には、ジレンとか、このブロリーとか、すごいヤツらがいっぱいいるってわかっただろ」
うご め たん たん こた

けれどベジータはやはり動かず、目をつむったままで淡々と答える。
じゃ ま

「うるさい、邪魔をするな。これもトレーニングだ……」

「ウソ言うなよ。そんなのトレーニングなわけねえじゃん」
「きさまは、なにもわかっていない……」
「なにが」
い ご くう くび

そう言われて、悟空はムッとして首をひねった。
め と しず つづ

けれど、やはり目を閉じたまま、ベジータは静かに続ける。
あっ とう てき つよ ちから おお さ

「あの圧倒的に強かったジレン……じつは力そのものは、オレたちとそれほど大きな差はない」
「え?」
こと ば ご くう しん

ベジータの言葉を、悟空はにわかには信じられなかった。
ち きゅう ぞく だい う ちゅう そん ぼう ちから たい かい あっ とう てき つよ み じ ぶん ちから さ

地球の属する第7宇宙の存亡をかけた『力の大会』で、圧倒的な強さを見せたジレンと自分たちに、力の差がないとは
おも

思えない。
つか かた き

「パワーの使い方にムダがまったくないんだ……気づいたか?」
め ひら かお ご くう み

目を開いたベジータは、ゆっくり顔をあげて悟空を見た。
たたか と ちゅう いっ しゅん こう げき い がい からだ せい しん

「あいつは闘いの途中でも、一瞬の攻撃をするとき以外は体も精神もリラックスさせている」
「ホントかぁ?」
きょく げん なか

あの極限の中で、そんなことができるのか。
うたが め ご くう つづ

疑いの目をむける悟空にベジータが続ける。
こう げき あい て うご よ しゅん ぱつ りょく おお おん ぞん

「ゼロからの攻撃は相手に動きを読ませないし、 瞬 発力も大きい。そして、スタミナも温存できるんだ」
「そうかなあ……」
ほん のう あたま なか

「ジレンはおそらく本能でそれができるんだ。だから、それができないオレは、まず 頭の中でトレーニングしている……」
め と ご くう くび

ふたたび目を閉じてしまったベジータに、悟空はうーんと首をひねった。
しん

やはり、にわかには信じられない。
あっ とう てき つよ う ちゅう つよ

ジレンは圧倒的に強かった。宇宙にはまだまだ強いヤツがたくさんいる。
しゅ ぎょう つよ おも

だからもっと修業をつんで、強くなりたいと思うのに――
おも はく しゅ おと き

そう思っていると、どこからかパチパチパチと拍手の音が聞こえてきた。
み は かい しん つ びと じょう くう お

あたりを見まわすと、破壊神ビルスの付き人、ウイスが上空からゆっくり降りてくる。

「すばらしい。すばらしいですよ、ベジータさん! よくそのことに気づかれましたね」
まえ え がお

ウイスはベジータの前にくると、ニッコリと笑顔をむけた。
からだ

「そのとおり! バカみたいに体をきたえることだけがトレーニングではないんですよ」
「ふふん」
い はな な

ほめられたベジータが、どうだと言わんばかりに鼻を鳴らす。

「気づくのおそいんですけどね」
にが むし かお

が、すかさずそうつっこまれて、苦虫をかみつぶしたような顔になる。
ご くう

「悟空さんはまだピンときてないみたいですねえ」
ご くう え がお て う

「う~ん……」とうなる悟空に、ウイスが「そうだ!」と笑顔で手を打った。
お さん かた し あい

「ためしに御三方で試合をやってみましょうか」
てい あん ま さき はん たい

けれどその提案に真っ先に反対したのはベジータだ。
「ブロリーもふくめてか!? ジョーダンじゃない!」
ほし

「ちっとはよくなったけど、まだときどきヤバいんだよこいつ。キレたら、こんなちっこい星なんてなくなっちまうぞ」
ご くう どう い けん

悟空もそれには同意見だ。

ウイスはちろりとブロリーを見ると、「たしかに」とうなずいた。
ご くう し あい けん がく

「では、悟空さんとベジータさんだけで。ブロリーさんは、キレてはいけない試合というものがどういうものか見学していてくださ
い」
「わかった」
おお わら

大きくうなずいたブロリーに、ウイスがにっこりと笑ったときだ。
ひる ね

「ふぁぁぁ あ……ウイス! オレが昼寝をしてどれぐらいだ?」


おお

うしろから大きなあくびとともに、ビルスがやってきた。
ち きゅう じ かん か げつ

「おはようございます。そうですね。地球の時間でいえば、4ヶ月ほどでしょうか」
おも はや め さ にお

「……なんだ。思ったより早く目が覚めちまったな。やかましいし、いい匂いがしたんで」
い はな うご め

言いながら鼻をヒクヒクと動かしていたビルスの目が、ブロリーにとまる。
「だれだ、あいつ」
「ブロリーさんですよ」
つ な まえ おお こえ

あっさりと告げられた名前に、ビルスが大きな声をだした。
「ブロリー!? なんでそんなヤツがここにいるんだ!」
すこ まえ ち きゅう おお あば し

少し前、フリーザにかつがれ地球で大暴れしたことは知っている。
ど な ご くう かる く ちょう はい

怒鳴るビルスに、悟空が、まあまあと軽い口調であいだに入る。
あん しん つ

「ここならぜったいにフリーザはこないだろ? 安心だから連れてきたんだ」
かっ て つ

「勝 手に連れてくるんじゃない! ここはホテルじゃないんだ! ……ん!?」


おお ごえ ど な はな うご

ふたたび大声で怒鳴ったビルスの鼻が、くんくんと動いた。
にお おも い しき も

ただよってきたいい匂いに、思わず意識を持っていかれる。
も こ がら おとこ うご と み

ふりむくと、フライパンを持った小柄な男が、ビクッと動きを止めてビルスを見ていた。
おとこ こえ

ウイスが 男に声をかける。
「きましたね。ごあいさつなさい」
せ わ

「あ……あの……、お世話になります」
おとこ かお

おそるおそるおじぎをする男に、ビルスはイヤそうに顔をしかめた。
「……チッ。おまえもか――ってだれだ?」
もと ぐん

「レモといいます。元フリーザ軍でして……」
じ こ しょう かい て もと にお

ビクつきながら自己紹介をするレモの手元から、おいしそうな匂いがただよってくる。

ビルスはごくりとツバを飲みこんだ。
にお もと

「……いい匂いの元はそいつか。ちょっとこい」
ふ あん かお て なか み たま くち い

不安げな顔でやってきたレモが手にしたフライパンの中身を、ビルスはさっとお玉ですくって口に入れた。
ぐん

「ほう! うまいじゃないか。おまえ、フリーザ軍ではなにをやってたんだ?」
りょう り ぜっ さん こと ば

ビルスに料理を絶賛されたレモは、おずおずと言葉をつなぐ。
ざつ よう がかり ちょう り

「雑用 係でしたが、ときには調理も……」
「……よし。おまえはいてもいい」
まん ぞく い

ビルスが満足げにそう言ったとき。
げん き

「なんだよ、ひろいだけで――おー、元気そうじゃん!」
あか こえ ふくろ ある もと ぐん

ブロリーに明るく声をかけたのは、パンパンにふくれた袋をかかえて歩く、元フリーザ軍のチライだった。
ふくろ なか せい ぬす しな もの

袋の中には、ビルス星で盗んだたくさんの品物がつめられている。
まえ み

あまりにたくさんつめこんだせいで、前が見えていないようだ。
ご くう こえ い がい き

悟空が「よう!」と声をかけて、ブロリー以外もいることに気がついたらしい。
おも め

「あんたたちもいたんだ。ここ、思ったよりカネ目のものがないじゃないか、ガッカリだよ!」
「チ、チライ! だまれ……!」
はい

あわてたレモがわって入る。
「?」
ふくろ よこ み し き

かかえた袋を横によけてチラッと見ると、知らないだれかがいることに気づいた。
むらさき いろ からだ た おお みみ なが

紫 色の体に、ピンと立った大きな耳。長いシッポがゆれている。
「…………」
み すがた

じっとこちらを見つめる姿に、チライはハッとした。
に もつ

荷物にかくれるようにうしろをむく。
そう じ

「うあ! あ、あの……その、ちょっと掃除を……」
こん ど なに もの

「今度は何者だ」
と ふくろ も て ちから こ

するどく問われ、チライは袋を持つ手に力を込めた。
ほし ほし き し

この星がだれの星かということは、ウイスから聞いて知っていた。
は かい しん

「チ、チライです……! あの、あんた……いや、あなたが破壊神ビルス……さま?」
かお

うしろをむいたままのチライに、ビルスはムッと顔をしかめた。
かっ て ひと ほし かお み せ はな ど きょう

勝手に人の星にやってきて、顔も見せずに背をむけて話すとはいい度胸だ。
「そうだ」
う ちゅう もっと

「宇宙で最もおそろしいという……」
こう てい

うなるように肯定されて、チライはおそるおそるふりかえる。
かお め うつ たま お

その顔がビルスの目に映ったとたん、ビルスはお玉を落としてしまった。
ふ し ぎ かお

ウイスとレモに不思議そうな顔をされるが、ビルスはそれどころではない。
「んが……」
ぜん しん でん き はし ぬ

全身にビリビリと電気が走り、あごがポカーンと抜けてしまう。
ふ しん あと

チライが不審げに後ずさる。
おお ひとみ ふ あん み

その大きな 瞳が、不安そうにビルスを見ている。
たい ど ぜん ぶ

が、そんな態度もなにもかも全部――
「……かわいいな」
「「「「「!?」」」」」
ちい せりふ い がい ぜん いん おも み

つぶやかれた小さな台詞に、ブロリー以外の全員が思わずビルスを見た。

「好きなだけいていいぞ」
い あつ し せん おく

ビルスは、きまった、とばかりにそう言って、ふっと熱い視線をチライに送る。
「な、なんだ……あれ……」
ご くう おどろ

さすがの悟空も驚きをかくせない。
なが

長いつきあいのあるウイスもびっくりだ。
この い がい

「……ビルスさまの好みって、意外にベタだったんですねえ」
しょう かい

だが、あいさつと紹介はひとまずすんだ。
むな もと て う ご くう

ウイスは胸元でパンッと手を打つと、悟空たちのほうへとむきなおった。
し あい はじ

「はいっ! さあさあ、そんなことより、試合を始めましょ!」
せん げん はな な きょう み

その宣言に、ビルスがつまらなそうに鼻を鳴らす。まったく興味はないようだ。
ぎゃく たの よう す まえ こ ども

逆にうれしそうなのはブロリーだった。楽しみでしかたないといった様子は、おもちゃを前にした子供そのもの。
はん めん ぶっ ちょう づら

半面、仏頂面だがうれしさをにじませているのはベジータだ。
ご くう かお み

悟空もわくわくとした顔で、ベジータを見る。
さい ご た か へん しん は と どう ぐ

「最後まで立っていられたほうの勝ち。変身やかめはめ波などの飛び道具はなしですよ。いいですね」
せつ めい み

ルールを説明したウイスがくるりとみんなを見まわした。
しょう ぶ はじ おも

いよいよ勝負の始まりだ。そう思ったとき――
ぐうぅぅぅ……
ご くう はら せい だい な

悟空の腹が盛大に鳴った。
く はら

「まずメシを食わせてくれよ。腹ペッコペコだ」
あまりのタイミングに、チライとレモがずっこける。
じん

「やれやれ……サイヤ人って……」
かた いき

ウイスは肩をすくめて息をついたのだった。
いっ しょう けん めい つう しん き

そのころブルマは、一生懸命に通信機をさがしていた。
つう しん き つう しん き

「あれ~……通信機、通信機……」
じ しつ けん きゅう じょ み

自室も研究所も、どこをさがしても見あたらない。
つくえ した あたま かん けい し りょう

机の下に頭をつっこみいろいろさがすが、でてくるのは関係ない資料やアイテムばかりだ。
「いたっ! もう、どこだっけなあ……」
つくえ あたま へ や じゅう さん らん み くび

机に 頭をぶつけながら、部屋中に散乱するアイテムを見て、ブルマは首をかしげていた。
も お い ち きゅう しょく りょう あじ ほ しょう よう い

「ベジータさんに持ってきていただいた美味しい地球の食料がなくなりましたので、味の保証はできませんが、こちらでご用意
させていただきました。さあ、いただきましょう」
ご くう め まえ りょう り て し だい

そのころ悟空たちは、目の前の料理を手あたり次第にほおばっていた。
いろ かたち しょく ざい ちょう り

なじみのない色や形をした食材を調理したのはもちろんレモだ。
くち はこ め み ひら

ゆっくりとはしを口に運んだウイスは、「すばらしい!」と目を見開いた。
ま ほう

「いったいなにをしたんですか!? まるで魔法ですよ、レモさん!」
「スパイスをいろいろ、ちょいと……」
ほめられたレモはうれしそうだ。
りょう り の て と

ビルスも料理に伸びる手が止まらない。
ご くう にん

けれど悟空たち三人は、いままでとなにがちがうのかわからなかった。

「おい、なにか変わったか?」
ぜん ぜん

「全然わからん」
「うが?」
め まえ りょう り い ぶくろ なが

目の前の料理をひたすら胃袋に流しこんでいくだけだ。
にん む し おお こえ せん げん

そんな三人を無視して、ビルスが大きな声で宣言した。
き りょう り たん とう

「気にいったぞ! これから料理はレモが担当だ! ウイスはクビ!」


「まあ、くやしい~」
い りょう り

そう言いながらも、ウイスはなんだかうれしそうにレモの料理をほおばっていた。
たい りょう りょう り た お し あい はじ

大量の料理を食べ終われば、いよいよ試合の始まりだ。
にわ ご くう いわ うえ た かる ふ

ビルスの庭へともどった悟空は、たいらな岩の上に立つと、軽くステップを踏んだ。
じゅん び ばん たん い まん ぷく はら

準 備万端とでも言うように、満腹の腹をポンとたたく。
たい ふる たい ぼく うえ ご くう み

対してベジータは、古い大木の上から悟空を見おろす。
よ ゆう かん かお ご くう たい せん

余裕を感じさせる顔には、ひさしぶりに悟空と対戦できるうれしさがかくしきれていない。
ご くう

それは悟空もおんなじだ。
はじ

「始めてください!」
おお うで し あい かい し せん げん

ウイスが大きく腕をふりあげ、試合開始を宣言する。
「だりゃああああ !!」
ごう れい どう じ と ご くう

号令と同時に飛びだしたのは悟空だった。
ベジータめがけてスピードをつけジャンプする。
こぶし

つきだした拳は、けれどしっかりふせがれた。
なん ど ご くう こう げき う なが

何度もくりかえされる悟空の攻撃を、ベジータは受け流す。
いき はげ こう ぼう

息もつかせぬ激しい攻防だ。
わら ご くう くう ちゅう と

ニヤリと笑った悟空は、空中でいったんうしろへ飛んだ。
「とりゃあぁぁっ!」
ぜん てん お み ま

いきおいをつけて前転し、かかと落としをお見舞いする!
どごぉぉぉおおおおんんん!
たい ぼく ま わ

すばやくよけたベジータにかわり、大木が真っぷたつに割れた。
ま ふん じん なか ご くう そら と

舞いあがる粉塵の中から、悟空が空へと飛びだしてくる。

そのあとをすかさずベジータが追う。
「だりゃああっ!」
お おも ご くう け

追いついたと思わせておいて、悟空はカウンターで蹴りをだした。
うま よう りょう

ベジータは馬とびの要領でひょいっとキックをかわしてみせる。
「ふんっ」
「うりゃああっ!」
からだ ふ と

けれどすかさずくりだされたパンチに、ベジータの体が吹っ飛ばされた。
「くっ!」
くう ちゅう きゅう てい し お ご くう まえ げ

空中で急停止したベジータに、追いついた悟空が前蹴りをくりだす。
あし

だが、その足はベジータにつかまれてしまった。
じ めん な

ぐるんぐるんとぶんまわされて、地面へとほうり投げられる。
「うわぁあああ!!」
ふ と さき き えだ

吹っ飛ばされたその先で、木の枝をつかみスピードをころす。
はん どう り よう

ついでに反動を利用して、ふたたびベジータへとつっこんでいく。
「うりゃああっ」
「ふんっ!」
こぶし げき とつ

くりだした拳は、ベジータのひじと激突をくりかえす!
まえ まえ お むね

前へ、前へとパワーで押しこむすばやいパンチが、とうとうベジータの胸にあたった。
「くっ!」
み のが ご くう ぱつ がん めん

ひるんだスキを見逃さず、悟空はもう1発を顔面へ!
た ふ と たの わら

耐えきれずに吹っ飛ばされたベジータが、それでも楽しそうにニヤリと笑う。
せん とう この じん ほん のう

戦闘を好むサイヤ人の本能だ。
「だりゃあー!!」
ご くう かん はつ け

そんなベジータへ、悟空は間髪いれずに蹴りをはなった。
もり なか と

いなしたベジータが、さそうように森の中へと飛んでいく。
き ぎ こう そく と ご くう はげ こう ぼう

木々のあいまをおたがい高速で飛びながら、悟空とベジータは激しい攻防をくりかえした。
く もり じょう くう と ご くう おも

組みあいながら森から上空に飛びだし、悟空が重たいパンチをベジータにはなつ!
「だりゃぁっ!」
「ぐっ……」
かた うで からだ お

片腕でガードしたベジータの体が、じりっとうしろに押されていく。
「まだまだぁ!!」
こん ど りょう うで

ふたたびくりだされたパンチを、今度は両腕でガードする。
お ふ と たい ぼく う

だが、いきおいに押されて吹っ飛ばされて、ベジータは大木に打ちつけられた。
「ぐあぁっ……!」
あたら たたか かた な

ベジータはまだ新しい闘い方に慣れていない。
ぜん りょく そそ せん ぽう じっ せん つか さい しょ

ここぞというときだけに全力を注ぐという戦法を、実戦で使うのはこれが最初だ。
ちから ご くう ぶ

力では悟空に分があることはわかっている。
ご くう ま

だからベジータは、悟空のスタミナぎれを待っていた。
「うりゃああ!」
「!?」
ご くう こう げき て

だが、悟空の攻撃の手はゆるまない。
ご くう

まっすぐむかってきた悟空は、パンチラッシュをくりだしてきた。
「うらららららっ!」
たい ぼく せ に おも ぼう せん いっ ぽう

大木を背に逃げられないベジータは、重いパンチに防戦一方だ。
ちょう し

「調 子に――」
いっ しゅん ご くう こぶし

けれど一瞬のスキをついて、ベジータは悟空の拳をとらえた。

「乗るなよ、カカロットーッ!!」
あたま ご くう ず つ み ま

頭をあげてふりかぶると、悟空に頭突きをお見舞いしてやる。
「 」
おと ご くう あと

ものすごい音がして、悟空が後ずさる。
たい ぼく はん どう ご くう むね りょう あし げ み ま

ベジータは大木で反動をつけ、悟空の胸に両足蹴りをお見舞いする。
ふ と ご くう くう ちゅう と いき

吹っ飛ばされた悟空はなんとか空中で止まるが、さっきまでより息があらくなっていた。
「なめるなよ 」
しょう き かん

勝機を感じたベジータがつっこむ。
ご くう こぶし かん たん はい ご うら けん げ

悟空は拳をふりかぶるが、簡単にかわしたベジータはすかさず背後にまわりこむ。そこにはなたれた裏拳もまわし蹴りも、ベ
さい しょう うご つづ あ れん だ う

ジータは最小の動きでよけ続け、空いたボディにすばやい連打を打ちこんでいく。
「うがっ!!」
はら ご くう

腹にきめられうめいた悟空に、さらにベジータのアッパーがきまった!
ふ と ご くう よう す いき み

たまらず吹っ飛ぶ悟空の様子を、ブロリーはごくりと息をのんで見つめていた。
うご か

「……わずかだが、ベジータの動きが変わったな」
み せい ざ い

うしろのソファで見あげていたビルスが、となりで正座するウイスに言った。
せい か

「トレーニングの成果でしょうかね」
なが

「……長くなりそうだな」
め こう ぼう せん む ちゅう はん たい

目まぐるしい攻防戦に夢中のブロリーとは反対に、ビルスはつまらなそうにあくびをした。
「なにかデザートでもいただきましょうか」
たと

「例えば?」

「ベジータさんが持ってきたアイスクリームがたくさんありますが」

「じゃあ、あたしが持ってきてやろ……あげましょうか」
てい あん よこ すわ て

ウイスの提案に、横で座っていたチライはさっと手をあげた。
たたか きょう み はな

闘いになんか興味はないし、ビルスと話すこともとくにない。
て つだ

「……え? じゃあ手伝ってやる」

けれどビルスは、スッとソファから立ちあがってしまった。
「え」
「あら……」
ほし ぬし い

この星の主であるビルスにそう言われれば、チライにことわることはできない。
い ちゅう ぼう きょ だい れい とう こ あたま

しかたなしにいっしょに行った厨 房で、ビルスはうれしそうにシッポをふりながら、巨大な冷凍庫に 頭をつっこんだ。


「アイスクリーム……アイスクリーム……お、これだ。おい、レモ」
み たい りょう かお あら もの ちゅう よ

見つけたアイスカップを大量にかかえて顔をあげると、洗い物中のレモを呼ぶ。
「あ、はい」
さら あら た

「皿洗いはあとでいいから、おまえもアイスクリームを食べろ」
「……ど、どうも」
こと ば み

とつぜんやさしい言葉をかけられて、レモはとまどったようにチライを見た。
りょう り がかり たい おう

料理 係にこの対応はどういうことだ。
かた

けれどチライもわからないとばかりに、ビルスのうしろで肩をすくめてみせたのだった。
「あ! あったあった!」
まん えつ

ビルスがチライとアイスにご満悦だったころ。
じ ぶん けん きゅう しつ み つう しん き おお かん せい

ブルマは自分の研究室で、やっと見つけた通信機に大きな歓声をあげていた。
「ちゅ! あった――――!」
つう しん き よ

通信機にキスをして、ブルマはさっそく呼びだしボタンをタップする。
れん らく と

これでようやくウイスに連絡を取ることができる。

ほし

けれども、ビルスの星ではそんなこととはつゆしらず。
にわ さき はこ た

庭先に運んだアイスを、ビルスがもりもりと食べていた。
から やま

すでにうしろには、空になったアイスカップが山とつまれている。

「ブロリー、おまえも食べろ」
「…………」
こと ば ねっ しん み い き

ビルスの言葉は、熱心に見入っているブロリーには聞こえないようだ。
ご くう はげ たたか えん えん

悟空とベジータの激しい闘いは、延々とくりひろげられている。
こう そく い どう ご くう はい ご たい せい と みずうみ お

高速で移動した悟空がベジータの背後にまわり、バックドロップの体勢を取ると、そのまま 湖にむかって落ちてくる。
「どりゃあ !」
おお みず ばしら なみ

大きな水 柱と波があがった。

どっぱぁああああああああん!

