ALIBI CGE.Modelの紹介 (2002年)

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研究ノート

llllllllllllllllllillil川川ll睡lll

産業連関分析を拡張した応用一・般均衡分析モデル
A五1BI CGE.Mode1の紹介

宇 多 照 治 郎

究に合うようにモデルを加工するのは容易ではな
1 はじめに
い.また入門書にあるような説明用の単純なモデル
本稿の目的は,実際に産業連関表(10表)を使 を実用に耐えるものに拡張することも容易でない.
った計算が可能な応用一般均衡分析(CGE)モデル, なぜなら10の産出高モデルならば,部門数が増え
ALInk Between Io and CGEモデル(ALIBI CGE) ても計算方法に変わりはないが,CGEの場合,行
の構造とそれを使った計算方法を説明することにあ 動原理を部門毎に定義しなければならないからであ
る.
る.これらのことからVRIOをCGEに拡張する第一
まずこのALIBI CGEを作成した経緯を説明する. 段階の作業として,単純ではあるが実際に10表を
筆者は容器包装リサイクルの分析を行うため,吉 使って計算を行うことが可能なCGEモデルを作成
岡・菅(1997)の環境分析用産業連関分析モデルを した,それがALIBI CGEである.つまりこのモデ
基に飲料容器リサイクル産業連関分析モデル ルは飲料容器リサイクルをCGEに組み込む前の土
(Vessel Recycling Input Output Model:VRIO)を 台である.

作成した.筆者はこれを使って日本の1990年代の 第二の問題は,数量分析を使ってシミュレーショ
容器リサイクル率の増加と容器シェアの変化,主に ンを行うのが容易でないことである.CGEでは,
ペットボトルへのシフトがもたらした環境負荷量へ まず連立方程式に統計データを入力して基準解を求
の影響を検討した.1)この研究成果を踏まえ,容器 め,次に一部のパラメータを外生的に変更して,新
包装リサイクル法で定められている費用負担制度を たな均衡解を求めるという作業を行う.しかしこの
次の研究課題とした.しかし産業連関分析(10) 連立方程式は非線形であるため,Excelなど汎用の
の産出高モデルでは,価格変化が生産量に影響を与 表計算アプリケー,ションで解くことはできない.そ
えないという仮定を設けている.そのためVRIOを のため非線形の連立方程式を解くことができるアプ
使っても容器包装リサイクルの費用負担制度の変化 リケーション,GAMS用のプログラムを作成した.
が生産に与える影響を分析することができない.そ 本稿はこのALIBI CGEとその計算用プログラム
こでVRIOをCGEモデルに拡張することにした. をまとめたものである.本稿では,まずモデルの構
このVRIOの拡張を行うにあたり,二つの問題に 造を数式で示し,次にこの中から計算に必要な方程
直面した.第一の問題は,10からCGEへの拡張が 式を取り出して単純な仮想データと共にプログラム
容易でないことである.容易でないとは,まず先行 化したものを示し,最後にこれを使った計算例を紹
研究のCGEモデルをそのままVRIOの中心核として 介する.

使うことが容易でないことである.CGEモデルは なお本稿の特徴は次のようになる.第一に,10
研究対象や用いるデータによってモデルの構造が異 とALIBI CGEの違いを明確にしてある.つまり
なり,また研究対象に関連する部門の構造が複雑に ALIBI CGEのデータ,理論,計算方法を10のもの
なっている.この複雑な構造を残したまま自分の研 と比較しながら説明する方法を採っている.第二に,
CGEの連立方程式に用いられている,全ての式と
変数の定義を明確にしてある.中でも方程式と,そ
1)このモデルと分析結果の一部は,宇多(2002) の基になる最適化問題のつながり,また先行研究で
で論じている. は無視されることの多かったパラメータの推定方法

『エコノミア』第54巻第1号(2003年5月),101−121頁[Ecoπo〃2∫αVol.54 Nα1(May 2003), PP.101−121]


工02

表110とALIBI CGEの違い
10表の SAMの
産業連関分析 部門 ALIBI CGE
oランス oランス
○ 生産 ○
産出高モデル ← 供給(表の横) → 需給バランス式
価格モデル ← 需要(表の縦) → 価格決定式
×※ 家計内生化モデル ← 家計 ○
生産要素供給額による
所得 賃金,利潤,移転額に依存
O生変数(価格モデル)
消費比率一定
消費 ← 家計の効用最大化問題
O生変数(産出高モデル)
× 生産要素 ← 生産者の費用最小化問題
無限供給可能の仮定 労働 完全雇用の仮定 ○
無限供給可能の仮定 資本 完全な資本投入の仮定 ○
× 政府 ○
外生変数(価格モデル) 政府収入 税収,移転額により決定
外生変数(産出高モデル) 政府支出 支出比率一定
× 資本 ○
外生変数(価格モデル) 調達 資本減耗,貯蓄額により決定
外生変数(産出高モデル) 蓄積(投資) 投資比率一定
× 外国 ○
全て0 移転 各部門により決定
輸出:輸出額一定
A入:国産財の一定比
外生変数(産出高モデル) 輸出入
@ 移転額:一定
o常収支:収支の差額
※ 家計内生化モデルの場合,需給バランスが一致していると仮定する.

を示してある.第三に,数式とプログラムの両方で いる.

計算方法を説明してある. 宮田・彪(2000a)の経済一物質循環CGEモデル
は,廃棄物・リサイクル問題を分析することを目的
2 10とALIBI CGEの比較
としたものである.そのためこのモデルは,生産者
2.1 ALIBl CGEモデルの特徴 の生産活動から物質循環活動(リサイクル)と廃棄
ALIBI CGEは,市岡(1991)のAGE日本モデル 物除去活動(廃棄物処理)を分離し,生産者は,生
と宮田・彪(2000a)の経済一物質循環CGEモデル 産活動と廃棄物処理活動で,別個に費用最小化を行
を基に作成したものである. うと想定している.

市岡(1991)のAGE日本モデルは,日本の10表 ALIBI CGEは,この二つのモデルを参考に,10


をデータの一部に使ったCGEであり,日本の租税 の産出高モデルに必要最低限の拡張を加えたもので

問題を分析するために作られたものである.このモ ある.そのため10表にも必要最低限の加工しか行
デルは税制の分析のため,生産財から消費財への変 っていない.つまりAGE日本モデルが行った所得
換,家計の階層化,貿易価格と為替の設定がされて の階層化や,経済一物質循環CGEモデルが行った
■03

表2生産部門,三部門の10表(金額表)
中間投入(生産) 最終需要
第一 第二 第三 家計 政府 投資 輸出 輸入 生産額
中間 第一部門 μκll μx12 μλ:13 ρ1Cl Plg1 P1加 μθ1 一ρ1吻1 P1κ1
鞄?? 第二部門 P2κ21 192κ22 ρ2λ:23 ρ202 P29’2 」92加2 ρ2ε2 一ρ2現2 ρ2κ2
i生産) 第三部門 P3λ:31 P3κ32 ρ3κ33 ρ3c3 ρ393
」93’η3
P3θ3 一P3吻3 ρ3κ3

労働 μ11 μ12 ρ113

付加 資本 μん1 μん2 μん3

ソ値 間接税+補助金 ’1 ∫2 ’3

資本減耗 1φ1 1φ2 初3


生産額 ρ1λ:1 ρ2κ2 ρ3λ:3

生産活動と物質循環活動の分離などの作業は行って 格,吻はノ部門に対する∫財の投入量,αは家計消費
いない.またパラメータの推定方法は,どちらの文 量,g’は政府消費量,∫η’は投資量,θ∫は輸出量,瀦
献でも説明していないため,筆者が想定した. は輸入量,,ρ1は賃金,1ρたは資本投入に対する利
このALIBI CGEでは,単純な所得税と消費税の 潤,るは労働投入量,々は資本投入量,かは間接税の
税制政策をシミュレーションすることが可能であ 徴収額,勧’は資本減耗額を表している.また記号
る.ただしこのモデルは「計算」が可能なものでし では価格と量を分けて表しているが,表の値は一つ
かなく,本稿では計算方法を例を使って示すことの である.

