2 本文 PDF密码解除

You might also like

Download as pdf or txt
Download as pdf or txt
You are on page 1of 51

1 一般事項

1.1 適用範囲
本TRは,特別高圧架空送電線路に使用する鉄塔および基礎の構造設計に適用する。

1.2 用語の定義
本TRに用いる用語を以下のとおり定義する。
a) 送電線路の名称に関わる用語
1) 架空送電線路(送電線路)
電力輸送を目的として構築された連続的な構造物であり,電線,架空地線,がいし装置,支持物,
基礎およびこれらの付属品から構成される。
2) 構成要素
送電線路を構成する電線,架空地線,がいし装置,鉄塔,基礎およびこれらの付属品。
3) 送電用支持物
電線,架空地線,がいし装置等を支える構造物を送電用鉄塔(または鉄塔)と呼び,その形態や
構成材料等により鉄塔,鉄柱,鉄筋コンクリート柱および木柱等に分類される。また,がいし装置
の吊り型により懸垂型,耐張型に区分される。送電用鉄塔を支える地中の構造物を鉄塔基礎(また
は基礎)と呼び,その形態等により逆T字基礎,杭基礎,マット基礎,深礎基礎等に分類される。
b) 設計に関わる一般用語
1) 限界状態
送電線路またはその構成要素が設計上の要求性能を満足している限界の状態。それを超えると,
もはや設計上の要求性能を満たさない。
2) 損傷限界状態
送電線路の構成要素が損傷しない(耐力が低下せず,補修を必要としない)限界状態。このとき
の耐力を損傷限界耐力といい,引張限界耐力,圧縮限界耐力,座屈限界耐力等に分類される。
3) 終局限界状態
送電線路の構成要素においては,当該要素の構造破壊を招かない限界状態。送電線路においては,
著しい(長期的かつ広範囲な)供給支障を生じさせず,また人命への危険を与えない限界状態。
4) 供用期間
送電線路またはその構成要素がその用途に供される期間。
5) 再現期間
ある値以上の事象の発生に要する期間の平均値。
6) 荷重
質量,風,着氷雪,地震動等によって送電線路またはその構成要素に生じる力学的作用(外力)。
構造計算の入力に用いる荷重を設計荷重という。また,荷重によって,送電線路またはその構成要
素に生じる影響(例えば応力,変形)を荷重効果という。
7) 荷重状態
送電線路またはその構成要素に固定荷重,風荷重,着氷雪荷重または地震荷重等の各種の荷重が
作用した状態。各荷重のうち最も支配的な荷重を「主たる荷重」,その他を「従たる荷重」と呼ぶ。
8) 荷重係数
荷重の不確定性等に配慮して,設計荷重(または荷重効果)に乗ずる係数。

1
JEC-TR-00007:2015

9) 耐力係数
耐力の不確定性等に配慮して,耐力の公称値に乗ずる係数。
c) 固定荷重に関わる用語
1) 固定荷重
送電線路の構成要素の質量および常時状態の架渉線張力により生じる荷重。
d) 風荷重に関わる用語
1) 風荷重
自然風の作用により生じる荷重。
2) 設計風速
設計風荷重の算出に使用する風速であり,基準高さにおける10分間平均風速。
3) 基本風速
設計風速の設定の基本となる風速であり,粗度区分Ⅱ,地上10mにおける10分間平均風速。
4) 風速の鉛直分布係数
現地地表面粗度に応じ,基本風速を基準高さにおける風速に変換する係数。
5) 地表面粗度
建築物,樹木等,地表面の地物や凹凸によってもたらされる地表面の粗さの度合い。地表面粗度
による摩擦は,地表面から上空にかけての風に影響を与え,その区分はⅠ~Ⅴに分けられる。
6) 小地形による風速の割り増し係数
数kmスケールの小地形の影響を考慮し,基本風速を割り増すための係数。
7) 気象学的影響による風速の割り増し係数
気象学的要因により基本風速を割り増すための係数。
8) 速度圧
風(空気の移動)による単位面積当りの運動エネルギー。
9) 風力係数
速度圧を風荷重に換算するための係数。
10) ガスト影響係数
平均風力と変動風力によって生じる最大荷重効果と等価な効果となる静的荷重(等価静的風荷
重)を算出するために,平均風荷重に乗ずる係数。
11) 非同時性低減係数
鉄塔,架渉線,がいし装置に生じる風荷重や架渉線張力の非同時性を考慮した補正係数。
e) 着氷雪荷重に関わる用語
1) 着氷雪荷重
架渉線への着雪または着氷の質量によって生じる荷重。
2) 着雪
降雪が物体に付着する現象であり,湿型着雪と乾型着雪に分類される。
3) 着氷
氷点下の環境で,大気中の過冷却水滴もしくは水蒸気が,物体に衝突して凍結もしくは昇華する
ことで,氷層が形成される現象。自然現象としては霧氷や雨氷がある。

2
f) 地震荷重に関わる用語
1) 地震荷重
地震動の作用によって生じる荷重。
2) 基本最大加速度
工学的基盤面における地震波の最大値。
3) 加速度応答スペクトル
ある固有周期の1自由度1質点系に地震波が作用した際に生じる最大加速度を,固有周期ごとに整
理したもの。
4) 層せん断力係数
等価静的地震荷重を算定するために,送電線路の重量に乗じる係数。
5) 工学的基盤
地震動設定の基礎とする良好な地盤。構造物の種類や地盤状況によって異なるが,多くの場合,
S波速度が300~700m/s程度以上の地盤のことを指す。なお,S波とは地震波のうち横波を指し,
“Secondary wave”の略としてS波と呼ばれている。
g) 作業荷重に関わる用語
1) 作業荷重
送電線路の建設作業や保守作業等,人為的な行為によって生じる荷重。
h) 保安荷重に関わる用語
1) 保安荷重
架渉線の断線や異物の接触等の不確定な異常現象が発生した場合に,送電設備の構成要素の損傷
が連鎖的に進展しないよう補強を行うことを目的として設定した荷重であり,主として任意相不平
均張力荷重である。
i) 荷重効果の算定に関わる用語
1) 架渉線張力
固定荷重(架渉線自重),風荷重,着氷雪荷重等の作用によって架渉線に発生する線路方向の応
力。
2) 不平均張力
送電用鉄塔の架渉線支持点における前後径間の架渉線張力の差。
3) 任意相不平均張力
鉄塔の任意の架渉線支持点に考慮する不平均張力。
4) 全相不平均張力
鉄塔のすべての架渉線支持点に同時に考慮する不平均張力。
j) 構造に関わる用語
1) 部材
送電用鉄塔を構成する主要部品。主柱材,腹材,腕金主材,補助材等に分類される。
2) 接合部
複数の部材をボルトや溶接によって繋ぎ合わせた部位。
3) 有効断面積
部材断面のうち損傷限界耐力として有効に寄与する部分の断面積。

3
JEC-TR-00007:2015

4) 細長比
部材の細長さを表す無次元の指標。座屈限界耐力の評価に用いる。

1.3 構造設計の基本方針
送電線路を構成する各構成要素(鉄塔,架渉線,がいし装置および基礎)は,供用期間中に稀に発生す
る荷重に対して損傷限界状態を超えないよう構造設計を行う。

1.4 損傷限界状態の照査方法
1.4.1 荷重の種類
損傷限界状態の照査に用いる荷重の種類は,固定荷重,風荷重,着氷雪荷重,地震荷重,作業荷重,保
安荷重およびその他荷重とする。

1.4.2 荷重の算定と組み合せ
損傷限界状態の照査に用いる荷重は,次により算定する。また,荷重状態は,強風時状態,着氷雪時状
態,地震時状態,作業時状態および異常時状態とし,各荷重は表1.1のとおり組み合せる。なお,ある荷
重状態における組み合せ荷重が,他の荷重状態の組み合せ荷重を明らかに下回る場合は,当該荷重状態に
おける照査を省略することができる。
固定荷重 :実状に応じて算定する。
風 荷 重 :風荷重が主たる荷重となる強風時は,10分間平均風速の再現期間50年に対する風速値を基
に等価静的風荷重として算定する。従たる荷重となる場合は,主たる荷重が発生する状
況で想定される10分間平均風速を設定のうえ算定する。
着氷雪荷重:着氷雪量の再現期間50年に対する値を基に算定する。
地震荷重 :工学的基盤面における最大水平加速度の再現期間50年に対する値を基に算定する。
作業荷重 :送電線の建設・保守作業を考慮して算定する。
保安荷重 :任意相不平均荷重として算定する。
その他荷重:送電線立地点の特徴を踏まえ,考慮が必要と判断される荷重について適切に算定する。
表1.1-荷重状態と荷重の組み合せ(●:主たる荷重,○:従たる荷重)

荷重状態 固定荷重 風荷重 着氷雪荷重 地震荷重 作業荷重 保安荷重


強風時状態 ○ ● - - - -
着氷雪時状態 ○ ○ ● - - -
地震時状態 ○ ○ - ● - -
作業時状態 ○ ○ - - ● -
異常時状態 ○ - - - - ●

1.4.3 使用材料および損傷限界耐力の基準値
上部構造や基礎の構成材料(部材,ボルト,コンクリート,鉄筋,杭等)は,特別な場合を除き日本工
業規格(JIS)に規定された鋼材およびコンクリートを用いる。上部構造,基礎体および基礎地盤の損傷
限界耐力は,十分に信頼できる損傷限界耐力値をもってその基準値とする。

4
1.4.4 荷重・耐力係数
上部および基礎の構造計算にあたっては,荷重および耐力の不確定性に配慮し,必要に応じて荷重係数
および耐力係数を考慮する。

2 荷重
2.1 固定荷重
2.1.1 基本的考え方
固定荷重は,各構成要素の質量ならびに常時状態の架渉線張力を基に適切に算定する。

2.2 風荷重
2.2.1 基本的考え方
風荷重は,構造物の動的応答特性を考慮した等価静的荷重により算定することを基本とする。

2.2.2 風荷重の算定
風荷重Pは,次式により算定する。
P = qRCAG ・・・・式2.1
ここに,
P :風荷重 (N)
qR :設計用速度圧(Pa)
C :風力係数
A :受風面積(m2)
G :ガスト影響係数

2.2.2.1 設計用速度圧
設計用速度圧 q R は,次式により算定する。
1
qR = rU R2 ・・・・式2.2
2
ここに,
q R :設計用速度圧(Pa)
q RT :鉄塔の設計用速度圧
q RC :架渉線の設計用速度圧
q RG :がいしおよび架線金具の設計用速度圧
r :空気密度(kg/m3)
U R :設計風速(m/s)

5
JEC-TR-00007:2015

2.2.2.2 設計風速
設計風速 U R は,次式により算定する
U R = k1k 2 EU 0γ ・・・・式2.3

ここに,
U R :設計風速(m/s)
U RT :鉄塔の基準高さにおける設計風速
U RC :架渉線の基準高さにおける設計風速
U RG :がいしおよび架線金具の基準高さにおける設計風速
k1 :小地形による風速の割り増し係数
k 2 :気象学的影響による風速の割り増し係数
E :風速の鉛直分布係数
U 0 :基本風速(m/s)
γ :再現期間換算係数