ごう う みず お

豪雨のように水しぶきが落ちてくる。
「うわッ!?」
おも あたま ゆび な

思わず頭をかかえたチライに、ビルスは「ふん」とつぶやくと、指をパチンと鳴らした。
まく

とたんに、バリアの幕ができる。
「あらあら」
まばた せん とう くぎ もん だい

バリアからはずれてしまったブロリーだけはびしょぬれだが、 瞬きもしないほど戦闘に釘づけなので問題はない。
ウイスはにっこりとビルスにほほえんだ。
い しき

「ビルスさま、おやさしいんですね。もしかして、だれかさんを意識して……」
し せん さき おどろ ぼう ぜん

チラリと視線をむけた先では、レモとチライが 驚いて呆然としている。
ず ぼし いっ き

図星をさされたビルスは、ごまかすようにアイスを一気にほおばった。

「だまって食べろ! んが!」
た な

食べおえたカップを、またうしろにほうり投げる。
から やま つえ た

空のカップの山のそばに、ウイスは杖を立てていた。
つえ あたま たま つう しん う てん めつ はじ しゅん かん

その杖の 頭についた玉が、ブルマからの通信を受けてチカチカと点滅を始めた 瞬間――


カラン、とビルスの投げたカップがかくすようにかぶさった。

「ウイスさん! ウイスさん!!」
ち きゅう なん ど つう しん おく じ じょう し

地球で何度も通信を送っているブルマは、そんな事情を知るよしもない。
「……もお! なんでちっともでないのよー!」
さけ

ブルマの叫びは、だれにもとどくことはなかったのだった。
いっ ぽう とう

一方、そのころカリン塔では。

「……なるほど、そんなことが……気がつきませんでした」
はなし き さま せん ず はい ふくろ

ピッコロから話を聞いたカリン様が、仙豆の入った袋をさぐっていた。
つぶ

「ありゃ~。すみません、いまは2粒しか……」
つぶ

「2粒か……、それでいい、すまんな」
せん ず う と

もうしわけなさそうにさしだされた仙豆を、ピッコロはありがたく受け取る。
かみ さま き

「神様、お気をつけて」
かみ

「もう神じゃない」
「そうでした……」
し てき な

すかさず指摘したピッコロのポケットで、スマホのバイブが鳴った。
が めん うつ

ハッとしてつまみあげると、画面にブルマが映っていた。
れん らく

「ブルマか! どうだ、連絡はしてくれたか」
なん ど れん らく すこ つづ

「それがさあ、何度連絡してもでてくれないのよー。もう少し続けてみるけどさあ」
「……そうか、すまんな。そうしてくれ」
ふ まん れい い

不満げなブルマに礼を言ってスマホをきる。
き たい おう えん すこ さき

期待した応援は、もう少し先になりそうだ。
かた お さま しん ぱい こえ

肩を落とすピッコロに、カリン様が心配そうに声をかけてきた。
れん らく と

「連絡が取れませんか……」
ご くう ぬ たたか かん じん ぞう にん げん じつ りょく ふたり ひっ てき

「ああ。悟空とベジータ抜きはキツイな。 闘った感じだと、あのガンマという人造人間たちの実力は、あの二人にも匹敵しそう
だ……」
「そいつはマズいですな……」
おも こと ば うしな さま おも かお

思わず言葉を失ってしまったカリン様は、ふと思いついて顔をあげた。
そん ご はん い き ち きゅう つよ

「孫悟飯は? いつかあなたが言っておられたじゃないですか。あいつは、その気になれば地球にいるだれよりも強いんじゃと」
「……いまのあいつはあてにならない」
「そうですか……」
よう す さま みみ

いらだたしげな様子に、カリン様の耳とシッポもうなだれる。
ごう ごう じゃく てん し ま じん きゅう みん き はい

「17号と18号は、ドクター・ヘドのデータで弱点を知られているかもしれん。そして魔人ブウは休眠期に入ってしまってい
る……」
「ということは……」
さま な

カリン様がごくりとのどを鳴らした。
じ ぶん こと ば き

ピッコロも、自分の言葉でいろいろ気づいてしまったらしい。
おも

思わずがくりとしゃがみこむ。
「なんてことだ……オレがなんとかしないと……」
かんが

うつむいたまま考えて、
「そうだ!」
か のう せい かお とう と

ひらめいた可能性に顔をあげ、ピッコロはカリン塔から飛びだした。
さき とう うえ かみ さま しん でん

むかった先は、カリン塔のはるか上にある神様の神殿だ。
「ピッコロさん!」
か ち きゅう かみ

うれしそうに駆けよってきたのは、地球の神になったデンデだ。
じ じょう

「デンデ! 事情はわかっているか!?」
うえ み たい へん ぼく

「はい、上から見ていました! 大変なことに……でも僕にはなにもできませんが……」
しん ぱい い じ ぶん かんが つた

心配そうに言うデンデに、ピッコロは自分の考えを伝える。
い ぜん せい ご はん さい ちょう ろう さま せん ざい のう りょく ひ き

「以前、ナメック星で、クリリンと悟飯が最長老様に潜在能力を引きだしてもらったと聞いたが」
ぼく み

「はい、僕も見ていました」
「このオレにやってくれ」
ぼく

「え? ……僕がですか?」
おどろ ば こし

驚くデンデにうなずいて、ピッコロはその場にドカッと腰をおろした。
さい ちょう ろう さま おな せい じん

「ああ、そうだ。おまえは最長老様と同じタイプのナメック星人だ。できるはずだ!」
せい じん なか りゅう ぞく さい ちょう ろう さま おな ちから

デンデはナメック星人の中でもめずらしい、龍族タイプ。最長老様と同じ力があるはずだ。
だが、デンデはもうしわけなさそうにうつむいた。
ざん ねん のう りょく てい ど ねん れい

「……残念ですが、あの能力はある程度の年齢にならないとできないんです」
「な、なんだと……」
ぜつ ぼう ひょう じょう て う

絶望の表情でうめくピッコロに、デンデがぽんっと手を打った。
ちから か

「そうだ! ドラゴンボールの力を借りては?」
「ドラゴンボール?」
ぐん け ねが

「レッドリボン軍を消してくれと願えば」
あか ひょう じょう かお

明るい表情をむけられて、ピッコロはむうっと顔をしかめる。
たい ど さっ

その態度で、デンデには察しがついてしまった。
ゆる さい ちょう ろう さま シェン ロン せん ざい のう りょく ひ

「……それはプライドが許さないようですね。では、最長老様のように、 神龍にピッコロさんの潜在能力を引きだしてもらえば
――」
シェン ロン

「できるのか! 神龍にもそんなことが」
あら か のう せい た

新たな可能性に、ピッコロがいきおいよく立ちあがる。
「アップグレードすれば、たぶん……」
「アップグレード?」
ねが おな ま

「ほら、かなえられる願いも、ひとつから3つになったでしょ? あれと同じですよ。ちょっとお待ちください」
い シェン ロン おき もの はい も

そう言って、デンデは神 龍の置物が入ったガラスドームを持ってきた。
うえ えき たい はい びん

トレーの上には、液体の入った瓶もある。
びん せん ぬ うえ えき たい

デンデは瓶の栓をきゅぽんと抜くと、ガラスドームの上から液体をかけた。
「!」
み シェン ロン ぞう ひかり うず ま かたち

見るまに神 龍の像がまばゆい光をはなち、渦を巻いたような形にかわる。
シェン ロン おも

「……はい。これで 神龍のアップグレードができたと思います」
ほこ い かん しん

誇らしげなデンデにそう言われ、ピッコロはただただ感心してしまった。
かみ し

「オレも神だったが、知らなかったな……」
むかし ち きゅう

「あなたはずいぶん昔に地球にきていますからね」

そう言われれば、たしかにそうだ。
シェン ロン し

神 龍のことは、まだまだ知らないことがあるのかもしれない。
こと ば かお うで く

デンデの言葉にうなずきながら、ピッコロはむずかしい顔で腕を組んだ。
シェン ロン じ ぶん せん ざい のう りょく ひ

これで神 龍に自分の潜在能力を引きだしてもらうことはできそうだ。
シェン ロン よ ひつ よう

けれど、そのためには神 龍を呼びだすドラゴンボールが必要だ。
あつ じ かん

「しかし、ドラゴンボールを集める時間があるかな……」
こ も おも なん ねん ひと で つか あつ

「いまでしたら、ちょうどブルマさんが7個すべてを持っていると思います。ここ何年かは、ブルマさんが人手を使ってボールを集
よ つか ねが

め、良からぬことにドラゴンボールを使われないために、あえてどうでもいい願いをかなえてもらっているようですから」
ねが

「……あえて願いをかなえることもないだろうに」
ほ かん かんが

ただ保管していればよさそうなものだが、ブルマの考えはよくわからない。
はなし つづ

いぶかしむピッコロに、デンデが「ほら」と話を続ける。
すこ まえ ぐん ぬす

「少し前にフリーザ軍に盗まれてしまったことがあったじゃないですか」
せい たたか はなし

それはまさに、いまビルス星にいるはずのブロリーとの闘いのときの話だ。
ねが ち ぢ

「願いをかなえてドラゴンボールをまた散り散りに」
「なるほど、しかしそれはラッキーだったな」
て ま

ドラゴンボールをそろえてくれているなら、これほど手間のはぶけることはない。
でん わ

ピッコロはすぐさまスマホをつまみあげると、ブルマに電話をかけた。
「ブルマ!」

「はいはい、聞こえてるわよ」
れん らく

「どうだ、連絡は?」

「それがまだ取れないのよ~」
が めん うつ

画面に映るブルマはむすっとくちびるをとがらせる。
ご くう れん らく

悟空たちに連絡がつかないというのなら、やはりドラゴンボールにたよるしかない。

「……ブルマ、もしかしてドラゴンボールを持っているか?」
も こ ぜん ぶ

「ドラゴンボール? 持っているわよ。ちょうど7個全部」
あつ わる こん かい

「よし! せっかく集めたのに悪いが、今回はオレにゆずってくれないか?」
「え~」
ふ ふく こえ き か

不服そうなブルマの声を聞きながら、ピッコロは駆けだした。
て め がお わか つ しん でん ち じょう

手をふるデンデに目顔で別れを告げて、神殿から地上にむかってダイブする。
ねが

「たのむ。どうせ、どうでもいい願いをかなえているんだろ?」
「どうでもいいことなんかじゃないわよ! まあ、ピッコロのたのみならしょうがないけど」
い にわ ま

「すまん、すぐにそっちに行く! 庭で待っていてくれ」
もう さき にし みやこ

猛スピードでむかった先は西の都のカプセルコーポレーション。
にわ さき りょう て

たどりつくなり、ピッコロは庭先にならべられたドラゴンボールに両手をかかげた。
シェン ロン ねが

「いでよ、神 龍。そして願いをかなえたまえ!」
こと ば こ おう ひかり

ピッコロの言葉に呼応して、ドラゴンボールが光をおびはじめる。
せい てん ず じょう そら すみ ぶ あつ くも

晴天だった頭上の空が、そこだけ墨をはいたような分厚い雲におおわれた。
さん ぜん ま こう ごう ひかり てん

やがてドラゴンボールは燦然とかがやきを増して、神々しい光のすじが天にのぼる。
ひかり てん す どう じ はげ らく らい

その光が天に吸いこまれていくと同時に、激しい落雷があたりにひびいた。
こ くも そら う シェン ロン すがた

濃い雲におおわれた空に浮かびあがったのは、神 龍の姿だ。
ねが い ねが さま

『さあ願いを言え。どんな願いも……あ! ピッコロ 様!?』


こえ はな シェン ロン き

おごそかな声で話しはじめた 神龍が、ピッコロに気づく。
おどろ シェン ロン さけ

驚く 神龍にむかってピッコロが叫んだ。
シェン ロン せい な さい ちょう ろう さま せん ざい のう りょく ひ

「神 龍!! ナメック星の亡くなられた最長老様のように、オレの潜在能力をめいっぱい引きだすことはできるか?」
め ねが

『……ええ、もちろん。それがひとつ 目の願いですか?』
「ああそうだ、やってくれ」
み シェン ロン なが たい く そら こ せん かい はじ

いどむように見あげていると、 神龍は長い体躯で空に弧をえがくように旋回を始めた。
み じ ぶん なか つよ ちから かん

見つめるピッコロは、自分の中から強い力があふれでてくるのを感じた。
ねむ ちから かく せい

眠っていた力が覚醒していくのがわかる。
ちから

「こ、これは……!! オレの力は……これほどまで……」
シェン ロン ちい

神 龍がクイッと小さくあごをあげる。
すこ

『少しオマケをしておきました』
み まえ シェン ロン かがみ しゅつ げん

いぶかしげに見あげたピッコロの前に、 神龍は鏡を 出現させた。


みどり いろ からだ すこ き いろ み

緑 色の体が少し黄色味をおび、かがやかしいオーラをはなっている。
へん か じ ぶん からだ かく にん わら

変化した自分の体を確認し、ピッコロはニヤリと笑った。
ねが

『では、あとふたつの 願いをどうぞ』
「オレはもういい」
「え、そうなの? それだけ?」
き みどり いろ からだ おどろ こえ

気をおさめていつもの緑 色の体にもどったピッコロのうしろから、ブルマの 驚く声がする。


わたし つか

「じゃあ、あとふたつは 私が使っちゃっていい?」
とう ぜん

「ああ、当然だ。かまわない」
あつ

もともとドラゴンボールを集めたのはブルマだ。
よろこ

うなずくピッコロに、ブルマは「うふふふ♡」と喜んだ。
わか おんな こ

「じゃあ、おしりをもうちょっとキュッてあげてもらおうかな。若い女の子みたいに」
「……え?」

しり? しりと言ったのか、いま?
ねが わ みみ うたが

ブルマの願いに、ピッコロは我が耳を疑った。
ねが

『たやすい願いだ。はい、かなえた』
め はだ こ し ぜん かん と

「じゃあ3つ目は、またお肌の小じわを自然な感じで取っていただこうかしら」

「ちょ、ちょっと待った!」

やはり聞きまちがいではなかったようだ。
ねが シェン ロン おも み

どうでもいいような願いを 神龍にかなえさせたブルマを思わず見つめる。
「そんなことに……ほかにもっとなにか……」
わる げ なが

「そんなことで悪かったわね! じゃあ、まつ毛を2ミリぐらい長くしてもらおうかな」
『かなえた』
てい ど へん か し ごく まん ぞく

まるでちがいのわからない程度の変化に、ブルマは至極満足そうだ。
きょう がく ひょう じょう き

驚愕の表情をむけるピッコロのことは、まったく気にならないらしい。
さま

『ではピッコロ 様、さらばです』
ねが お シェン ロン こえ い す そら たか

願いをかなえ終わった神 龍はおごそかな声でそう言うと、ふたたびドラゴンボールへと吸いこまれていく。空高くのぼったドラゴ
せ かい かく ち と ち

ンボールは、また世界各地へと飛び散っていった。
そら あお ぞら

空はふたたび青空にもどる。
ねが かん

「……い、いつも願いは、あんな感じなのか」
わる

「悪い?」

問われたブルマは、じろりとピッコロをにらみつけ、
べつ じ ゆう

「い、いや、別に自由だが……」
「あ っ!! しまった っ!!」
おお ごえ

それからとつぜん大声をだした。
「な、なんだ!」
おどろ み

驚くピッコロをじっと見つめる。

「ベジータたちを呼びもどしてって、たのめばよかったんじゃない……」
「……あ!」
じ ぶん せん ざい のう りょく かい ほう む ちゅう ねが かんが

自分の潜在能力を解放することに夢中で、その願いを考えつかなかった。
こう かい

いまさら後悔がやってくる。
すこ

「おまえのしりが少しだけあがったせいで!」
おも

「なによ! あんただって思いつかなかったじゃない!」
せき にん い

責任のなすりつけあいになってしまったが、ブルマの言いぶんはもっともだ。
せん にゅう

「……オ、オレは、ふたたび潜入してなんとかしてみる」
いち ど ぐん き ち

ピッコロはしおれたようにうなだれて、もう一度レッドリボン軍の基地にもどることにしたのだった。
ぐん き ち せん にゅう せい れつ へい し れつ

ピッコロはふたたびレッドリボン軍の基地に潜入すると、整列する兵士たちの列にもどった。
つぎ そん ご くう てき たい さく ね いっ き

「次のターゲットは、孫悟空かベジータというのはどうだ。敵に対策を練られないうちに、一気にボスクラスをつぶしておくんだ」
あら さく せん た てい あん くび よこ

マゼンタが新たな作戦を立てている。しかしその提案には、カーマインが首を横にふった。
げん ざい ふたり い ば しょ

「スパイによると、現在その二人は居場所がつかめないようです」
うら ぎ もの ごう ごう しん ちから み ぶ き み

「ちぃ。では、裏切り者の17号か18号にするか、それとも、真の力を見せない不気味なミスター・サタンか……」
ふたり さく せん きょう み た ぎゅう にゅう の

二人の作戦などまるで興味なさそうに、ヘドはクッキーを食べ牛 乳を飲んでいる。
き ばん へい し こ ごえ はな

もどってきたピッコロに気づいた79番の兵士が、小声で話しかけてきた。

「どこ行ってたんだ?」
なか いた

「あ……ちょっとお腹痛くてトイレに……」
ばん しん ぱい かお

とっさにウソをつく。が、79番は心配そうな顔をむけた。
かお いろ わる

「え、だいじょうぶか? 顔色悪いぞ?」
「え、いや……。だ、だいじょうぶです!」

「……ガマンできなかったらすぐ言えよ?」
「は、はい……」
みどり いろ かお

ピッコロはくいっとアイシールドをおろし、緑 色の顔をかくす。
あく そ しき へい し ほん き しん ぱい

悪の組織の兵士から、本気で心配されてしまった。
き あら てい あん

そんなピッコロたちを気にもとめず、カーマインが新たな提案をだした。
そん ご くう むす こ そん ご はん せい ぶつ がく しゃ むかし こ ども

「孫悟空の息子の孫悟飯というのはどうでしょう? 生物学者のフリをしていますが、スパイカメラによればその昔、子供であ
たお そん ざい ひん ぱん で い み ご はん

りながらセルを倒したというおそろしい存在。ピッコロが頻繁にヤツのアジトに出入りしていたところを見ても、悟飯がかげのボ
か のう せい

スの可能性も」

いつのまに撮られていたのだろう。
け さ ご はん いえ が ぞう うつ

モニターに、今朝悟飯の家をおとずれたときのピッコロの画像が映っている。
「いまのうちにつぶしておかないと、やっかいなことになるかもしれません」
せ けん てき かん せい ぐん そん ざい し まち そう どう さ

「なるほど……しかし世間的にはセルマックスが完成するまで、軍の存在は知られたくない。街での騒動は避けねばならん」
は まき かお

葉巻をふかしながら、マゼンタがむずかしそうに顔をしかめた。
む ちゅう つい か も

ヘドはといえば、あいかわらずクッキーに夢中だ。おてつだいロボが、追加のクッキーを持ってくる。
「むずかしいですね……ヤツはめったにアジトからでてこない……」
げ び え がお