みを目的にシミュレーションを行う.なお日本の所 この10表で,需給が均衡しているのは中間投入
得税,消費税の研究を行うならば,AGE日本モデ 部門だけで,最終需要と付加価値の部門は,部門名
ルが行っているように,家計を所得別に階層化する も需給も一致していない.
などの,モデルをより現状に近づける作業が必要で
ある. [ALIBI CGE]社会会計行列(SAM)
このALIBI CGEと10の違いを一覧にしたものが, 一方,ALIBI CGEでは,10を拡張した表3の社会
表1である.表1にある「バランス」の項目は,用 会計行列(SAM)を用いる.2)ここでは表2の10表
いるデータの各部門の需給バランスが成立している をSAMに拡張するために,次の作業を行っている.
か否か,を示している.また矢印は,データの用い 第一に行と列の部門を揃えるため,行に家計部門と
方や,計算に用いる方程式の導き方を示している. 外国部門を,列に労働部門と資本部門を加えた.ま
例えば,10では10表の供給バランス式から産出高 た輸出入を統合することで行と列の部門を揃えた.
モデルを,CGEでは効用最大化問題から消費量を
導いていることを矢印で示してある.

2.2 データ
[10]産業連関表 (10表)

10では,表2のような産業連関表(10表)を使
って,分析を行う.
通常,10表の説明では簡略化のため,最終需要
部門と付加価値部門をそれぞれ一部門に統合してい
ることが多い.しかし,ここではALIBI CGE用の
2)SAMについては,中村(1996)を参照.ま
データの部門分類に合わせて,分割してある. たSAMには10表を用いずに,国民経済計算だけで
蕩は∫番目の生産部門の生産量,μは財κ’の価 作成する方法もある.
■04

表310表(表2)を拡張したSAM
生産 制度 ’∴擁要素=’ 資本 外国
’登本1.
第一 第二 第三 家計 政府 労働客 i蓄積) i輸出入) 生産額

第一部門 ρ1λ:1 ρ1λ:1 μκ13 ρ1c1 μ9’1 ・⑩∵ 〆0” μ∫η1 ρ1(θ1一〃Z1)
μκ1
P2x2 2(θ2一吻2)
ゆ.パ

生産 第二部門 ∵σ∵ ρ2∫η2


ρ2κ2 P2:κ23 ρ2c2 ρ292 ρ2λ:2

第三部門 P3κ3 P3λ:3 P3κ33 ρ3c3 P393’


、=0、:、
ゆ,1 ●
マ3z”3
3(ε3一〃23)
P3κ3
制度 ∫寡計’1 0:…七 Z 0 ’ 0’ 19ヅ lpz醗乙擁ン1 クだ(,無爾㌧◎一 ぞ〃宏ア1 ,ツ=
政府 ≠1
あ ∫3 の 0 .:Q・ ρ・’・ 0 ε1η9 9
・∴・o∫1
生産 労働 .ρ〃1 ,ρ〃2
μ13 0 0 ,0,} 0 με刑1
,ρ〃げ

要素 資本 μ.ん玉
μん2 μん3 0 0 ・’

E ,Q:1 0
μ8雁 μん
資本(調達)
切 初2 勿3 ア3 93 、⑥’ :.0’∵
0 ε〃z3 加
汐掴1移転)し ,Ol Q )ρ晦,1 遼扁ゴ1: ご0
◎ ア飾 9鋤’ .0
β級
生産額 μλ:1 P2κ2 ρ1κ3 ア 9 、多〃4:, 越紐ゾ 加 θ〃z

表3の灰色の部分は追加した部門であることを表し ス型関数を仮定し,パラメータをSAMから作成す
ている.第二に各部門の需給額が均衡するように, る方法がある.ALIBI CGEではこの方法を用いる.
表3の右下の二重線で囲まれている部分にデータを
追加した.3) 2.3 生産財の供給
14は労働の総需要量,ん4は資本の総需要量,1醐 モデルの構造を説明する前に,数式で用いる記号
は外国からの労働移転量,1ヒ卿は外国からの資本移 や書式について説明する.本稿では,外生値とパラ
転量,ε物は外国から家計への移転額,θ刑gは外国 メータを他の変数と区別するため,記号の上に線を
から政府への移転額,ε碑は外国への労働移転 引いて表す.また内生変数とその初期値を区別する
量,ε服は外国への資本移転量,θ〃z3は外国の経常 ため,初期値には記号の右上に*をつけて表す.こ
余剰額,ア,は家計の貯蓄額,勘は政府から家計への れはSAMの値を均衡値と見なし,この均衡値を計
移転額,をは所得税,g、は政府の貯蓄額,♪,醐は家計 算の基準解として設定することによる.
から外国への移転額,g,吻は政府から外国への移転 式の中には,右側に記号や番号が付いているもの
額,アは所得額,gは政府収入額,∫ηは総投資 がある.†が付いた式はパラメータの計算方法であ
額,θ刑は外国の収支額を表している.輸入は競争 る.また番号は均衡解を求めるために用いる連立方
輸入型の10表と同じく,マイナスの供給と考える. 程式に振られている.均衡解を解くためには,この
またCGEでは,家計の余暇量や代替の弾力性な 方程式の数と内生変数の数が等しくなければならな
どを推定するために,SAM以外のデータを用いる い.それ以外の式は,モデルの構造を説明するため
ことがある.これらのデータは,計量経済学を用い に記したもので直接,均衡解を求めるために用いる
た先行研究の成果を利用する,または独自に推定す ものではない.
るなどの方法によって得る.しかしこれらのデータ
を入手,あるいは推定できない場合,コブ=ダグラ [10コ産出高モデル
10では,レオンチェフ型の生産関数を想定して
いる.この生産関数は財の完全補完を仮定するため,
次式のようになる.
3)追加データには「国民経済計算年報」を用い
る.ただしこれらのデータを追加しても,生産部門
以外の行と列の値は一致しないため,RAS法を使
o響・響・劉(ノ=1,2,3)
ってバランスを採る.データ追加の具体的な方法に
隅=min
ついては市岡(1991),RAS法については宮沢
(1975)を参照. この式は,測のノ部門への中間投入額を投入係
」0∫

数砺で割った値の内で,一番小さなものがその部門 数を想定している.
の生産額になることを表している.4)
投入係数砺はノ財一単位あたりの生産に投入する’ 炉min o響券券剖(梯3)
財の額を表し,次式のように想定する.
投入係数⑳は10と同じものを想定している.ま
砺・ρ雲 (†) たα乃は生産要素の投入係数であり,次式のように
Pノκノ 想定する.

10表の行,つまり財供給のバランス式は次のよ
砺.撃 (プ=1,2,3) (†)
うになる.
P/x/

ΣP助+(加+μ9・+μ∫・汁μ・汁μ瑚
ノ=1 10の生産関数と異なるのは,まず生産要素万が加
σ=1,2,3) わっていることである.5)次に価格が含まれていな
=μκ’
いことである.これは生産額.ρ磁の変化の捉え方が,
この供給のバランス式を投入係数を使って表す 10とは異なるととによる.10の産出高モデルでは
と,次のようになる. 金額表を用いて分析を行う場合,生産額の変化を全

Σδ幽η+(ρ・α÷μ9汁μ∫η汁μa+μ吻 て量の変化と捉える.これに対しALIBI CGEでは


ノ;1 生産額の変化を,価格の変化と量の変化に分けて捉
σ=1,2,3) える.
=・μκ’
そのためALIBI CGEの財供給のバランス式は,
この式を変形することで,次式のレオンチェフ逆 10の供給のバランス式を財の価恪ρ’で割って実質
行列(1一.4)一1を含む行列式が求まる. 化したものになる.