6
2.2.2.3 基本風速
基本風速は,粗度区分Ⅱ,地上10mにおける10分間平均風速とし,荷重状態別に設定する。
a) 強風時基本風速
強風時基本風速U0wは,全風向基本風速マップ(高温季 図2.1,低温季 図2.2)に示す風速を標準と
する。なお,基本風速の風向特性を考慮する場合は,附属書Fに示す風向別基本風速マップを用いて
もよい。

沖縄(那覇)については,50.2m/sを全風向最
大基本風速とする。
沖縄諸島の各気象官署における全風向最大基
本風速は,附属書Fを参照。

図2.1-全風向基本風速マップ(高温季)

7
JEC-TR-00007:2015

沖縄(那覇)については,25.4m/sを全風向最
大基本風速とする。
沖縄諸島の各気象官署における全風向最大基
本風速は,附属書Fを参照。

図2.2-全風向基本風速マップ(低温季)
b) 着氷雪時基本風速
着氷雪時基本風速U0Sは,再現期間50年(または設計用再現期間)に相当する着氷雪が発生する際
に想定される風速を標準とする。
c) 地震時基本風速
地震時基本風速U0Eは,10分間平均風速の年平均値を標準とする。
d) 作業時基本風速
作業時基本風速U0Cは,作業が行われる状態における10分間平均風速を標準とする。

8
2.2.2.4 風速の鉛直分布係数
風速の鉛直分布係数Eは,次式により算定する。
aⅡ a 0.15 a a
æ ZⅡ ö æ ZR ö æ 350 ö æ ZR ö æ ZR ö
E = çç G ÷÷ ç ÷ =ç ÷ ç ÷ = 1.7ç ÷ ・・・・式2.4
è 10 ø Z
è Gø è 10 ø Z
è Gø è ZG ø
ここに,
ZR:基準高さ(m)
ZG:上空風高さ(m)( ZⅡ
G は粗度区分Ⅱにおける値)

α:平均風速の鉛直分布を表すべき指数( aⅡ は粗度区分Ⅱにおける値)
a) 基準高さ
1) 鉄塔(塔体,腕金)
鉄塔高さの2/3とする。
2) 架渉線
弛度底位置における地表面からの架渉線高さに,弛度の1/3を加えた高さを標準とする。ただし,
前後径間の地形に応じて,適宜決めることができる。
3) がいしおよび架線金具
各架渉線の取付け高さとする。
b) 地表面粗度区分
表2.1-地表面粗度区分
粗度区分 風上側の地表面の状況
Ⅰ ・ほとんど障害物のない海上、海岸、河口周辺等
・農作物程度の障害物のある田園地帯、草原等
Ⅱ ・樹木が散在している丘陵地
・低層建築物が散在している平坦地
・山岳地と樹木が密集する丘陵地
Ⅲ ・低層建築物が密集する平坦地
・中層建築物(4~9階)が散在している平坦地
Ⅳ ・中層建築物(4~9階)が主となる市街地
Ⅴ ・高層建築物(10階以上)が密集する市街地
c) 上空風高さ,平均風速の鉛直分布を表すべき指数
表2.2-粗度区分に対応する上空風高さ,べき指数
粗度区分 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ
ZG(m) 250 350 450 550 650
α 0.10 0.15 0.20 0.27 0.35

2.2.2.5 小地形による風速の割り増し係数
小地形による風速の割り増し係数k1は,建設地点より風上側の地形の状況により,上り斜面が一つの場
合は図2.3に示すような単一斜面で,上り斜面が複数存在する場合は図2.4に示すような直近の二つの斜面
による2次元崖状地形に置き換え,鉄塔の基準高さにおいて以下のとおり算定する。

9
JEC-TR-00007:2015

a) 単一斜面
建設地点の風上側を図2.3に示すような単一斜面による2次元崖状地形に置き換え,図2.3に示すLz,
Lx,X,Zを読み取る。読み取った値から,斜面の上り勾配ΦU(°),X/Lx,Z/Lzを算出し,附属書
Gに示す増速率図からk1を算定する。ただし,建設地点が風下側に位置し,基準高さが稜線より低い
場合にはk1=1.0とすることができる。なお,詳細に地形の影響を考慮する場合は,気流解析等で得た
結果を使用してもよい。
ここに,
Lz:斜面の高さ(m)
Lx:斜面の水平距離(m)
X:斜面頂部から建設地点までの水平距離(m)
ただし,建設地点が斜面頂部より風上側にある場合はマイナスとする。
Z:X<0 では,基準高さZR(m)
X≧0 では,稜線から基準高さまでの高さ(m)
ΦU:斜面の上り勾配(°)

k1≧1.0 基準高さ位置
ZR Z
稜線
風向
k1=1.0
Lz

ΦU

X/Lx= -1.0 -0.5 0 0.5 1.0


Lx X
図2.3-単一斜面形状を表す記号
b) 複合斜面
建設地点の風上側の地形を図2.4に示すように斜面の間を谷埋めし,二つの斜面による2次元崖状地
形に置き換え,図2.4に示すLx1,Lx2,Lx3,Lz1,Lz2,X,Zを読み取る。読み取った値から,第1斜面の上
り勾配ΦU1(°),第2斜面の上り勾配ΦU2(°),各水平距離比Lx1/Lx3,Lx2/Lx3,およびX/Lx3,Z/Lz2,
を算出し,附属書Gに示す増速率図からk1を算定する。ただし,風上側に鉄塔基準高さより高い標高
の地形がある場合は,それによる影響を適切に考慮しなければならない。また建設地点が斜面頂部よ
り風下側に位置し,基準高さが稜線より低い場合にはk1=1.0とすることができる。なお,詳細に地形
の影響を考慮する場合は,気流解析等で得た結果を使用してもよい。
ここに,
Lx1 :第1斜面の水平距離(m)
Lx2 :斜面間の水平距離(m)
Lx3 :第2斜面の水平距離(m)
Lz1 :第1斜面の高さ(m)
Lz2 :第2斜面の高さ(m)
X :第2斜面頂部から建設地点までの水平距離(m)
ただし,建設地点が斜面頂部より風下側にある場合はマイナスとする。
Z :X<0 では,基準高さZR(m)
X≧0 では,稜線から基準高さまでの高さ(m)
ΦU1:第1斜面の上り勾配(°)
ΦU2:第2斜面の上り勾配(°)

10
風向

Lz2
谷埋め ΦU2

Lz1
ΦU1

Lx1 Lx2 Lx3 X

図2.4-複合斜面形状を表す記号

2.2.2.6 再現期間換算係数
強風時基本風速の再現期間換算係数γは,次式により算定する。
a) 全風向基本風速の場合
ln( R ) + a b
γ= ・・・・式2.5
3.902 + a b
b) 風向別基本風速の場合
ln( R ) + a j b j
γ= ・・・・式2.6
5.007 + a j b j
ここに,
R :再現期間(年)
ab: 分布形を決定する定数(全風向)
ajbj: 分布形を決定する定数(風向別)
j:8風向を表す。

2.2.2.7 風力係数
架空送電線路を構成する構成要素の風力係数は以下によることを標準とする。
a) 四角骨組本体の風力係数
骨組面に対し風が直角に作用する場合は,以下による
1) 形鋼で構成されている骨組
1.1) 腹材が前後面で重なる場合
CT = 4.0-6.6φ+5.5φ2 ・・・・式2.7
ここに,
CT :塔体の風力係数
φ :充実率 0<φ≦0.5
1.2) 腹材が前後面で重ならない場合
式2.7で求めた風力係数の1.1倍とする。

11
JEC-TR-00007:2015

2) 鋼管で構成される骨組
2.1) 腹材が前後面で重なる場合
CT = 1.9-1.5φ+1.5φ2 ・・・・式2.8
ここに,
CT :塔体の風力係数,
φ :充実率 0<φ≦0.5
2.2) 腹材が前後面で重ならない場合
式2.8で求めた風力係数の1.1倍とする。
b) 骨組腕金の風力係数
腕金正面に対し風が直角に作用する場合は,以下による。
1) 形鋼で構成された方形または合掌腕金
方形腕金 CT = 4.0-6.6φ+5.5φ2 ・・・・式2.9
合掌腕金 式2.9で求めた風力係数の0.9倍とする。
2) 鋼管で構成された方形または合掌腕金
方形腕金 CT = 1.9-1.5φ+1.5φ2 ・・・・式2.10
合掌腕金 式2.10で求めた風力係数の0.9倍とする。
ここに,
CT:方形または合掌腕金の風力係数
φ:充実率 0<φ≦0.5 図2.5-骨組腕金の風力係数
c) 架渉線の風力係数
架渉線に風が直角方向から作用する場合の風力係数は,表2.3によることを標準とする。
表2.3-架渉線の風力係数
形状指数(d/D) 無着氷雪時 着氷雪時
1/8以下 0.95 0.95
1/8を越え1/6以下 1.00 0.95
1/6を越えるもの 1.05 0.95
形状指数=最外層素線径(d)/架渉線外径(D)
d) がいしおよび架線金具の風力係数
がいし連に風が直角方向から作用する場合の,がいしおよび架線金具の風力係数はCG=1.4とする。
e) 特殊な構成材および形状の風力係数
送電線路に特殊な構成材あるいは特殊な形状の鉄塔を使用する場合は,風洞実験または適切な方法
によって風力係数を定めるものとする。

12
2.2.2.8 応力分担率
a) 四角骨組本体の応力分担率
風向角度,構成材料の違いによる四角骨組本体の応力分担率は,表2.4および図2.6による。
表2.4-四角骨組本体の応力分担率
山 形 鋼 鋼 管
風向角度(°)
線路直交方向 線路方向 線路直交方向 線路方向
(θ) T L T L
(n ) T (n ) T (n ) T ( nT )
90 1.00 0 1.00 0
85 1.00 0.21 1.00 0.10
80 0.99 0.36 1.00 0.19
75 0.98 0.48 0.99 0.28
70 0.95 0.57 0.96 0.37
65 0.91 0.66 0.92 0.46
60 0.87 0.73 0.87 0.53
55 0.83 0.77 0.83 0.62
50 0.81 0.79 0.79 0.69
45 0.80 0.80 0.78 0.78

線路方向 L

nTR
主 n L
T 主 T

材 正面


n T
: 線路直交方向応力成分
L


n T
: 線路方向応力成分
面 n T
T


面 線路直交方向 T

主 主
柱 柱
材 材
正面

図2.6-四角骨組本体の応力成分
b) 腕金の応力分担率
腕金の応力分担率は表2.5および図2.7による。
表2.5-腕金の応力分担率
風向角度(°) 応 力 分 担 率( nT )
T L
(θ) 線路直交方向 ( nT ) 線路方向 ( nT )
0 0 1.00
10 0.03 0.97
20 0.10 0.89
30 0.19 0.78
40 0.24 0.63
50 0.24 0.47
60 0.19 0.31
70 0.11 0.20
80 0.07 0.09
90 0.05 0

13
JEC-TR-00007:2015

線路方向 L
nTR
nTL

側面 nTT 線路直交方向 T

正面

風向

図2.7-腕金の応力成分
c) 架渉線に風が作用した際の四角骨組本体の応力分担率
架渉線に風が作用した際に,この架渉線風荷重に伴い発生する四角骨組本体の線路直交方向の応力
分担率は次式により算定する。なお,線路方向への応力分担は無視するものとする。
nCT = sin 2 q ・・・・式2.11