うなるカーマインに、マゼンタはにやりと下卑た笑顔をむけた。
たたか

「それではここで闘ってもらおうか」
「ここで?」
そん ご はん よう ち えん むすめ ゆう かい ご はん

「孫悟飯にはたしか、幼稚園にかよう娘がいたはずだ。そいつを誘拐して、悟飯ひとりをここへおびきよせればいい。ガンマの
たたか め み

闘いぶりをこの目で見るのもおもしろそうだぞ」
てい あん かお

マゼンタの提案に、ピッコロがぴくりと顔をしかめる。
へい し し き

「なるほど、それは兵士たちの士気もあがるかもしれませんね」
さん どう き い

カーマインも賛同する。だが、ヘドは気に入らなかったようだ。

クッキーを持ったまま、ムッとしたようにマゼンタをにらむ。
てき こ ども ゆう かい かん しん

「敵とはいえ、その子供を誘拐というのは感心しないね」
けむり

けれどマゼンタは煙をはきながら、じろりとヘドをにらみかえした。
か がく しゃ くち

「……科学者がよけいな口だしはしないでもらおう。オイ」
い ばん へい し こえ

言うなり、とつぜん3番の兵士に声をかける。
「は、はい!」
こえ ばん いっ ぽ まえ

声をかけられた3番は、あわてて一歩前にでる。
ふたり つか そん ご はん むすめ ゆう かい つ

「二人ほど使って、孫悟飯の娘を誘拐して連れてこさせろ」
りょう かい ばん

「了解しました! 15番、いけるな?」
けい れい かえ おお がら ばん し じ

マゼンタにビシッと敬礼で返し、大柄な15番に指示をだす。
いっ ぽ まえ

すかさずピッコロも一歩前にでた。

「それならオレも行かせてください」
かっ て くち

「なんだおまえは。勝手に口をはさむんじゃない!」
ちゅう い り ゆう

けれどすぐに注 意され、あわてて理由をつけくわえる。
そん ご はん いえ ちか す むすめ み

「オ、オレはたまたま……その孫悟飯の家の近くに住んでいて、その娘を見たことがあります」
み そん ご はん むすめ し

「見たことが? おかしいな……なぜ孫悟飯の娘のことを知ってるんだ?」
「え? あ、あの……」
かんが

しまった。そんなところまでつっこまれるとは考えていなかった。
あたま おも

ピッコロは頭をめぐらせて、ハッと思いつく。
むすめ ゆう めい まご

「! そ、その娘は有名なミスター・サタンの孫でもあるからです!」
けい れい い ばん なっ とく

ビシッと敬礼をしてもっともらしくそう言うと、3番は納得したようだ。
じん せん わたし ばん しん じん み は つづ

「なるほど……だが人選は 私がする。94番といえばまだ新人だ。おまえはだまって見張りを続けていろ」
けむり ばん い

だが、マゼンタが煙をはきながら3番に言った。
かお し こう つ ごう い

「いや、顔を知っているなら好都合じゃないか。行かせてやれ」
「……はい、わかりました」
そう すい じき じき めい れい ばん けい れい かえ さく せん うご

総帥直々の命令に3番が敬礼で返し、作戦はすぐに動きだした。
ばん ふたり こ がた ひ こう き よう ち えん

15番とピッコロの二人は、小型飛行機でパンのいる幼稚園へとむかっていた。
かんが め み ひら

さて、これからどうするか――そう考えていたピッコロは、ハッと目を見開いた。
ご はん かく せい き かい

(そうか……これはもしかしたら、悟飯を覚醒させるいい機会かもしれんぞ……!)
ち きゅう うご むすめ ご はん うご

地球のピンチには動かなくても、娘のピンチにはさすがの悟飯も動くはずだ。
した わら そう じゅう せき ばん こえ

マスクの下でニヤリと笑ったピッコロに、操縦席から15番が声をかけた。
む くち きん ちょう

「おまえ無口だな。緊張してるのか?」
ピッコロはあわててごまかした。
ゆう かい

「あ、はい……あの、どうやって誘拐しますか?」
よう ち えん お じ かん はは おや むか い どう ちゅう てき とう はは おや

「そろそろ幼稚園が終わる時間だ。たぶん母親かだれかが迎えにくるだろう。移動中に適当なチャンスをねらって、母親もろと
ゆう かい

も誘拐すればいい」
わら ばん しず

ニヤッと笑う15番に、ピッコロは静かにうつむいた。
たい けい かく

これがパンに対してでなかったとしても、いけすかない計画だ。
ふ しん おも ばん め

だまるピッコロを不審に思ったのか、15番がチラリと目をむける。
ばん き

「……79番に聞いたぞ」
「え?」
き め

気づかうように目をそらされ、
「もうすぐつくから、うんこもらすなよ」
「……う、うん、こ……」
む ごん

ピッコロはさらに無言になるしかなかった。

の ばん よう ち えん ろ じょう ひ こう き

そんなピッコロを乗せて、15番は幼稚園のすぐそばの路上に飛行機をとめた。
よう ち えん へい なか ばん よ そう よう ち えん かえ じ かん むか えん じ

幼稚園をかこむ塀から、そっと中をのぞきこむ。15番の予想どおり、幼稚園はちょうど帰りの時間らしい。お迎えがきた園児
つぎ つぎ えん さ

から、次々と園を去っていく。
ひょう じょう

とりのこされたパンは、さみしそうな表情でうつむいていた。
きょう むか

パンの今日の迎えはピッコロだ。
かお

そのピッコロがここにいるせいで、パンにあんな顔をさせてしまっている。
むすめ

「あの娘か?」
「……はい」
き も ばん た

なんともいえない気持ちでうなずくと、15番が立ちあがった。
えん じ はは おや ゆう かい

「ほかの園児はもういないな……よし、母親はきていないが、さっさと誘拐してしまおう」
「なっ!?」
「ガキひとりくらいワケないだろ」
おどろ えん ない はい

驚くピッコロをよそに、スタスタと園内に入っていく。
おも

「ママ、もうすぐくると思うよ?」
せん せい こえ

先生がパンにやさしく声をかけた。
ばん ねこ ごえ はな

――と、15番はわりこむように、猫なで声で話しかけた。
むか かえ せん せい

「パンちゃ~ん、おそくなってゴメンね~! オジちゃんはママにお迎えをたのまれたんだよ~。さあ、いっしょに帰ろうか。先生
にサヨナラをいっ――」
「たあーっ」
ドゴッ!
て ばん はら

ずいっと手をさしだした15番の腹に、パンのするどいパンチがきまった。
(!! マズイ!)
ばん まえ たお

あわてるピッコロをよそに、15番が前のめりに倒れこむ。
いち げき き うしな

パンの一撃で気を 失ってしまったらしい。
「ま、まぁ! どうしたの!?」
「こんなひと、しらないもん」
おどろ せん せい み しゅ ちょう

驚く先生を見あげたパンは、くちびるをとがらせて主張する。
と み がま

ピッコロがあわてて飛びだすと、パンはすぐさま身構えた。
と かお

が、すぐにかまえを解いて、きょとんとした顔になる。
「あれ? ピッコロさん?」
「! ほう、よくわかったな」
へん そう み ぬ かん しん

変装を見抜いたパンに感心する。
とう ぜん い み い

パンは当然だと言わんばかりに、ピッコロをまっすぐ見あげて言った。

「わかるよ。かんたんじゃん。だってピッコロさんの気だもん」
「ふっ。さすがだな」

「あら! じゃあそちら、ピッコロさんのお知りあいでしたの?」
なん ど むか せん せい

何度も迎えにきているピッコロだとわかり、先生もホッとしたようだ。
おどろ くん れん おお がね も まご

「驚かせてすまない。これは訓練だったんだ。ほら、大金持ちのミスター・サタンの孫だし」
「あら、そうでしたの。よかった~」
あん しん せつ めい よう ち えん

安心させるように説明して、パンといっしょに幼稚園をあとにする。
き ぜつ ばん かた どう ろ じゅう たい

気絶した15番は肩にかついで道路にでると、ひどい渋滞になっていた。
「だめだよ。こんなところにとめちゃあ」
はや

「ああ、早くでないとな」
じゅん すい い けん どう い

パンの純 粋でまっとうな意見には同意しかない。
うま まえ た

ピッコロはジャンプしてやじ馬をとびこえ、タラップの前に立った。
ひ こう き

「これ、だれの飛行機?」
つづ き

続いたパンが聞いた。
ぐん わる の

「レッドリボン軍という悪いヤツらのだ。パンはうしろに乗ってくれ」
「どういうこと?」
と はな いち おう て じょう

「飛んだら話す。一応手錠をするが、こんなのいつでもはずせるだろ?」
て じょう み とく い わら

ポケットから手錠をだして見せると、パンがニヤッと得意げに笑った。
「らくしょうだよ」
ぐん ゆう かい よう よう い つう よう

レッドリボン軍が誘拐用に用意したものだが、パンに通用するわけがない。
てき ひつ よう

けれど敵をあざむくためには必要なものだ。
き ぜつ ばん こう ぶ ざ せき ひ こう き じょう しょう

気絶した15番を後部座席にほうりこむと、ピッコロは飛行機を上昇させる。
ひ こう き

が、飛行機はすぐにがくんっとかたむいた。
よ だ こう おく じょう かん ばん

ふらふらと酔っぱらいのように蛇行して、ビルの屋上の看板をつきやぶる。
「ピッコロさん、そうじゅうヘタだね」
にが て

「こういうのは苦手なんだ」
ひ こう き き かい とく い

スマホといい、飛行機といい、機械はあまり得意ではない。
そう じゅう かん も うん てん み の

操縦桿をつまむように持ってフラフラと運転していると、パンが身を乗りだしてきた。
「それで?」
じん ぞう にん げん ぐん わる そ しき せん にゅう せ かい せい ふく

「あぁ。オレはあるおそろしい人造人間のあとをつけて、レッドリボン軍という悪い組織に潜入した。そこで世界征服のために
じゃ ま われ われ け けい かく し

邪魔な我々を消す計画を知ったんだ」
「せんにゅう?」
ごし そう じゅう つづ くび

へっぴり腰で操縦を続けるピッコロに、パンがこてんと首をかしげる。
さい すこ こと ば つか

3歳のパンには少しむずかしい言葉を使ってしまった。
なか ま よう す さぐ

「こっそり仲間のフリをして様子を探ることだ」
「あ、それでそんなかっこうなんだ」
い なっ とく

わかりやすく言いかえてやると、パンは納得したようだ。
たお ゆう かい

「ああ。それでヤツらはまず、おまえのパパをおびきよせて倒すために、誘拐しようとしたワケだ」
「へー。でもおもしろそう!」
「なめるんじゃないぞ。ほんとにヤバいヤツらだ」
かん

パンはゲームのように感じているのかもしれない。
こえ しん けん

ピッコロは声に真剣さをにじませた。
ゆう かい こわ まも しん ぱい

「パンは誘拐されて怖がっているフリをするんだ。オレが守ってやるから心配しなくていい」
ひつ よう い じょう こわ

けれど、必要以上に怖がらせたいわけじゃない。
あん しん わら

安心させるように笑いかけると、パンもにこりとほほえんだ。
かんが うえ み

それから、うーん、と考えるように上を見る。
「でもパパ、いそがしいみたいだし、きてくれるかなぁ」
はん ごろ

「あたりまえだ! これでこないようだったら、オレが半殺しにしてやる」
こわ ね おも

ピッコロの声音が、思わずきつくなる。
そのときだった。
「う、うぅ……イテテテ……」
ばん め さ

15番が目を覚ましたようだ。
め くば じ ぶん て じょう

すかさず目配せしてやると、パンは自分で手錠をかけた。
ゆう かい こ ども

そして、誘拐されておびえている子供のフリをする。
「たすけて~、こわいよ~……」
ばん み て じょう すがた め はい

ハッとした15番が見ると、パイプに手錠でつながれたパンの姿が目に入った。
め さ

「目が覚めましたか?」
そう じゅう せき こえ

ピッコロが操縦席から声をかける。
「お、おまえがやったのか……?」
「はい」
ばん かお ちか

うなずくピッコロに、15番はずいっと顔を近づけた。
「……みんなにはだまっとけよ」
「え?」
「ガキに、やられたことだ……っ」
「……わかりました」
ひっ し い あつ ばん

必死に威圧してくる15番にうなずいてやる。
な わら み

さっきまで泣きまねをしていたパンは、おもしろそうに笑いながらピッコロを見ていた。
き ち ろう や おく つ

基地にもどると、パンはメインタワーにある牢屋がならぶろうかの奥へ連れていかれた。
へ や ちゅう おう お な

つきあたりにあるドアをあけ、部屋の中央に置かれたイスにほうり投げられる。
「うわっ!」
らん ぼう いっ しゅん ばん い おも

乱暴なあつかいに一瞬ムッとしたパンだが、15番にスマホをむけられ、ピッコロに言われたことを思いだした。
こわ

――怖がっているフリをする。
「パパ、こわいよ~、たすけて~」
お だ うわ め み

イスに置かれたペネンコのヌイグルミを抱きしめて、上目づかいでカメラを見つめる。
さつ えい

「撮影しました」
ばん い おや ゆび た

15番がそう言うと、うしろでピッコロがそっと親指を立ててみせた。
き まん ぞく い

それに気づかず、カーマインは満足そうにリーゼントをくしでとかしながら言った。
そん ご はん み つ

「よし、それを孫悟飯に見せて、ここに連れてくるんだ」
「わかりました」
しつ ない み うえ お き

きょろりと室内を見まわしたパンは、テーブルの上に置かれたクッキーに気がついた。
た た て の さら と

立ちあがり、食べようと手を伸ばす――が、カーマインがさっと皿ごと取りあげた。
か し ちょう し

「おいおいおい、おまえにやるお菓子じゃない。調子にのるな」
「…………」
あい ず おく

むすっとほっぺたをふくらませたパンに、ピッコロはあわてて合図を送った。
おこ て じょう こわ

怒って手錠を壊さないよう、おさえるようにとジェスチャーでしめす。
ばん

「おい94番」
ばん こえ

そんなピッコロに、3番が声をかけてきた。
「え? あ、はい」
いち ど い

「おまえ、もう一度行ってこい。あのあたりにくわしそうだ」
「わ、わかりました」
じゃっ かん ふ あん かん こん ど ご はん いえ どう こう しゃ

にらみあうパンとカーマインに若干の不安を感じながらも、ピッコロは今度は悟飯の家へとむかうことになった。同行者はさっ
おな ばん

きと同じ15番だ。
とう ちゃく ばん しょう めん げん かん な

到着するなり、15番は正面玄関のチャイムを鳴らした。
「ムダですよ。こっちです」
と ご はん けん きゅう しつ あん ない

それを止め、ピッコロはさっさと悟飯のいる研究室のほうへと案内する。
へ や まど なか か しん けん かお う ご はん み

部屋の窓から中をのぞけば、ピッコロに変えられたかっこうのまま、真剣な顔でパソコンに打ちこんでいる悟飯が見える。
まど ご はん き かお

窓をキィッとひっかくと、悟飯が気づいて顔をあげた。
「なんですか? あなたたち……」
ふ しん ひょう じょう まど ご はん ばん と

不審そうな表情で窓をあけた悟飯に、15番が問いかける。
そん ご はん

「孫悟飯か?」
「はい、そうですが……」
「な、なんだ? そのみょうなかっこうは」
「え? ああ、これ? いろいろあって――」
すがた て はな ご はん

マント姿をつっこまれ、照れくさそうに話す悟飯に、ピッコロはいらだっていた。
き き

(……オレに気づいてない……なんてことだ! パンでさえすぐに気づいたのに……)
てい きゅう ち ほん き

こんな体たらくで、はたしてパンの窮地に本気になったりできるのだろうか。
ばん こし じゅう ぬ

と、15番が腰のホルスターから銃を抜いた。

「死にたくなかったら、オレたちについてきてもらおう」
じゅう こう ご はん いっ しゅん はん のう まど て の

カチャリと銃口をむけられた悟飯は一瞬だけ反応したが、すぐに窓に手を伸ばす。
「いまいそがしいんですよ」
まど い ご はん ばん まど じゅう こう

窓をしめながらそう言う悟飯に、15番が窓をおさえて銃口をつきつける。

「おまえ、こいつが見えないのか!? ――あ!」
め はや ご はん じゅう ゆび

だが、目にもとまらぬ速さで悟飯は銃を指ではじいた。
い ちゅう こく

くだらないことはごめんだとでも言いたげに、忠 告する。
かえ けい さつ よ

「帰ってください。警察呼びますよ」
「クッ……!」
ちから さ れき ぜん じつ りょく こう し

力の差は歴然だ。実力行使はできそうにない。
さと ばん

悟った15番は、すぐにポケットからスマホをだした。

「こ、これを見ろ!」
『パパ、こわいよ~、たすけて~』
なが さき き ち ない と どう が

流されたのは、先ほど基地内で撮った動画だ。
だ すがた ご はん まえ

おびえたようにヌイグルミを抱きしめるパンの姿に、悟飯が前のめりになる。
「パン!」
むすめ かな め

「そういうことだ。娘はあずかっている。悲しい目にあいたくなかったら、おとなしくついてくるんだな」
ご はん すがた あん しん ばん じゅう

あわてる悟飯の姿に安心して、15番ははじかれた銃をさがしにいった。
き ち

これでおとなしく基地までついてくるはずだ。
ご はん て もと まど わく こわ

が、悟飯はわなわなとふるえだすと、手元の窓枠をバキィッと壊した。
そと と ご はん じ めん ころ ばん じゅう ふ

バッと外へと飛びだした悟飯は、地面に転がる15番の銃をいきおいまかせに踏みつぶす。
「!」
「うおおおおお!!」
き あ きん いろ いっ しゅん ご はん からだ

気合いとともに、金色のオーラが一瞬で悟飯の体をつつみこんだ。
ご はん スーパー じん

悟飯が 超サイヤ人になったのだ。
ばく はつ き ばん あと

爆発する気におされ、15番がしりもちをついて後ずさる。
ご はん いか じ めん いえ

悟飯の怒りをあらわすように、地面がドゴッとへこみ、家がかたむいてしまった。
「パンになにをした!!」
「ひいいい!」
ご はん ばん さけ ど げ ざ

おそろしいほどの悟飯のいきおいに、15番は叫びながら土下座する。
「だ、だいじょうぶです! まだ、な、なにもしちゃいません!! あ、あの……ついてきてもらえますか?」
「いそげ!! パンになにかあったらタダじゃすまないからな!」
「は、はい!!」
がく しゃ ぜん ご はん

いつもの学者然としておだやかな悟飯とはまるでちがう。
(よーし……いいぞ!!)
よう す わら こぶし

その様子に、ピッコロはニヤリと笑ってグッと拳をにぎったのだった。
ご はん とう ちゃく ま ひ みつ き ち じょう くう おも くら くも た

悟飯の到着を待つ秘密基地の上空には、重く暗い雲が垂れこめていた。
ふ あめ はげ ごう う か

いつからか降りはじめた雨が、激しく豪雨に変わっていく。
て じょう じょう かい つ

手錠をかけられたパンは、メインタワーの上階にあるテラスへと連れだされていた。
した ひろ ば ご はん ま

マゼンタやカーマイン、それにヘドは、下の広場で悟飯がくるのを待ちわびている。
「まもなくやってきます!」
む せん へい こえ どう じ じょう くう ひ こう き き

無線兵の声がとどくのと同時に、パンも上空の飛行機に気づいた。
か き ない み ご はん ど き

フェンスに駆けよったパンを機内から見つけ、悟飯の怒気がふくれあがる。
「あそこか!」
ドォン!!
い ひ こう き じょう ぶ ばく はつ と

言うなり、飛行機の上部を爆発させ飛びだしてきた。
き ぜつ ばん き ひ こう き だっ しゅつ

ピッコロは気絶した15番をかかえ、気づかれないように飛行機から脱出する。
ひろ ば へい し まえ ご はん ど き ちゃく ち

広場にいるマゼンタとたくさんの兵士たちの前に、悟飯は怒気をまとって着地した。
み の さけ

パンはうれしそうにフェンスから身を乗りだして「きた!」と叫んだ。
「パパきた!」
「パン!」
こえ ご はん いっ き と

その声に、悟飯が一気にテラスへとむかって飛びだす。
かぜ ごう ちい こえ はや かん たん こえ

風にあおられたガンマ1号が、小さな声で「速い」と感嘆の声をあげた。
ごう

「2号!」
し じ

すかさずヘドが指示をだす。
し めい ごう うご ご はん よこ て ひろ ば け

指名されたガンマ2号は、すばやい動きで悟飯を横手から広場へと蹴りおとした。
「パパ!」
じ めん しょう とつ ご はん はな わら

地面に衝突した悟飯に、マゼンタはガッツポーズをし、カーマインは鼻で笑う。
かん わる

感じの悪いおとなたちを、パンはムッとにらみつけてやった。
「このヤロウ……」
いか ご はん しず た ぬ す

怒りをまとわせた悟飯が、静かに立ちあがりマントを脱ぎ捨てる。
ごう

「1号」
よ ごう みぎ こぶし ひだり て う まえ

と、ヘドに呼ばれた1号が、右の拳を左の手のひらに打ちつけながら、前にでてきた。
あい て わたし

「おまえの相手は、この私がする!」
むすめ すく たお

「ふっふっふ。娘を救いたければ、そいつを倒してみろ」
ゆび

うしろから指をつきつけてきたのはマゼンタだ。
「……おまえたち、なにものだ……」
ご はん ごう む ごん くび な

にらむ悟飯にガンマ1号は無言のまま、パキパキと首を鳴らした。
はげ あめ う か いっ き か そく なぐ

激しい雨に打たれながら駆けだすと、一気に加速し殴りかかる!
「っ!」
そう ぞう い じょう

想像以上のパワーだった。
りょう うで ご はん おどろ

両腕でガードはしたものの、悟飯は驚きをかくせなかった。
ごう こぶし

ガンマ1号がさらに拳をくりだす。
ご はん げ

が、悟飯はそれをふせいでまわし蹴りをはなつ。
ちょく げき ごう たお

直撃したガンマ1号が、ゆっくりうしろへ倒れこんだ。
「!」
おも しゅん かん じ めん と ごう よ び どう さ からだ

と、思った瞬 間、地面ギリギリで止まったガンマ1号は、予備動作なしで体をもどす!
ず つ う と ご はん ごう りょう て く

それを頭突きで受け止めて、悟飯は1号と両手をがっしりと組みあわせた。
ちから ご かく

力くらべはほぼ互角。
ごう ご はん あし ご はん せ おい なげ じょう しょう きゅう こう か

と、1号が悟飯の足をはらった。バランスをくずした悟飯を背負投でたたきつけると、上昇し、ねらいをさだめて急降下する。
ご はん じょう くう しょう げき ひろ ば じ めん おお

