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Vol77 p6-13 G7 Hiroshima Summit
Vol77 p6-13 G7 Hiroshima Summit
改めて「法の支配」を問う
特別対談
ーー二〇二三年の日本外交を展望する
林 芳正
中西 寛
京都大学教授・本誌編集委員長
外 務 大臣
撮影・渡邉茂樹
はやし よしまさ
1961年生まれ。東京大学法学部卒業後、民間企業勤務。ハーバード大学ケ
ネディ行政大学院修了。95 年第 17 回参議院議員選挙(山口県選挙区)に
自民党から立候補し初当選。以降 5 選。防衛大臣、経済財政政策担当大臣、
農林水産大臣、文部科学大臣などを歴任。党内では参議院政策審議会長など
を務め、2012 年には総裁選挙に立候補した。同年より宏池会座長。21年衆
議院議員総選挙(山口 3 区)にて初当選。同年 11月より現職。著書に『国
会議員の仕事』 (共著)など。
の防衛力を総合的に考える有識者会議」メ
助教授などを経て現職。昨年は「国力として
法学研究科博士後期課程退学。京都大学
者懇談会」座長を務めた。著書に『国際政
なかにし ひろし 1991年京都大学大学院
「開発協力大綱の改定に関する有識
は高い代償が伴うことをロシアに対してしっかりと示すこ
とが必要です。このような考えの下でG7諸国は結束しま
した。日本も他の同志国とともに、まずはロシアに対して
厳しい制裁を加え、そしてウクライナおよびその周辺国に
支援を続けてきました。
治とは何か』など。
このところロシアの攻撃はウクライナのインフラ、特に
エネルギー関連のインフラに及び、大規模な停電が発生し
ンバー、
ています。これ自体、一般市民に対する攻撃であり許せな
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国・途上国が置かれた状況をよく理解して支援策を講じて
「法の支配」をテーマにした国連安全保障理事会の公開討論で議長を務めた林外相。左はグテー
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いくことが今後とも必要でしょう。
中西 日本も含めたG7、北大西洋条約機構(NATO)
、
レス国連事務総長
あります。個別の会談や訪問に加え、昨年八月の第八回ア
1月12 日、
フリカ開発会議(TICAD8)
、九月の国連総会、一一
月のアジア太平洋経済協力(APEC)やG といった多
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国間会合の機会を捉えて、各国に働きかけています。 体化しており、それをGゼロと言うかどうかは別として、
今年はG7議長国であり、今まで以上にG7、また国際 今後どうなるかは流動的な時代を迎えています。二〇二三
社会と緊密に連携をして、対ロ制裁とウクライナ支援への 年はまさに時代の変革期にあり、令和の日本がどういう方
協力を引き続き推進していくとともに、この平和な秩序を 向に進むかが問われています。
守り抜くという力強いコミットメントを示していきたいと もちろんわれわれが進むべき方向は、自由で開かれた、
思います。 法の支配に基づく国際秩序を維持・強化することであり、
その重要性は現在、これまでに増して高まっています。こ
国家安全保障戦略、開発協力大綱の改定
のような時代において、
「国家安全保障戦略」は、おおむ
中西 昨年一二月一六日、岸田政権は安全保障三文書「国 ね一〇年をめどにしたわが国の長期戦略、すなわち、日本
家安全保障戦略」
「国家防衛戦略」
「防衛力整備計画」を閣 の繁栄のための外交活動・経済活動を見据えて、大幅に強
議決定しました。
「国家安全保障戦略」は約九年ぶり、
「国 化される外交の実施体制の下で、危機を未然に防ぎ、平和
家防衛戦略」
「防衛力整備計画」は約四年ぶりの改定とな で安定した国際環境を能動的に創出するための戦略と考え
りました。三文書の意義とねらい、重点項目をどのように ております。
考えておられますか。 具体的に申し上げると、やはり日米同盟の強化、そして
林 背景にあるのは、先ほど申し上げたように、いま国際 「自由で開かれたインド太平洋」
(FOIP)の実現が中心
秩序の根幹が揺らいでいる、われわれは歴史の岐路に立っ になります。そのためには、やはり日米同盟および同志国
ているという情勢認識です。第二次世界大戦後の国際秩序 との連携に加えて、周辺国や地域を対象とした外交を展開
のありようを振り返ってみると、不思議と日本の年号と符 させる戦略的アプローチが必要です。それらを通じてわが
合するところがあります。第二次大戦後の米ソ冷戦は昭和 国を取り巻く安全保障環境の改善に取り組んでいかなけれ
後半期に、冷戦終結後のアメリカ一強時代は平成に対応し ばならないと思っております。
ています。令和が始まった現在は、アメリカが相対的に弱 中西 国家安全保障戦略は、防衛力の抜本的な強化策とし
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て、反撃能力の保有などに加えて防衛費の増額にも言及し けて、政府開発援助(ODA)の戦略的活用や官民連携の
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ています。 強化という視点に立って、この時代に即した国際協力のあ
林 予算については、今回の戦略では、二〇二七年度にお り方について、大きな方針を示したいと考えています。
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中西 日本と中国は経済的に深く結びついていますが、経 り、ロシアによるウクライナ侵略、核兵器を始めとする大
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済安全保障の観点から中国とのデカップリングという問題 量破壊兵器の使用リスクの高まりという未曾有の危機に直
が浮上しています。 面しています。こうした背景の中で開催されるG7サミッ
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