ここに,
nCT :風向角θにおける架渉線風荷重の応力分担率
θ:風向角(°)
線路方向 L



nCL
nCR
風向
nCT 線路直交方向 T

正面 側面

図2.8-架渉線の斜風に対する応力成分
d) がいしおよび架線金具に風が作用した際の四角骨組本体の応力分担率
がいしおよび架線金具に風が作用した際に,このがいし風荷重および架線金具風荷重に伴い発生す
る四角骨組本体の線路直交方向への応力分担率は1.0とする。なお,線路方向への応力分担は無視す
るものとする。

14
2.2.2.9 受風面積
風荷重を計算する際の受風面積は,以下によることを標準とする。
a) 四角骨組鉄塔,骨組腕金
骨組面の傾斜を無視した骨組一面の垂直投影面積とする。
b) 充実単体(単柱など)
傾斜を無視した垂直投影面積とする。
c) 架渉線,がいしおよび架線金具
垂直投影面積とする。ただし架渉線に着氷雪がある場合は,着氷雪状態での垂直投影面積とする。

2.2.2.10 ガスト影響係数
a) 鉄塔風荷重のガスト影響係数
鉄塔風荷重算定に用いるガスト影響係数 GRT は,次式より算定する。
a
2 + 2a æ 2 ö
G RT = 1 + 2 g T I uRT ç ÷ BT + RT ・・・・式2.12
2 +a è3ø
ただし,
g T = 2ln(600νT ) + 1.2 (ピークファクタ)
RT
νT= f 1 (期待振動数(Hz))
BT + RT
f1 = 100 / H (鉄塔の1次固有振動数(Hz))
-a - 0.05
æZ ö
I uRT = 0.1çç R ÷÷ (鉄塔の基準高さにおける乱れの強さ)
è ZG ø
α:平均風速の鉛直分布を表す“べき指数”
1
BT = 0.709
(非共振係数)
æ kZ H ö
1 + 0.163çç ÷÷
è LuRT ø
p
RT = ST FT (共振係数)
4hT
1
ST = (規模係数)
æ k Z Hf1 ö
1 + 0.334çç ÷÷
è U RT ø
4( f1LuRT / U RT )
FT =
{1 + 70.8( f L }
(風力スペクトル係数)
/ U RT )
2 5/6
1 uRT

ここに,
G RT :ガスト影響係数
Z R :基準高さ(m)
Z G :上空高さ(m)
H :鉄塔高さ(m)
LuRT :鉄塔の基準高さにおける乱れのスケール(m)

15
JEC-TR-00007:2015

U RT :鉄塔の基準高さにおける設計風速(m/s)
k z :鉛直横方向のディケイファクタ k z =10
hT :鉄塔の1次減衰定数(臨界減衰比)
中空鋼管鉄塔: hT =0.01
山形綱鉄塔: hT =0.02
コンクリート充填鋼管鉄塔(MC鉄塔): hT =0.01
b) 架渉線風荷重のガスト影響係数
架渉線風荷重算定に用いるガスト影響係数 GRC は,次式により算定する。
G RC = 1 + 2 g c I uRC BC ・・・・式2.13

ただし,
1
BC = 0.707
(非共振係数)
æk l ö
1 + 0.140çç X ÷÷
è LuRC ø
ここに,
g c : 架渉線風荷重のピークファクタを表し, g c =3.5とする。
I uRC :架渉線の基準高さにおける乱れの強さ
LuRC :架渉線の基準高さにおける乱れのスケール(m)
k X :水平横方向のディケイファクタ k X =10
l :径間長(m),ただし支持点高低差を有する場合は,支持点間距離とする

2.2.2.11 その他の乱流統計量
設計用風荷重の算定に必要な,乱れの強さ,ディケイファクタおよび乱れのスケールは表2.6に定める
値を用いる。
表2.6-乱れの強さ,ディケイファクタおよび乱れのスケール
I uRT , I uRC
kX kZ L uRT , L uRC
- a - 0 . 05
æ z ö zR
0 . 1çç R ÷÷ 10 10 100
30
è zG ø
ここに,
I uRT :鉄塔の基準高さにおける乱れの強さ
I uRC :架渉線の基準高さにおける乱れの強さ
z R :基準高さ(m)
zG :上空風高さ(m)
α:平均風速の鉛直分布を表す“べき指数”
k X :水平横方向のディケイファクタ
k Z :鉛直横方向のディケイファクタ
L uRT :鉄塔の基準高さにおける乱れのスケール
L uRC :架渉線の基準高さにおける乱れのスケール

16
2.2.2.12 鉄塔風荷重の算定
T
鉄塔風荷重(塔体および腕金)の算定は,パネルごとに線路直交方向荷重(平均成分 PTi ,変動成分の
T L L
最大値 pTi ),線路方向荷重(平均成分 PTi ,変動成分の最大値 pTi )に分け,次式により算定する。
2a
æz ö
線路直交方向荷重(平均成分) P = q RT çç i ÷÷ CTi ATi nT
T T
Ti ・・・・式2.14
è zR ø
2a
æz ö
線路方向荷重(平均成分) P = qRT çç i ÷÷ CTi ATi nTL ・・・・式2.15
L
Ti
è zR ø
2a
æz ö
線路直交方向荷重(変動成分の最大値) p = q RT çç i ÷÷ CTi ATi nT (GRT - 1)
T T
Ti ・・・・式2.16
è zR ø
2a
æz ö
線路方向荷重(変動成分の最大値) p = q RT çç i ÷÷ CTi ATi nTL (GRT - 1)
L
Ti ・・・・式2.17
è zR ø
ここに,
PTiT :線路直交方向の鉄塔風荷重の平均成分(N)
pTiT :線路直交方向の鉄塔風荷重の変動成分最大値(N)
PTiL :線路方向の鉄塔風荷重の平均成分(N)
pTiL :線路方向の鉄塔風荷重の変動成分最大値)(N)
qRT :鉄塔の設計用速度圧(Pa)
zi :塔体( i パネル)または腕金の中心の地表面からの高さ(m)
z R :基準高さ(m)(鉄塔高さの2/3)
a :平均風速の鉛直分布を表す“べき指数”
CTi :塔体( i パネル)または腕金の風力係数
ATi :塔体( i パネル)または腕金の受風面積(m2)
nTT :線路直交方向の応力分担率
nTL :線路方向の応力分担率
GRT :鉄塔風荷重のガスト影響係数

2.2.2.13 架渉線風荷重の算定
架渉線風荷重は,前後径間の平均成分 PC ,変動成分の最大値 pC を次式により算定する。
平均分 PC = q RC C C AC nCk C
・・・・式2.18
変動成分の最大値 pC = q RC C C AC nC k C (G RC - 1) ・・・・式2.19

ここに,
PC :架渉線風荷重の平均成分(N)
pC :架渉線風荷重の変動成分最大値(N)
q RC :架渉線の設計用速度圧(Pa)
C C :架渉線の風力係数
A C :架渉線の受風面積(m2) æç = Dl ö÷
è 2 ø

D :架渉線外径(m),ただし多導体の場合は導体数を乗じた値

17
JEC-TR-00007:2015

l :径間長(m),ただし支持点高低差を有する場合は,支持点間距離とする
n C :架渉線風荷重の応力分担率
k C :架渉線に対する吹き上げ風の効果を考慮する係数
1
kC =
cos j
j :風の吹き上げ角 (j ³ 0 )
G RC :架渉線風荷重のガスト影響係数

2.2.2.14 がいしおよび架線金具の風荷重算定
がいしおよび架線金具の風荷重は,支持点ごとの平均成分 PG ,変動成分の最大値 pG を次式により算定

する。
平均成分 PG = q RG C G A G n C k C ・・・・式2.20
変動成分の最大値 p G = q RG C G A G n C k C ( G RC - 1) ・・・・式2.21

ここに,
PG :がいしおよび架線金具の風荷重の平均成分(N)
pG :がいしおよび架線金具の風荷重の変動分最大値(N)
q RG :がいしおよび架線金具の設計用速度圧(Pa)
C G :がいしおよび架線金具の風力係数
A G :がいしおよび架線金具の受風面積(m2)
n C :架渉線風荷重の応力分担率
k C :架渉線に対する吹き上げ風の効果を考慮する係数
G RC :架渉線風荷重のガスト影響係数

2.2.2.15 風荷重による架渉線張力増分の算定
風荷重による架渉線張力の増分は,前後径間の張力荷重の平均成分 Ph ,変動成分の最大値 p h を次式に

より算定する。
平均成分 Ph = h ・・・・式2.22
sin(y - j ) T0 + h
変動成分の最大値 ph = 2 g h qRC nC CC D I uRC Bh ・・・・式2.23
cos j p(1 + 12 / l2 )
2

ただし,
2 2
æq n C Dö æ sin j ö
p = çç RC C C ÷÷ + çç mC g - q RC nC CC D ÷
è cosj ø è cos 2 j ÷ø
2
æ pl ö EC A'
l2 = çç ÷÷
è T0 + h ø T0 + h
1
Bh = 0.719
æk l ö
1 + 0.136çç X ÷÷
è LuRC ø
ここに,
Ph :架渉線張力荷重の平均成分(N)
ph :架渉線張力荷重の変動成分最大値(N)

18
g h :架渉線張力荷重のピークファクタ g h =3.5とする
qRC :架渉線の設計用速度圧(Pa)
nC :架渉線風荷重の応力分担率
CC :架渉線の風力係数
D :架渉線外径(m),ただし多導体の場合は導体数を乗じた値
y :架渉線の横振れ角(°)
æ æ q n C D öö
y = çç sin -1 çç RC C C ÷÷ ÷÷
è è p cos j ø ø
j :風の吹き上げ角(°)
I uRC :架渉線の基準高さにおける乱れの強さ
mC :架渉線の単位長質量(kg/m),ただし多導体の場合は導体数を乗じた値
g :重力加速度 g =9.80665(m/s2)とする
k X :水平横方向のディケイファクタ k X =10
l :径間長(m),ただし支持点高低差を有する場合は,支持点間距離とする。
LuRC :架渉線の基準高さにおける乱れのスケール(m)
T0 :無風時水平張力(N),ただし多導体の場合は導体数を乗じた値
h :設計風速による水平張力増分(N),ただし多導体の場合は導体数を乗じた値
E C :架渉線の弾性係数(N/m2)
A' :架渉線の断面積(m2),ただし多導体の場合は導体数を乗じた値

2.2.2.16 風荷重の組み合せ
風荷重は水平角度θおよび鉛直角度δを考慮し,鉛直方向荷重,線路直交方向荷重,線路方向荷重として
設計に適用する。ただし,架渉線風荷重,がいしおよび架線金具荷重,風荷重による架渉線張力増加分に
おける風上側と風下側の回線間には,非同時性に関する低減はないものとする。
Z
a) 鉛直方向荷重 ( H )
鉛直方向荷重は次式で算定する。ここに,±は Ph ( 1 ) tan δ(1) + Ph ( 2 ) tan δ(2) の荷重効果の符号と

同一になるものをとる。
H Z
= Ph (1 ) tan δ(1) + Ph ( 2 ) tan δ(2) ±( p h (1 ) tan d (1 ) + p h ( 2 ) tan d ( 2 ) )・・式2.24
ここに,
Ph ( i ) :架渉線張力荷重(平均成分)(N)
p h ( i ) :架渉線張力荷重(変動成分の最大値)(N)
なお,(i)は前後径間を表し,(1)は若番側,(2)は老番側を示す。