ρiκ1 1一互11 一α12 一α13 一1 κ’+刑・= ー砺η+α+9伽・+a
ρ2:κ2 一互21 1一百22 一α2, ノ=1 σ冨1,2,3)(1)

P3:κ3 一互31 一a32 1一α33


また10では外生変数として扱われていた産業以
ρ且(0且+91+〃Z1+θ1一刑1)
外の部門への供給量が,ALIBI CGEでは内生変数と
ρ・(C・+9・+∫η・+θ・一醒・)
× なる.これらの内生変数の決定式は,‘モデルの分析
。ρ・(03十93十Zη3十ε3一〃Z3)
目的によって異なる.ALIBI CGEでは,家計消費
量αは家計部門の効用最大化によって,政府消費
「産出高モデル」では,この式の最終需要
,ρ∫(c∫+&+砺+θ「〃2,)を外生的に変化させる
ことで分析を行う. 5)労働と資本の投入量と生産要素量の関係は,
ここではコブニダグラス型を想定しており,次式の
ようになる.
[ALIBI CGE]生産量xの決定
万(なり=砺みα殉1一α・
ALIBI CGEでは,次式のレオンチェフ型の生産関

これについては2.5で説明する.
一方,10にも生産要素万を内生化して計算を行う
家計内生化モデルがある.この場合,労働と資本の
投入量と生産要素量め関係は次式のようになる.
4)静学究レオンチェフ型生産関数は労働や資本
の投入も想定しているが,ここでは一般的な10の ガ(声々)rρ1み+,ρ砺
産出高モデルを説明するため,労働と資本の投入を
省いている. なお家計内生化モデルについては,注7で説明する.
■06

量g’と投資量加’は単純に投入係数によって決定する まず間接税かは,労働と資本の投入に対して課せ
と想定する.また輸入量陥は国産量κ’に対する一定 られる生産要素税とし,生産要素税率ηを次式のよ
の比率で需要されるものとし,輸出量aは外生値と うに想定する.
する.これらの詳しい説明は2.6,2.7で行う.
またCGEでは生産者は利潤が最大になるように ’

生産量を決定するが,このモデルではレオンチェフ τノ= (ノ=1,2,3) (†)

P11ノ+,ρたんノ
型生産関数を想定しているため,利潤を最大化する
ことと,生産要素である資本と労働の投入にかかる
費用を最小化することは同じことになる.これにつ これより需要のバランス式は次式になる.
いては2.5で説明する. ヨ

Σ卿磁+(1+τノ)(拗+P・初+砺=ρη
’=1 @ (プ=1,2,3)
2.4 生産のための需要
[10]価格モデル
生産部門の需要量,つまり10表の生産部門の列 需要のバランス式を財の生産量ηで割ると,財価
方向のバランス式は,次のようになる. 格の決定式が得られる.

μ・歯卿+(1+τノ)(誓凶)+砺

Σμκヴ+を+拗+μ々+切=ρη
∫=1 @ (ノ=・1,2,3) ’=1 (ノ=1,2,3) (2)

〃は生産要素税,勧・は固定資本減耗を表す.この これが生産量η一単位当たりの財価格の決定式で
式を投入係数を使って表すと,次のようになる. ある.10の価格モデルでは付加価値を外生値とす

るのに対し,この式では労働る,資本勧が内生変数
Σ卿・κ・+方+拗+ρ碕+切=ρη となる.また固定資本減耗勧は外生値であり,生
’=1 @ (ノ=1,2,3)
産量が増加すると一単位あたりの固定資本減耗の負
担額は減少するものと想定している.
これを変形すると,次式が得られる.

ρ1κl 1一互11 一α2】 一α31 一1 2.5 生産要素の投入


[10]労働と資本の供給
P2κ2 一互12 1一万22 一互32
一互13 一駆23 1一∼733 2.3で説明したように,10では労働1と資本んは無
ρ3κ3
制限に供給可能である,と仮定していることが多い.
’1+,ρ’1・+.ρ・ん・+ゆ
このことは次式のように表せる.
× ’・+P11・+μ鳥+初・

∫・+P’1・+μ鳥+ゆ・
11+12+13=1げ≦18
ん1+ん2+ん3=ん4≦ん3
この式の右辺の1と投入係数から成る行列は,レ
オンチェフ逆行列を転置したものである. この式は㌧需要量14,ん4が供給量18,如を上回るこ
「価格モデル」では,この式の」のηの変化を全て とがないことを表している.
価格の変化として扱い,付加価イ勘+ρ1〃+ρ碕+切
を外生的に変化させることで分析を行う. [ALIBI CGEコ生産要素ガの投入
一方,ALIBI CGEでは労働と資本の供給可能量が
,[ALIBI CGE]財価格Pの決定 決まっており,また完全雇用と資本の完全投入を仮
ALIBI CGEでは,需要のバランス式から財価格の 定する.これより労働と資本の需給均衡式は,次の
決定式を導いて用いる. ようになる.
Io7

万(〃,幻)

Σみ+∼瓢=石一1・ (3)
λケ’= 孕=孕=孕一
δ巧 α写 α1ン α:》

ノ雪1
(ノ=1,2,3)
Σ毎+∼細論 (4)
ノ=1
この式は各財の生産量が決定すれば,それに合わ
θ〃〃,α翫はそれぞれ外国部門への労働移転量と
せて中間投入量も決定することを表している.つま
資本移転量を,16は家計部門の余暇量を表している.
りレオンチェフ型生産関数を想定している場合,生
これらの式の左辺は総需要量,右辺は総供給量を表
産者が投入量を変えることができるのは,生産要
している.またこれらの式は家計が資本を全て供給
素万を構成する労働と資本だけになる.
するのに対し,労働量の一部を余暇として消費する
これより生産者の利潤最大化問題は,生産要素投
ことを,あるいは家計が自発的に失業することを表
入の費用最小化問題と同じことになり,次式のよう
している.
になる.
ALIBI CGEでは,生産には資本と労働が直接投入
されるのではなく,これらを組み合わせた生産要 min p1ら+P轟
素がが投入されるものとする.この単位あたりの生 鉱万(らり=賜α鵬1一α〃
産に対する生産要素量万と労働と資本の投入量の関
係は,次式のコブ=ダグラス型関数で表される.
この式は,生産者が労働と資本の代替関係を制約
万(ゑ々)二耐σ物1緬 (ノ=1,2,3)
条件として,労働と資本の投入にかかる費用を最小
化することを表している.この費用最小化問題を解
くことで,労働と資本の投入量が得られる.6)
α々は生産要素への投入額に占める賃金率を表し,
次式のように想定する. (1一∼鶏)μ 砺一1
〃・響 (ノ=1,2,3) (5)
α々μ
α々=論脚(†)
c (1一αのμ α々
幻・α (ノ=ユ,2β) (6)
また技術係数のを,次式のように想定する. α々μ

鵡=継脚(†)
この労働と資本の投入量の決定について説明す 6)生産要素投入量は次式によって決定する.
る.まず生産者の利潤関数は次式のようになる.
万⑦,幻)=砺η

