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経済理論#11
経済理論#11
ミクロ経済学 I
無藤 望
2023 年 7 月 25 日 (火)
を初期保有として所持しているとする。消費者 i の条
件付き財ベクトル空間上の効用関数を Ui とする。
• 例えば、消費者 i が vNM 関数 vi を持っていて、各
状態 s が実現する確率を πs と見積もっている場
∑
合、Ui (x) = Ss=1 πs vi (x1s , . . . , xLs ) と表される。
条件付き財の価格ベクトル
p = (p11 , . . . , pL1 ; p12 , . . . , pL2 ; . . . ; p1S , . . . , pLS ) ∈ RLS
++
が与えられると、消費者 i の効用最大化問題を解くこ
とにより、所得 wi を得ているときの需要関数 x∗i (p, wi )
を定義することができる。
• 財の種類が増えただけで、問題の解き方は同じ。
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• 1 人の消費者の需要関数 x∗i (p, wi ) の wi に初期保有
を売却して得られる現金額
L ∑
∑ S
wi = pℓs ωℓsi
ℓ=1 s=1
を代入することにより、この交換経済での需要関
数 x∗i (p) を定義できる。
不確実性のない交換経済における場合と同様に、消費
者の効用最大化、および、需給の一致条件によって、
ワルラス均衡と同様の均衡概念が定義される。
が成り立つことである。
• 消費の総量は、初期保有と生産量(生産要素と
して投入される場合は負の値)との和に等しい。
実行可能配分のパレート効率性は、交換経済の場合と
同様に、消費者の効用を考えることで定義できる。
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企業の利潤とその分配
• 消費者 i の効用関数 ui から効用最大化問題を解い
て得られる需要関数を x∗i (p, wi ) とする。
• 企業 j の生産集合から利潤最大化問題を解いて得
られる供給関数を yj∗ (p)、利潤関数を πj (p) とする。
• 企業の利潤は、その企業を所有している消費者た
ちに分配されるとする。
消費者 i は、初期保有 ωi を売却することにより
∑L
ℓ=1 pℓ ωℓi の現金を得ることに加えて、各企業 j から
θij πj (p) の収入を得ることができる。
L
∑ J
∑
• i の所得は合計で wi = pℓ ωℓi + θij πj (p) 。
ℓ=1 j=1
• 私的所有経済での消費者 i の需要関数 x∗ (p) は、上
の x∗i (p, wi ) に上式を代入することで得られる。
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定義 6.46 (私的所有経済でのワルラス均衡)
配分 (x1 , . . . , xI ; y1 , . . . , yJ ) と価格ベクトル p の組が私
的所有経済におけるワルラス均衡であるとは、
(1) 各消費者 i は効用を最大化している。つまり、
xi = x∗i (p)
注意 6.47
すべての企業 j について Yj = {0} の場合に、交換経済
と等価な環境となっている。
• どの企業も、何も生産できない場合。
私的所有経済は、特殊例として、交換経済を含んでい
ると言える。
y1
Of
ȳ
y1
Of
ω + ȳ
ȳ
ȳ2 消費者の
予算線
y1
ω2 −ȳ1 Of
Oc x1
ω1
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企業の等利潤線の傾きは −p1 /p2 である。
• 消費者の予算線の傾きと同じ。
x2 y2
ȳ
消費者の 企業の
=
予算線 等利潤線
y1
Of
Oc x1
y∗
等利潤線 (傾き − pp12 )
y1
Of
x∗ = (x∗1 , x∗2 )
無差別曲線
予算線 (傾き − pp12 )
x1
Oc
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市場価格がちょうどよいと、需給が一致する。
• グラフを重ねたとき、x∗ と y ∗ が一致する。
x2 無差別曲線 y2
y∗
y2∗
x∗2 等利潤線
y1
Of
ω2 x∗1 −y1∗
Oc x1
ω1
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私的所有経済における厚生経済学の第
一基本定理
私的所有経済においても、厚生経済学の第一基本定理
が同様に成り立つ。
定理 6.49 (私的所有経済における厚生経済学
の第一基本定理)
各消費者の効用関数が強い意味で単調増加であるとす
る。このとき、ワルラス均衡配分はパレート効率的。
証明は、交換経済の場合と同様である。