T
b) 線路直交方向荷重 ( H )
線路直交方向荷重は次式で算定する。ここに,±は PT + P(1 ) + P( 2 ) の荷重効果の符号が同一とな
T T T

るものをとる。
H T
= PTT + P(1T) + P(T2 ) ± {ε4 p TT +ε1TεT2εε4 p (1) + p (2) )
3(
T T
} ・・・・式2.25

ただし,

19
JEC-TR-00007:2015

平均成分: P( 1T) = ( PC ( 1 ) + PG (1 ) ) cos θ(1) + Ph(1) sin θ(1)


P(2)T = ( PC ( 2 ) + PG ( 2 ) ) cos θ(2) + Ph(2) sin θ(2)
変動成分の最大値: p ( 1 ) = | ( p C ( 1 ) + p G ( 1 ) ) cos θ(1) + p h(1) sin θ(1) |
T

p (T2 ) = | ( p C ( 2 ) + p G ( 2 ) ) cos θ(2) + p h(2) sin θ(2) |


ここに,
PTT :線路直交方向の鉄塔風荷重の平均成分(N)
p TT :線路直交方向の鉄塔風圧値荷重の変動成分最大値(N)
P( Ti) :架渉線風荷重,がいしおよび架線金具風荷重,架渉線張力による
線路直交方向荷重の平均成分(N)
T
p (i) :架渉線風荷重,がいしおよび架線金具風荷重,架渉線張力による

線路直交方向荷重の変動成分の最大値(N)
PC ( i ) :架渉線風荷重の線路直交方向の平均成分(N)
p c ( i ) :架渉線風荷重の線路直交方向の変動成分最大値(N)
PG ( i ) :がいしおよび架線金具風荷重の線路直交方向の平均成分(N)
p G ( i ) :がいしおよび架線金具風荷重の線路直交方向の変動成分最大値(N)
Ph ( i ) :架渉線張力荷重の線路直交方向の平均成分(N)
p h ( i ) :架渉線張力荷重の線路直交方向の変動成分最大値(N)
ε 1T :架渉線風荷重,がいしおよび架線金具風荷重,架渉線張力による
線路直交方向荷重の若老間の非同時性低減係数

ε T2 :架渉線風荷重,がいしおよび架線金具風荷重,架渉線張力による
線路直交方向荷重の上下間の非同時性低減係数
ε 3 :架渉線風荷重,がいしおよび架線金具風荷重,架渉線張力による
線路直交方向荷重と線路方向荷重間の非同時性低減係数

ε 4 :鉄塔風荷重と架渉線風荷重(架渉線風荷重,がいしおよび架線金具
風荷重,架渉線張力)間の非同時性低減係数。ε 4 =0.8とする。
なお,(i)は前後径間を表し,(1)は若番側,(2)は老番側を示す。
L
c) 線路方向荷重 ( H )
線路方向荷重は,次式で算定する。ここに,±は PT + P(1 ) + P( 2 ) の荷重効果の符号と同一になる
L L L

ものをとる。
H L
= PTL + P(1L) + P( L2 ) ± {ε4 p TL +ε1Lε2Lεε4 p (1 ) + p ( 2 ) )
3(
L L
} ・・・・式2.26

ただし,
平均成分: P(1L) = ( PC (1 ) + PG (1 ) ) sin θ(1) - Ph (1 ) cos θ(1)
P( L2 ) = - ( PC ( 2 ) + PG ( 2 ) ) sin θ(2) + Ph ( 2 ) cos θ(2)

変動成分の最大値: p ( 1 ) = | ( p C ( 1 ) + p G ( 1 ) ) sin θ(1) - p h ( 1 ) cos θ(1) |


L

p (L2 ) = | - ( p C ( 2 ) + p G ( 2 ) ) sin θ(2) + p h ( 2 ) cos θ(2) |

20
ここに,
PTL :線路方向の鉄塔風荷重の平均成分(N)
p TL :線路方向の鉄塔風荷重の変動成分最大値(N)
P( iL) :架渉線風荷重,がいしおよび架線金具風荷重,架渉線張力による線路方向荷重
の平均成分(N)
L
p (i) :架渉線風荷重,がいしおよび架線金具風荷重,架渉線張力による線路方向荷重

の変動成分の最大値(N)
PC ( i ) :架渉線風荷重の線路方向の平均成分(N)
p c ( i ) :架渉線風荷重の線路方向の変動成分最大値(N)
PG ( i ) :がいしおよび架線金具風荷重の線路方向の平均成分(N)
p G ( i ) :がいしおよび架線金具風荷重の線路方向の変動成分最大値(N)
Ph ( i ) :架渉線張力荷重の線路方向の平均成分(N)
p h ( i ) :架渉線張力荷重の線路方向の変動成分最大値(N)
ε 1L :架渉線風荷重,がいしおよび架線金具風荷重,架渉線張力による線路方向荷重
の若老間の非同時性低減係数
L
ε 2 :架渉線風荷重,がいしおよび架線金具風荷重,架渉線張力による線路方向荷重
の上下間の非同時性低減係数
ε3 :架渉線風荷重,がいしおよび架線金具風荷重,架渉線張力による線路直交方向

荷重と線路方向荷重間の非同時性低減係数
ε 4 :鉄塔風荷重と架渉線風荷重(架渉線風荷重,がいしおよび架線金具風荷重,
架渉線張力)間の非同時性低減係数。ε 4 =0.8とする。
なお,(i)は前後径間を表し,(1)は若番側,(2)は老番側を示す。

21
JEC-TR-00007:2015

2.2.2.17 非同時性低減係数
風荷重の組み合せに用いる非同時性係数は図2.9に示す算定対象部材が存する領域ごとに,表2.7により
算定する。ただし,架空地線と電線の非同時性低減係数は個別に算定することができる。
表2.7-非同時性低減係数
領域① 領域② 領域③
pT 2
a (1) + 2 r1 p T
a (1) pT
a (2) +p T 2
a (2)
e1T hT
p T
a (1) +p T
a (2)

paL(1) 2 - 2 r 2 paL(1) paL(2) + paL(2) 2


e 1
L
h L

paL(1) + paL(2)
3 + 4 r5 + 2 r6 1 + r7 3 + 4 r5 + 2 r 6
e 2T 1
9 2 9
3 + 4 r8 + 2 r 9 1 + r10 3 + 4 r8 + 2 r 9
e 2L 1
9 2 9

e3 aT 2 + a L 2 ± 2 KaT a L
aT + a L
ε4 0.8

・ h T
:耐張型 1.0,懸垂型 1.0

・ h L
:耐張型 1.0,懸垂型 0.2
・ 架空地線の荷重は領域①,②,③において e 2 = e 2 =1.0とする
T L

・ 腹材用荷重は, e 3 = 1.0 とする


・ 腕金用荷重は, e 2 = e 2 = e 3 = 1.0 とする
T L

・ e 3 の分子の符号は,通り架線の鉄塔の時 -,引留鉄塔の時 + とする


地線腕金 地線腕金

C1腕金
C1腕金
C2腕金 領域①
D1
C2腕金 領域①
D1 D2 C3腕金

D’ C4腕金
D2
D3 C5腕金
C3腕金 領域②

D4

C6腕金

領域②
領域③

(2回線) (4回線)
図2.9-非同時性低減係数の領域

22
ただし,
- r3(1) paT(1) paL(1) + r3(2) paT(2) paL(2) - r 4 ( paL(1) paT(2) - paT(1) paL(2) )
K=
aT a L
aT = e1T ( paT(1) + paT(2) ) , a L = e1L ( paL(1) + paL(2) )
1
r1 =
{1 + 0.524 ( k }
L / LuRC _ a )
0.185
X

1
r2 =
1 + 0.268 ( k X L / LuRC _ a )
0.531

1 1
r3(1) = , r3(2) =
{
1 + 0.140 ( k X l(1) / LuRC _ a ) }
0.398 0.117
{
1 + 0.140 ( k X l(2) / LuRC _ a ) }
0.398 0.117

1
r4 =
{1 + 0.597 ( k L / LuRC _ a ) }
0.237
X

1 1
r5 = , r6 =
1 + 0.0525(k Z Da / LuRC _ a ) 0.783
1 + 0.0525(2kZ Da / LuRC _ a )0.783
1
r7 =
1 + 0.0525 ( k Z D¢ / LuRC _ a )
0.783

1 1
r8 = , r9 =
1 + 0.106(kZ Da / LuRC _ a )0.706 1 + 0.106(2k Z Da / LuRC _ a )0.706
1
r10 =
1 + 0.106 ( kZ D¢ / LuRC _ a )
0.706

ここに,
L :若番側径間長( l(1) )と老番側径間長( l(2) )の和(m)
Da :上下の架渉線支持点間距離の平均値(m)
2回線の時: = ( D1 + D2 ) / 2 ,4回線の時: = ( D1 + D2 + D3 + D4 ) / 4
D ¢ :4回線時の上回線の平均高さと下回線の平均高さの高低差(m)
k X :水平横方向のディケイファクタ k X =10
k Z :鉛直横方向のディケイファクタ k Z =10
paT(1) , paT(2) : p(1)
T T
および p(2) の電線(架空地線を除く)に関する平均値(N)
paL(1) , paL(2) : p(1)
L L
および p(2) の電線(架空地線を除く)に関する平均値(N)
LuRC _ a :各架渉線基準高さにおける乱れのスケール LuRC の平均値(m)

23
JEC-TR-00007:2015

2.3 着氷雪荷重
2.3.1 基本的考え方
設計に考慮する着氷雪荷重は,建設地点における着雪量および着氷量を適切に推定して荷重算定を行う
ことを基本とする。

2.3.2 着氷雪荷重の算定
着氷雪荷重は次式により算定する。
WS = g・MR・Sm ・・・・式2.27
ここに,
WS :着氷雪荷重(N) Sm=S1/2+S2/2

g :重力加速度 g = 9.80665m/s2
S1 S2
MR:設計用着氷雪質量(kg/m)
Sm:垂直径間(m)=S1/2+S2/2 図2.10-荷重径間

2.3.2.1 設計用着氷雪質量
設計用着氷雪質量は,基準高さZRに対し,次式により算定する。
MR=ks・M0・E・γ ・・・・式2.28
ここに,
MR:設計用着氷雪質量(kg/m)
ks:難着雪対策効果による補正係数(無対策時ks=1.0)
M0:基本着氷雪質量(kg/m)
E:風速の鉛直分布係数=1.7(ZR/ZG)α
ZR:基準高さ(m)
ZG:上空風高さ(m)
α:平均風速の鉛直分布を表す ”べき指数”
γ:再現期間換算係数

2.3.2.2 基本着氷雪質量
基本着氷雪質量は,粗度区分Ⅱ,地上10mにおける50年再現期間値を基本とするが,過去の目撃情報等
から経験的に定めた着氷雪量,あるいは当該地域で過去に観測された気象データ等から着氷雪推定式によ
り適切に算出した着氷雪質量を用いても良い。
a) 算定式
基本着氷雪量の算出にあたっては,架渉線の周囲に氷雪が同心円状に付着するものとし,着氷雪質
量または着氷雪厚さで設定する。なお,質量と厚さの関係は次式で表される。
M0=π・ρs・k0・(D+k0)×103 ・・・・式2.29
ここに,
M0:基本着氷雪質量(kg/m)
ρs :着氷雪の密度 (g/cm3)
k0 :基本着氷雪厚さ(mm)
D:架渉線外径 (mm)