乃=μη一Σρ助+(1+τノ)(μ〃+ρ碕)+砺 このガ⑦,々)と砺アに想定した値を代入すると,次
∫一1 式のようになる.
(ノ=1,2,3)

(轟(譜(晒鯨=pl鴇戦
この式の右辺の第一項が収入,第二項が費用を表
している.2.3で説明したように,ALIBI CGEでは
これより労働と資本の投入量と生産量の関係は次
レオンチェフ型を想定している.生産者は費用を最 式のように表せる.
小化するため,無駄な中間投入を行わないとすると,
生産のための各財の投入量は次式のようになる.
炉命(一一吻
エ08

2.6 家計消費量:,余暇量:,貯蓄の決定 図1のように,家計部門はCD1で貯蓄額を, CD2


10の産出高モデルでは家計消費量を外生値とし, で余暇量を,CD3で各財の消費額を決定する.
生産要素の投入や家計の収支のバランスを無視す この家計の所得額.γを次式のように定義する.
る.7)一方,ALIBI CGEでは家計の効用最大化問題 ヨ ヨ
ア=(1一互1幽).ρ1Σみ+(1一畝・の,ρんΣ1ウ
を解くことによって,各財の消費量が決定する.ま ノ=1 ノ=1
た家計は効用の最大化のため,消費の他に労働の一 +ρ1爾+ρ画ん+蟄+翫, (7)
部を余暇にあて,また将来時点で消費を行うため貯
蓄を行う.これより家計の効用関数の変数は各財の この式は,所得が外国への移転分を除いた賃金と
消費量α,余暇量1ε,貯蓄額ア、になる.また効用関 利潤,外国に投入した労働ε配1と資本ε服から得た
数はコブ=ダグラス型をしていると想定する.8) 賃金と利潤,政府からの移転蟄,外国からの移
ただし各月の消費と余暇と貯蓄は性質の異なるもの 転θ砺の合計であることを表している.またα1醐
であるため,全ての変数を一つの効用関数に組み込 ,α伽は,労働と資本の外国への移転率を表し,こ
むことはせず,図1のように,効用の計算を三段階 れらは次式のように想定する.
に分けて行う.
P1*1,配*
互zθ吻= (†)
Σ1;1纏る*

久*ん。配*
7)ただしIOの家計内生化モデルでは,家計収 畝θ“2ニ (†)

支のバランスが取れているものとし,消費量を内生 Σ1。1酬
変数とする.この場合,所得額アは次式によって求
まる.

王土、と将’、の己∠:しの轟{CD1

まず図1のCD1の段階で,家計は効用厩を最大に
Σ砺幽=ア
ノ=1 するために,現在財Φへの支出と貯蓄逃の配分を考
える.現在財のとは,合成財。と余暇1εによって得
この式は,賃金と利潤の合計が所得総額になるこ られる現在時点の効用のことを指す.また合成財C
とを表している.また砺は,2.3で説明した,
とは,全ての財消費によって得られる効用のことを
ALIBI CGEの生産要素の投入係数と同じである.
指す.
また消費係数侮は次式から求められる.
この段階の消費可能額は,可処分所得,貯蓄ア∫,
_ μ01 .
偽ノ=* (Zニ1,2,3)
余暇の機会費用100の合計額である.可処分所得と

は所得γから所得税τアァ,外国への所得の移転額ア。砺
財の需給均衡式に所得の決定式を追加したものを
以上の投入係数を加えて変形し,行列で表すと次式 貯蓄.γ、を除いた額を表す.
が導ける. この段階の効用最大化問題は次式のようになる.
μκ1 1一互正1 一α12 一αB 一α1ア 一1
ρ2λ:2 一互21 1一互22 一δ23 一嵩2ン

ρ3κ3 一δ31 一δ32 1一互33 ー互3ア

ア 一互Fu 一αη 一互招 1

,ρ1(91+∫η1+θ1一吻 8)ALIBI CGEモデルは,家計部門を一部門と


P・(9・+’η・+θ・一曲
して扱っている.しかし所得税の分析を行うために
× は,累進課税制度を踏まえ,家計を所得階層別に分
,ρ・(93十∫η3十θ3一〃23)
ける必要がある.具体的な方法については,市岡
0 (1991)を参照.また現在財と貯蓄,余暇と合成財
この家計内生化モデルでは,消費部門を除いた最 の配分は,コブ=ダグラス関数では無く,パラメー
終需要.ρ∫(&十∫η∫十θ∫一η2∫)を変化させることで, タを推定した上で代替の弾力性が一定のCES型効
分析を行う.詳しくは宮沢(1975)を参照. 用関数を用いることが望ましい.
ZO9

図1 効用関数の三段階化と変数の決定

効用関数 碗

1貯蓄額の決定
αρ
CD1
1一αρ

現在財需要 cρ

2 労働供給量の決定
CD2
α 1一α

囲 ↓

α1
圖際「1、
3 財消費量の決定

労働供給量Z詞θ [亟iコ[亟コ[亟コ 貯蓄額y、

max嫌ψ,ア・)≡Cダリ三一αρ
max(φ(c,1の≡oα1ε1一厨
8.乙勲Φ+ア・=(1一τア)アーア佛+10c
5.なρo+(1一τア)(1一互1。の.ρ11θ

αρは現在財に対するこの段階の消費可能額の投 =(1一τア)ア+100一.γ・配+ア・
入率であり,次式のように想定する.

(1一τア).γ*+10c*一ア,溺*一ア、*
αは消費に対するこの段階の消費可能額の投入率
可ρ=
(1一τy)ア*+10c*一y,醒*
(†) であり,次式のように想定する.

α= (1一τア)ア*一几・*一ズ (†)
また所得税率τアは次式のように想定する.
(1一τア)ア*+10c*一ア,胴*一ア、*

勾=尋 (†) この最大化問題を解くと,合成財消費量。と余暇


y 量1θが得られる.

この最大化問題を解くと,現在財消費量のと貯蓄 δr[(1一τア)ア+100一ア佛一ア、]
額逃が得られる. c=

αρ[(1一τン)ア+100一ア。刑]
1。=(1一の[(1一τ・)ア+1・・一九ガア・](9)
oρ= (1一τア)(1一互1⑳ρ1
ρP
ア,=(1一δrp)[(1一も)ア+100一ア,御] (8)

この余暇量1εを労働供給可能量13から引くことに
ム’ Aと余暇の己△の。{ CD2 より,労働供給量が求まる.
次に図1のCD2の段階では,家計は現在財6pを最 また余暇の機会費用100は,仮に余暇を取らずに
大化するために合成財。と余暇1θの配分を考える. 働いていたら得たであろう賃金から,外国への移転
この段階の消費可能額は,CD1で貯蓄額が決まって 額と税金を除いた値であり,次式から求まる.
いるため,可処分所得と余暇の機会費用の合計から
なる.この最大化問題は次式のようになる. 10c=(1一τア)(1一δz・の.ρ11θ (10)
工■0

またこの合成財。と余暇1θの値を代入して求めた _ アθ脚* (12)


アε〃∼=αε〃2ツア= ア
現在財のと貯蓄額渉を,効用厩の最大化問題の制約 ア*

式に代入することによって現在財価恪ρpが求まる.

2.7 他部門の決定
iα) 厨(1一τア)(1一δ1・の,ρ11一σ
勲= 1一δi 10の産出高モデルでは,生産以外の部門への供
給量は外生値として扱われ,付加価値は無視される.
それに対しCGEでは,研究目的によって部門の扱
、の己△の“{ CD3 い方が異なる.ALIBI CGEでは,生産と家計以外の
図1のCD3の段階では,家計は合成財6を最大化 部門の各値は,単純に投入係数と収支総額から求ま
するため各財の配分を考える.この段階の消費可能 るものとする.
額は可処分所得である.この最大化問題は次式のよ
うになる.