悟飯は上空からのキックはふせいだものの、衝撃で広場の地面が大きくくずれだした。
「う、ウソだろ……」
「ひえええ……」
たたか はげ へい し あと

闘いの激しさに、兵士たちが後ずさる。
み わら

マゼンタとカーマインは見くだしたようにニヤリと笑った。
ご はん れっ せい

悟飯の劣勢に、パンはくやしそうだ。
「きてくれてよかったな」
こ ごえ はな

テラスへとやってきたピッコロが、そんなパンに小声で話しかけた。
つよ か

「うん。でもあいつ強いね。パパ勝てるかな」
む り

「無理だ」
「……え?」
ご はん ごう つよ か

いまの悟飯では、ガンマ1号の強さには勝てない。
スーパー じん か

超サイヤ人になっても勝てるかどうか。
いち ど ごう たたか

一度ガンマ2号と 闘ったピッコロにはよくわかる。
ご はん しょう ぶ かん かん ぜん と め ざ き たい

「悟飯が勝負の勘を完全に取りもどし、目覚めることに期待しよう」
か のう せい み

そうすれば、可能性は見えてくるはずだ。
じ めん そこ ご はん ごう

くずれた地面の底で、悟飯はガンマ1号をギッとにらみつけていた。
「……なんだ、おまえは!」
「スーパーヒーローだ」
「はぁっ!?」
ま じ め こえ い ごう ご はん こえ

真面目な声でそう言うガンマ1号に、悟飯がいぶかしげな声をあげる。
むすめ い

ひとの娘をさらっておいて、よくそんなバカバカしいことが言えるものだ。
いか ご はん ごう と

怒りをたぎらせ、悟飯はガンマ1号にむかって飛びだした。
こう げき ぎゃく げ はら

だが、くりだす攻撃はかわされて、逆にひざ蹴りを腹にきめられてしまった。
「うっ……!」
ご はん ごう しょう てい

うめく悟飯を、ガンマ1号はすかさず掌底でつきあげる。
りょう あし くび じょう くう な

さらに両足首をつかまれて、はるか上空へと投げられる。
くう ちゅう たい せい た ご はん ごう み

どうにか空中で体勢を立てなおした悟飯は、1号をじっと見おろした。
じん ぞう にん げん

「ロボットじゃないな……。人造人間か」
「さすがにくわしいな」
ひ きょう

「なるほど……だがなぜこんな卑怯なことをするんだ」
たたか き ご はん ごう ふ ふく く うで

闘いのいきおいでずれたメガネをなおしながら聞く悟飯に、ガンマ1号は不服そうに組んでいた腕をほどいた。
ゆう かい わたし わたし せい ぎ めい れい じっ こう

「誘拐は私のアイデアじゃない。私はただ、正義のために命令を実行するだけだ」
せい ぎ めい れい

「……正義? 命令?」
まゆ ご はん ごう ゆび

眉をよせる悟飯を、ガンマ1号がビッと指さす。
あく ひ みつ そ しき

「おまえたちのような悪の秘密組織をつぶすこと」
「なに?」
い もう と

言うなり猛スピードで飛びだしてくる。
はら い じ めん け

つきを腹に、ひざをあごに入れられ、すかさず地面へと蹴りおとされる。
ご はん かい てん しょう げき じ めん お

悟飯は回転して衝撃をやわらげ、地面に降りたった。
あし もと きん いろ た かみ け さか だ きん いろ

足元から金色のオーラが立ちあがり、髪の毛が逆立ち金色にそまる。
ご はん スーパー じん

悟飯が 超サイヤ人になったのだ。
「なっ、なんだと……!?」
な す ご はん すがた きょう がく こえ

メガネを投げ捨てた悟飯の姿に、マゼンタが驚愕の声をあげた。
う ちゅう じん

「トリックじゃない! ホントに宇宙 人か……!」


み こう ふん こぶし

そばで見ているヘドも、興奮したように拳をにぎる。
ご はん ごう と れん ぞく け み ま

パワーをあげた悟飯は1号へ飛びかかり、連続で蹴りをお見舞いした。
「たりゃあああっ!」
つづ みぎ ひだり なぐ と

続いて右アッパーではねあげて、左ストレートで殴り飛ばす。
ごう くう ちゅう うご と

が、ガンマ1号はダメージなどないかのように、空中で動きを止めた。
へん しん そう てい ない

「その変身は、想定内だ」
もう ぜん ご はん がん ぺき

猛然と悟飯にタックルをかますと、そのまま岩壁へとつっこんでいく。
ドゴゴゴゴッ!
いわ はだ ご はん て

岩肌をけずるようにおさえつけられて、悟飯はグッと手をつきだした。
「はあっ」
き と ごう と

気を飛ばして、ガンマ1号をはね飛ばす。
「はあぁぁぁっ!」
れん ぞく き こう は う

そのまま連続で気功波を打ちはなった。
ごう かる がる こう せん じゅう う

けれどガンマ1号は軽々とかわし、すかさず光線銃を撃ってきた。
「っ!」
ご はん じ めん

悟飯はすばやくビームを地面へとはじく。
「ヒイッ!」「わああああ!!」
ひろ ば げき とつ へい し ひ めい

ビームは広場に激突して、兵士たちから悲鳴があがる。
「しまった!」
よう す ごう じゅう

その様子に、ガンマ1号はあわてて銃をしまった。
き と ご はん げ け と

気を取られたのか、悟飯のひざ蹴りをガードしきれず蹴り飛ばされる。
ち じょう いっ しん いっ たい こう ぼう つづ

そこから、地上で一進一退の攻防が続いた。
りょう しゃ なぐ と こう げき

両者ゆずらず、殴ってはさがり、ふたたび飛びだしてはたがいの攻撃をガードする。
ちから ふたり おお こえ せい えん おく

力くらべでにらみあう二人に、パンがテラスから大きな声で声援を送る。
「パパ、いいぞ! ガンバレー!」
「くそ……マズいな……」
「え?」
にが かお ふたり たたか み

けれどピッコロは、苦い顔で二人の闘いを見ていた。
たたか あい て せん りょく うご まな

「あいつは闘いながら相手の戦力や動きを学んでいるようだ……」
よ そう

はたしてその予想はあたったようだ。
ご はん おも け ぱつ ごう じょう たい お むな もと よご

悟飯から重たい蹴りの1発をふせいだガンマ1号が、スッと上体を起こして胸元の汚れをはたいた。
ちから

「……これがおまえのすべての力か?」
「なに?」
か め

「そうであれば、おまえに勝ち目はない」
「なんだと……!」
つぎ しゅん かん こう そく め まえ ご はん こん ど ごう あたま じ めん

次の 瞬 間、高速で目の前へせまった悟飯だが、今度はガンマ1号にかわされ、頭から地面にたたきつけられた。
「ぐっ……!」
ご はん け せ なか げ

悟飯は蹴りをくりだすが、いなされて、背中にひざ蹴りをくらう。
「い、いいぞ! すばらしい! それでこそボクのガンマだ……!」
かん せい

ヘドがうれしそうに歓声をあげる。
ぼう せん いっ ぽう ご はん ない しん

またたくまに防戦一方となった悟飯に、ピッコロは内心イラだっていた。
ご はん しん か

まだまだ悟飯の真価はこんなものではないはずだ。
ちい みみ う

ピッコロはそっとかがむと、パンに小さく耳打ちをした。
いた い さけ

「痛いとか言って叫べ」
「……!」
さっ

パンはすぐに察したようだ。
とお たお ご はん き おお こえ さけ

遠くで倒れている悟飯にも聞こえるように、大きな声で叫びはじめる。
「いったーい!! キャー!」
こえ ご はん かお

その声に、悟飯が顔をあげた。
ふん ぐん へい し むな ぐら も め うつ

ピッコロ扮するレッドリボン軍の兵士が、パンの胸倉を持ちあげているのが目に映る。
しん じつ むな ぐら みぎ て た

真実は、胸倉をつかんだふりをしているだけで、ピッコロの右手にパンが立っているだけだ。
「パン!!」
むすめ ひ めい あたま ち ご はん

だが、娘の悲鳴で頭に血ののぼった悟飯にはわからない。
ひっ し ぎょう そう ご はん おも しゅん かん

必死の形相でこちらをにらむ悟飯に、ピッコロがしてやったりと思った 瞬 間。
こ ども て

「やめろ! なにをしているんだ! 子供に手をだすんじゃない!」


ごう み

なぜかガンマ2号があわてたようにこちらを見た。
「「……え……」」
ゆう かい じ てん て

誘拐をした時点で、じゅうぶん手をだしている。
かん みみ ご はん てん さけ ごえ き

なにかおかしいと感じたピッコロの耳に、悟飯の天をつくような叫び声が聞こえてきた。

「うおおおおおー!!」

き あ ご はん ど き

気合いとともに、悟飯の怒気がものすごいいきおいではねあがった。
じゅう まん てん ぶ あつ あま ぐも ふ と

充満したオーラが天へとほとばしり、分厚い雨雲さえも吹き飛ばす。
たい よう ひかり ふ ち じょう ご はん かみ きん くろ

太陽の光が降りそそぎ、地上にいる悟飯の髪が金から黒にしずまっていた。
ゆ げ た

だが、まとうオーラは湯気のように立ちのぼっている。
うち ひ せん ざい のう りょく かい ほう すがた ご はん あかし

内に秘めていた潜在能力を解放した姿――アルティメット悟飯になった 証だ。
いっ しゅん せい じゃく ご はん じ めん け

一瞬の静寂をおいて、悟飯がドン、と地面を蹴る。
ご はん ごう て こぶし う と こぶし ごう がん

スピードのあがった悟飯にひるむことなく、ガンマ1号は手をつきだしてその拳を受け止めた――が、拳はそのまま1号の顔
めん お

面に押しこまれた。
ぱつ こぶし がん めん おそ け ごう からだ ちゅう ま

もう1発の拳が顔面を襲い、さらに蹴りあげられて、ガンマ1号の体が宙を舞う。
「くっ……!」
たい せい こん ど じ めん け と

どうにか体勢をもどしたが、今度はうしろにまわられ、地面に蹴り飛ばされる。
「な……なんだ……?」
べつ じん はや

まるで別人のような速さとパワーだ。

かく せい

「いいぞ! ついに覚醒した!」
「わーいわーい」
ふたり こぶし

ピッコロはパンをおろすと、二人で拳をつきあわせ、グータッチする。
れっ せい こん らん

けれどとつぜんの劣勢に、ヘドは混乱するばかりだった。
「そんなバカな……」
こと ば

マゼンタは言葉もなく、じりじりとうしろにさがりはじめる。
よこ ごう まも た ごう ご はん たたか しん けん み

その横で、ガンマ2号はヘドを守るように立ちながら、ガンマ1号と悟飯の闘いを真剣なまなざしで見つめていた。

さん しゃ さん よう おも み さき ご はん ごう こう げき

三者三様の思いで見つめる先で、悟飯はガンマ1号の攻撃をふせぎながらにらみつけた。
あく ひ みつ そ しき

「悪の 秘密組 織ってなんだ!」


い ごう ひだり げ あし うら と はら う

言いながら、ガンマ1号の左 蹴りを足の裏で止め、腹にひじを打ちつける。
ごう ちゃく ち こう せん じゅう ぬ

ガンマ1号はくるりとターンして着地しながら光線銃を抜いた。
「おまえたちのことだ!」
「ふざけるな!」
しゃ しゅつ ど せい う

射出されたエネルギービームを、怒声とともに打ちはらう。
し さん き ち ない は かい けむり た

四散したビームが基地内のあちこちを破壊し、もうもうと煙が立ちこめた。
こ ども ゆう かい い

「それが子供を誘 拐したヤツの言うことか!」
じょう くう ご はん ゆび

上空から、悟飯が指をつきつける。
あく そ しき

「悪の 組織は、そっちだろう!」
「……ちがう!」
じゅう ごう

とまどうように銃をしまったガンマ1号が、じりじりとうしろにさがりはじめる。
よう す おも こえ

その様子に思わずヘドは声をかけた。
お ごう か せい

「お、落ちつけガンマ! 2号! おまえも加勢するんだ!」


「はっ!」
「おっと!」
と ごう あたま な

飛びだそうとした2号の頭に、ピッコロがヘルメットを投げつける。
て じょう かん たん わ

パンもかけられていた手錠をバキンッと簡単に割ってはずした。
じゃ ま

「邪魔はさせないぞ」
ぐん ぷく と へん そう と

ピッコロは軍服をオーラではじき飛ばし、変装を解く。
ご はん き

悟飯は、そこでようやくピッコロがいることに気づいたようだ。
ごう せ よ ゆう

だが、すぐにガンマ1号のパンチに攻められて、こちらにくる余裕はさすがにない。
たたか かれ ごう ふ てき わら み

闘う彼らをうしろに、ガンマ2号が不敵に笑ってピッコロを見あげた。
だい ま おう

「……なんと! ピッコロ大魔王だったか」
だい ま おう い

「大魔王じゃない。ただのピッコロだと言っただろ」
せん ざい のう りょく かい ほう みどり いろ からだ き いろ み

潜在能力を解放すると、ピッコロの緑 色の体はいつもよりうっすら黄色味がかった。

「ホントに生きていたようだな。まさか、こりずにボクにやられにきたのかな?」
りょう て おお ちょう はつ かた

両手をひろげる大げさなジェスチャーで、挑発するように肩をすくめる。
あじ

「さっきとはひと味ちがうつもりだ」
こん ど に

「……今度は逃げるなよ!」
けい かい さけ ごう りょう て じ めん し せい と だん がん と

軽快に叫ぶと、ガンマ2号は両手を地面につけてクラウチングスタートの姿勢を取り、弾丸のように飛びだした。
いきおいのあるパンチがピッコロへとくりだされる。
かた て う と よこ ひ あ ばら げ