24
b) 基本着氷雪厚さ
基本着氷雪厚さは,基本着氷雪質量と着氷雪の密度との関係を踏まえ,適切に設定する。
c) 着氷雪の密度
着氷雪密度は,設計に考慮する着氷雪荷重(着雪(湿型,乾型),着氷)に応じた密度を設定する。

2.3.2.3 設計に考慮する着氷雪状態
設計に考慮する着氷雪状態は,当該鉄塔の水平角度,風環境,径間条件等の影響による着氷雪の不均一
等を考慮する。

2.4 地震荷重
2.4.1 基本的考え方
地震荷重の算定は,層せん断力係数法に基づく,等価静的荷重によることを基本とする。

2.4.2 地震荷重算定
a) 設計用入力地震強度
設計用入力地震強度Khは,次式により算定する。
Kh =αn /g ・・・・式2.30
ここに,
Kh:設計用入力地震強度
αn:設計用地表面最大加速度(gal)
g:重力加速度(=980gal)
b) 層せん断力および層モーメント
層せん断力Qiおよび層モーメントMiは,次式より求める。なお,層せん断力および層モーメントの
算定は線路方向地震入力時および線路直角方向地震入力時のそれぞれについて行う。
Qi = CSi・Wi
Mi = CMi・Wi・Hi
Csi = Kh・RS・Ch・ASi = BS・ASi ・・・・式2.31
CMi = Kh・RM・Ch・AMi = BM・AMi
ここに,
Qi:i層の層せん断力(kN)
Mi:i層の層モーメント(kN・m)
Csi:i層の層せん断力係数
CMi:i層の層モーメント係数
Wi :求める節点位置より上部の有効重量を含んだ鉄塔重量(kN)
Hi:求める節点より上部の有効重量を含んだ鉄塔重量の重心位置までの距離(m)
BS:ベースシャー係数 (= Kh・RS・Ch)
BM:ベースモーメント係数 (= Kh・RM・Ch)
Kh:設計用入力地震強度
RS:層せん断力の応答特性係数
RM:層モーメントの応答特性係数

25
JEC-TR-00007:2015

Ch:減衰定数による補正係数
ASi:層せん断力係数の分布係数
AMi:層モーメント係数の分布係数

2.4.3 設計用地震動
建設地点の地盤と鉄塔の条件に応じ,地盤特性を考慮した目標加速度応答スペクトルを定め,これに適
合する設計用地表面最大加速度αnを求める。

2.4.4 目標加速度応答スペクトル
地表面における加速度応答スペクトルSa(T,ζ)は,次式により算定する。
ìæ fA -1 T ö
ïç1 + d Tc ÷ FhGA RAa0 [0 ≦ T ≦ dTc]
ïïè ø
Sa (T , z ) = í Fh f AGA RAa0 [dTc ≦ T ≦ Tc ]
・・・・式2.32
ï 2pF f G R V
ï h V V V 0
[Tc ≦ T ]
ïî T

ここに,
Sa(T , z ) : 加速度応答スペクトル
f A : dTc < T < TC における Sa (T ,0.05) の G A R A a 0 に対する比
fV : Tc < T における SV (T ,0.05) = Sa (T ,0.05)T / 2pのGV RV V0 に対する比
d : Sa(T , z ) が一定値をとる区間の上限周期に対する下限周期の比
Tc : Sa(T , z ) が一定値をとる区間の上限周期で下式による
2pFh fV GV RV V0
Tc = (s)
f A G A R A a0
z :減衰定数
Fh :減衰補正係数
2
a 0 :工学的基盤での基本最大加速度(m/s )
V 0 :標準地盤の基本最大速度(m/s)
RA :最大加速度の再現期間換算係数
G A :最大加速度の地盤種別補正係数
RV :最大速度の再現期間換算係数
GV :最大速度の地盤種別補正係数

26
2.4.5 基本最大加速度
工学的基盤面上での基本最大加速度a0は図2.11に示す「基本最大加速度マップ」に基づき地域別に求め
る。ただし,観測データ等に基づき,より詳細に基本最大加速度を設定できる場合は,その値を使用でき
る。

100 300
50 250
150
200

100
50
250

100

+ +
+ 200
150 150
150 100

+ +
200

100

0 400km

※ +は周辺より値が大きいことを示す。
図2.11-基本最大加速度マップ(再現期間50年)

27
JEC-TR-00007:2015

2.4.6 再現期間換算係数
地震動の最大加速度の再現期間換算係数RAおよび最大速度の再現期間換算係数RVは,対象地点の基本最
大加速度マップ値に基づき次式により算定する。
R A = RV = ( R / 50)1 / k ・・・・式2.33
ここに,
R :再現期間
2.3
k=
ln a500 - ln a0
a500 :再現期間500年での基本最大加速度
a0 :工学的基盤面での基本最大加速度(再現期間50年)

2.4.7 設計用地表面最大加速度
設計用地表面最大加速度αn は次式により算定する。
a n = Sa (T = 0, z ) = FhG A RA a0 ・・・・式2.34

2.5 作業荷重
設計に考慮する作業荷重は,鉄塔上で作業を行う工事期間中および保守作業中に発生する人為的な荷
重とする。
この荷重状態は,工事期間中および保守作業時に発生する一時的な荷重に対して部材および接合部が
強度不足とならないよう,工事施工方法に応じた荷重を考慮する。

2.6 保安荷重
2.6.1 基本的考え方
設計に考慮する保安荷重は,架渉線の断線や異物の接触等の不確定な異常現象が発生した場合に,送電
線路の構成要素の損傷が連鎖的に進展しないよう補強を行うことを目的とした荷重とする。この荷重状態
では,任意相の不平均張力荷重とこれに伴うねじり力を考慮する。

2.6.2 保安荷重の算定
a) 風荷重
保安荷重として組み合せる鉄塔風荷重,架渉線風荷重,がいしおよび架線金具風荷重は,次式に
より算定する。
風荷重 P = qR CAa1 ・・・・式2.35
ここに,
P :風荷重 (N)
q R :保安荷重設計速度圧
q R = 200 (Pa)
C :風力係数
A :受風面積 (m2)

28
a1 :上空逓増係数
1
æ h ö4
a1 = çç 1 ÷÷
è h0 ø
ただし,
h0 :10mとする。
h1 :算定箇所の地上高さ(m)
b) 任意相不平均張力荷重
保安荷重として任意相に考慮する不平均張力荷重(任意相不平均張力荷重)は,次式により算定
する。
不平均張力荷重 S = H S e S ・・・・式2.36

ここに,
S :不平均張力荷重 (N)
H S :固定荷重および異常時状態に見込む風圧により算出した架渉線張力(N)
e S :不平均張力率
・懸垂型 e S = 0.6 ~ 1.0
・耐張型 e S = 1.0

なお,任意相に考慮する不平均張力とは,架渉線(架空地線を含む)の任意の相に考慮する不平均
張力をいう。ただし,全架渉線を引き留めて設計する引留鉄塔は除く。
この任意相の不平均張力を考慮する相数および架渉線条数は,4回線以下の鉄塔に対しては任意の1
相とし,5回線以上の鉄塔に対しては任意の2相とする。任意相の不平均張力を考慮する導体数は単導
体送電線においては1条,多導体送電線においては,導体数の1/2条(最小2条)とする。なお,架空
地線は単独に1条を考慮する。

2.7 その他荷重
2.7.1 基本的考え方
特殊な地形もしくは苛酷な環境に曝される場所に建設する鉄塔および基礎には,風荷重,着氷雪荷重,
地震荷重,作業荷重および保安荷重で定めた荷重以外の荷重についても,建設場所の状況に応じて適切に
考慮する。

2.7.2 積雪に伴う荷重
鉄塔やがいし装置に大きく積雪する場合には冠雪荷重を考慮する。地表上の積雪に鉄塔脚部が埋まる場
合には積雪による沈降圧荷重を,また,この鉄塔脚部が斜面に設置されている場合には積雪斜面移動圧荷
重を考慮する。ただし,防護対策を施す場合にはこの対策に相当する冠雪荷重,沈降圧荷重および積雪斜
面移動圧荷重を無視することができる。

29
JEC-TR-00007:2015

3 荷重効果の算定
3.1 架渉線張力の算定
3.1.1 基本的考え方
架渉線張力は,固定荷重により生ずる張力に,他の荷重により生ずる張力増加分を荷重状態ごとに適切
に評価して算定する。この際,各荷重状態に応じて,架渉線温度を適切に設定する。

3.1.2 静的荷重作用時の架渉線張力
各荷重のうち,静的かつ径間内一様に作用する荷重によって発生する架渉線張力は,架渉線形状がカテ
ナリ曲線に従うものとし,任意に設定した一次条件との温度差・荷重差による架渉線の熱伸縮,弾性伸縮
を考慮して,適切に算定する。

3.2 上部構造の応力解析用荷重の算定
上部構造物の各部に生じる応力を算定するための荷重は,鉄塔に対する方向性を考慮して線路方向,線
路直交方向,鉛直方向として以下により組み合せる。なお,荷重が作用した時に発生する架渉線張力荷重
は,荷重効果として応力解析時に考慮する。
表3.1-荷重の組み合せ
荷重の種類 荷重効果
着 架渉線張力荷重
方向性 荷重状態 固定 氷 風 地震 作業 保安
固定 着氷雪 風

WT Wc WG WS PT Pc PG E C S Phc PhS Phw
強風時状態 ○ ○ ○ ○ ○
着氷雪時状態 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
鉛直方向 地震時状態 ○ ○ ○ ○ △
作業時状態 ○ ○ ○ △ ○ ○ △ ○
異常時状態 ○ ○ ○ ○ ※
強風時状態 ○ ○ ○ ○ ○
着氷雪時状態 ○ ○ ○ ○ ○ ○
線路直交
地震時状態 ○ ○ ○ ○ ○ △
方向
作業時状態 ○ ○ ○ ○ ○ △ ○
異常時状態 ※ ※ ※ ○ ○ ※
強風時状態 ○ ○ ○ ○ ○
着氷雪時状態 ○ ○ ○ ○ ○ ○
線路方向 地震時状態 ○ ○ ○ ○ ○ △
作業時状態 ○ ○ ○ ○ ○ △ ○
異常時状態 ※ ※ ※ ○ ○ ※
ここに,
WT:鉄塔重量 WC:架渉線重量 WG:がいし・架線金具重量 WS:着氷雪荷重
PT:鉄塔風荷重 PC:架渉線風荷重 PG:がいし・架線金具風荷重

30
Phc:架渉線張力荷重(固定荷重分)
Phs:架渉線張力荷重(着氷雪荷重による増分)
Phw:架渉線張力荷重(架渉線風荷重による増分)
E:地震荷重 C:作業荷重 S:任意相不平均張力荷重
○:組み合せる荷重 △:必要により組み合せる荷重
※:組み合せる荷重(200Pa の保安用速度圧を考慮する)

3.3 上部構造物の応力算定
鉄塔を弾性体として取扱い,その構造に応じて適切と考えられる方法によって応力を算定する。

3.4 部材応力の決定
荷重の組み合せによって計算される各部材応力から,それぞれの最大値をもって,強風時荷重,着氷雪
時荷重,地震荷重,作業荷重および保安荷重の設計応力とする。

4 上部構造
4.1 部材および接合部決定にあたっての基本的考え方
部材は,断面に働く最大応力が損傷限界耐力以下になるよう決定する。
接合部は,ボルト接合の場合,ボルトおよび部材に働く最大応力が,溶接接合の場合は継手溶接部に
働く最大応力が,それぞれ損傷限界耐力以下になるよう決定する。

