天声人語231130「世界の記憶」とヒロシマ

You might also like

Download as pdf or txt
Download as pdf or txt
You are on page 1of 1

2023/12/06 11:56 朝日新聞クロスサーチ

記事1985~>本文印刷プレビュー表示

No.00007 2023年11月30日 朝刊 1総合 001ページ , 00613文字

(天声人語)「世界の記憶」とヒロシマ
GHQは戦後、原爆をめぐる報道や出版に神経を尖(とが)らせた。
〈原子爆弾に倒れほろびし焼跡に人骨の燐もえたりといふ〉佐々木聰。
こんな短歌さえ、公安を妨げるとしてプレスコード違反とされた。(堀
場清子著『原爆 表現と検閲』)▼朝日新聞も命令をうけて、原爆関係
のフィルムを焼却することにした。だが上司にさからった写真記者がいる。終戦時31歳だった
宮武甫(はじめ)。大阪・天王寺の小さな長屋にネガを持ち帰り、縁の下にそっと隠した▼被爆
直後の広島を訪れ、自ら写した119点が残る。包帯で顔をぐるぐる巻きにされた少女、丸こげ
になった路面電車、原子野をゆく人影……。光景は「私の眼底に焼きついたままである」と後に
語っている▼この宮武ネガを含む広島原爆の写真など1534点を、政府がユネスコの「世界の
記憶」に推薦することになった。忘れてはならない過去である。核の惨禍を二度と繰り返さな
い。政府は未来のために、記録の意義を認めたのだと信じたい▼ただ残念ながら、そう言い切れ
ぬ悲しさがある。ニューヨークで開かれている核兵器禁止条約の第2回締約国会議。政府はオブ
ザーバー参加すらしていない。登壇した広島の湯崎英彦知事は、赤道ギニアの代表から問われ
た。「なぜ核廃絶を唱えながら、(日本は)核抑止政策を支持するのか」▼かつて朝日歌壇にこ
んな歌が載った。〈核兵器禁止条約に署名せぬ国にヒロシマ・ナガサキはある〉菅谷修。世界の
目も市民の目も節穴ではない。

朝日新聞クロスサーチとは 著作権について 利用環境 アクセシビリティー


本サイトに掲載の記事・写真等の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright (c) The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. / 管理ver.1.0.61

https://xsearch.asahi.com/kiji/print_detail/?1701831398091 1/1

You might also like