が、それを片手で受け止めると、横に引き、空いたわき腹へとひざ蹴りをきめた。
みぎ こぶし かお ひろ ば なぐ たお

そのまま右の拳を顔にめりこませ、広場へと殴り倒す。
ごう こう げき たたか み ご はん おも

ガンマ1号の攻撃をガードしながら、その 闘いを見ていた悟飯は思わずつぶやいた。
「なんでピッコロさんが……」
せつ めい ば あい たたか しゅうちゅう

「説明してる場合か! 闘いに集中しろ!」
「はっ、はい!」
ど な ご はん かお

けれどすぐに怒鳴られて、悟飯はバッと顔をもどした。
ごう あし もと ふたり ふか たに ぞこ お

ピッコロとガンマ2号の足元がくずれだし、二人は深い谷底へと落ちていく。
たん じ かん

「なにをしたんだ、こんな短時間で……それともかくしていたってのか?」
おし

「フン。教えてやるもんか」
じつ りょく ざん ねん

「またか。しかし、それでもボクの実力には残念ながらおよばないようだよ」
「なに……?」
ごう きょ り

いぶかしむピッコロに、ガンマ2号がスピードをあげて距離をつめてきた。

うえ ひろ ば ご はん ごう たたか しゅうちゅう

上の広場では、悟飯が1号との 闘いに集中していた。
い こう げき て け

ピッコロに言われたとおり、攻撃の手をやすめずに、すばやい蹴りをくりかえす。
こう げき りょく ご はん うえ

いまの攻撃力なら悟飯が上だ。
ごう よう す ご はん

が、1号はまるでひるむ様子もなく、悟飯にひじをくりだしてきた。

「くっ……おまえ、つかれ知らずか……」
じん ぞう にん げん ぜん りょく

「人造人間だからな。エネルギーがきれるまで全力がだせる」
「のこりのエネルギーは……?」
うで う と ご はん ごう きょ り と

そのひじを腕で受けてはじき飛ばし、悟飯は1号と距離を取る。
パーセント

「まだ82 % のこっている」
「げ! マジか……」
ぐ たい てき すう じ ご はん ひ ぎ み

でてきた具体的すぎる数字に、悟飯は引き気味にそうつぶやいた。

き ち たに ぞこ たたか おどろ

基地のはるか谷底で 闘うピッコロは、驚きをかくせないでいた。

「――くそっ、たいしたヤツだ! これほどパワーアップしても追いつけない!」
はかせ けっ さく

「ヘド博士の傑作だからね!」
ごう むね と かべ け

2号は胸をはってポーズを取りながら、壁を蹴ってむかってくる。
とっ しん ごう ちか ねん あつ な

まっすぐ突進してくるガンマ2号に、ピッコロは近くのガレキを念で集めて投げつけた。
「おしいな」
「おしい? なにがだ」
な じゅう ごう まゆ

投げられたガレキを銃でくだいて、ガンマ2号が眉をよせる。
みぎ て ひたい ゆび さき き しゅうちゅう おと た

ピッコロは右手を額にあてた。指先にピッコロの気が集中し、バチバチと音を立てる。
わる めい れい

「おまえは……悪いヤツじゃない。バカな命令にしたがっているだけだ!」
い ひっ さつ わざ ま かん こう さっ ぽう

言いながら、ピッコロは必殺技の魔貫光殺砲をはなつ!
「ハッ。それがどうした!」
と ごう きょう れつ と

飛びながらガンマ2号は、強烈なエネルギーをバリアではじき飛ばした。
ま かん こう さっ ぽう じ めん き ち にわ は かい

はじかれた魔貫光殺砲は、地面をつらぬき、基地の庭を破壊する。
つく

「ボ、ボクたちは、そのために創られたんだ……!」
ごう はかせ めい れい

2号にとって、博士の命令はぜったいだ。
ま かん こう さっ ぽう ゆび さき ごう

しかしピッコロは魔貫光殺砲をはなった指先をそのままに、2号をまっすぐににらみつける。
めい れい じょう ほう つた

「その命令をだしたドクター・ヘドも、マゼンタからまちがった情報を伝えられていたとしたら……?」
「そんなことはない!」
じ ぶん まよ ごう おお ごえ さけ

自分の迷いをふりきるように、2号が大声で叫んだ。
どう じ りょう あし と はら

同時に両足で飛びこんできたキックが、ピッコロの腹にきまる。

「うすうす、気がついているはずだ……」
「……だまれ! くそっ!」
い ごう がん めん みぎ う

うめくようにそう言って、ガンマ2号はピッコロの顔面に右ストレートを打ちつけた。
てい こう がん めん なん ど なぐ りょう あし じょう くう な

抵抗できないピッコロの顔面を何度も殴り、両足をとらえてふりまわすと、上空に投げあげる。
うえ ごう たに ぞこ おも

そのまま上にまわったガンマ2号は、谷底にむけて、ピッコロを思いきりたたきおとした。
「……っ」
きょ だい ふか たに そこ やみ おも ま くら

巨大な深い谷の底は闇を思わせるように真っ暗だ。
なか す お からだ きん いろ ひかり なが

その中を吸いこまれるように落ちていくピッコロの体に、金色の光が流れはじめた。
い しき とお みみ シェン ロン せりふ

意識が遠のきそうになっていたピッコロの耳に、神 龍の台詞がよみがえる。
すこ

『少しオマケをしておきました』
シェン ロン ほう こう

神 龍の咆哮があたりにとどろく。
じょう しょう シェン ロン ひかり えん えん なか せい めい い ぶき かん き は えだ

上昇した神 龍が、ぐるりとアーチをえがき、ひとつの光の円になった。その円の中に、生命の息吹を感じる木が生える。枝
ふ は せい き えん こく いん せ う

を増やし、葉がおいしげったそれは、ナメック星のアジッサの木だ。その円が刻印のようにピッコロの背に浮かびあがり――
「――!」
じ ぶん なか かん

ピッコロは自分の中にあふれだしてくるパワーを感じた。
たに ぞこ げき とつ ちょく ぜん からだ ばく はつ

谷底に激突する直前、ピッコロの体からオレンジのオーラが爆発する!
ドオンッ!
じ な おと た たに ぞこ じょう しょう からだ いろ へん か

地鳴りのような音を立て谷底から上昇したピッコロは、体がオレンジ色に変化していた。
にく たい ひと い じょう おお かお か

肉体は一まわり以上大きくなり、顔つきもいかついものへと変わっている。
こん ど

「今度は、なんだー!」
おどろ ごう とっ しん

驚きながら、それでもガンマ2号はピッコロにむかって突進した。
こん しん はら れん だ

スピードをあげ、渾身のパンチを腹に連打する。
「だりゃぁあああ!」
び どう ぼう ぜん ごう おお こぶし

けれどピッコロは微動だにしない。呆然とする2号にむかって、大きく拳をふりかぶる。
「!!」
あっ とう てき なぐ ごう からだ ふ と

圧倒的なパワーで殴られ、ガンマ2号の体が吹っ飛ばされた。
じ めん ごう しん ぱい み

地面にめりこんでしまった2号を、ヘドが心配そうに見つめている。
し シェン ロン

「知るか。…… 神龍のヤツ、ずいぶんオマケしやがったな」
いろ じ ぶん て み はな

ピッコロはオレンジ色にかがやく自分の手を見つめながら、ふん、と鼻をならした。
へん か おどろ こえ

その変化に、マゼンタが 驚いたように声をあららげる。
う う ころ

「な、なにをしているおまえたち! 撃て! 撃ち殺せ!」


へい し めい れい じ ぶん

おびえる兵士たちに命令して、自分はそろそろとうしろにさがる。
ごし う じゅう きず お

へっぴり腰で撃ちこまれるふつうの銃は、もちろんピッコロに傷を負わせられるわけもない。
そう すい

「総帥」
「ああ、こうなったら……!」
はし

ささやくカーマインにうながされ、マゼンタはそっと走りだした。
へい し きょう ふ ち ぢ に

兵士たちも恐怖で散り散りに逃げだしていく。
じょう きょう こん わく

その状況に困惑しながら、ヘドはマゼンタをさがしていた。
じょう きょう し き と

こんな状況になったときこそ、ヒーローのリーダーはしっかり指揮を取るべきだ。
に へい し すがた み

と、逃げまどう兵士たちのあいだをぬうように、マゼンタとカーマインの姿が見えた。
「……? あ、あいつら……!」
はし ふたり さき い どう よう ひ こう

メインタワーのわきを走る二人の先には、移動用の飛行メカがある。
たたか に

まだガンマたちが 闘っているというのに、逃げるつもりか。それとも――
「!」
おも か のう せい はし

思いついた可能性にハッとして、ヘドは走りだした。
「こらーっ! にげるなー!」
さけ

かわってマゼンタたちに叫んだのはパンだった。
うご き ふたり お はし

おかしな動きに気づいたパンが、二人を追いかけて走ってきたのだ。
「ひぃ!」
そう すい

「総帥はおさきに――このガキっ!」
い じゅう と ちゅう ちょ

そう言うやいなや、カーマインは銃を取りだし、なんの躊躇もなくパンにむけた。
「わっ! わわっ!」
う じゅう ふ けい かい うご

タン、タタタタ、と撃たれる銃を、タップでも踏むかのように軽快な動きでパンがよける。
てい ど こう げき へ

この程度の攻撃は、パンにとっては屁でもない。
が、そのとき。
バシュ!!
たお ごう じゅう ちょく げき

倒れていたはずのガンマ2号のビームが、カーマインの銃を直撃した。
「な、なにをするガンマ!」
かく しん あく

「……たったいま、確信した。どっちが悪か……!」
おどろ ごう いか ひょう じょう

驚きふりかえったカーマインに、ガンマ2号は怒りの表 情をむける。
こ ども じゅう こう せい ぎ

子供に銃口をむけるヤツらが、正義であるわけがない。
「てぃっ!」

と、パンがカーマインに飛びかかった。
ちい からだ おも がん めん み ま はら ぱつ

小さな体で重たい顔面キックをお見舞いし、よろめいたカーマインの腹にも1発。
「お、おおおお……ぐほぉ……」
じ めん たお

うめきながら、カーマインがどしゃりと地面に倒れる。
あく う

悪のひとりは打ちやぶった。
いち ぶ し じゅう み き しず もと みどり いろ からだ

その一部始終を見ていたピッコロは、気を静めると、元の緑 色の体にもどった。
つづ ご はん こえ

それから、とっくみあいを続けている悟飯にむかって声をはりあげた。
ご はん たたか

「悟飯! もういい! 闘いをやめろー!」


ご はん かお

ハッとした悟飯が顔をあげる。
「……いったい……どうしたんですか?」
そう ほう ご かい

「どうやら、双方に誤解があったようだ……」
い ごう ふか

そう言うピッコロのとなりで、2号が深くうなずいた。
しん てき し

ガンマたちがようやく真の敵を知ったころ。
ち か けん きゅう しつ そう さ

メインタワーからはなれた地下の研究室では、マゼンタがコントロールパネルを操作していた。
お おお ごえ よ

あわてて追いかけてきたヘドが大声で呼びかける。
「なにをするつもりだ! まさか!」
き どう

「そうだ! セルマックスを起動してやる!」

せわしなくキーボードをたたくマゼンタは見むきもしない。
し せん さき み かん せい はい まる ばい よう

視線の先には、未完成のセルマックスの入った丸い培養カプセルがある。
たたか

「バカなことはやめろ! ガンマたちはまだ 闘っている!」


さけ じゅう

叫ぶヘドをふりかえり、マゼンタは銃をかまえた。
らく しょう しん

「バカはおまえだ。楽勝じゃなかったのか! きさまなんかを信じたせいで、このピンチだ!」
こん らん たお てき あく い み

「ガンマたちは混乱しているんだ。倒すべき敵に悪意が見えてこないから」
ひっ し せつ めい はな わら

必死で説明するヘドを、マゼンタは鼻で笑った。
よう そ う

「フン。それはきさまがくだらないヒーローの要素なんかを植えつけたせいだ!」
「ぬっ、く……」
いき ね と たの

「いつか息の根を止めてやることを楽しみにしていたぞ」
い まよ ひ がね ひ

そう言うと、迷いなく引き金を引く。
かわ じゅう せい お たお

パン、と乾いた銃声がして、ヘドはガクリとひざを折り倒れた。
せ はつ じゅう せい

その背に、もう2発、銃声がひびく。
わる

そしてマゼンタは、悪びれることなくコントロールパネルにむきなおった。
にゅう りょく き どう かい し

パスワードを入 力し、起動プロセスを開始する。
フィィィン……
ばい よう ひかり てん めつ はげ

培養カプセルがうなりだし、光の点滅が激しくなった。
うご け はい

――と、マゼンタのうしろで、ふいになにかの動く気配がした。
ころ かい てん と

ハッとしてふりかえれば、殺したはずのヘドが、くるくるとバレリーナのように回転してピタッと止まり、おかしなポーズをとってい
る。
「! ドクター・ヘド!?」
わす ひ ふ てい ど しょう げき た かい ぞう

「忘れたのか? ボクの皮膚は、ある程度の衝撃なら耐えられるように改造したって……」
おどろ まえ はく い ぬ す

驚くマゼンタの前で、ヘドが白衣を脱ぎ捨てた。

「!? ……そうか、そういえばそんなことを言ってたな」
フードをかぶり、マントをなびかせ、まるでスーパーヒーローのようなかっこうになる。
こう せん じゅう も わら あと

光線銃を持ってにやりと笑うヘドから、マゼンタはおびえたように後ずさり――
わたし ちか かい ぞう

「だが……私もそれに近い改造はしていてね」
「え?」
わら かお

ニタリと笑って顔をあげる。
おどろ まえ ふく ぬ

驚くヘドの前で、マゼンタも服を脱ぎはじめた。
てん さい み かい ぞう つよ

「天才から見ればたいした改造じゃないかもしれんが、おまえよりは強いはずだ」
お ぬ

落ちつきはらって、脱いだジャケットをハンガーラックにかける。
ふく した じょう はん しん

服の下からでてきたマゼンタの上半身は、メタリックなかがやきをはなっていた。
ひと め にく たい かい ぞう

一目で肉体改造したのだとわかる。
こん ど お

「クックックッ……今度こそおまえは終わりだ!」
い いっ ぽ ちか ひだり て こう くち もと

言いながら一歩ずつ近づくマゼンタに、ヘドはさがって左 手の甲を口元によせた。
まる

「――ハチ丸」
「……? ん?」
と まる くび ほそ はり さ

どこからともなく飛んできたハチ丸が、マゼンタの首にプスッとその細い針を刺す。
「グオオオオー!?」
く つう さけ ごえ

そのとたん、マゼンタは苦痛に叫び声をあげた。
か ほこ かた め せ

ヘドが勝ち誇ったように片目をつぶり背をむける。
い かい ぞう にん げん ぶ ぶん まる どく ばく だい し きん けん

「言っただろ。改造しても人間の部分がのこっていたら、ハチ丸の毒でイチコロだって。……くくく、あんたの莫大な資金は、研
きゅう しゃ み りょく てき に おも

究者からすれば魅力的だ。ボクはいくらかいただいて、ガンマたちと逃げようと思う」
「ぐぎ……ぐぎぐぐ……ううう……」
そのうしろで、マゼンタはのたうちまわりながらコントロールパネルへとたどりついた。
さい ご ちから こぶし おも

最後の力をふりしぼり、拳を思いきりふりあげる。
「うおおおおお!」
「!?」
き どう

起動ボタンに、マゼンタのグーパンチがたたきつけられた。
「ああ! しまったあああ!!」
あたま もく ぜん ばい よう ひかり

頭をかかえるヘドの目前で、培養カプセルからまばゆい光がはなたれはじめ――
ぐん き ち ない ぶ き み な

レッドリボン軍の基地内に、不気味なサイレンが鳴りひびいた。
ごう

「どうなってるんだ、2号」
くも ゆ か

「どうやら雲行きが変わってきたみたいだ」
ひ じょう じ たい し おと かお

非常事態を知らせる音に、ガンマたちがけわしい顔になる。
じ じょう き ご はん さい かい だ うで ちから こ

ピッコロから事情を聞いた悟飯は、ようやく再会できたパンを抱く腕に力を込めた。
と、そのとき。
じょう くう き ひ こう き そう じゅう せき み

上空に、1機の飛行機があらわれた。操縦席に見えるのはブルマだ。
「よっと!」
せん かい せん とう ご てん ごう お

メインタワーを旋回し、トランクスを先頭に、悟天、クリリン、18号が降りてくる。
さい ご ご はん おお て

最後にでてきたブルマが、悟飯たちにぶんぶんと大きく手をふる。
すけ と い がい

「たのもしい助っ人にきてもらったわよ! クリリン以外は」
きず み けい さつ しょ ちょう じん い

「傷つくなあ。こう見えても警察署じゃ超人って言われてるんすからね」
けい かん ふく き ふ まん くち

サタンシティの警官服を着たクリリンが、不満そうに口をとがらせる。
ご はん み ご てん おどろ め まる

そんなクリリンをよそに、悟飯を見つけた悟天が驚いたように目を丸くした。
にい たたか

「めずらしいな。兄ちゃんも闘いにきたんだ」
ご てん

「悟天か……? あ、お、おう」
おとうと た め て

弟のとなりに立つトランクスに、目をしばたかせながら手をあげる。
スーパー じん な ご はん き み

超サイヤ人になったときメガネを投げてしまった悟飯は、気をおさめているいま、どうやらよく見えていないようだ。
おく こえ

遅れてやってきたブルマが、「あ、ちょっと!」とうれしそうな声をだす。
「パンちゃんまでいるじゃないの! いくつになったのー?」
「えっとね、3さい」
ふたり かい わ き ごう め

ほのぼのとした二人の会話を聞きながら、18号がガンマたちに目をむける。
あたら じん ぞう にん げん

「そいつらが新しい人造人間かい?」
「ああ」
ご てん み

うなずくピッコロのそばで、トランクスと悟天もソワソワとガンマたちを見ている。
「ちょっとカッコイイな」
「うん」
しょう ねん かん そう い ふたり め

少年らしい感想を言いあう二人に目をとめたピッコロに、
ご てん

「トランクスくんと悟天くんだよ」
おし

パンがすかさず教えてくれる。
あ おも きゅう おお

「しばらく会ってないと思ったら、急に大きくなりやがったな」
じん ちい きゅう おお

「サイヤ人はずっと小さくて、あるときから急に大きくなるんですよ」
ご はん い おも

悟飯にも言われ、ピッコロはあらためて思いだした。
ご くう ご はん

そういえば悟空も悟飯もそうだった。
たたか

「ど、どうなってるんだ? 闘ってたんだろ? あいつらと」


と、クリリンがとまどうようにガンマたちを見た。
たたか すけ と きゅう せん じょう たい

闘いの助っ人にきたつもりだったが、いまは休戦状態だ。
お み

「ええ。ところで、どこかにボクのメガネって落ちてません? よく、見えなくて……」
く ちょう こた ご はん き ち かい だん

それにのんびりとした口調で答えた悟飯が、基地の階段をおりながらメガネをさがす。
ご はん み

ピッコロはあきれたように悟飯を見た。
へん しん し りょく

「おまえ、変身すると視力ももどるのか?」
「いやぁ……あはは……」
え がお こた ご はん おも み

あいまいな笑顔で答えた悟飯が、ハッと思いだしたかのようにピッコロを見る。
お いろ か き じょう しょう

「さっきのピッコロさん、なにが起こったんですか? すごかったですよ! オレンジ色に変わって……おそろしく気が上昇してま


した!」
こう ふん かお き くび

興奮したようにかがやく顔でそう聞かれ、ピッコロは首をひねった。
いろ じ ぶん かく せい

「オレンジ色? ……そうか。自分ではわからなかったが。まあ、おまえのようにオレも覚醒したってことかな」
「ちょうカッコよかったよ! ピッコロさん」
こう ふん こぶし

パンも興奮したように拳をにぎって、ブンブンとふる。
な まえ スーパー じん

「名前つけてくださいよ。 超サイヤ人みたいに」
な まえ

「名前……? どうでもいいがな……まあ、つけるとすれば、オレンジピッコロだな」
「オレンジピッコロって……」
ご はん くち

あまりにもそのままなネーミングに、悟飯はぽかんと口をあけてしまった。
ち か けん きゅう しつ いき た よこ そう さ

そのころ地下の研究室では、息絶えたマゼンタの横で、ヘドがあわただしくコントロールパネルを操作していた。このままでは
き どう

セルマックスが起動してしまう。
「くっ、ううぅ……」
ばい よう ぶ き み ごえ つづ

けれど培養カプセルは、不気味なうなり声をあげ続けている。
「あああ……」
やく えき ちゅうにゅう め ひか

薬液がカプセルに注入され、セルマックスの目が光った。

もうだめだ。間にあわない。
けい ほう おん な

あたりには警報音が鳴りひびいている。
いっ ぽ いっ ぽ あと

ヘドは一歩、また一歩と後ずさった。
ガコンッ!
ばい よう なか あば

培養カプセルの中で、とうとうセルマックスが暴れだした。
がい へき き れつ はい ばい よう えき

カプセルの外壁に亀裂が入り、培養液がふきだしてくる。
うち がわ なぐ おと えき たい よう き つ め

ガコン、ガコン、と内側から殴りつけられるにぶい音とともに液体があふれ、容器の継ぎ目がさけるようにひろがっていく。

「ヴガアアアアア!」

さけ と

そしてとうとう、セルマックスが叫びながら飛びだしてきた。
よう き そと きょ だい すい そう お

容器の外にある巨大な水槽へズルリと落ちる。
ぜん しん あ すい そう かお

しぶきを全身に浴びながら、ヘドはおそるおそる水槽へと顔をむけた。
うご きょ だい て すい そう

のたうちまわるように動いていたセルマックスの巨大な手が、水槽のフチにかけられる。

「オオオオオオオオオオ!」

くう き お たけ う

空気をもゆるがす雄叫びが、生まれたてのセルマックスからはなたれた。
ぜっ きょう てん じょう けん きゅう しつ ほう かい はじ

そのすさまじい絶叫で、天井のパネルはくずれ、研究室が崩壊を始める。
じ ぶん つく きょ だい ば もの み かん ぜん こと ば うしな

ヘドは、自分の創りだした巨大な化け物を見あげ、完全に言葉を 失ってしまった。
「…………」
かお うえ ち じょう ご はん き かん

と、セルマックスが、ふいに顔を上へとむけた。地上にいる悟飯たちの気を感じたようだ。
こん ちゅう はね ぶ き み そら じょう しょう

昆虫のようなかたい羽をひろげると、不気味に空へと上昇していく。
けん きゅう しつ ほう かい に て ぢか と

ヘドは研究室の崩壊から逃げるように、手近のフライングバイクに飛びのった。
ち じょう と

エンジンをふかし、どうにか地上までは飛びだせた。
「んぐっ!」
とう かい しょう げき ふう あつ ふ と はげ おう てん

だがすぐに倒壊の衝撃と風圧で吹っ飛ばされて、バイクごと激しく横転してしまう。
「セルが……」
からだ いき む せん

シートに体をはさまれながら、ヘドはあらい息でガンマたちに無線をつなげる。
き どう

「セルマックスが起動した!」
「なんだ?」
ごう おん ご はん

とつぜんあがった轟音に悟飯たちがふりかえる。
む せん きょう がく こえ

ガンマたちはヘドからの無線に、驚愕の声をあげた。
「セルマックスが!?」
かお ち か けん きゅう しつ ほう こう おう てん み

いそいで顔をあげれば、地下研究室のあった方向に横転したバイクが見えた。
し かく かく だい した じ すがた かく にん

視覚データを拡大すると、下敷きになったヘドの姿も確認できる。
じょう くう き どう きょ だい

その上空には、起動したばかりの巨大なセルマックス――!

「グォォォォォ!」

さけ ぜん しん じゃ あく

のけぞって叫ぶセルマックスの全身から、邪悪なエネルギーのかたまりがはなたれた!
きょ だい だん ばく はつ の ば しょ

巨大なエネルギー弾の爆発は、すべてを飲みこむようにしてヘドのいる場所にせまっている。
はかせ

「博士!」
さけ ごう こえ どう じ ごう と

叫ぶガンマ2号の声と同時に、ガンマ1号がヘドのもとに飛ぶ。
だん ほう しゅつ ばく ふう ふ と

だが、エネルギー弾から放出されたすさまじい爆風に吹き飛ばされた。
お ごう はげ ばく はつ

あとを追いかけるガンマ2号もまた、激しい爆発にはじかれてしまった。

ばく ふう ご はん ちか

その爆風は、悟飯たちのいるすぐ近くまでもやってきていた。
「うお!?」
「ひいい……」
じ めん しん どう おお ひかり み

地面をゆるがす震動と大きな光を、なすすべもなく見ているしかない。
ばく はつ ぐん ひ みつ き ち いち ぶ ふ と

やがて爆発がおさまると、レッドリボン軍の秘密基地は一部をのこして吹き飛んでいた。
おどろ おお

あとには驚くほど大きなクレーターができている。
たお ば しょ じ めん すがた か

ヘドが倒れていた場所もまた、むきだしの地面へと姿を変えていた。
「な……なんだよあれ」
「まさか……デカいセルか!?」
くう ちゅう う きょ だい あか みどり ば もの ぜつ ぼう こえ

空中に浮かぶ巨大な赤と緑の化け物に、クリリンが絶望の声をあげた。
ごう しん め み ひら

18号が信じられないとばかりに目を見開く。
かお

ピッコロは顔をしかめた。
おお いき う じん じょう つよ かん

大きく息をはきながら浮かぶセルマックスからは、尋常じゃない強さを感じる。
「くっ、くそ……!」
いか ひょう じょう くう ちゅう

ガンマたちは怒りにふるえた表情で、空中にたたずむセルマックスをにらみつけた。
ごう

「2号……、やるぞっ!」
はかせ

ヘド博士のかたきをうつ!
ばく えん なか と き さけ

爆煙の中を飛びだしたガンマたちに気づいたピッコロが叫ぶ。

「オレたちも行くぞ!!」

「オレたちも行くぞって……」
よ かお ひ

が、その呼びかけにクリリンは顔を引きつらせた。
じん じん ち きゅう じん

サイヤ人でもナメック人でもない、地球 人のクリリンにだってわかる。
つよ たたか てき うえ

セルマックスの強さはいままで 闘ってきたどんな敵よりもはるかに上だ。
む し せん ず ご はん な

そんなクリリンを無視して、ピッコロは仙豆のひとつを悟飯に投げた。
ご はん せん ず

「悟飯、仙豆だ!」
「え? ……わっ、わっ、……わわわっ……!!」
ご はん と

だが、なんと、悟飯はうっかり取りそこねてしまった。
せん ず ころ がけ そこ す

仙豆はコロコロと転がって、あっというまに崖の底へと吸いこまれていく。

「なに落としてるんだ!」
「すみません……メガネがなくて……」
ご はん いき

ぺこぺことあやまる悟飯に、ピッコロはハアと息をついた。
せん ず たたか

「もういい! 仙豆なしで闘え!」
さい ご せん ず じ ぶん どう ぎ おび か

最後の仙豆を自分の道着の帯にしまい、そのまま駆けだしていってしまう。
ねが

「え……はい! ブルマさん!! パンをお願いします!」


「まかせて!!」
ご はん スーパー じん と

あわてて悟飯も 超サイヤ人になって飛びだしていく。
ご てん かお み

のこされたトランクスと悟天はたがいに顔を見あわせた。

「おもしろそう!! 行こうぜ!」
「おう!」
と ふたり み した な ごう つづ

飛んでいく二人を見て、舌を鳴らした18号もしかたなさそうに続く。
「……チッ。しょうがないね……」
と なか ま み

飛びだしていく仲間たちを、クリリンはオロオロと見おくっていた。
つよ かれ つよ

クリリンも強い。だが、彼らは強さのレベルがケタちがいなのだ。
まも

「えっ? あ、あ……よし! いけ~っ! オレはブルマさんとパンを守る!!」


やく み

「……いい役まわりを見つけたわね」
こぶし おう えん い め

拳をふりあげ応援にまわったクリリンに、ブルマがもの言いたげな目でつっこむ。
と み にが わら

みんなの飛んでいったほうを見つめながら、クリリンは苦笑いでごまかした。
さき はげ くう ちゅう せん

先に激しい空中戦をくりひろげたのはガンマたちだった。
らん き りゅう なか こう せん じゅう ごう きょ だい て お

乱気流の中、光線銃をはなつガンマ1号をセルマックスの巨大な手のひらが追いまわす。
「ぐっ……!」
「とおおお~っ!!」
ごう ず じょう

すかさずガンマ2号がセルマックスの頭上からキックをはなつ。
かる みぎ て

が、軽く右手ではじかれる。
りょう て みぎ ひだり ごう

ふりまわされる両手を右に左によけた2号だが、セルマックスのしっぽがしなるようにたたきつけられた。

「ガアア~ッ!」

お たけ くち ねっ せん ひだり き だん

雄叫びをあげて口から熱線をはこうとするセルマックスに、左から気弾がぶちあたる。
「!?」
スーパー じん ご はん こう げき

超サイヤ人になった悟飯からの攻撃だ。
み こう とう ぶ せん ざい のう りょく かい ほう け さく れつ

見あげたセルマックスの後頭部に、潜在能力を解放したピッコロの蹴りが炸裂する。
「オレたちもいるぜー!」
「とぅ~!!」
「たあだだだだだ!」

「かめはめ波 !」
ご てん つぎ つぎ こう げき

やってきたトランクスと悟天も、次々と攻撃をくりだしていく。
ごう にん は じょう こう げき いか お たけ

18号もくわわった五人で波状攻撃をしかければ、セルマックスが怒りの雄叫びをあげた。

「ガアアァァッ!」

りょう こぶし じ めん

うるさいハエにいらついたかのように、セルマックスは両 拳を地面にたたきつけた。
きょ だい からだ あば こう か てき こう げき

巨大な体で暴れはじめたセルマックスに、なかなか効果的な攻撃ができない。
「くそ……」
あたま じゃく てん

「頭のてっぺんをねらえ! そこがゆいいつの弱点だ!」
ご はん じょう くう い こう せん じゅう ごう

うなる悟飯に上空でそう言ったのは、光線銃をかまえたガンマ1号だった。
あたま

「頭のてっぺん!?」
ぐ たい てき ば しょ し てい おも ぜん いん

具体的な場所の指定に、思わず全員ふりかえる。
はかせ じゃく てん つく

「こういうこともあろうかと、ヘド博士はセルマックスに弱点を作っておいたんだ」
じゃく てん

「弱点……!」
おどろ ごう つづ

驚くピッコロのうしろで、セルマックスをにらみつけたままガンマ2号が続けた。
かく ご じゃく てん さい ぼう だい ばく はつ お じ ぶん いのち

「ただし覚悟しておけ! 弱点をついたとたんに、セルマックスの細胞さえのこさないような大爆発を起こし……自分の 命も
たす

助からない……」
「え!?」
こと ば こえ

その言葉に、トランクスたちが声をあげた。
は つるぎ みち

もろ刃の剣もいいところだ。けれど、やるしか道はない。
「はっ!」
ごう じゅう と

ガンマ1号が銃をかまえたままで飛びだした。
みぎ て あたま じゅう

ふりかぶってつきだされたセルマックスの右手をよけて、頭をねらって銃をはなつ。
はん たい がわ ごう じゅう れん しゃ

その反対側からガンマ2号もスピードをあげて銃からビームを連射した。

「ガァ!?」

「はああ !」
き あ ご はん ご てん こう だん

気合いをためた悟飯にならんで、ピッコロ、悟天、トランクスもいっせいに光弾をくりだす。
き ちょう こう そく き ご はん はい ご

が、気づいたセルマックスは超高速で消えると、悟飯たちの背後にあらわれた!
「なっ!?」
おどろ ご はん からだ おな おお こぶし なぐ じ めん

驚く悟飯を、その体と同じくらいの大きさの拳でうしろから殴り、地面へとたたきつける。
きょ り ご てん ふたり どう じ こう だん

あわてて距離をとったトランクスと悟天が、二人同時に光弾をはなった。
「くっ!」
「はっ!」
こう そく こう だん とお

しかしふたたび高速でよけられ、光弾はかすりもせず通りすぎてしまう。
あたま い

「しかし……頭をねらえって言っても……これじゃあ……」
すこ い ち ごう て こう だん

少しはなれた位置でねらっていた18号も、手にした光弾をはなつタイミングがつかめない。
おな

それはガンマたちも同じだった。
こう そく じゅう

高速でせまるセルマックスに、なかなか銃があたらない。
とう ちょう ぶ い がい こう か

しかも頭頂部以外では、あたってもほとんど効果がないのだ。
れん けい こう せん じゅう もう

連係して光線銃をはなつガンマたちに、セルマックスが猛スピードでせまってくる。
ドゥン!