4.1.1 部材応力度の算定
4.1.1.1 軸方向力をうける部材
軸方向力をうける部材は,次式を満足するように決定する。
a) 引張材の場合
Nt/At≦f・σtd ・・・・式4.1
b) 圧縮材の場合
Nc/Ac≦f・σkd ・・・・式4.2
ここに,
Nt:引張力(N)
Nc:圧縮力(N)
At:引張材の有効断面積(mm2)
Ac:圧縮材の断面積(mm2)
σtd:引張限界耐力(N/mm2)
σkd:座屈限界耐力(N/mm2)
f:耐力係数

4.1.1.2 曲げモーメントをうける部材
曲げモーメントをうける部材は,次式を満足するように決定する。
M/Zt≦f・σbd
M/Zc≦f・σbd ・・・・ 式4.3

31
JEC-TR-00007:2015

ここに,
M:曲げモーメント(N・mm)
Zt:引張側断面係数(mm3)
Zc:圧縮側断面係数(mm3)
σbd:曲げ限界耐力(N/mm2)
f:耐力係数

4.1.1.3 組み合せ応力をうける部材
組み合せ応力を受ける部材は,次式を満足するように決定する。
a) 引張力と曲げモーメントを同時に受ける場合
Nt M
+ ≦f・σtd ・・・・式4.4
At Zt
b) 圧縮力と曲げモーメントを同時に受ける場合
s cd N c M
× + ≦f・σcd ・・・・式4.5
s kd Ac Z c
ここに,
Nt:引張力(N)
Nc:圧縮力(N)
At:引張材の有効断面積(mm2)
Ac:圧縮材の断面積(mm2)
M:曲げモーメント(N・mm)
Zt:引張側断面係数(mm3)
Zc:圧縮側断面係数(mm3)
σtd:引張限界耐力(N/mm2)
σkd:座屈限界耐力(N/mm2)
σcd:圧縮限界耐力(N/mm2)
f:耐力係数

4.1.2 ボルト接合部の応力度算定
4.1.2.1 せん断接合ボルト
せん断接合ボルトは,ボルトねじ部に生じるせん断応力度と,ねじ部と接合部材のボルト孔壁との間に
生じる支圧応力度の両方がそれぞれ,次式を満足するように決定する。
P
tb = ≦f・σsd ・・・・一面せん断の場合
nA sb
P
tb = ≦f・σsd ・・・・二面せん断の場合 ・・・・式4.6
2 nA sb
P
bb = ≦f・σld
nd b t
ここに,
τb:ボルトねじ部に生じるせん断応力度(N/mm2)
βb:ボルトねじ部と接合部材のボルト孔壁との間に生じる支圧応力度(N/mm2)

32
P:接合部に作用する力(N)
n:接合部のボルト本数
Asb:ボルトのせん断有効断面積(mm2)
db:ボルトの支圧有効径(mm)
t:部材厚さ(接合される両部材の厚さの小さい方)(mm)
σsd:ボルトのせん断限界耐力(N/mm2)
σld:ボルト,または接合部材の支圧限界耐力のうち小さい方の値(N/mm2)
f:耐力係数

4.1.2.2 引張接合ボルト
引張接合ボルトは,引張接合ボルトのねじ部に生じる引張応力度が,次式を満足するように決定する。

σt=P/Atb ≦f・σtd ・・・・式4.7


ここに,
σt:ボルトねじ部に生じる引張応力度(N/mm2)
P:接合部に作用する力(N)
Atb:ボルトの引張有効断面積(mm2)
σtd:ボルトの引張限界耐力(N/mm2)
f:耐力係数

4.1.3 溶接接合部の応力度算定
4.1.3.1 軸方向力またはせん断力が作用する溶接部
引張力,圧縮力またはせん断力が作用する溶接接合部は,溶接部に生じる引張応力度,圧縮応力度また
はせん断応力度が,次式を満足するように決定する。
P
s= ≦f・σd
å aL
P
t= ≦f・τd ・・・・式4.8
å aL
ここに,
σ:溶接部に生じる引張または圧縮応力度(N/mm2)
τ:溶接部に生じるせん断応力度(N/mm2)
P:接合部に作用する力(N)
a:溶接の理論のど厚(mm)
L:溶接の有効長さ(mm)
σd:溶接接合部の引張限界耐力または圧縮限界耐力(N/mm2)
τd:溶接接合部のせん断限界耐力(N/mm2)
f:耐力係数

4.1.3.2 曲げモーメントが作用する溶接部
曲げモーメントが作用する溶接接合部は,溶接部に生じる曲げ応力度が次式を満足するように決定する。

33
JEC-TR-00007:2015

σ=M/Z ≦f・σd ・・・・式4.9


ここに,
σ:溶接部に生じる曲げ応力度(N/mm2)
M:継手に作用する曲げモーメント(N・mm)
Z:全のど断面係数(mm3)
すみ肉溶接の場合には,継手ルートを中心として,のど厚を接合面まで回転させた
図形による。
σd:溶接接合部の曲げ限界耐力(N/mm2)
f:耐力係数

4.1.3.3 軸方向力または曲げモーメントとせん断力が同時に作用する溶接部
継手に軸方向力または曲げモーメントとせん断力が同時に作用する溶接部は,溶接部に生じる応力度が,
完全溶け込み溶接継手に対しては式4.10,部分溶け込み溶接継手およびすみ肉溶接継手に対しては式4.11
を満足するように決定する。
s 2 + 3t 2 ≦f・σd ・・・・式4.10
s + t ≦f・τd
2 2
・・・・式4.11
ここに,
σ:溶接部に生じる軸方向応力度または曲げ応力度(N/mm2)
τ:溶接部に生じるせん断応力度(N/mm2)
σd:溶接接合部の引張限界耐力または圧縮限界耐力(N/mm2)
τd:溶接接合部のせん断限界耐力(N/mm2)
f:耐力係数

4.2 上部構造の損傷限界耐力および設計細則
4.2.1 材料および損傷限界耐力
4.2.1.1 材料
鉄塔に使用する鋼材,接合に用いるボルトは,特別な場合を除き,日本工業規格(JIS)で規定された
鋼材を用いる。
a) 鋼材
表4.1-鋼材
規 格 種 類
一般構造用圧延鋼材 JIS G 3101 SS400,SS490,SS540
溶接構造用圧延鋼材 JIS G 3106 SM400,SM490,SM490Y,SM520,SM570
一般構造用炭素鋼鋼管 JIS G 3444 STK400,STK490,STK500,STK540
溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材 JIS G 3114 SMA400,SMA490,SMA570
鉄塔用高張力鋼鋼材 JIS G 3129 SH590
鉄塔用690N/mm2高張力山形鋼 JSS Ⅱ 12 JS690S
鉄塔用高張力鋼管 JIS G 3474 STKT590
鉄塔フランジ用高張力鋼鍛鋼品 JIS G 3223 SFT590

34
b) ボルト
表4.2-ボルト
規格 強度区分
JIS B 1051 4.6,5.8,6.8,9.8,10.9

4.2.1.2 鋼材の定数
設計に用いる鋼材の定数は,表4.3による。
表4.3-鋼材の定数
弾性係数 せん断弾性係数 線膨張係数
材料 ポアソン比
(N/mm2) (N/mm2) (1/℃)
鋼,鋳鋼,鍛鋼 206,000 79,000 0.3 0.000012

4.2.1.3 損傷限界耐力
鋼材,ボルトおよび溶接の損傷限界耐力(以下,単に限界耐力と呼ぶ)は以下を標準とする。
a) 構造用鋼材
鋼材の限界耐力は以下を標準とする。
1) 引張限界耐力 s td = s Y ただし, 0.7s B 以下
2) 圧縮限界耐力 s cd = s Y
3) 曲げ限界耐力 s bd = s Y
4) せん断限界耐力 s sd = s Y / 3 ただし, 0.7s B / 3 以下
5) 支圧限界耐力 s ld = 1.875s Y (板厚が4mm以上)
s ld = 1.65s Y (板厚が4mm未満)
6) 座屈限界耐力 s kd

圧縮材の座屈限界耐力 s kd は,その有効細長比に応じて次式で計算する。
é æ ö æ ö
2
ù
lk lk
0 < lk < L s kd = s Y ê K 0 - K1 ç ÷-K ç ÷ ú
ê çp E /s ÷ 2
çp E /s ÷ ú
ëê è Y ø è Y ø ûú
・・・・式4.12
1.5 p 2 E
L £ lk s kd =
2.2 lk 2
1.5E
ただし L =p
2.2ks Y

ここに,
s Y :材料の降伏点応力度(N/mm2)
s B :材料の引張強さ(N/mm2)
lk :有効細長比 lk = lk / r
lk :部材の有効座屈長さ(mm)
r :回転半径(mm)
E :弾性係数 206,000(N/mm2)
L : lk の境界値
k , K 0 , K1 , K 2 :構造および部材の断面形状によって決まる係数で,表4.4の数値を標準とする。

35
JEC-TR-00007:2015

表4.4-諸係数
係 数
部材種類
k K0 K1 K2
(a)偏心の極めて少ない構造材 0.6 1 0 0.352
(b)偏心の比較的少ない構造材 0.5 0.945 0.0123 0.316
(c)偏心の多い構造材*1 0.3 0.939 0.424 0
注1:(c)の場合 s kd ≦0.6 s Y
b) ボルト
ボルトの限界耐力は,4.2.1.3a)構造用鋼材に準ずるものとする。
ただし,支圧限界耐力は以下を標準とする。
ボルトの支圧限界耐力 s ld = 1.65s Y
c) 溶接
アーク溶接継目ののど断面に対する限界耐力は,以下を標準とする。
1)突合せ溶接継手の引張・圧縮・せん断・曲げ限界耐力
接合される母材の引張・圧縮・せん断・曲げ限界耐力を突き合わせ溶接継ぎ手の限界耐力とする。
2)すみ肉溶接の限界耐力
接合される母材のせん断限界耐力をすみ肉溶接の限界耐力とする。
3)異種鋼材の限界耐力
接合される母材の小さい方の値を異種鋼材で溶接する際の限界耐力とする。

4.2.2 部材および接合部の設計細則
4.2.2.1 部材・ボルトの有効断面積
部材,ボルト・ボルト孔の有効断面積は以下を標準とする。
a) 部材
1) 引張材
ボルト孔を縫って想定される各種の破断線について算出した断面積中,最小のものとする。また
部材端部の接合状態により全面的に均等な引張力が働き得ない場合は,部材の有効断面積をさらに
適切に低減する。コンクリートまたはモルタル充てん鋼管材では鋼管を有効断面積とする。
2) 圧縮材
全断面積をとるものとし,ボルト孔の控除を要しない。コンクリートまたはモルタル充てん鋼管
材ではコンクリートまたはモルタルを鋼に換算した等価断面積を有効断面積とする。
b) ボルト・ボルト孔
1) せん断,引張(有効断面積)
ボルトのせん断および引張に対しては,そのねじの有効径と谷径の平均値を有効断面積とする。
2) 支圧(有効径)
ボルトおよびボルト孔の支圧に対しては,ボルトのねじの有効径と谷径の平均値の支圧面積とす
る。