政府部門の決定式は税金の徴収方法や,政府支出
m・x・≡H・戸‘
の想定の扱い方によって変化する.日本の租税制度
∫冨1
を検討したものには,市岡(1991)や経済企画庁経

&乙Σ(1 一τo∫)1フど。∫=(1 一τア)アーア 一ア・
済研究所(1990)がある.これらで用いられている
∫=1 AGE日本モデルでは,所得階層別,生産要素別,
部門別の細かな課税の検討が可能である.これに対
τ。∫は消費税率を表す.またα∫は,消費に対する し,ALIBI CGEでは,一律の所得税率τア,労働と
この時点の可処分所得の投入率であり,次式のよう 資本を区別しない生産要素税率η,財ごとの消費税
に想定する. 率τ。罐かける単純な徴税システムを想定している.

(1+τの.ρ∫*c,* この政府部門の収支バランスは,次式のようにな
αゴ= (†)
る.
Σ、1(1+τの〆・’
3 3
Στノ(ρ1〃+μ初+τ)ッ+Στ・’μα+∼痂9

α∫は非負で,α1+α2+α3=1が成立している. ノ=1 ∫=1

この最大化問題を解くと賄の消費量αが求まる. ヨ
=Σμ9汁9ソ+9・+9卿
廊[(1一τア)アーア、刑一ア,] ∫=1
α= @ (1+τのμ この式のように,政府部門は税収と外国からの移
転θ吻gを収入とし,政府消費額,家計への移転蟄,
σ=1,2,3) (11)
貯蓄g∫,外国への移転g佛を支出とする.この式よ
り政府部門の収入額gは次式から求まることにな
ここで求めたαを代入して求めた,合成財。と余 る.

暇の機会費用10cをCD1の最大化問題の制約式に代

入することによって,合成財価格pが求まる. 9=Στノ(ρる+ρた幻・)+τ・y

ノ=1
P=血q一三’)μα’ ヨ
+Στ・・μα+翻・
’=1 ゴ・1 (13)
また家計の消費額の内,外国への移転y飾だけは
投入係数α、剛と所得の積から求まるものと想定す 政府による各財の消費量g’は,収入を投入係数で
る.
割り振ることによって決定するものと想定する.
■工■

ぷ ぷ とし,輸入量茄は国産財生産量κの一定比であると
9・=互・ ?P’9孕号幽(・4) 想定する.国内から外国部門への支出は外国からの
輸入額と家計,政府,労働,資本部門から外国への
また外国への移転額g購所得への移転額gソ,貯
移転からなり,外国部門から国内への支出は外国へ
蓄額g5は実質化しないため,次式によって求まるも
の輸出と家計,政府,労働,資本への移転と経常余
のと想定する.
剰θ溺∫からなる.

9晦9÷9師・吻(・5) 3 3
Σμ碗+ア・醒+9・脚+δ1・ψ・Σる+δ伽μΣ幻
3

‘=1 ノ=1 ノ=1

鮭AHBI CGEは静学モデルであるため,資本ストッ

=Σρa+励ア+爾・+μ百而+P雇癩+e醒・
’=1
クの増加は生産に影響を与えないものとし,単純に
(18)
固定資本減耗と家計,政府,外国部門の貯蓄の合計
額が,総投資額と一致するものとする.これより投
輸入財は国産財の一定比で需要されるため,輸入
資と貯蓄のバランス式は次式のようになる.
財m琶は次式によって求まる.
3 3
Σ砺+懸場+・舵・=Σμ砺 茄=互雁κ∫=!駕x∫ ¢=1,2,3) (19)
ノ=1 ∼二1 κ∫
この式より投資総額ηは次式によって求まること
になる.


加=Σ砺+苑+爵+・溺・ (16)
ノニ1

また投資部門に対する各財の供給量砺は,総投
資額を投入係数で割り振ることによって決定するも
のと想定する.

∫。ドδ伽藍=P・;砺*辺
μ zη* μ

(ど=1,2,3) (17)


外国部門の扱いは,研究における貿易の重要度に
よって大きく変化する.例えば,多国間貿易を扱っ
たGTAPモデルでは,国産財と輸入財の間にCES関
数を想定している,9)また市岡(1991)のAGE日本
モデルでは,為替レートを組み込み,輸出入量が国
内価格と外国価格の相対比率に依存すると想定して
いる.

一方,ALIBI CGEでは単純に,輸出量aを外生値

9)GTAPモデルについては川崎(1999)を参照.
■工2

表4連立方程式と内生変数
内生変数
1 2 3, 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
’η, 〃 島 zθ 10c 9 ’η
κ’ ηz’
α 9’ 8た Pソ ρ’
μ y∫ :y :yθ’η
ε〃25

1 * * * * *

2 * * * *

3 * *

4 *

5 * * * *

6 * * * *

7 * * * * * *

8 * * * *

9 * * * * * *

式 10 * * *

11 * * * * *

12 * *

13 * * * * * * * *

14 * * *

15 * *

16 * * * *

17 * * *

18 * * * * * * * * *

19 * *

gの∫の値は∫=1,2,3,gんのんの値はん=ア,3,8吻を指す.

2,8 一般均衡解の計算 度以上使われていることを表している.つまりこの


ALIBI CGEでは,これまで説明してきた式の内, 連立方程式は計算可能であり,また全ての内生変数
番号のついた19本の連立方程式を用いて一般均衡 は単に従属するだけでなく,他の内生変数の決定に
解を求める.この連立方程式と内生変数の関係は, 影響を与えあっていることになる.
表4のようになる. ただしこのモデルは新古典派静学的CGEモデル
この表の行(縦).の式の番号は,一般均衡解を求 であるため,実際の計算では賃金をニューメレール
める連立方程式につけられた番号であり,列(横) とし,1で固定することと,ワルラス法則から,合
は内生変数の一覧である.また*は変数が式の中で 計二本の方程式を落とすことができる.ただしこれ
使われていることを表している. らの式の中には一本の式で複数の式を表しているも
この表は,連立方程式の数と内生変数の数が等し のがあるため,その中から落とす場合は,式を分割
く19あり,全ての内生変数が連立方程式の中で二 してから落とすようにしなければならない.
■:召

表5計算例で用いるSAM
生産 制度 生産要素 資本 外国
第一 第二 第三 家計 政府 労働 資本 蓄積 輸出入 生産額
n1 n2 n3 ho 9V wl rk is
xm XX
第一部門 n1 20 10 10 30 10 ”0 :0 10 10 100
n2 30 40 40
七願

生産 第二部門 10 10 O・ ◎ 10 10 150、

第三部門 n3 20 30 60 40 20 0 0 30 30 23(〉

ho
㌃, { ㍉ ㌃

家計
甘’
@ 、0.、. @ ・0、 ◎ 30 『80’:
8◎ Q 10 200
制度
政府 9V 6 14 20 40 05 ・0: 10 0 10 90
生産 労働 wl 6 28 60 七〇1 此0、 6 bQ’ ∫0・ 6 100

v素 資本 rk 18 28 20 、q七 つ ”0 σ 0 34 100
資本 調達 is 20 10 20 30 0 0ご 0、 0 一30 150’

,∵o・ 20 20 20 20 0
外国 移転 xm ・0: 、、σ1 、o 80;

生産額 XX 100 150 230 200 90 100 100 50 80

表6 変数の定義
生産 制度 生産要素 資本 外国
第一 第二 第三 家計 政府 労働 資本 蓄積 輸出入 生産額

n1 n2 n3 ho 9V wl rk is
xrn XX
第一部門 nl ◎ ◎

生産 第二部門 n2 pxx(n,nn) pc(n) P9(n)