「ガァ!!」

よこ がお いち げき

と、セルマックスの横顔に、トランクスのはなった一撃があたった。
はん たい がわ ご てん こう げき

ふりむいたセルマックスの反対側から、悟天がすばやく攻撃をしかける。
した ご はん こう だん う

さらに下から悟飯が光弾を撃ちつけた。

「ガアアアア~」

いか くび ほう こう

セルマックスが怒りのあまりに首をふって咆哮をあげた。
そのうしろにあらわれたのはピッコロだ!
「もらったあ! はあああ~……ッ!」
ひだり て こう とう ぶ はげ こう だん

かまえた左 手からセルマックスの後頭部に、激しい光弾がはなたれる!
ズガアァァアッ!

「ガ……ガガ……」

「やったぁ!」
ひか かん せい

ガクガクと光りながらふるえはじめたセルマックスに、トランクスが歓声をあげる。
おも

だがしかし、そう思ったのもつかのま。
あたま ひかり

セルマックスの頭の光は、あっというまにおさまってしまった。
「……きいてない……!?」

「ガアアアア~!!」

おどろ まえ おお さけ ごえ

驚くピッコロたちを前に、セルマックスがいっそう大きな叫び声をあげる。
どう じ さき あな ひかり すじ なん ぼん

同時に、ふりあげたしっぽの先のいくつもの穴から、光の筋が何本もはなたれた。
ゆび さき かた はら からだ ば しょ いち めん ふ

さらに指先、肩、腹と、体のあらゆる場所からも、あたり一面に吹きだすようにはなたれる。
「ぐあっ!」
「うわあああ~!!」
「ひいいい~っ! こっ、こんなのありかよ!!」
じゅう おう む じん かい こう せん ひ めい

縦横無尽にふりかかる怪光線に、トランクスたちは悲鳴をあげるしかなかった。
ひかり じょう くう ふ

その光は、上空からはなれたブルマたちのもとへも降りそそいでいた。
まえ たたか み よ

クリリンはブルマをかばいながら、前のほうで闘いを見ていたパンを呼んだ。
「くっ……パーン!」
かい こう せん お ばく はつ ひっ し に

怪光線で起きた爆発から、パンが必死に逃げている。
あし もと

が、その足元がくずれおちた。

「パーン! 飛ぶんだ~!!」
ひっ し さけ

クリリンが必死に叫ぶ。
こえ からだ う

その声にこたえるように、パンの体が浮かびあがった。
「!」
ばく えん なか と と じ ぶん おどろ

爆炎の中から飛びだしたパンは、飛べた自分に驚いているようだ。
かお くう ちゅう う じ ぶん からだ み

きょとんとした顔で、空中に浮かぶ自分の体を見おろしている。
「パン、だいじょうぶか?」
「うん……」
こた せ なか こえ

パンの答えにホッとして、クリリンは背中のブルマに声をかけた。
「ほらー、オレがいてよかったじゃないすか」
に ひ こう き たい き

「……まあね。いつでも逃げられるように飛行機で待機していたほうがよさそうね」
にが わら つ にん ひ こう き

苦笑いをするブルマを連れて、三人は飛行機へといそぐことにした。

かい こう せん は かい けむり げん ば ひ さく おも ご てん はな

そのころ、怪光線に破壊され煙におおわれた現場では、トランクスがある秘策を思いついていた。となりの悟天に話しかけ
る。
ご てん

「おい悟天、フュージョンだ! フュージョンするぞ!」
おぼ

「フュージョン……!? お、覚えてるかな……」
ふ あん ご てん つ あし ば いわ ば た

不安げな悟天を連れて、トランクスは足場のある岩場に立った。
おく あば かく にん じ かん

奥ではセルマックスが暴れている。確認している時間はない。
ふたり うで おお うえ どう じ あし うご さ ゆう い どう の うで おも そと がわ ひ

二人は腕を大きく上にまわした。同時に足をちょこちょこと動かし左右に移動する。伸ばした腕を思いきり外側に引いて、
かた あし と

片足をあげてピタリと止まる。
ふたり おお こし

そのポーズをきめたまま、二人で大きく腰をひねり――
「「フュー……ジョン!」」
ゆび ゆび

つきだした指と指をチョンッとくっつける。
「「はっ!」」
うご ゆび さき び みょう

だが、その動きはひさびさで、指先が微妙にずれてしまっていたようだ。
ふ かん ぜん ひかり なか ふと

不完全なフュージョンで光の中からあらわれたのは、でっぷり太ったゴテンクス。
しっ ぱい

「「……し、失敗だ……くそ、しょうがない!」」
じ かん

けれどやりなおしている時間はない。
あせ き たか

ゴテンクスは汗をかきながら、気を高めた。
スーパー じん

「「 超サイヤ人! ……あ、あれ……?」」
ちゅう と はん ぱ いっ しゅん もと よう す

中途半端にフュージョンしたゴテンクスは、一瞬だけオーラをだしかけ、すぐに元にもどってしまった。まさかの様子に、ピッコロ
あ ぜん ひょう じょう

が唖然とした表情をむける。
とつ げき

「「くそ……こうなったら、突撃だ!」」
と かん たん いっ しゅう

がむしゃらに飛びだしたゴテンクスを、セルマックスのしっぽが簡単に一蹴した。
「「わ !」」
「!?」
じゃ ま ごう と

まっすぐつっこんできたゴテンクスを、邪魔だとばかりに18号がはじき飛ばす。
「「おわっ! わっ、わあああぁっ!」」
と さき ごう かれ おも け

ゴテンクスが飛んだ先にいたのはガンマ2号。彼にも思いきり蹴りあげられる。
さき ごう した

その先にいたガンマ1号は、ゴテンクスをそのまま下へとたたきおとした。
「「ひいぃぃぃ 、……おっ!?」」
ま した あたま み

しかしちょうどその真下に、セルマックスの頭が見える。
「「しめた!」」
ごう なぐ じゅう りょく ま らっ か せい だい ず つ み ま

ガンマ1号から殴られたいきおいで、重力を増して落下するゴテンクスが、盛大な頭突きをお見舞いする!
「「だ~!!」」

ガン!!
おお おと あたま はい

大きくにぶい音がして、セルマックスの 頭にヒビが入った。
「「おお~!」」
おも かん たん こえ

まさかそうなるとは思っていなかったガンマたちが、感嘆の声をあげる。
はじ しっ ぱい やく た

「初めてフュージョンの失敗が役に立ったぞ……!」
おどろ こえ よろこ いろ

ピッコロも驚きつつ、声に喜びの色がのる。
はい あたま いか かお

だが、セルマックスはヒビの入った頭のまま、怒りにそめた顔をあげた。
とう ちょう ぶ こう げき た

頭頂部への攻撃はできたが、パワーが足りなかったようだ。

「ガアアァァッ!!」

おお くち かい こう せん れん ぱつ

ガパリと大きく口をあけ、怪光線を連発する。
ばく はつ お ふ と まる

いたるところで爆発が起こり、ゴテンクスは吹き飛ばされてしりが丸だしになってしまった。
つよ こう げき

「ハァ……ハァ……もっと強い攻撃じゃないと……」
いき ご はん かんが

あらく息をつきながら、悟飯は考えをめぐらせる。
ごう こえ

と、ガンマ2号が声をはりあげた。
と どう ぐ こう げき からだ

「おい! おまえたち、はなれたところからいっせいに飛び道具でセルマックスを攻撃してくれ! 体のどこでもいい!」


「え? ……どうするつもりだ!?」
ご はん き ごう ごう かお

悟飯が聞くと、ガンマ1号がガンマ2号に顔をむけた。
「……おまえ、まさか」
こた ごう わら

答えない2号がニヤリと笑う。
「やめろ!!」
「もうおそい」
「だったらオレも……!」
せっ とく はな ごう ごう お く ちょう い

説得しようと話すガンマ1号に、ガンマ2号は落ちついた口調で言った。
ごう はかせ たす

「1号はヘド博士を助けてあげてくれ」
「……なに!?」
こと ば ごう み

その言葉にハッとして、1号はいそいであたりを見まわした。
せい たい み はかせ し

「生体スコープで見てみろよ。博士は死んでいない……」
せい たい はん のう

いそいでサーチにきりかえると、生体スコープに反応がでた。
「……あ!」
さい しょ ばく はつ ふ と なか たお

最初の爆発で吹っ飛ばされていたヘドが、ガレキの中で倒れている。
き うしな いき

気を失ってはいるが、どうやら息はあるようだ。
しん ちょう た

「慎重さが足りないな」
よろこ おどろ ひょう じょう う ごう ごう かれ い せりふ い

喜びと 驚きの表情を浮かべる1号に、2号はいつも彼から言われていた台詞を言った。
わら き あ い こぶし

フッと笑い、すかさず気合いを入れて拳をにぎる。
「……ハアアアアア~!」
ごう からだ ひか

ガンマ2号の体が光りはじめた。
こう げき おも とお に

「さあやれ!! そしてボクが攻撃をしかけたら、思いっきり遠くに逃げるんだ!!」
おどろ ご はん さけ ごう じょう しょう はじ

驚く悟飯たちにそう叫ぶと、ガンマ2号はぐんぐん上昇を始めた。
「あいつはなにをするつもりだ!」
とつ げき き

「突撃する気だ!」
み ごう さけ

見あげるピッコロに、ガンマ1号が叫ぶ。
そら たか じょう しょう つづ ごう からだ せい そう けん と

空高く上昇を続けた2号の体は、成層圏にでて止まった。
じゃ ま はい ば しょ きょく げん たか

邪魔の入らない場所で、パワーを極限まで高めるつもりのようだ。
ごう けつ い う ご はん こう げき はじ

2号の決意を受けて、悟飯たちはいっせいにセルマックスへの攻撃を始める。

よう す じょう くう ひ こう き み

その様子は、はなれた上空にあるブルマの飛行機からでもはっきりと見えた。
「な、なにやってるのかしら」
こう げき あ

「いっせいに攻撃を浴びせているようですよ! オ、オレも!!」
こう げき て

そういうことなら、攻撃の手はたくさんあるにこしたことはないはずだ。
はし こえ

走りだしたクリリンに、ブルマがあわてて声をかける。

「クリリン! 気をつけなさいよ!」
おや ゆび た こう ぶ と

クリリンは親指を立てると、後部ハッチから飛びだしていく。

した いか ぜん いん こう げき ま さい ちゅう

下では、怒りのセルマックスへ、全員がいっせいに攻撃をしかけている真っ最中だ。
「は っ!」
「うおおおぉぉ~!!」
「はっ!!」
ご はん き こう は ごう こう せん じゅう れん しゃ

悟飯とピッコロが気功波をはなち、ガンマ1号が光線銃を連射する。
「「ベロベロベー!!」」
ぶつ り てき せん りょく き ひっ し ごう こう だん

物理的な戦力にならないゴテンクスも、アカンベーをしてセルマックスの気をそらそうと必死だ。18号も光弾をはなつ――
つぎ しゅん かん こう そく い どう て

が、次の瞬 間、高速移動したセルマックスの手がせまった。
「くっ……しまった……!」

き えん ざん

「気 円斬!!」
「ガッ……」
き き いっ ぱつ

危機一髪。
き えん ざん ひたい

クリリンのはなった気円斬がセルマックスの額にあたる。
ちゅう い しゅん かん じょう くう み ごう こえ

注意がそれたその 瞬 間、上空を見あげたガンマ1号が声をあげた。
「きたぞ! はなれろ!!」
ごう あい ず

ガンマ2号がフルパワーになった合図だ。
こえ はや はん のう

その声に、いち早く反応したのはクリリンだ。
め たい よう けん

「みんな、目をつぶって! 太 陽拳!!」
りょう て ひと さ ゆび なか ゆび ひたい さけ はげ ひかり み

両手の人差し指と中指を額にあててそう叫ぶと、カッと激しい光があたりに満ちる。
ちょく し め

とつぜんのまぶしさを直視してしまったセルマックスが、目をおさえてよろめいた。

「グオオオ……ッ」

とお

いまのうちに、できるだけ遠くへはなれなければ!
ご はん えり くび きょ り と

悟飯はゴテンクスの襟首をつかみ、ピッコロたちもそれぞれセルマックスから距離を取る。
ごう ち じょう たお

ガンマ1号は地上にむかうと、倒れているヘドをかばうようにおおいかぶさった。
め じょう くう け はい き かお

まばゆさに目をおおっていたセルマックスが、上空の気配に気づいて顔をあげ――
「……!?」
かお おどろ

その顔が驚きにそまった。
くも やぶ ごう もう

雲をつき破りながら、ガンマ2号が猛スピードでつっこんでくる。
「は っ!!」
あたま

ねらいはセルマックスの頭のてっぺんだ。
「いけぇ っ!」
さけ

ピッコロが叫ぶ。

ドゴーン!!

はげ しょう とつ おん

あたりにひびく激しい衝突音。
ひだり うで ごう とつ げき おと

だがそれは、セルマックスが左 腕でガンマ2号の突撃をふせいだ音だった。
「おおおぉおっ!」
ごう

それでもガンマ2号はあきらめない。
じ しん しゅつ りょく さい だい げん ひ うで つよ お

自身の 出力を最大限まで引きあげて、セルマックスの腕ごと強く押しこんでいく。
しょう げき ばく はつ お あつ りょく お うで はい

衝撃で爆発が起き、圧力に押されたセルマックスの腕にミシミシとヒビが入った。

「グオオオ……!?」
お じ めん ごう かお き れつ しょう

さらに押されて、地面がへこむ。2号の顔にもビキビキと亀裂が生じはじめる。

「ガアアアア!」

きょう がく め み ひら た ひだり うで みぎ て ささ

驚愕に目を見開くセルマックスが、耐えきれなくなった左 腕を右手で支える。
ごう さい ご ちから ぜん あつ りょく お

2号も最後の力をふりしぼって、全圧力をセルマックスへと押しこんでいく。
「オオオオオオ!!」
バキンッ!
しょう げき た ひだり うで おと た じ めん お

衝撃に耐えきれず、セルマックスの左 腕が音を立てて地面に落ちた。
「やっ、やった……!」
ば しょ しょう ぶ み まも おも かん せい

はなれた場所から勝負のゆくえを見守っていたクリリンが、思わず歓声をあげる。
ごう けっ し こう げき み

2号の決死の攻撃が、きまったように見えたのだ。
ぶ き み しず た すがた う

だが、不気味な静けさをまとって立ちつくすセルマックスの姿が、じょじょに浮かぶと――
「まだだ!」
すがた おく ば

その姿に、ピッコロはギリッと奥歯をかみしめたのだった。
ごう けっ し こう げき

ガンマ2号の決死の攻撃は、セルマックスにふせがれてしまった。
いき ひだり うで さき

けれど、ハァハァとあらい息をつくセルマックスの左 腕は、ひじから先がない。
こん しん いち げき

渾身の一撃は、さすがのセルマックスにもそうとうなダメージをあたえたようだ。
し せん ちから じ めん お ごう

セルマックスの視線が、力なく地面に落ちたガンマ2号にむけられた。

「グアアアア!」

いか ごう ふ ひだり あし さけ と

怒りのままガンマ2号を踏みつぶそうとする左 足に、ピッコロは叫びながら飛びだした。
「やめろ~!!」
いっ き か そく からだ いろ か

一気に加速するピッコロの体が、ボンッとオレンジ色に変わる。
ごう ちょく ぜん りょう て あし

ガンマ2号にとどく直前、どうにか両手でその足をおさえる。
ふ あし ちから い

だが、セルマックスはピッコロごと踏みつぶそうとするかのように、さらに足に力を入れた。
「……!? グッ!!」
さ れき ぜん

オレンジピッコロになってさえ、パワーの差は歴然だ。
た せい いっ ぱい スーパー じん ご はん こう だん う たす ぶね

耐えるだけで精一杯のピッコロへ、 超サイヤ人になった悟飯が光弾を撃って助け船をだす。

「ガアァッ!!」

ひだり はげ れん だん う いか ほ

左から激しい連弾を受けて、セルマックスが怒りに咆えた。
はん たい がわ こん ど ぜん しん つか み ま

その反対側から、今度はクリリンが全身を使ってキックを見舞う。
どう じ きょ たい ず つ

ほとんど同時にゴテンクスが巨体であごへと頭突きした。
ふ い れん ぞく こう げき

不意をつかれた連続攻撃に、セルマックスがわずかによろめく。
「どうだ! ……、わわわ~っ!?」
つぎ しゅん かん くち め かい こう せん はん げき

けれど次の瞬 間、口や目から怪光線の反撃がきた。
に ふたり かい こう せん

逃げまどう二人に、セルマックスが怪光線をはなちまくる。
ごう たお ごう たす

そのスキに、1号はぐったりと倒れたガンマ2号を助けだした。
だ い しき ね

ていねいに抱きおこし、まだ意識のないヘドのそばへとそっと寝かせる。
「…………」
じ ぶん たたか ば

そうしてすぐに自分は 闘いの場へともどる。
あし もと ふ た えん ご

セルマックスの足元では、踏みつぶされまいと耐えているピッコロのそばに、クリリンが援護にやってきた。すべりこんでいっしょ
あし ささ

にセルマックスの足を支える。
「ぐおおお~」
「ピ、ピッコロ……デカくなれよ……」
おも ひっ し た い

重さに必死で耐えながら、クリリンはピッコロにそう言った。
むかし てん か いち ぶ どう かい

「昔、デカくなったことあっただろ……天下一武道会で」
い おも

そう言われて、ピッコロはふと思いだした。
だい ま おう ご くう たたか きょ だい か

ピッコロがまだピッコロ大魔王だったとき、悟空との 闘いでたしかに巨大化したことがある。
わす

「……そうか、忘れていた」
おも で わら き あ い

なつかしい思い出にニヤリと笑うと、ピッコロは気合いを入れた。

「うおおおおお~っ!」

み きょ だい か

見るまにピッコロが巨大化していく。

「ガァ……?」

ひだり あし も

ぐいっと左 足を持ちあげられたセルマックスがバランスをくずした。
な じ ぶん おな おお きょ だい か けい かい きょ り と

そのままピッコロに投げられたセルマックスは、自分と同じ大きさまで巨大化したオレンジピッコロを警戒するように距離を取
る。

「グガァァァァッ!」

「ウオォォォォッ!!」
いか お たけ しょう めん き あ お たけ

怒りの雄叫びをあげるセルマックスの正面から、ピッコロも気合いの雄叫びをあげかえす!
よこ と ご はん

にらみあうピッコロの横に、飛んできた悟飯がならんだ。
おお か

「ピッコロさん、大きくなれるなんて……もしかして、勝てるんじゃないですか?」
「……あまいな」
「え?」
ご はん きょ だい まえ み こた

うれしそうな悟飯に、巨大ピッコロは前を見たままで答える。
つよ か

「デカくなっても、強さはたいして変わらない。ただのハッタリだ……」
ということは、そのハッタリでセルマックスをひるませているということだ。
おどろ ご はん きょ だい おも だ おび