36
4.2.2.2 圧縮材の細長比および有効細長比
圧縮材の細長比および有効細長比は以下による。
a) 細長比
圧縮材の細長比( l / r )の制限は,以下による。
1) 主柱材・腕金主材 200以下
2) 主柱材以外の圧縮材 220以下
3) 圧縮材を補剛するために使用される補助材 250以下
b) 有効細長比
圧縮材の基準座屈応力度を算定する際の有効細長比 l k (l k / r ) は,材端支持状態を考慮してとるこ
とができる。

4.2.2.3 部材の最小厚さ
部材の最小厚さは加工,運搬および組立時に形状が変形しないよう,また腐食等による断面の損傷も考
慮して定めるものとする。

4.2.2.4 部材の接合
部材の接合は,ボルトまたは溶接により接合することを標準とする。ただし,適切な接合方法による場
合はこの限りでない。

4.2.2.5 ボルト接合
ボルト接合の形式はせん断接合および引張接合を標準とする。ただし,その他の適切なボルト接合形式
にて接合する場合はこの限りでない。

4.2.2.6 溶接接合部
溶接接合部の形式および溶接部の有効断面積は以下によることを標準とする。
a) 溶接接合部の形式
溶接接合部の形式は,突合せ溶接およびすみ肉溶接を標準とする。ただし,その他の適切な溶接継
手形式による場合はこの限りでない。
b) 溶接部の有効面積
溶接部の有効面積は有効厚さと有効長さの積による。
なお,有効厚さは,その溶接の理論のど厚とし,有効長さは設計どおりの理論のど厚を有する溶接
部の長さとする。

4.2.2.7 最下節の構造計算
最下節は,必要に応じて全体座屈の影響等を考慮し,上部設計とは別に設計を行う。

37
JEC-TR-00007:2015

5 基礎構造
5.1 基本事項(基礎の分類等)
基礎の種類は,支配的となる作用荷重の種類によって鉛直荷重基礎とモーメント荷重基礎の2種類に分
類される。
鉛直荷重基礎 :鉛直方向の圧縮および引揚荷重が支配的な基礎のこと。一般の鉄塔基礎をいう。
モーメント荷重基礎:転倒モーメント荷重が支配的な基礎のこと。2脚または4脚の基礎が一体である
ような基礎をいう。

5.1.1 基礎型
基礎型は,荷重を地盤に伝達する方法および施工方法の違いによって分類したもので,主なものとして,
逆T字基礎,深礎基礎,杭基礎,マット基礎がある。

5.2 設計条件
5.2.1 地盤調査および試験
地盤調査は,基礎の設計および施工に際して必要となる地盤の種類と構成,物理的性質および変形・強
度等の力学的性質を把握する目的で行う。その規模や方法は,地盤の種類,設備の重要度等に応じて適切
に選定しなければならない。

5.2.1.1 特に注意すべき地形や地質
鉄塔の建設地点選定においては,下記のような地点を特に注意すべき地形や地質として可能な限り避け
る。これらの地点に止むを得ず鉄塔を建設する必要が生じた場合には十分な検討を実施し,適切な対策を
施すことによって建設地点とすることができる。
a) 地すべり・斜面崩壊の恐れのある箇所
b) 軟弱な土質が厚く堆積している箇所
c) 地震時に液状化・側方流動の発生が懸念される箇所
d) 河川の氾濫による洗掘が懸念される箇所
e) 遺跡・遺構・断層等が付近にある箇所

5.2.2 基礎の設計荷重
基礎設計に用いる荷重は次のとおりとする。
a) 2.荷重に定める各設計荷重とその組み合せによって上部構造から伝達される圧縮力,引揚力および水平力。
b) その他特殊な荷重。

5.2.3 支持層の選定
支持層には,基礎を安定して支持することのできる良質な地層を選定することを原則とする。
ただし,特殊な場合には,地盤の耐力等について十分検討のうえ,軟弱地盤を支持層とすることができ
る。

38
5.2.4 基礎型の選定
基礎は上部構造の特性,地盤の構成,敷地の状況および施工性ならびに周囲への影響等を総合的に考慮
して,合理的な基礎型を選定しなければならない。

5.2.5 基礎地盤の耐力
基礎地盤の耐力は,降伏支持力または基礎の変位から制限される支持力のうち,いずれか小さい支持力
とする。

5.2.6 基礎の支持力
基礎は上部構造を安全に支持し,構成部材に有害な影響を及ぼすような変位を起こさないように設計す
るものとし,その支持力は次によるものを標準とする。
a) 強風時状態,着氷雪時状態,作業時状態,異常時状態および地震時状態の荷重に対する支持力は,地盤耐
力に対し1/1.33とする。
b) 日常的な荷重に対する支持力は,地盤耐力に対し1/2とする。

5.2.7 基礎構造材料の損傷限界耐力
基礎構造材料の損傷限界耐力は,上部構造材料の損傷限界耐力による他,次によるものを標準とする。
また,断面算定に用いる鋼とコンクリートのヤング係数比nは15とする。

5.2.7.1 コンクリートの損傷限界耐力度
コンクリートの設計基準強度(一般に材齢28日の圧縮強度Fc)を基準とし定めるものとし表5.1による。
表5.1-コンクリートの損傷限界耐力度(N/mm2)

項 目 圧 縮 引 張 せ ん 断

損傷限界 1 1 1 1.5
Fc Fc (※) Fcまたは0.75 + Fcのいずれか小さい値以下
耐力度 2 20 20 100
(※)無筋コンクリートのみ適用する。

5.2.7.2 鉄筋の損傷限界耐力度
鉄筋は異形棒鋼を標準とし,損傷限界耐力度を降伏点強度とし表5.2による。
表5.2-鉄筋の損傷限界耐力度(N/mm2)
損傷限界耐力度
鉄筋の規格
引張および圧縮 せん断補強

SD295AおよびSD295B 295 295

SD345 345 345

39
JEC-TR-00007:2015

5.2.7.3 鋼材とコンクリートの付着に対する損傷限界耐力度
コンクリートの設計基準強度を基準とし定めるものとし,表5.3によるものとする。
表5.3-鋼材とコンクリートの付着に対する損傷限界耐力度(N/mm2)
項目 曲げ材
定着,継手
鋼材種類 上端筋 一般鉄筋
異形棒鋼 1 1.5 1
Fc かつ Fc かつ Fc かつ
10 10 10
æ 2 ö æ 1 ö æ 2 ö
1.5 ´ ç 0.9 + Fc ÷ 1.5 ´ ç1.35 + Fc ÷ 1.5 ´ ç 0.9 + Fc ÷
è 75 ø è 25 ø è 75 ø
以下 以下 以下
形鋼および鋼管 3
Fc かつ0.675
― ― 100
以下

5.2.8 鉄塔基礎の耐震検討
5.2.8.1 耐震検討の基本的な考え方
鉄塔基礎の周辺地盤において,地震時に斜面崩壊,液状化が発生する恐れがある場合には,基礎の耐震
検討を実施する必要がある。

5.2.8.2 耐震検討に用いる荷重
地震時に考慮する基礎に作用する荷重は,次のとおりである。
a) 上部構造から基礎に作用する荷重
b) 地震の影響による基礎等の慣性力
c) 地盤の変位に伴って発生する応力
d) 斜面の不安定化に伴って発生する主働土圧

5.2.8.3 斜面の安定に関する検討
地震時に斜面崩壊の恐れがある地盤に基礎を構築する場合には,斜面崩壊に留意した設計を行う。

5.2.8.4 地盤の液状化に関する検討
液状化の恐れがある地盤に基礎を構築する場合は,液状化に留意した設計を行う。

5.3 基礎の安定・構造計算
5.3.1 逆T字基礎の設計
5.3.1.1 適用
本項は,逆T字基礎の設計に適用するものとする。逆T字基礎を適切に設計するためには,本項に記述
されている事項を十分に理解し,適切に運用しなければならない。

40
5.3.1.2 安定照査
逆T字基礎の安定照査は,圧縮荷重,引揚荷重および水平荷重について実施する。
a) 圧縮荷重に対する照査
基礎底面に働く最大接地圧が,基礎底面地盤の圧縮に対する損傷限界耐力度以下であることを照査
する。
qa ≧ Qd max

F (ic・a・c・N c + iγ・b・g 1・B・N g + iq・g 2・D f ・N q )


1
qa =
1.5 ・・・・式5.1
C + G + WS
Qd max = m
A
ここに,
qa:床板底面地盤の圧縮に対する損傷限界耐力度(kN/m2)
Qd max:床板底面に働く最大接地圧(kN/m2)
c:床板底面地盤の粘着力(kN/m2)
γ1:床板底面下にある地盤の単位体積重量(kN/m3)
(地下水面下にある部分については,水中単位体積重量をとる)
γ2:床板底面より上方にある地盤の単位体積重量(kN/m3)
(地下水面下にある部分については,水中単位体積重量をとる)
α,β:基礎の形状係数
Nc,Nγ,Nq:支持力係数(基礎体底面下にある地盤の内部摩擦角φの関数)
ic,iγ,iq:荷重の傾斜に対する補正係数
Df:設計地表面から床板底面までの深さ(m)
B:床板幅(m)
F:地盤の不確定性に対する耐力係数:0.75(=1/1.33)
C:上部構造からの圧縮力(kN)
G:基礎体の重量(kN)
(地下水面下にある部分については,水中単位体積重量をとる)
WS:床板直上の土の重量(kN)
(地下水面下にある部分については,水中単位体積重量をとる)
A:床板底面積(m2)
μ:床板底面に働く転倒モーメントによる接地圧倍率
b) 引揚荷重に対する照査
基礎に加わる引揚荷重が,基礎体上方の土の重量およびすべり面に作用するせん断力からなる基礎
地盤の引揚に対する損傷限界耐力以下であることを照査する。照査にあたっては,想定される地盤の
せん断破壊の形状によって対数らせん式またはせん断式を適用する。
1) 拡底基礎等原地盤にせん断破壊が発生すると想定される場合(対数らせん式)
原地盤にせん断破壊が発生すると想定される場合の引揚荷重に対する照査は以下による。また,
このときの考え方を図5.1に示す。

41
JEC-TR-00007:2015

1.1) 砂質土の場合
Rta ≧ T
ì c ü
Rta = G + k・F íg (K1 - Vc1 ) +
・・・・式5.2
K2 + Rf ý
î 1.5 þ
ただし,
K1 = p・x1
3
{(a'-1)(a' ・f
2
1 ) }
+ a '・f 2 + a '・b'・f 3 + b'・f 4 + f 5 + b'
2é ì æ f ö üù ・・・・式5.3
K 2 = p・x1 ê(a '-1)(a '・f 6 + f 7 ) + b' íb'・tan ç 45° + ÷ + 2ýú
ë î è 2 ø þû
ここに,
Rta:基礎地盤の引揚に対する損傷限界耐力(kN)
T:上部構造からの引揚力(kN)
G:基礎体の重量(kN)
(地下水面下にある部分については,水中単位体積重量をとる)
γ:床板上面より上方にある地盤の単位体積重量(kN/m3)
(地下水面下にある部分については,水中単位体積重量をとる)
c:床板上面より上方にある地盤の粘着力(kN/m2)
φ:床板上面より上方にある地盤の内部摩擦角(°)
Vc1:床板縁端上面より上部にある基礎体土中体積(m3)
x1:すべり面を対数らせん(ρ=ρ0・eθ・tanφ,θ0=55~60°)と直線の合成としたとき,基礎の中
心より対数らせんから直線への移行点までの距離(m)
a',b':すべり面係数 a ' = xo D
b' = 1
x1 x1
x0:基礎中心から対数らせんの中心までの距離(m)
D1:地表面から対数らせんが直線へ移行する点までの距離(m)
f1~f7:抵抗係数,土の内部摩擦角φの関数
K1,K2(K2'):内部摩擦角φと床板幅B(円形床板としているので四角床板の場合は,それ
と等価面積の円形に換算する)および地表面から床板縁端上面までの深さDにより
決まる係数。なお,K1は概ね床板縁端より上方のすべり面内の体積,K2(K2')は概ね
すべり面の周面積を表す。
F:地盤の不確定性に対する耐力係数:0.75(=1/1.33)
k:モーメントによる引揚耐力低下係数
Rf:床板側面と地盤の降伏摩擦力(kN)
1
R f = ・t u・A f ・・・・式5.4
1 .5
Af:床板側面の周面積(m2)
τu:地盤の極限せん断抵抗応力度(kN/m2)
t u = c + K・s・tan f
K:土圧係数(0.5~1.0程度)
σ:床板側面に働く水平土圧(kN/m2)
æ tö
s = gçD + ÷
è 2ø

