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桑子 真帆キャスター:

皆さん、こんな体験はありませんか。カウントダウンのタイマーにせかされて、思わず商品を買ってしまう。
最終確認画面で、知らないうちに追加料金が上乗せされている。解約の仕方が複雑で、なかなか解約する
ことができない。こうした、私たちが無意識のうちに、不利な判断に誘導されてしまうウェブデザイン、「ダー
クパターン」。

ダークパターン7類型(OECD報告書より)
・緊急性
・執ような繰り返し
・強制
・妨害
・こっそり
・インターフェース干渉
・社会的証明

OECD=経済協力開発機構は、こちらの7つのパターンに分類し、消費者被害を引き起こす可能性があると
して、実態調査を始めています。

ショッピングや音楽など200の国内アプリ
93.5%で使用(調査:東京工業大学 シーボーン准教授など)

これらのダークパターン、日本の法律では多くが違法とはされておらず、ある調査では、9割のアプリで使わ
れているといわれています。
私たちは、どのように誘導されてしまうのか。その実態を取材しました。

ネットの買い物で“誘導” 「ダークパターン」とは?
ダークパターンで知らないうちに損をしてしまった

そう語る、50代の久美子さんです。2023年、子どものために通販サイトで化粧品を購入しようとしました。

久美子さん(仮名)
「娘がひどいニキビになっていたので、それが、きれいになるんだったらいいかなという思いで」

久美子さんは、定価の半額で買えるという表示を見て、1個試してみようと商品を購入しました。

久美子さん(仮名)
「『まず1回試してみる』『お届け回数縛りなし』というので、(購入は)1回でもいいんだなと。これが、そ
のときのメールのやりとり」
ところが、購入後、会社から届いたメールを見て、驚きました。「定期コース」に申し込んだことになっていた
のです。
サイトを詳しく見ると、「購入回数縛りなし」などの表現がいたるところにあり、久美子さんは、1個だけで買え
ると思ったといいます。

一方、「定期」という言葉は、ボタンを押すと表示される場所と、サイトの下のほうに小さな文字で表示されて
いました。
久美子さん(仮名)
「大丈夫かなと思って、見てなかったと思います。全然気がつかなかったですね」

久美子さんは、「定期コースと分からなかったので、商品を受け取れない」と会社に伝えました。しかし、会
社からは、記載があったとして、「受け取らない場合、3000円以上の返品手数料を請求する」といわれまし
た。結局、久美子さんは定期コースで追加の2本を購入し、合計9,000円支払うことになったのです。

久美子さん(仮名)
「ひどいなという怒りが湧いてくる感じ。もっと分かりやすくしておいてほしいなと思います。人としてどう
なんだろう」

このサイトのデザインは、複数の専門家が「ダークパターン」にあたると指摘しています。会社に見解を求め
ると、次のように回答がありました。

サイトの運営会社
当社としては、消費者の意図に反した注文をさせようとは全く考えておらず、ご指摘については、
事実無根であると認識しています
今、久美子さんが体験したような定期購入のトラブルは急増。2023年の相談件数は9万8,000件ほど。およ
そ10年で50倍に増加しています。社会に広がる「ダークパターン」。誰もが、思わず落とし穴にはまってしま
う怖さも見えてきました。

「ホームページ見てみます」

今回、NHKは専門家と協力し架空のショッピングサイトをもちいた実験を行いました。(東京工業大学 ケイ
ティー・シーボーン准教授の協力による)

参加者は20代から70代。“ふだんと同じように買い物をしてほしい”と伝えています。

◆“焦らせて購入を促す”
サイトに仕込まれた1つ目のダークパターンは、値段の下の「在庫残り1個」という表示です。
20代
「これにしちゃおう」

30代
「いろんなのがありすぎて分からないな。『在庫残り1個』と書いてある。人気なのかなこれ。買ってみ
よう」

心理的に焦らされた人たちが、次々と「残り1個」の表示があったパソコンを購入。もっと安い同じ型のパソ
コンがありましたが、30人中17人が、「在庫残り1個」の商品を選んだのです。(大学が行った匿名実験のデ
ータ)

30代
「スーパーでも残り物に手を出すタイプなので、いま買わないと買われちゃうと思って」

◆“定期購入を事前選択”
次のダークパターンは、初めから定期購入の月額プランがチェックされているデザインです。

60代
「このクリーナーを追加して」

20代
「これで購入画面に進もうと思います」

事前の選択を見落としてしまった人。無意識に受け入れてしまった人。およそ4割の人が、そのまま定期購
入のプランで購入しました。

◆“解約が難しい”

さらに、会員の解約を難しくするダークパターン。

50代女性
「解約…どうすればいいの」

50代男性
「解約という言葉は出てこないんだ」

ホーム画面には「解約」の文字がありません。

さらに、解約できるページは英語の表記。デザインを複雑にすると、9割の人が解約できませんでした。

20代男性
「ひょっとして、知らないところで不利益を被っているんじゃないか」

20代女性
「心がすごい揺さぶられちゃいます。危ないですね」
実験を分析した、国内外のダークパターンを研究している、シーボーン准教授です。年齢、性別に関係な
く、すべての人が、なんらかのダークパターンに誘導されていたことが分かったといいます。

東京工業大学 ケイティー・シーボーン准教授
「ダークパターンは、人間の脳の働きを悪用しているため、常に警戒し続けることは困難です。誰も
が、ダークパターンの餌食になる可能性があるのです」

知らないうちに、消費者が損をするおそれがある「ダークパターン」。企業の間で、なぜ広がっているのか。
私たちは、ダークパターンを使っているウェブデザイナーに話を聞くことができました。
ダークパターンを使っているウェブデザイナー
「『お得に』みたいなのを付けていたりとか、ボタンの色とか明るい色、緑色よく使われるんですけど」

発注元の企業から頻繁に、デザインで消費者を誘導することを求められるといいます。

ダークパターンを使っているウェブデザイナー
「売り上げが上がる、成果が上がる。この商品を買った人が、どういう気持ちになるかは語られない。
本当に不誠実だなと思います」

今や、成果を上げたダークパターンは次々と模倣され、拡散。ネットビジネスでは、欠かせない手段になり
つつあるといいます。

ダークパターンを使っているウェブデザイナー
「みんながやっているからやらなきゃ。競合Aがやっているから、うちもやらなきゃ。他がやっているの
に、自分たちは真面目に勝負していく形にはなっていない業界だと思う」

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