驚く悟飯をよそに、巨大ピッコロは、ハッと思い出して帯をさぐった。
「そうだ! んっ? んっ? ……デカいとさがしにくいな……あった!」
ご はん まえ ゆび さき せん ず

悟飯の前にさしだされた指の先には、ちょこんと仙豆がのっている。
た おも せん ず く

「オレが 食べようと思っていた 仙豆だ。おまえが 食え」


た た

「えっ? さっき食べなかったんですか? そんな、ピッコロさん、食べてくださいよ」


もと せん ず お じ ぶん わる

元はといえば、もらった仙豆を落としてしまった自分が悪い。
こま い ご はん

困ったように言った悟飯を、ピッコロはじろりとにらんだ。

「いいから 食え!」
「でも……」
さく せん おも

「作 戦を 思いついた」
はなし お い たい ど ご はん せん ず た

話は終わりだと言わんばかりの態度に、悟飯はしぶしぶ仙豆を食べた。
「はっ!!」
の からだ じゅう き

飲みこんだとたん、体 中から気があふれだす。
き あ い ご はん つち けむり

気合いを入れた悟飯のまわりから土 煙がひろがった。
きん いろ しず かみ め くろ

金色のオーラは静まって、髪も目も黒へともどっている。
スーパー じん ご はん

超サイヤ人のときよりもさらにするどいひとみの、アルティメット悟飯だ。
ご はん き き よ いち ばん つよ じ ぶん しん かい ほう

「悟 飯、よく 聞け! おまえがその気になれば、この世で一 番強い。自分を信じて、すべてを 解放するんだ!」


ご はん きょ だい かた

アルティメット悟飯に、巨大なオレンジピッコロが語りかける。
み ほん とう ちから ちから ち きゅう まも

「見せてくれ、本 当の 力を。その力で地 球を守るんだ!」


「……はい!」
よこ め み ご はん しょう めん み

横目で見つめるピッコロに、悟飯は正面を見すえながらうなずいた。
そのときだ。

「ガアアアア~ッ」

「くるぞ!」
き あ はい お たけ とっ しん かい し

気合いの入った雄叫びをあげ、セルマックスが突進を開始した!
きょ だい みぎ こぶし おく ふ と

かまえた巨大ピッコロが、右の拳で奥へと吹っ飛ばされる。
ご はん みぎ

そのいきおいのまま、セルマックスは悟飯に右ひじをくりだした。
ご はん うで け

が、ふせいだ悟飯は、すかさずその腕ごと蹴りあげる。
がん めん たい ご はん ず つ ご はん さき ひだり うで

そのまま顔面へと体あたりされたセルマックスは、かみつくように悟飯に頭突きをしようとした。よけた悟飯に、先のない左 腕
をぶんまわしてたたきつける。
「うおおお~!」
はし きょ だい みぎ れん ぞく け つづ

走ってきた巨大ピッコロが右キックをくらわせて、さらに連続で蹴り続ける。
「…………」
こう げき

だがセルマックスに攻撃がきいたようすはない。
おどろ はら おも みぎ こぶし

驚くピッコロの腹に、重たいセルマックスの右 拳がめりこむ。
「ぐはあっ!」
おも ひだり うで

思わずうめいたピッコロへ、セルマックスはさらに左 腕をふりあげた。
くう おも しゅん かん した げ そら ふ と

空をきったと思った 瞬 間、下からのひざ蹴りがピッコロを空へと吹っ飛ばした。
「ぐはぁっ!」
あし と じ めん お

足を取られ地面にたたきつけられたピッコロを追うように、セルマックスがジャンプする。
こう だん て つく かお なぐ

すんでのところでよけたピッコロは、光弾を手に作り、それでセルマックスの顔を殴った。
ドゴォン!
ご はん した

そこへ、悟飯が下からアッパーでつきあげる。
お がん ぜん ご はん もう とお

セルマックスが起きあがると、眼前を悟飯が猛スピードで通りすぎた。
「!」
いか お

怒りにまかせてセルマックスがあとを追う。
き ち ちゅう おう ぶ きゅう うご と ご はん みぎ けい さん

基地の中央部にあるクレーターで急に動きを止めた悟飯に、セルマックスが右パンチをふりおろした。だが、それも計算だ。
ご はん しゅん びん うご し かい き

悟飯は俊 敏な動きで、セルマックスの視界から消える。
「……? ……?」
きゅう ご はん さ ゆう み

急にいなくなった悟飯に、セルマックスはきょろきょろと左右を見まわした。
つぎ しゅん かん

次の 瞬 間。
あし もと ご はん こう だん はし いっ き

セルマックスの足元にビビビビ! と悟飯のはなった光弾が走り、そこから一気にくずれだす!

「ガァ……!?」

あし ば うしな と

足場を失ったセルマックスは、あわてて飛びあがろうとした。
うえ こう だん

が、そうはさせじと上から光弾がはなたれる。

「ガアァァア!」

ちょく げき う ご はん み お

直撃を受け、くずれおちていくセルマックスを悟飯が見おろす。だが、これで終わりではない。
「ハァ……ハァ……くそ、おまえら、ちょっとこい!」
いき きょ だい よ

あらく息をつきながら、巨大ピッコロが呼びかける。
ちから つか き うしな ごう い がい すこ おく ご はん

力を使いはたして気を失っているガンマ2号以外が、ふらふらになりながらもピッコロのもとへとやってきた。少し遅れて悟飯
もくわわる。
ご はん

「……悟 飯!」
「はいっ!」
じ めん たお み は

「オレがなんとかしてあのクソッタレを 地面に 倒す! チャンスを見て、かめはめ波でもなんでもいい……めいっぱいパワーを


あたま

ためてから、ヤツの頭をつらぬけ!」
「わ、わかりました!」
えん りょ ちから いち げき こ

「めいっぱいだぞ、遠 慮はするな。すべての力をこの一撃に込めろ!」
「はいっ!」
ねん お ご はん しん けん かお

念を押されて、悟飯は真剣な顔でうなずいた。
いち げき ひと すじ なわ

けれど、その一撃をあてるために、あのセルマックスをおさえつけるのは一筋縄ではいかないだろう。
あし ど さい ご ご はん いっ かい しん けん しょう ぶ

足止めをするピッコロも、最後をまかされた悟飯も、どちらも一回きりの真剣勝負になる。
ち ちゅう き うご

地中からセルマックスの気が動いた。
「くるぞ!」
ごえ じ めん おお ゆ ぶ き み あか

ピッコロのかけ声とともに、地面が大きく揺れ、不気味な赤いオーラがふきだしてくる。
お ち ちゅう

それを追うように、地中からセルマックスがのぼってきた。

「ガアアアッ!」

いか さけ まえ た ご はん し じ

怒りに叫ぶセルマックの前に立ち、ピッコロが悟飯に指示をだす。
ご はん

「……悟 飯!」
「ハイ!」
ご はん さい ご いち げき いっ き たか

悟飯は最後の一撃のために、一気にパワーを高めはじめた。
ご はん き さけ

悟飯から気をそらせるように、ピッコロは叫びながらセルマックスへとつっこんでいく。
「うおおおおおおっ~!!」
りょう て みぎ て ひだり うで く

両手をつきだすピッコロに、セルマックスは右手と左 腕でガシッと組みあう。

「ガアア……」

「ぐおお……っ」

けれどやはり、ピッコロがじょじょに押されはじめた。
かい てん う

と、すかさずセルマックスがぐるりと回転し、しなるしっぽを打ちつけてきた。
「ぐはっ!」
かえ うご みぎ ひだり うで たい つぎ つぎ こう げき

返す動きで右のアッパーをくりだされ、左 腕、体あたりと次々に攻撃がきまる。
あたま じ めん

ピッコロは頭をつかまれふりまわされると、しっぽで地面にたたきつけられた。
「ピッコロさん!!」
き しゅうちゅう

「くるな! 気を 集中させろ!!」
たす ご はん さけ

とっさに助けようとした悟飯へピッコロが叫ぶ。
ほん き たたか

「ここからが……本気の闘いだ……」
た て こう ち

ピッコロはフラフラと立ちあがると、ぐいっと手の甲で血をぬぐった。

「ガアアア!」

「うおおおお~!」
とっ しん みぎ こぶし こぶし

突進するセルマックスの右 拳に、ピッコロも拳をふりかぶる。
がん めん

クロスカウンターが、おたがいの顔面にめりこんだ!
いっ しゅん つい げき

一瞬ぐらついたセルマックスだが、すぐさましっぽで追撃してきた。
「ガフッ……!」
みぎ ばら げ からだ

右わき腹にもひざ蹴りをくらったピッコロの体がぐらりとよろける。
ゆる い け

が、それすらも許さないと言わんばかりに、セルマックスがあごを蹴りあげた。
きょ だい て

巨大なパワーのぶつかりあいに、クリリンたちは手をだせない。
ご はん し

「悟飯、まだか!? ピッコロが死んじまうぞ!」
すこ

(もう……少し……)
と き も ご はん おく ば

いますぐにも飛びだしていきたい気持ちをおさえながら、悟飯はギリッと奥歯をかみしめる。
しゅうちゅう

集中して、もっとパワーをあげないと――
「ぐあっ、うおっ、がはっ、おうっ、ぐえ……っ!」
こう げき はげ ま

けれどピッコロへの攻撃は、だんだん激しさを増していく。
なぐ あたま と

しっぽで殴りつけられて、よろけた頭にセルマックスのハイキックが飛んでくる。
せ なか う ふ なぐ

背中をひじで打ちつけられ、踏みつけられ、殴りつけられる。
「ぐ……ぐぐ……」
いっ ぽう てき こう げき が まん

あまりに一方的な攻撃に、ゴテンクスはとうとう我慢ができなくなった。
「「うおおお~!!」」
「あ、バカ!」
せい し き さけ ふたり

クリリンの制止も聞かず、叫びながら二人のあいだへとつっこんでいく。
しっ ぱい てき

だがフュージョン失敗のゴテンクスなど、セルマックスの敵ではない。
ひだり うで ぶ ぶん

いともあっさりとガードされ、左 腕ののこった部分だけでたたきおとされる。
お ほこ さき てん

あわてて追いかけていたクリリンに、セルマックスは矛先を転じた。
「わわっ……!」
ごう

そのうしろからやってきたのは18号だ。

さっきのおかえしとばかりに、クリリンにせまるセルマックスを蹴りつける――
おこ ごう

が、怒ったセルマックスは、ガシリと18号をつかみあげた。
「くっ……うわぁ……」
「がっ!!」
こぶし げき とつ ふたり ふ と

ふりまわすセルマックスの拳が、クリリンに激突し、二人は吹っ飛んだ。
き かお

と、セルマックスが、ふとなにかに気づいて顔をあげた。
「!?」
ごう じゅう こう もく ぜん

ガンマ1号が、銃口をセルマックスにむけて目前にせまっている。
ドウッ!

「グオオ……!」

し きん きょ り こう せん じゅう しょう げき おお

至近距離ではなたれた光線銃の衝撃に、セルマックスがしっぽを大きくふりあげた。
ごう じ めん

ガンマ1号は、地面にたたきつけられてしまう。パワーはほとんどのこされていない。
たお ごう さ あし み

すぐそばには、倒れたままのクリリンと18号が、そしてガレキに刺さったゴテンクスの足だけが見える。
「くそっ……」
き たか しゅうちゅう ご はん は

気を高め、パワーをためることに集中しながら、悟飯は歯がみした。
いき げん かい

ピッコロの息もかなり限界まであがっている。
はい ご かん ご はん き たか

けれど背後に感じる悟飯の気の昂ぶりは、いままでにないほどすごいものだ。

「ヤツを 止めれば……」
チャンスはある。
おも しゅん かん いっ き ま あ かた たい

だが、そう思った瞬 間、セルマックスに一気に間合いをつめられ、肩で体あたりをくらった。
「ぐお……がぁ! ぐふっ!」
ひだり みぎ れん ぞく

さらにボディに左キック、すかさずあごに右ひざを連続できめられ、とどめとばかりにセルマックスのしっぽがピッコロにふりおろさ
れる!
ガッ!
りょう て う と

だがピッコロは、しっぽを両手で受け止めた。
いき さき なぐ

ゼェゼェとあらい息をつきながらも、そのしっぽの先でセルマックスを殴りつける。

「ガハ……!」

たい せい くち かい こう せん

体勢をくずされたセルマックスが、ふたたび口から怪光線をだした。
ひだり うで いっ しゅん け と

よけきれなかったピッコロの左 腕が一瞬で消し飛ぶ!
「がっ!」
たい よう しゃ こぶし れん ぞく

そのまま体あたりしてきたセルマックスが、容赦なく拳を連続でくりだす。
「ぐあっ、がはっ、ごほっ!」
なぐ つづ ご はん しゅうちゅう げん かい ちか

ほとんどサンドバッグのように殴られ続けるピッコロに、悟飯の集中も限界に近い。
「このままではピッコロさんが……!」
ま と

「待て……かならず、止めて、みせる……!」
と ご はん

飛びだそうとした悟飯に、ピッコロがふたたびまったをかける。
なみ なみ かく ご み ご はん ふ

並々ならぬ覚悟を見せられて、悟飯はどうにか踏みとどまった。
ご はん め まえ からだ ふ と おお いわ

けれどそんな悟飯の目の前で、ピッコロの体が吹っ飛ばされて、大きな岩にぶちあたる!
「がはっ!」
こう そく お なん ど がん めん なぐ

高速で追いかけたセルマックスは、さらに何度も顔面を殴りつけた。
「ぐあ……がはっ! ぐわっ! があぁっ!」
くる ひ めい つち けむり ま

苦しげな悲鳴がひびきわたり、あたりに土 煙が舞いあがる。

「ガァァ……」
な じょう くう な

やがてぐったりとしたピッコロを、セルマックスはゴミでも投げるように、ポイッと上空へとほうり投げた。
む ぞう さ みぎ て

無造作に右手をつきあげる。
ドドドドド……ッ
れん ぞく かい こう せん じょう くう う

そうしてはなたれる連続の怪光線が、上空のピッコロにこれでもかと撃ちつけられた。
「あ……あああ……」
じゅう りょく さか お

ボロボロになったピッコロが、重力に逆らえずに落ちてくる。
ま う と みぎ て

それを待ちかまえ、受け止めたのは、セルマックスの右手だ。
「……や、やめろ……」
お よ そく ご はん め み ひら

これから起こるだろうことを予測して、悟飯は目を見開いた。
みぎ て ぶ き み ひかり

セルマックスの右手が、ブゥン、と不気味な光をはなちはじめた。
かい こう せん ひかり み つよ

怪光線の光が、見せつけるようにどんどん強くなっていく。
か ほこ ぜっ きょう げ び え う

勝ち誇ったように絶叫するセルマックスが、ニヤリと下卑た笑みを浮かべる。
ちから よう す ご はん なか おと た き

ぐったりと力ないピッコロの様子に、悟飯の中でなにかがプツンと音を立てて切れた。
「うわあああ~!!」
はげ き も と ご はん さけ

激しい気持ちを解きはなつように悟飯が叫ぶ。
どう じ ご はん あお じろ ばく はつ

同時に、悟飯から青白いオーラがこれまでにないほど爆発した。

「!?」

ひかり いっ しゅん はっ せい しょう げき は おどろ

まばゆい光が一瞬であたりをつつみこみ、発生した衝撃波がセルマックスを驚かせる。
「…………」
いか ひょう じょう ご はん かみ け さか だ

怒りの表情をたたえた悟飯の髪の毛は、シルバーにそまって逆立っていた。
かみ の

その髪はあふれるパワーをしめすかのように伸びている。
あか いろ

ひとみは、すきとおるような赤い色にそまっていた。
ご はん げん かい こ かく せい きゅう きょく すがた とう たつ

アルティメット悟飯の限界を超えて覚醒し、ついに究極の姿へと到達したのだ。
「ガァァァッ!」

セルマックスはあわてたように、ピッコロをわきへと投げた。
どう じ みぎ うで ご はん とっ しん した みぎ こぶし

同時に右腕をふりあげながら悟飯にむかって突進し、下から右 拳をつきあげる!
「…………」
ご はん び どう

だが、悟飯は微動だにしない。
はげ しょう げき は つち けむり た

そのうしろに激しい衝撃波と土 煙が立つだけだ。
てい ど

「……この程度か」

「グ……ググ……」

ご はん ひょう じょう う

まったくダメージのない悟飯に、セルマックスがあせりの表情を浮かべる。
こん ど ばん

「今度は、ボクの番だ……」
しず こえ せん げん ご はん こぶし かる お

静かな声で宣言すると、悟飯はセルマックスの拳を軽く押した。
「ハァッ!」
きょう れつ と げ きょ だい はら

すかさず強烈な飛び蹴りを、巨大な腹にめりこませる。
おく いわ やま ふ と げき とつ

セルマックスは奥の岩山まで吹っ飛び、激突した。

「グ、ガァアァァ……!」

うえ み ご はん いか も め

上から見おろす悟飯に、セルマックスは怒りに燃える目をむけた。
みぎ て うえ

のこった右手を上にあげる。

「オオオオオ……」

くう き ごえ し だい はげ ねつ りょう か

空気をゆるがすうなり声が、次第に激しい熱量に変わる。
よう す ご はん め み ひら

様子をうかがっていた悟飯は、ハッと目を見開いた。
「!?」
みぎ て ぼう だい ひ こう だん き

セルマックスの右手に、膨大なエネルギーを秘めた光弾ができつつあることに気づいたのだ。
み あん こく こう だん ち きゅう ひょう めん ちょう きょ だい

見るまにふくれあがった暗黒の光弾は、地球の表面をおおうような超巨大エネルギーとなる。
しゅう い き だん いん りょく す きょ だい うず はっ せい

周囲のガレキがセルマックスの気弾の引力にぐんぐん吸いあげられて、巨大な渦が発生する。
「…………」
ご はん どう

けれど悟飯は動じない。
え う

それどころか、なぜかニヤリと笑みを浮かべてさえいる。
せん とう この じん ほん のう ご はん

戦闘を好むサイヤ人として本能が悟飯をそうさせているのか。
ちょう きょ だい き だん いっ き ぎょう しゅく

超巨大な気弾をうみだしたセルマックスは、エネルギーをギュンッと一気に凝縮させた。
みぎ て も おお う ちゅう の ちょう きょう りょく き だん

右手で持ちあげられるほどの大きさだが、宇宙を飲みこむブラックホールのような超強力なセルマックスの気弾は、まわりか
きゅう しゅう

らエネルギーを吸収して、さらにどんどんパワーをあげる。
そのときだ。

「ガァッ!?」

き だん うで ま

気弾をかかげた腕ごと、セルマックスになにかがぐるりと巻きついた。
おどろ し せん さき

驚くセルマックスの視線の先にいたのは、ボロボロになったオレンジピッコロだった。
うで の むち じょう はん しん こ てい

腕を伸ばし、鞭のようにしならせ、セルマックスの上半身をがっしりと固定している。
ご はん

「悟 飯!」
「――ハッ!?」
さけ ご はん われ かえ

ピッコロの叫びで、悟飯は我に返った。
おも き ご はん はっ

やるべきことを思いだし、ふたたびすさまじい気が悟飯から発せられる。

「グゥゥ……!」

ま うで ひっ し

セルマックスは巻きつくピッコロの腕からのがれようと必死だった。
「!?」
け はい かん うご と

と、セルマックスはただならぬ気配を感じて動きを止めた。
とお ば しょ た ご はん ひたい ゆび

いつのまにか遠くはなれた場所に立った悟飯が、額に指をあてている。
ゆび さき きょう れつ ご はん からだ ぼう ふう と ま そら たか たつ まき

その指先からあふれだした強烈なパワーが、悟飯の体を暴風のように取り巻いて、空高くへと竜巻のようにあがっていた。

「グ、ググ……!」

ほん のう てき きょう ふ かん せ なか はね

本能的な恐怖を感じ、セルマックスはあわてて背中の羽をひろげた。
は おと そら に うで ひ

羽音をうならせ空に逃げようとするセルマックスを、ピッコロが腕で引きとめる。
と うしな ひだり うで き あ さい せい

それでも飛ぼうともがかれて、ピッコロは 失った左 腕を気合いで再生した。


うで の みぎ あし

その腕も伸ばして、さらにセルマックスの右足にからみつける。
「おとなしく、してろ!」
あば てい こう すこ そら じょう しょう

ふりほどこうと暴れるセルマックスは、ピッコロに抵抗されながらも、少しずつ空へと上昇しはじめた。
ご はん さけ

ピッコロが悟飯に叫ぶ。
ご はん う

「悟 飯ー! 撃てーっ!」
ご はん き うず ま あお じろ いな びかり そら

悟飯のまわりですさまじい気が渦を巻き、青白い稲 光となって空をつらぬいた。

ま かん こう さっ ぽう

「 魔貫 光殺 砲!」
ご はん ひと さ ゆび なか ゆび さき

悟飯の人差し指と中指の先が、まっすぐセルマックスへとむけられる!
ま かん こう さっ ぽう もう の

はなたれた魔貫光殺砲が、セルマックスへと猛スピードで伸びてきた。
「グガ、ァ、ガアァ……!」

ひ こう せん

おそろしいほどのパワーを秘めた光線に、セルマックスはパニックになった。
みぎ て き だん ま かん こう さっ ぽう な

右手にかかげた気弾を、魔貫光殺砲にむかってぶん投げる!
ブゥウン!
ま しょう めん きょ だい き だん う

真正面から巨大なエネルギーがぶつかり、セルマックスの気弾にぐにゃりとゆがみが生まれた。
ご はん ま かん こう さっ ぽう すす

そのゆがみをつきやぶり、悟飯の魔貫光殺砲はセルマックスめがけてつき進む!
しゅん かん のが

ピッコロはその瞬 間を逃さなかった。
あたま

もがくセルマックスの頭を、はがいじめでおさえつけ――

ズガアアァァァァッ!!