1や、
σ 、pin(n) pe皿(n》 lpx(符)’

第三部門 n3 ㍉b ’σ

家計 ho. 0 戟’ 0 ’◎
gy 、1ユδ一P11曲 夕kkd・pkke血 0 emy yo
制度
政府 9V し(n) 七y ’0 o ’ ’o 0 emg go
生産 労働 wl P1ゴ(n) 、σ ◎’
0 0’ ’0 eml Pユ手d

v素 資本 rk pkゴ(n) :σ
6: 0 o 、0
emk かk≧d

資本 調達 is 0 0
kpゴ(n) yso gso 毛Ol eπLSO i立o

外国 移転 xm 二〇 ’6・ o ’
yemo gemo P].1em pkkem o 0 、
e=RO

生産額 XX px(n) yo 90 P:Lld pkkd ino emo

であり,灰色に塗られた箇所は計算に用いない部分
3 仮想データを使った計算例
である.・

3.1 仮想データと政策 計算のためこのSAMを変数に分割する必要があ


次にALIBI CGEに,データ例と政策シナリオを る.その分割方法を示したのが,表6である.
与えて実際に計算を行う.政策を与えるとは,本稿 表6の太線の枠が変数の境界を表す.また枠内の
では税率などのパラメータを変更して,それを用い 文字がプログラムで用いる変数の記号を表す.これ
て新たな均衡解を求めることを意味する.そして求 らの変数の多くは入力時に使われるだけのものであ
まった均衡解と初期値を比較することによって,政 るが,一部は内生変数の初期値であり,内生変数と
策の効果を計算する. の重複を避けるため値の最後にoを付けてある.
ここでは計算に表5のSAMを用いる. これ以外に,このモデルでは輸入額と余暇量のデ
この表5は表3のSAMに仮想の数値を与えたもの ータを用いる.これらの値を示したのが表7,表8
π4

表7追加するデータ1 には,あらかじめ生産要素税を要素別にかけた式を
記号 輸入額 想定しておく,などモデルの改造が必要になる.

第一部門 30 またここでは表9のように,税率を変更する政策
生産 第二部門 30 を与える.なお今回のシミュレーションでは,政府
pm(n)
50 収入と家計所得が大きく変化しないよう,消費税の
第三部門
増税額にあわせて,所得税を減税してある.
表8追加するデータ2
記号 余暇量 3.2 ALIBI CGE計算用プログラム
家計 leo 50 次にこれまでに示した19本の連立方程式と,表5,
表7,表8のデータと表9の政策を組み込んだGAMS
表9 与える政策
用のプログラムを説明する.10>プログラムの記号に
記号 初期値 政策1 政策2
は,第2章で用いた変数と同じものを用いる.ただ
所得税率 τ〃 20% 15% 10%
しGAMSの仕様から下付き文字などの書式設定を
消費税率(一律) τo乞 0% 10% 20% 外してある.また価格p,生産量κなど式によって
生産要素税(一律) τ② 25% 25% 25% 下付き文字が変わるものは∫で統一し,内生変数の
初期値には記号の後に0をつけて区別する.’1)また
である. このモデルでは価格は全て1と置く.つまり初期値
今回は,所得税率と消費税率を変更したことによ では金額と量は一致していることになる.なおプロ
って生じる影響を計算する.ただし,これはこのモ グラム中の*で始まる行は注であり,プログラムと
デルを使った計算の一つに過ぎない.他にも貿易の して読み込まれない.またここでは注を日本語で書
分析のため輸入率伽’を変える,などの政策を与え いているが,GAMSは英語仕様であるため,実際の
ることも可能である.しかし例えば,労働と資本に プログラムでは英語で書いてある.
対して別の税率をかける政策の効果を計算するため

10)GAMSについては, GAMSのホームページ
http://www.gams.com/ を参照.このGAMSのマ
ニュアル(PDFファイル)は無料でダウンロード
可能である.
11)GAMSは各変数に対し,定義や補足説明を
つけることができる.しかしこのプログラムではこ
れらを省略した.

*ALIBI CGE Model:ALInk Between Io and CGE Model


*部門名の宣言
sets

a a11 /n1, n2, n3, ho, gv, wl, rk, is, xm, xx/,
n(a) indusしry /n1, n2, n3/3

alias (a,aa);
alias (n,nn);

*データ入力’2)
table sam(a,aa)
n1 n2 n3 ho 9V w1 rk is
㎜ xx
nl 20 10 10. 30 10 0 O 10 10 100
n2 10 30 40 40 =LO 0 O 10 10 150
n3 20 30 60 40 20 0 O 30 30 230
ho 0 0 0 0 30 80 80 0 10 200
gV 6 14 20 40 0 0 0 0 10 90
wl 6 28 60 0 0 0 0 0 6 100
rk 18 28 20 0 0 0 0 0 34 100
is 20 10 20 30 0 0 0 0 −30 50
0 0 0 20 20 20 20 0 0 80

xx 100 150 230 200 90 100 100 50 80 03

parame七er
pm(訟) /n1 30, n2 30r n3 50/,

1eo /
50 /3

*初期値の抽出
paramet=er
pxx(n,nn), px(n), P1ゴ(n), pkj(n), pc(n),
「P9(n), pi職(n), pem(n), pe(n), Plld,
pkkd, Pllem, pkkem, kpj(n), 七(n),

ty, yo’ yso’ yemo’ go,


gso’ gemo’ gy’o’ ino, emo,
emso, emy, emg, eml, emk,
].s, ks 3

12)データの入力は,まずSA.Mをひとつの行列
として読み込み,次にこれを変数別に分解するとい
う手順で行う.なお,データを行列形式で読み込ま
せる場合,各列の左端の文字を揃えるようにしない
と,データが正確に読み.込まれないことがある.
u6

pxx(n,nn) sam(n,nn) ; px(n) = sam(n,"xx"); plj (n) sarn("wl",n);


pkj (n) sam(trrklf , n} ; pc (n) = sam(n,"ho"); pg (n) st gv
sarn(n, rt );
pin(n) sarn(n,"is ") 1 pem(n) = sam(n, fr);
ts xm pe(n) pern(n)+pm(n);
plld sarn(tt xx
ft , "wl" ) ; pkkd = sarn("xx","rk"); p11em tr xrn
sarn( !r tf tt );
, wl
pkkern sarn(rlxrn
!t , "rk" ); kpj (n) = sam("is",n); t (n) tt gv
sarn( lt ,n);
ty sarn(" gv" "ho" ) ;
t yo = sarn("xx","ho"); ys6 lr is
sarn( et tt Is);
t ho
yemo sam("xm", "ho" > ; go = sam("xx"," gv" ); gso sazn("is"," gv" >;
gemo sam(stxmff, "gv" ); gyo = sam(tt ho
t! ,ftgvtt); ino sam("xx","±s");
emo sam(trxxtr, "x:ntP ); ernso rt is
= sarn( rt ,tfx:n
tf ); emy sam(rt ho rt );
tf ,rt xrn
sam(t!gvtf , xrn" ) ; eml = sam(srwltl,ttxrntt); emk sarn( tf
st t) );
rk ,!)xrn
tS

erng
ls plld+leo; ks = pkkd;

