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Session 1 戦略
Session 1 戦略
Session 1 戦略
神戸大学経営学研究科
原田 勉
Copyright 原田 勉 1
a. 戦略は必要なのか?
• 第二次世界大戦時、ハンガリー軍の小隊長が、スイスのアルプ
ス山脈で偵察隊を訓練目的で送り出した。その直後、降雪が2
日続いたが、3日目に偵察隊が無事帰還した。
• 「われわれは迷ったとわかって、もうこれで終わりかと思いました。
そのとき隊員の1人がポケットに地図を見つけました。おかげで
冷静になれました。われわれは野営し、風吹に耐えました。それ
からその地図を手掛かりに帰り道を見つけ出しました。」
• その地図は、アルプスの地図ではなく、ピレネー山脈の地図で
あった。
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ここからわかること・・・
• この部隊は、自分たちの問題にかかわりのある地図
を見つけた。もし、ディズニーランドの地図だったらどう
だったか?
• 部隊は、野営地に戻りたいという共通の目的を持って
いた。地図は、この目的に関連があるものだった
• ピレネー山脈とアルプスはいくつかの共通の特徴を
もっていた
• もし、迷った隊のリーダーがその地図はおかしいと知
りながら、それでもなお部下を率いることができれば
もっとすごい話になっていた。
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間違った地図の効用
• 不確実性が高いなかでは、リーダーでさえどこに
行けばよいかわからない。間違った地図は、部下
に安心感を与え、現実を観察し、行動するきっかけ
を与える。
• 不確実性の高いなかでは、事前の戦略は、間違っ
た地図になる。しかし、まずは行動し、そのプロセ
スに気づきながら、徐々に意味づけをしていくこと
が大切。
• つまり、戦略とは行為によってつくり上げていくもの。
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b. イノベーション戦略とは
•探索すべき領域を設定する
•行動を促す仕組みをつくる
•しかし、具体的な中身は規定しない。行動を
通じて発見、学習していくことが主たる内容
になる
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1.2 イノベーション確率最大化
• イノベーション確率Qとは
Q(n, p ) =1 − (1 − p )
n
p: 一回の試行の成功確率
n: 試行回数
「少なくとも1回の試行が成功する確率」
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a. イノベーション確率を高める
•イノベーション・ドメインの設定 ☑
•試行回数nを増やす ☑
•探索精度pを高める ☑
•探索メカニズムの是正
•ガバナンスの設定 ☑
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不確実性の4タイプ
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第1のタイプ
• 到達点が明確であり、そのための道筋も明確
• 大きな不確実性は存在しない
• 合理的に計画し実行する
• 古典的マネジメントの世界
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第2のタイプ
• 各事象の確率がわかっている
• 期待値を計算し、それが最大となる
選択肢を選択する
• 各事象が発生したときの対応策を
計画しておく
• コンティンジェンシー・プラン
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第3のタイプ
• ドメインは明確にわかっている
• しかし、そのなかでどこが到達点なのか、
そこにどのように到るのかは不明
• この場合は1点だけを選択するのでは
なく、多点的な展開をする
• 各点ではあまりコミットしない
• N点展開による確率最大化
• Nはコストによって制限される
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第4のタイプ
•決断は大きな賭けとなる
•多面展開も大きなコストとなる
•決断を延期し、どのような展開になって
も対応できる柔軟性・スピードを向上
することが重要
•あるいはドメインを定めるための
情報収集が不可欠。第3タイプへ・・・
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What is strategy?
• Difference
• Different set of activities
• Trade-offs
• Frontier
• Fit
• complementarity
Buyer
value
A’
Cost position
Copy right 原田 勉 15 2020/5/11
経営戦略とは
• 企業(事業)のあるべき(ありたい)姿を、環境と
のかかわりで描くとともに、それを実現するため
の道筋を、仮説として示した構想
• 戦略=資源配分+構想
• 戦略=ポジショニング(立地)
2020/5/11 16
戦後国鉄の使命
•近代化・復興増強投資を行うことで戦後の経
済的復興に貢献すること
•効率的な運営を行うこと
•3つの選択肢
•併設線増案
•狭軌別線
•広軌別線 新幹線方式 ✔
「東海道新幹線は、昭和の万里の長城である。なぜ
かといえば、規格が違うため、在来線との相互乗り
入れができない。東海道から山陽に乗り入れができ
ないし、山陽から東海道にも乗り入れができない。
ネットワークを形成しないような鉄道は、何の意味も
ない。これは必ず失敗する。」
• 十河(そごう)総裁
• 島技師長
• 少数の技術者たち
言うことを聞かない「関東軍」
「失点主義の支配する組織においては有能な者と
はリスク回避能力の高いものであり、評価の高い者
ほど無謬性の演出に長けている。」
「うまくいったら「俺も賛成だった」、うまくいかなかっ
た時には「俺は反対だった」といえるような、非常に
あいまいな態度をとるのである。」
• メリット
• 主要駅では在来東海道本線と接続するわけで
あるから、完成していなくても、そこの間だけは
バイパスとして使える
• デメリット
• すでに市街地化しているところに線路を通さなけ
ればいけないため、工事費が高くつく
• デメリット
• 全部が完成するまでは利用することができない
• 膨大な投資が必要
• 完成までに時間がかかる
「官僚的決断にはなじまない」
• 昭和34年から着工。昭和39年の開業まで5年の
建設期間がかかった。
• 当初1900億円で建設される計画であったが、結
果として3800億円に膨らんだ。
• 十河総裁は昭和38年に辞任。
• 開業初年度から黒字で展開。10年以内で投資を
すべて回収。
• ただし、開業時に十河氏、島氏は招待されず。
• このケースのような不確実性が高くリスクの大きい
案件についての意思決定は何に依拠して行うべき
でしょうか?
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