とう ちょう ぶ ま かん こう さっ ぽう

セルマックスの頭頂部を、魔貫光殺砲がつらぬいた!
こえ ち じょう お あたま こな ごな

声もなく地上へと落ちていくセルマックスの 頭は粉々になっている。
そこ たお み いき

クレーターの底へ倒れおちたセルマックスを見て、ピッコロはようやくホッと息をついた。
ご はん し せん おく ご はん き

なしとげた悟飯にニヤリと視線を送る。と、悟飯もピッコロに気づいたようだ。
「やった……やったぞ……!」
ち じょう ごう よろこ こえ

地上ではクリリンと18号が、喜びに声をあげる。
ごう に けい こく

だが、そんなクリリンたちにガンマ1号が逃げながら警告した。
ばく はつ

「爆発するぞ! はなれろーっ!!」
たたか お

そう、まだ闘いは終わっていないのだ。
う ひ ぜん そく りょく と

ピッコロはすぐさま埋まっているゴテンクスを引っぱりだし、全速力で飛びだした。
ご はん ごう つづ

悟飯、クリリン、18号もあとに続く。
ま なか からだ き みょう うご

クレーターの真ん中で、セルマックスの体が、ブクッ、ブクッと奇妙にふくれて動きだした。
もう と に ご はん ひかり すじ からだ

猛スピードで飛んで逃げる悟飯たちのうしろで、光の筋がチカチカと体からあふれだし――
つぎ しゅん かん

次の 瞬 間。

ズガアアァァァ……ッ!

しゅう い の だい ばく はつ ま

周囲すべてを飲みこむような大爆発が巻きおこった。
じょう くう そう じゅう ひ こう き えん えが と

そのはるか上空で、ブルマの操縦する飛行機は円を描くように飛んでいた。
はや に

「よかった~、早めに逃げておいて……」
ばく はつ げん ば せん かい ちか

爆発がおさまった現場へと、グライダーのように旋回しながら近づいていく。
まど した おお こえ

窓にはりつくようにして下をのぞきこんでいたパンが大きな声をだした。
「あっ! あのかいぶつがいない」
そう じゅう した み

操縦しながら、ブルマもちらりと下を見る。
「みんなだいじょうぶかなあ……」
しん ぱい め ごう すがた み ばく はつ ふ と う じ めん

心配そうにつぶやくパンの目に、18号の姿が見えてきた。さっきの爆発で吹き飛ばされ、埋まってしまったクリリンを、地面か

らズボッと引っぱりだしてやっている。
ぶ じ

「みんな無事のようね!」
あん ぜん ば しょ さが ひ こう き ちゃく りく

ブルマは安全な場所を探して飛行機を着陸させた。
こう ぶ とびら どう じ か

後部扉をあけると同時に、パンがいきおいよく駆けだしていく。
み けむり おく ご はん け はい かん

きょろりとまわりを見まわしたパンは、煙の奥に、悟飯とピッコロの気配を感じた。
「オレンジいいですねぇ」
「おまえもいいじゃないか。……お?」
き こえ か ふたり き かお

聞こえてきた声をたよりに駆けよると、二人もパンに気づいて顔をむける。
「え?」
み ご はん すがた おどろ と

だがパンは、見たことのない悟飯の姿に、驚いて止まってしまった。
いろ かみ さか だ すがた ご はん

オレンジ色をしたピッコロのとなりに、シルバーの髪を逆立てた姿の悟飯がいる。
み き ふたり き と もと すがた

とまどったように見つめるパンに気づいた二人は、気を解いて、元の姿へともどった。
「!」
すがた ご はん うで か

いつもの姿になった悟飯にしゃがんで腕をひろげられ、パンはうれしそうに駆けだして――
ドォンッ!
と ちゅう おん そく こ おも ご はん お たお

途中で音速を超えたパンは、思いきり悟飯を押し倒した。
ご はん ほお わら

うれしそうな悟飯と、頰をよせて笑いあう。
よう す まん ぞく み おも かお

その様子を満足そうに見つめていたピッコロは、ふと思いだして顔をあげた。
とお ごう ぶ じ

遠くにガンマ1号とヘドがいる。ヘドもどうやら無事だったようだ。
し せん き ごう め がお

視線に気づいたガンマ1号が、目顔でうなずく。
かえ ご はん かた の た

それに返したピッコロに、悟飯もパンを肩に乗せて立ちあがった。
たお

「ヤツらがいなければ、倒せなかった……」
ば もの とう たお

「……あんなセルの化け物、父さんやベジータさんがいても倒せなかったかも……」
い ご はん こた

つぶやくように言ったピッコロへ、悟飯も答える。
ご はん ゆび

そんな悟飯をじろりとにらんで、ピッコロは指をつきつけた。
へい わ み ゆ だん い

「だから平和に見えても油断はするなと言ったんだ」
「そうですね。すいません……」
お い ご はん はん せい

パンを降ろしながら言う悟飯は、だいぶ反省しているようだ。
たの か ご はん み

楽しそうに駆けだしていったパンがいなくなってから、ピッコロはチラリと悟飯を見た。

「……ところで、さっき撃ったのは?」
ま かん こう さっ ぽう

「魔貫光殺砲のつもりでしたが」
ご はん こた おも

悟飯の答えに、やはりそうかとピッコロは思った。

「撃てたのか?」
ご はん おし

悟飯に教えたことはなかったはずだ。
と ご はん た て あたま

問われた悟飯は立ちあがると、照れくさそうに頭をかいた。
れん しゅう

「こっそり練習したことが……」
なるほど、そういうことだったのか。
せ なか

ピッコロはくるりと背中をむける。
じょう で き

「……上出来だった」
こえ

その声には、にじむうれしさがかくしきれていなかった。
ご はん さい かい よろこ

悟飯たちがぶじの再会を喜びあっていたそのとき。
たお ごう て つよ

ヘドは倒れたガンマ2号の手を、ぎゅっと強くにぎっていた。
どれくらいそうしていただろう。
ごう からだ ちから ぬ ひかり こな か

ガンマ2号の体から力が抜けて、サラサラと光の粉に変わりはじめた。
からだ くう ちゅう ま

くずれていく体が、空中にとけるように舞っていく。
いの て き

祈るようにつかんだ手も、ヘドのてのひらからこぼれるように消えていった。
かな ひょう じょう ごう さい ご ひかり み

ヘドは悲しそうな表情で、ガンマ2号の最期の光を見おくった。
ごう

あとには2号のマントだけがのこされている。

「……死んだのか?」
そら ま ひかり こな み ふたり

空を舞う光の粉を見つめながら、ピッコロがゆっくりと二人のもとへとやってきた。
たす ざん ねん

「ああ……。せっかく助けてもらったのに残念だった」
こた ごう

答えたのはガンマ1号だ。
「なにをしたんだ……あのとき……」
じゃく てん ごう ひっ し たたか

セルマックスの弱点をつくために、ガンマ2号は必死で闘っていた。
あし みずか じょう くう き おも

ピッコロたちに足どめをたのみ、 自らは上空で気をためていたように思う。
いっ き つか

「のこったエネルギーを一気に使ったんだ」
ごう しず こた ごう も

ガンマ1号は静かに答えながら、ガンマ2号のマントをそっと持ちあげた。
こう げき りょく お

「おかげで、アイツの攻撃力が落ちた」
こん しん いち げき かた うで き

渾身の一撃だったからこそ、あのセルマックスの片腕を切りおとすことができたのだ。
せ て

うなだれたままのヘドの背に、ピッコロはそっと手をかけた。
「スーパーヒーローだったな」
「おまえたちこそ……」
い ごう ちい かえ

なぐさめるように言ったピッコロへ、ガンマ1号が小さくそう返す。
ふか ちい こえ

ヘドも深くうなだれたまま、小さな声をしぼりだした。
せ かい すく

「ありがとう。おかげで世界は救われたよ」
れい い

「礼を言うのはこっちだ」
じゃ あく ば もの つく

あの邪悪な化け物を創りだしたのはたしかにヘドだ。
つく

だが、ガンマたちを創りだしたのもヘドなのだ。
ごう いのち たたか ちから お

ガンマ2号が 命をかけて闘ってくれたからこそ、セルマックスの力が落ちた。
ごう さい ご たたか

ガンマ1号が最後までいっしょに闘ってくれたおかげで、いまこのときがおとずれている。
つく ごう せき にん と

「ボクのせいだ……ボクがセルマックスを創った。2号はボクの責任を取って……」
こう かい かた ごう つ こえ

とつとつと後悔を語るヘドに、18号と連れだってやってきたクリリンが声をかけた。
り よう

「おまえもヤツらに利用されたんだろ?」
「……いや、なんとなくわかっていたんだ……」
こえ ちい お

ヘドの声が、さらに小さく落ちていく。
けん きゅう ひ

「ボクは、研究費が……ほしくて……」
ごう ごう も い ひょう じょう み

ガンマ1号は、2号のマントを持ったまま、そう言うヘドの表情を見つめていた。
たす

「それにしてもあんた、よく助かったわね」
む ごん かい わ かお

無言になってしまったヘドたちの会話に、ひょっこり顔をだしたのはブルマだった。
た しょう おお

ヒーロースーツが多少すすけているくらいで、ヘドに大きなケガはない。
すこ しょう げき た ひ ふ かい ぞう

「……ボクは少しくらい衝撃に耐えられるように皮膚を改造したんだ……」
ひ ふ ひ

「皮膚を!? ゲゲ、それってちょっと引くわー」
こ と かい ぞう

「「小ジワを取るのも改造じゃん」」
おも いっ ぽ ちゃ ちゃ い

思わず一歩さがったブルマに、すかさずゴテンクスが茶々を入れる。

「いま言ったのトランクスでしょ!」

けれどすぐににらまれて、たじろぐゴテンクスのフュージョンが解けた。
い せき にん ふたり ご てん よ

どっちが言ったか、責任をなすりつけあう二人をにらんでいたブルマが「そういえば」と悟天を呼んだ。
こん かい たたか ころ

「今回のことはチチさんにはナイショよ。こんな 闘いにさそったなんて、バレたら殺されちゃうわ」
「ハイ!」
くぎ ご てん せ すじ の

釘をさされて、悟天がしっかりと背筋を伸ばす。
ちい いき かお

ブルマは小さく息をつくと、まだうなだれているヘドのほうへと顔をむけた。
「……で、ドクター・ヘドだっけ? これからどうすんのよ」
けい さつ しゅっ とう

「……ガンマといっしょに警察に出頭します」
けい さつ りゅう ち じ しん

「いやいやいやいや、じょうだんじゃない。警察じゃおまえたちを留置する自信がない!」
ちから た ごう りょう て

よろよろと力なく立ちあがったヘドと1号に、クリリンがぶんぶんと両手をふる。
た み

そのやりとりに、ピッコロもゆっくりと立ちあがってヘドを見た。
「なにもなかったってことでいいんじゃないのか?」
おも こと ば め おお

思いもしなかったその言葉に、ヘドの目が大きくなる。
わる

「おまえたちはいいヤツではなかったが、悪いヤツでもなかった」
ごう

ガンマ1号がもうしわけなさそうにうつむいた。
かお

ヘドもふたたび顔をさげ、
「じゃあ……」
い けっ み

意を決したようにブルマを見あげる。
「ボクとガンマをカプセルコーポレーションでやとっていただけませんか?」

「はあ? ふざけんなよ! てめえ、よくそんなこと言えるな!」


ねが ど な ごう

そのお願いに、怒鳴ったのは18号だ。
なぐ ごう と はい

いまにも殴りかかろうとする18号をクリリンがあわてて止めに入る。
すこ かんが ひと さ ゆび た

そんなさわぎをよそに、ブルマは少し考えて、ピッと人差し指を立てた。
び よう てき

「……あんた、美容的なことってどうなのよ?」
び よう

「美容って……?」
ちか ゆび し じ

きょとんとまたたくヘドに、「ちょっと」と近くへくるよう指で指示をだす。
かお ちか こえ

おとなしくやってきたヘドに顔を近づけて、ブルマは声をひそめた。
はだ わか

「肌を若くする、とか……」
せい ぶつ がく てき い し めん きょ も てい ど

「……ああ。まぁとうぜん生物学的なこともくわしいですし、医師の免許も持っていますから、そんな程度のことは……」
き からだ お

それを聞き、ブルマはぐいっと体を起こす。
のう りょく かい しゃ み りょく てき ちょう ゆう しゅう

「なるほど。あんたのスゴイ能力は会社としてもたしかに魅力的ね。それに、超優秀なガードマンか……」
かんが ふたり み ほこ さき

また考えるように二人を見て、それからピッコロに矛先をむける。
こま おも

「どこかでまたヤバいことをたくらんだりされても困るしね……どう思う、ピッコロ」
はん たい つか

「……オレは反対しない。ブルマにあんなことでドラゴンボールが使われるより、な」
「うるさいわね!」
し かお み

あんなこと、を知らないヘドたちは、きょとんとした顔でブルマを見る。
え がお

そんなヘドに、ブルマはニコッと笑顔をむけた。
「じゃあ、きまり! やとってあげる」
「ありがとうございます。ほらっ、おまえも」
「ありがとうございます!」
ごう ふか ぶか

ヘドとガンマ1号がブルマに深々とおじぎする。
いっ けん らく ちゃく

これで一件落着だ。

と、パンがくいっとピッコロのズボンのすそを引っぱった。
き ほこ かお すこ

気づいたピッコロに誇らしげな顔をむけて、少しはなれる。
こぶし しゅうちゅう からだ う

拳をにぎって集中すると、パンの体がフワッと浮いた。
ゆう ぐ そら いっ かい てん とお ぬ

そのまま夕暮れの空を一回転して、みんなのあいだを通り抜けていく。
あした つぎ

「明日からは次のステップのトレーニングだな」
「ウン!」
わら こと ば と まん めん え

ふっと笑ったピッコロの言葉に、パンはくるくると飛びながら、満面の笑みでうなずいた。
ち きゅう き き ご はん そう で の

地球の危機を、悟飯たちが総出でなんとか乗りこえたころ――
し ご くう たたか せい あな つづ

そんなことなど知らない悟空とベジータの闘いは、ビルス星のあちらこちらを穴だらけにして続いていた。
「ハァハァ……ハァ、ハァ……」
「ハァハァハァ……」
なん じ かん たたか ふたり いき

もう何時間もぶっとおしで闘っている二人の息は、どちらもそうとうあがっている。
からだ じゅう た

体 中ボロボロのフラフラで、立っているのがやっとだった。
さい ご ちから ひだり こぶし

そんなベジータが、最後の力をふりしぼり、左の拳をふりあげる。
「――ガァ!」
き あ いっ せん とお ちから ぬ ご くう むね

気合い一閃――とは、ほど遠い力の抜けたパンチがどうにか悟空の胸にとどく。
う ご くう からだ たお

それを受けた悟空の体が、ふわーっとうしろに倒れた。
ご くう た せい いっ ぱい

悟空も、もう立っているだけで精一杯だったのだ。

「ハァハァハァ……、負けたぁー!」
たお ご くう ま せん げん

倒れこんだまま、悟空が負けを宣言する。
かお ま

やりきったその顔は、負けたというのになんだかうれしそうでもある。
こう ちゃ たの き て

のんびり紅茶を楽しんでいたウイスが、それに気づいて手をあげた。

「……あっ、はい、えぇと……、ベジータさんの勝ち~」
い おお

ビルスはどうでもいいと言わんばかりに、うしろで大きなイビキをかいている。
かた いき こと ば おお りょう て

肩で息をついていたベジータが、ウイスの言葉に大きく両手をつきあげた。

「……やっ、やった……つっ、ついに……カカロットに……勝った、ぞぉ!」
よろこ さけ たお

こみあげる喜びをかみしめるように叫びながら、そのままうしろに倒れこむ。
げん かい

ベジータも限界だったのだ。
こ きゅう

あらい呼吸はまだしばらくおさまりそうにない。
「ゼェゼェ……、や、やったぞ……」
「ヘヘッ」
め まん ぞく ふたり おとこ ひょう じょう くび

目もあけていられないほどヘロヘロのくせに、満足そうな二人の男に、チライはうんざりした表情で首をふった。

「……やれやれ、やっと終わったか。バッカじゃないのアイツら。なぁ、ブロリー」
たの

こんなことをしていったいなにが楽しいのか、チライにはさっぱりわからない。
どう い もと かん どう

同意を求められたブロリーは、けれどひどく感動しているようだった。
かた なみだ なが

レモといっしょにぶるぶる肩をふるわせて、ダーッと 涙を流している。
ふたり こころ そこ び

そんな二人に、チライは 心の底からドン引いた。
おとこ

「……男って……くだらない!」
「あら?」
かれ と き た じ ぶん つえ たま てん めつ き た

彼らのやり取りを聞きながら立ちあがったウイスは、ふと、自分の杖の玉が点滅していることに気づいた。ビルスが食べたアイ

スのカップがかぶさっていて、まるで気づかなかったのだ。
ご よう

「なにか御用でしたか、ブルマさん」
「んもう、おそいわよ、ウイスさ~ん!」
さき ひ こう き そう じゅうちゅう

つなげなおした先のブルマは飛行機を操縦中のようだった。
よご

なんだかみょうに汚れてもいる。
お い

「どうももうしわけありませんでした。ところでなにか美味しいものでも?」
りょう り さ こん ど

「……う~ん、まあね……でも料理が冷めちゃったから、また今度ね~。じゃ」
「あら。なんだったのでしょう……?」
こと ば つう しん

あいまいな言葉でにごしたブルマにあっさり通信をきられてしまう。
くび

ウイスは、はてと首をかしげたのだった。

終わり
この本は、映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』(二〇二二年六月公開)をもとにノベライズしたものです。
作者紹介

原作 脚本 キャラクターデザイン

鳥山 明 とりやま・あきら
漫画家。1978年に『週刊少年ジャンプ』にて読切作品『ワンダーアイランド』でデビュー。代表作『Dr. スランプ』、『ドラゴンボール』はTVアニメ化され、世界中で今
なお人気を博している。

小川 彗 おがわ・すい
北海道出身。小説家・コミック原作者。みらい文庫では、映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE』や、人気テレビ番組『逃走中』のノベライズシリーズなどを執
筆している。
ぶん こ どく しゃ

「みらい文 庫」読 者のみなさんへ

こと ば まな かん せい みが そう ぞう りょく はぐく どく しょ にん げん りょく たか か いち まい

言葉を学ぶ、感性を磨く、創造力を育む……、読書は「人間力」を高めるために欠かせません。たった一枚のページをめ
む がわ み ち せ かい む げん ひろ ほん も

くる向こう側に、未知の世界、ドキドキのみらいが無限に広がっている。これこそが「本」だけが持っているパワーです。
がっ こう あさ どく しょ やす じ かん ほう か ご つづ よ み りょく あふ

学校の朝の読書に、休み時間に、放課後に……。いつでも、どこでも、すぐに続きを読みたくなるような、魅力に溢れる
ほん そろ どく しょ こころ むね しゅん かん たい けん たの

本をたくさん揃えていきたい。読書がくれる、心がきらきらしたり胸がきゅんとする 瞬 間を体験してほしい、楽しんでほしい。み
に ほん せ かい にな おとな とき どく しょ み りょく はじ し ほん じ ぶん

らいの日本、そして世界を担うみなさんが、やがて大人になった時、「読書の魅力を初めて知った本」「自分のおこづかいで
はじ か いっ さつ おも だ さく ひん いっ しょ けん めい たい せつ つく

初めて買った一冊」と思い出してくれるような作品を一所懸命、大切に創っていきたい。
おも こ さっ か せん せい がた いっ しょ わたし す てき ほん づく つづ ぶん こ

そんないっぱいの想いを込めながら、作家の先生方と一緒に、 私たちは素敵な本作りを続けていきます。「みらい文庫」
む げん う ちゅう う ほし ゆめ かがや つぎ つぎ あたら う つづ

は、無限の宇宙に浮かぶ星のように、夢をたたえ輝きながら、次々と新しく生まれ続けます。
ほん も て なか

本を持つ、その手の中に、ドキドキするみらい―――。
ほん う ちゅう じ ぶん すこ くう そう りょく そだ ほし み

本の宇宙から、自分だけの健やかな空想力を育て、〝みらいの星〟をたくさん見つけてください。
たい せつ たい せつ ひと まも つよ おとな こころ ねが

そして、大切なこと、大切な人をきちんと守る、強くて、やさしい大人になってくれることを 心から願っています。

ねん はる

2011年 春
しゅう えい しゃ ぶん こ へん しゅう ぶ

集英 社みらい文庫 編集 部
集英社eみらい文庫
スーパー

ドラゴンボール 超 スーパーヒーロー
えい が ぶん こ ばん
映画ノベライズ みらい文庫版
とり やま あきら

原作・脚本・キャラクターデザイン 鳥山 明
お がわ すい

著 小川 彗
©BIRD STUDIO Ogawa Sui 2022
©バード・スタジオ/集英社
©「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

2022年6月30日発行

この電子書籍は、集英社みらい文庫「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー 映画ノベライズ みらい文庫版」


2022年6月19日発行の第1刷を底本としています。

発行者 北畠輝幸
発行所 株式会社 集英社
東京都千代田区一ツ橋2丁目5番10号
〒101-8050
[電話]
03-3230-6080(読者係)
装丁 菊地大(バナナグローブスタジオ) 中島由佳理
制作所 トッパングラフィックコミュニケーションズ

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