*7£7pt-NOmeEi3)
parameter
tauj (n), tauci(n), taUYr aij (n,nn) t aig(n),
ayg, asg, aemg, aini (n) , aemy,
afj (n) , alphalj (n) , a1em, akem, :oco,
alphap, alpha, alphayi(n), aj (n) , am± (n) ,
ei (n) ;

tauj (n) t(n)1(plj(n)+pkj(n));


tauy tylyo;
O i'
tauc± (n)
aij (n,nn) pxx(n,nn)lpx(nn);
aig (n) pg (n) lgo;
ayg gyolgo;
asg gsolgo;
aemg gemolgo;
aini(n) pin(n)lino;
aemy yemolyo;
afj (n) (plj(n)+pkj(n))lpx(n) ;
alpha:j (n) plj (n) 1 (plj (n) +pkj (n));
aZem pZlernlsum (n,plj (n));
akem pkkemlsurn(n,pkj (n));
loco (1-tauy)"(1-alern)"leo;
alphap ((1-tauy)"yo+loco-yerno-yso)1((1-tauy)"yo+loeo-yemo);
alpha ((1-tauy}"yo-yemo-yso)1((1-tauy)"yo+loco-yemo-yso);
alphayi(n) pc(n)lsum(nn,pe(nn));
aj (n) (plj(n)+pkj(n))1(plj(n)""alphalj(n))1(pkj(n}""(1-alphalj(n)));
arni (n) pm(n)lpx(n);
e± (n) pe(n};

13) t O ,]i 5 e[ ki[I;UltsJb" tb7£Eii7 .>( --- S )Si {itEfiIL'S-6


Jlif tll rf, fu iJ fV- Y g tz ?eeEza -(F to 6.

■■7

*内生変数の宣言’4)

free variables
xi(n), pi(ロ),. 1ゴ(n), kゴ(n), y’

ys’ 1e, 10C, ci(n), yem’


9’ gi(n), gy’ gem, gs’
in, ini(n), ems, mi(n), P1,
pk3

*方程式の定義’5)
equations
eOlxi(n), eO2pi(n), eO31s, eO4ks, eO51ゴ(n),
eO6kゴ(n), eO7y, eO8ys, eOgle, e1010c,
ellci(n), e12yem, e139, e14gi(ロ), e15gy,
*e15gem, e15gs,
e16in, e17ini(n), e18em,

e19mi(n)’

eOlxi(n}.。 xi(ロ)+mi(n) ・e・S㎜(nn,aiゴ(n,㎜)*xi(m))+Ci(n)+gi(n)+ini(n)+ei(n}3

eO2pi(=m).. pi(㎜) ・e・sum(n,pi(n)*aij(n,nn))+((1+ヒauj(nn))*(pl*ユ」(劇+Pk*kj(nn))+kpj(nn})/xi(㎜);

eO31s.. 1s =e=sum(n,1j(n))+㎝エ+1e3
eO4ks.. ks =e=sum(叫kゴ(n))+emk’
eO51j(n).。 1ゴ(n) =e昌 a£j(n)*xi(n)/aj(n)*(((1−a工pha].j(n))*p1)/((alphalj(n)*pk)))**(alphalj(n》一1)3

eO6kj(n).. kj(n) 甥e= afj(ロ)*xi(n)/aj(n)*((1−alphalj(n)*p1)/(a].phalj(n)*pk))**(a:Lpha].」(n}),

eO7y。. y 謬e= (1−alem)*p1*sum(n,1j(n))+(1−ak㎝)*pk*suln(n,kj(n))+pl*emユ+pk*emk+gy+emy 3

eO8ys.. ys =e= (1−a:Lphap)*((1一ヒauy)*y+loc−yem)3

eO91e.. P1*1e =e= (1−alpha)*((1一ヒauy)*y+10c−yem−ys)/(1一ヒauy)/(1−alem),

e1010c.. lOC =e= (1一しauy)*(1−a1㎝}*pl*1e’

ellci(n).. pi(n)*ci(n) =e=alphayi(n)*((1一ヒauy)*y−yem−ys)/(1+ヒauci(n)),



e12yem.. yem =e旨 aemy y;

e139.. g ・e・s㎝(n,taujω*(P1*ユゴ(n)+pk*kj(n)))+tauy*y+sum(n,七auci(n)*pi(n)*ci(n))+㎝93

β14gi(n).. gi(n)*pi(n) ・e・aig(n)*93



e15gy.. gy =e=ayg 9’
asg ホ9’

e15gs... gs =e=

e159㎝.. ホ
9㎝ =e= aemg 93
e16in.. in 冨e=sum(n,kpj(n))+ys+㎝s 3
e=L7ini(n).. pi(n)*ini(n) 冒e冒aini(n)*in3

e18em.. su皿(n,pi(n)*mユ’(n))+yem+gem+aleln*pl*sum(n,1ゴ(n)》+akem*Pk*s㎜(n,kj(n})

・e・s㎝(n,pi(n)*ei(n))+emy+㎝9+P1*㎝エ+pk*emk+ems}

e19mi(n).. mi(n) =e=ami(n)*xi(n)3

14)内生変数の値はε肱を除き全て正であるため,
freeではなくpositive,つまり非負で.あると宣
言するのが妥当であるように思える.しかしGAMS
の標準設定では,連立方程式を数値計算用のアルゴ
リズムによって試行錯誤的に解くものに過ぎない.
そのため計算結果が正の値になるとしても,計算途
中の暫定的な解が負の値をとることがある.この場
合,プログラムの変数に非負条件を課しているとエ
フーが生じ計算が停止する.これを回避するため, 15)賃金を1で固定し,ニューメレールとするこ
変数から非負条件を外した.なお数値計算のアルゴ とと,n−1の変数が決まればn番目の答えは自動的
リズムの例については市岡(1991),Shoven& に決定するワルラス法則から,615gs, e15gemの
Walley(1992)を参照. 二本の方程式を落とす.
■■8

*モデル(連立方程式)の宣言・
model A1」工B工cge / aユユ /3

*初期値入力16)
xi.1(n) = px(n)’ pi.ユ(n) 雷 13 1」.1(n)=Plj(n)3
kゴ.1(n) = pkj(n)3 y.1 =yo 3 ys.1 冨yso,
].e.1 冨 1eo3 10c.1 =10co3 ci.1(n)= pc(n)3

yem.1 累yemo 3 9.1 = go 3 gi.1(n)= P9(n》’


gy.1 = gyo 3 gs。1 = gso3 gem.ユ =gemo;
in.1 目i1102 ini.1(n)= pin(n)3 ems.1 = emso3
mi.1(n)量pm(n)3 P1.1 冨 13 pk.1. = 13

*賃金を1に固定(ニューメレールに設定)
P1.fx =P1.13

*基準解の計算17)
solve AL工B工cge using皿cp,
display xi.1, ci.1, y.1, ys。1, 1e.1, pi.]., g.1, gy.13

*政策1の計算:
ヒauy 旨 0。153
ヒauci(n) 呂 0.103
ヒauj(n) 旨 0.253

solve AL工B工cge using mcp,


display xi.1, ci.1, y.1, ys.1, ユe.1, pi。1, g.1, gy。1,

*政策2の計算
ヒauy =0.10;
ヒauci(n)=o.203
ヒauLゴ(n) 昌 0。253

soユve AL工B工cge using mcp 3


dispユay xi.1, ci.1, y.1, ys.1, 1e.1, pi。1, g.1, gy.13

16)本文でも説明したように,価格の初期値は全
て1とおく.
17)まず計算が正しく行われているかを確認する
ため,パラメータを変更せずに計算を行う.これに
よって求めた値が与えたデータと等しければ,計算
は正しく行われたことになる.
π9

表10計算結果一覧
基→政1 基→政2
記号 基準解 政策1 政策2 変化
マ化率 マ化率
所得税率 τア 20% 15% 10%
消費税率(一律) τo’ 0% 10% 20%
生産要素税(一律) τ∫
25% 25% 25%
政府収入額 9 90.00 90.45 90.45

財1生産量 κ1 100.00 99.64 99.34 一〇.36% 一〇.66% 一

財2生産量 κ2 15α00 149.38 148.85 一〇.41% 一〇.77% 一

二3生産量 κ3 230.00 230.07 230.16 0.03% 0.07% 十

財1生産者価格 1刀 1,000 0,999 0,998 一〇.10% 一〇.20% 一

高2生産者価格 P2 1,000 0,998 0,997 一〇.20% 一〇.30% 一

財3生産者価格 P3 1,000 0,999 0,998 一〇.10% 一〇.20% 『

表11家計部門の変化一覧
基→政1 基→政2
記号 基準解 政策1 政策2 変化
マ化率 マ化率
所得税率 τア 20% 15% 10%
消費税率(一律) τσ 0% 10% 20%
生産要素税(一蓋 τ’
25% 25% 25%
所得額(税込み) ア 200.00 199.50 198.97 一〇.25% 一〇.52% 一

可処分所得額 (1ごτア)アーア・ 130.00 137.51 144.96 5.78% 11.51% 十

財1消費量 c1 30.00 29.18 28.48 一2!74% 一5.07% 一

丁2消費量 C2 40.00 38.93 38.Ol 一2.69% 一4。98% 一

財3消費量 63 40.00 38.91 37.99 一2.72% 一5.04% 一

貯蓄額 ア3 30.00 32.06 34.11 6.88% 13.70% 十

余暇量 18 50.00 50.30 50.53 0.59% 1.06% 十

3.3 計算結果 がわずかに減少しているのに対し,可処分所得額は


3.2で説明したプログラムを使って求めた均衡解 増加している.また可処分所得額が増加していても,
をまとめたものが,表10と表11である. 消費税の分だけ消費者購入価格が増加しているた
表10は政府収入,生産量,価格の変化の一覧で め,消費量そのものは全て減少している.つまり金
ある.計算結果を比較すると,全部門の生産者価格 額単位で測ると消費は増加したように見えるが,量
と財1,財2の生産量が減少しているのに対し,財3 単位で測ると減少している,という相反する結果が
の生産量は逆に増加していることが分かる.この結 出る.また貯蓄額,余暇量が増加している.この余
果は,単純に消費税の増税が生産の減少を招くわけ 暇の増加は,所得税減税分を消費税の増税によって
でないことを示している. 補えば,勤労意欲を減退させることがあることを示
表11は,家計の変化の一覧である。まず所得額ア している.
■20

GAMSを使ったプログラムの入力ファイルの作
4 おわりに
成方法,出力ファイルの読み方を説明してい
本稿では,10の産出高モデルをCGEに拡張した, る.

ALInk Between Io and CGEモデルの構造とそれを 中村(2002):CGEで利用する関数を一通り紹介


使った計算を行うためのプログラムを説明した.ま し,最適化問題から関数を導く方法と,その線
たデータ例を使って,所得税と消費税の税制政策を 形化の方法を説明している.
「計算」した.なおこの計算例は,あくまでモデル 橋本・上村(1995):Shoven&Whalley(1992)
が「計算可能」であることを示すために行ったもの を基にした,2財2要素2消費者のモデルの全数
で,実際に税制を分析するためには市岡(1991)の 式と,計算用プログラムを説明している.
AGE日本モデルのような,厳密なモデルが必要で
ある.
参考文献
このALIBI CGEに容器の代替と資源の代替を組
み込み,飲料容器リサイクル分析用CGEモデルを 市岡修(1991) 『応用一般均衡分析』有斐閣
宇多賢治郎(2002) 「飲料容器リサイクル産業連
作成するのが筆者の次の課題である.またこの
関表の作成と分析」『エコノミア』第53巻第
ALIBI CGEは市岡(1991)のAGE日本モデルと宮 2号P.81−96
田・彪(2000a)の経済一物質循環:CGEモデルを簡 浦田秀次郎(1990) 「一般均衡モデルの実証分析
略化したものであるため,これらのモデルを研究す への応用 CGEモデルの発展過程と現状」
『三田学会雑誌』第83巻第2号p.427−452
る上で参考になろう.
川崎研一(1999) 『応用一般均衡モデルの基礎と
最後に,筆者がCGEを学び, ALIBI CGEを作成 応用 経済構造改革のシミュレーション分
するのに参考になった研究書,論文の主なものを紹 析』日本評論社
介する. 経済企画庁経済研究所(1990) 「応用一般均衡モ
デルと公共政策」『経済分析』第120号p.2−
75
Shoven&Whalley(1992): ワルラスの一般均衡 黄愛珍(1999) 「輸出拡大政策が中国経済に及ぼ
論,ScarfやMeri11が開発した均衡解を発見す す影響 一CGEモデルの1つの評価一」『産
業連関』第9巻第2号p.26−38
るアルゴリズムの概略,単純なCGEモデルの
計算例,主要な先行研究が用いた計算方法の紹
相愛珍・石橋太郎・浅利一郎(2001)
「Mathematicaによる一般均衡モデルの数値
介,先行研究の詳細なリストなどが載っている. シミュレーション CGEモデル教育用ソフ
小平裕氏による和訳版がある. トウェアの開発に向けて」『静岡大学研究』
第6巻第2号p.49−78
市岡(1991):一般均衡論,均衡解を発見するアル
小平裕(2002) 「GAMSによる応用一般均衡分析:
ゴリズム,AGE日本モデルの構造,データセ 資本市場と企業固有の生産要素」『成城大学
ットの作成方法を,またこのモデルを使って日 経済研究』第ユ58号p,189−2ユ8
本の税制を分析した結果を説明している. 中村靖(1996) 「Social Accounting Matrix作成の
ためのマトリクス・バランシング手法」『エ
浦田(1990):10とCGEを比較し,その理論的な コノミア』第47巻第3号p.19−37
違いを説明している. 中村靖(1998) 「構i造主義CGEモデルの基本構造」
黄(1999):10とCGEの両モデルに同じデータと 『エコノミア』第48巻第4号p.31−51・
政策を与えて計算を行い,その結果を比較し, 中村靖(2002)「計算可能一般均衡(CGE)モデル
で利用する関数の最適化と線形化」『横浜国
二つの手法の違いとそれが計算結果に与える効 際社会科学研究』 第7巻第3号 p.268−282
果を説明している. 橋本恭之・上村敏之(1995) 「応用一般分析の解
黄・石橋・浅利(2001):モデルの構造と 説 (研究ノート)」『関西大学経済論集』
第45号第3巻p.227−243
Mathematicaで用いるプログラムを説明し,数
宮田譲・彪暁晋(2000a) 「地域ゼロエミッション
値シミュレーションの実演を行っている. の可能性とその評価」『土木計画学研究・論
小平(2001):2財2要素2企業2家計の基本モデル 文集』第17号p.449−460
の,Mathematicaを使った方程式の導出方法, 宮田譲・彪暁晋(2000b) 「A Computable Genera1
五2■

Equilibrium Analysis of the Environmental


and Economic System with Material
Circulation」『環境科学会誌』第13号第5巻
p.618−630
吉岡完治&管幹雄(1997) 「環境分析用産業連関
表の活用 一シナリオ・レオンチェフ逆行列
の構想一」『経済分析』第154号p.87−135
Shoven, J.B and Walley, J。(1992),ApPlying
General Equilibrium, Cambridge University
Press (和訳:「応用一般均衡分析 理論
と実際」,小平裕,東洋経済新報社,1993年)

(横浜国立大学大学院国際社会科学研究科)

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