42
t:床板縁端の高さ(m)

T
K1は、概ね土の体積を表す

K1
D Vc1 cK2(せん断抵抗)

図5.1-引揚荷重に対する照査(対数らせん式)
1.2) 粘性土の場合
Rta ≧ T
ì c ü ・・・・式5.5
Rta = G + k・F íg (K1 - VC1 ) + ・K 2 '+ R f ý
î 1.5 þ
ただし,
K1 = p・x1
3
{(a'-1)(a' ・f
2
1 ) }
+ a '・f 2 + a '・b'・f 3 + b'・f 4 + f 5 + b'
・・・・式5.6
K 2 ' = p・x1 (a '-1)(a '・f 6 + f 7 )
2

ただし,x1の算出はθ0=40°で計算する。
2) 鉛直掘基礎で原地盤と埋め戻し土の境界でせん断破壊が発生と想定される場合(せん断式)
原地盤と埋め戻し土の境界でせん断破壊が発生すると想定される場合の引揚荷重に対する照査は
以下による。また,このときの考え方を図5.2に示す。
Rta ≧ T
Rta = G + k・F (WS + R f + Rd ) ・・・・式5.7
ただし,
1 ì æ tö ü
R f = A f íc + K・g ç D + ÷ tan f ý
1.5 î è 2ø þ
1 æ D ö
Rd= Ad ç cs + K・g s tan f S ÷
1.5 è 2 ø
ここに,
Rta:基礎地盤の引揚に対する損傷限界耐力(kN)
T:上部構造からの引揚力(kN)
G:基礎体の重量(kN)
(地下水面下にある部分については,水中単位体積重量をとる)
F:地盤の不確定性に対する耐力係数:0.75(=1/1.33)
k:モーメントによる引揚耐力低下係数
Ws:床板直上の土の重量(kN)
(地下水面下にある部分については,水中単位体積重量をとる)
Rf:床板側面と地盤の降伏摩擦力(kN)

43
JEC-TR-00007:2015

Rd:床板縁端上面より上部にある地盤の降伏せん断抵抗力(kN)
Af:床板側面の周面積(m2)
Ad:床板縁端より上方の周面積(m2)
c:床板側面の地盤の粘着力(kN/m2)
cs:床板上面より上方にある埋め戻し地盤の粘着力(kN/m2)
φ:床板側面の地盤の内部摩擦角(°)
φs:床板上面より上方にある埋め戻し地盤の内部摩擦角(°)
γ:床板側面より上方にある地盤の単位体積重量(kN/m3)
γs:床板上面より上方にある埋め戻し地盤の単位体積重量(kN/m3)
t:床板縁端の高さ(m)
D:地表面より床板縁端上面までの深さ(m)
K:土圧係数(0.5~1.0程度)

a)余掘りなし b)余掘りあり
図5.2-引揚荷重に対する照査(せん断式)
なお,Rfの算出式は,図5.2 a)に示す床板側面が原地盤に密着して施工された余掘りなしの場合に採
用できるものであるため,図5.2 b)の余掘りありの場合は土質条件を埋め戻し土としなければならない。
c) 水平荷重に対する照査
照査にあたっては,圧縮力と引揚力を受ける場合に分けて検討を行う。
1) 圧縮脚
圧縮脚の場合,基礎に加わる水平力が,基礎床板側面の受働土圧および床板底面の摩擦力からな
る水平力に対する損傷限界耐力以下であることを照査する。
RHa ≧ QC
1 ì æ tö ü ・・・・式5.8
RHa = F í K p・g・As ç D + ÷ + 2c・AS K p + A(c + s V・tanf )ý
1.5 î è 2ø þ
2) 引揚脚
引揚脚の場合,基礎に加わる水平力が,基礎床板側面の受働土圧からなる水平力に対する損傷限
界耐力以下であることを照査する。
RHa ≧ QT
1 ì æ tö ü ・・・・式5.9
RHa= F í K p・g・AS ç D + ÷ + 2c・AS K p ý
1.5 î è 2ø þ
ここに,
RHa:基礎地盤の水平力に対する損傷限界耐力(kN)

44
QC:圧縮側基礎に加わる全水平力(kN)
QT:引揚側基礎に加わる全水平力(kN)
F:地盤の不確定性に対する耐力係数:0.75(=1/1.33)
KP:受働土圧係数
cos 2 f
KP =
sin f・sin (f - q1 ) ö
2
æ
ç1 - ÷
ç cosq1 ÷
è ø
θ1:地盤の傾斜角(°)
γ:床板側面より上方にある地盤の単位体積重量(kN/m3)
As:床板側面積(ただし,円形の床板の場合は床板側面の投影面積とする)(m2)
A:床板底面積(m2)
D:地表面より床板縁端上面までの深さ(m)
t:受働土圧を受ける床板縁端の高さ(m)
c:地盤の粘着力(kN/m2)
σV:床板底面の平均接地圧(kN/m2)
C + G + WS
sV =
A

5.3.1.3 基礎体の構造計算
基礎体の構造計算は,次のとおりとする。
a) 柱体部の設計
柱体部に作用するせん断力,曲げモーメントによって柱体部および柱体部と床板部との境界部に発
生する応力度は,損傷限界耐力度以下とする。
b) 床板部の設計
床板部に作用するせん断力,曲げモーメントによって床板部に発生する応力度は,損傷限界耐力度以下
とする。

5.3.2 深礎基礎の設計
5.3.2.1 適用
本項は,深礎基礎の設計に適用するものとする。深礎基礎を適切に設計するためには,本項に記述され
ている事項を十分に理解し,適切に運用しなければならない。
深礎基礎は斜面上に構築される単独の柱状体基礎で,ライナープレート等で地山を保護しながら内部を
円形に掘削し,コンクリートの躯体を構築した基礎である。

5.3.2.2 安定照査
深礎基礎の安定照査は,斜面の影響を考慮し,想定する荷重に応じて躯体および地盤を適切に評価した
計算モデルを用いて,圧縮・引揚・水平支持力について実施する。
a) 圧縮荷重に対する照査
鉛直圧縮荷重に対しては,基礎の先端支持力と躯体部周面の摩擦抵抗力で抵抗するとして安全性
を照査する。

45
JEC-TR-00007:2015

圧縮荷重に対しては,下式を満足しなければならない。
qa ≧ Qd max

F (a・c・N c + b ・g 1・B・N g + g 2・D f ・N q )


1
qa =
1.5 ・・・・式5.10
C + G + WS - R fa
Qd max = m
A
ここに,
qa:躯体底面地盤の圧縮に対する損傷限界耐力度(kN/m2)
Qdmax:躯体底面に働く最大接地圧(kN/m2)
F:地盤の不確定性に対する耐力係数:0.75(=1/1.33)
α,β:基礎の形状係数
c:躯体底面地盤の粘着力(kN/m2)
γ1:躯体底面下にある地盤の単位体積重量(kN/m3)
γ2:躯体底面より上方にある地盤の単位体積重量(kN/m3)
Df:設計地表面から躯体底面までの深さ(m)
φ:躯体底面地盤の内部摩擦角(°)
Nc,Nq,Nγ:支持力係数
C:上部構造からの圧縮力(kN)
G:基礎体の重量(kN)
Ws:躯体直上の土の重量(kN)
A:躯体底面積(m2)
Rfa:躯体部周面の摩擦に対する損傷限界耐力(kN)
1
R fa = p・B・S i・t yi ・・・・式5.11
F
B:躯体径(m)
τyi:原地盤の第i層の降伏せん断応力度(kN/m2)
1
t yi = (ci + K・s vi・tan fi )
1 .5
ci:せん断抵抗力を考慮する第i層の粘着力(kN/m2)
K:土圧係数(0.5~1.0程度)
σvi:せん断抵抗力を考慮する第i層の鉛直応力度(kN/m2)
i -1
s vi = å (g j・ j ) + i g i

j =1 2
φi:せん断抵抗力を考慮する第i層の内部摩擦角(゜)
γi:第i層の地盤の単位体積重量(kN/m3)
ℓi:せん断抵抗力を考慮する第i層の層厚(m)
μ:躯体底面に働く転倒モーメントによる接地圧倍率(一般にμ=1としてよい)

46
b) 引揚荷重に対する照査
鉛直引揚荷重に対しては,基礎体重量と躯体直上の土の重量および躯体部周面の摩擦抵抗力で抵
抗するとして安全性を照査する。
Rta ≧ T
Rta = G + F (WS + R f )
・・・・式5.12

ここに,
Rta:基礎地盤の引揚に対する損傷限界耐力(kN)
T:上部構造からの引揚力(kN)
G:基礎体の重量(kN)
F:地盤の不確定性に対する耐力係数:0.75(=1/1.33)
Ws:躯体直上の土の重量(kN)
Rf:躯体側面と地盤の降伏摩擦力(kN)
R f = p・B・å ( i・t yi )
n

i =1

B:躯体径(m)
τyi:原地盤の第i層の降伏せん断応力度(kN/m2)
1
t yi = (c i + K ・ s vi・ tan f i )
1 .5
ci:せん断抵抗力を考慮する第i層の粘着力(kN/m2)
K:土圧係数(0.5~1.0程度)
σvi:せん断抵抗力を考慮する第i層の鉛直応力度(kN/m2)
i -1
( 
s vi = å g j・ j + i g i)
j =1 2
γi:第i層の地盤の単位体積重量(kN/m3)
ℓi:せん断抵抗力を考慮する第i層の層厚(m)
φi:せん断抵抗力を考慮する第i層の内部摩擦角(゜)
c) 水平荷重に対する照査
水平荷重に対しては,基礎前面地盤の水平地盤反力で主に抵抗するとして安全性を照査する。
1
Q≦ F・Qu ・・・・式5.13
1 .5
ここに,
Q:上部構造からの水平力(kN)
F:地盤の不確定性に対する耐力係数:0.75(=1/1.33)
Qu:極限水平支持力(kN)

5.3.2.3 基礎体の構造計算
基礎体の構造計算は,次のとおりとする。
a) 柱体部の設計
柱体部の設計は,逆T字基礎の設計に準じる。
b) 躯体部の設計
躯体部の設計は,曲げモーメント,せん断力,軸力を受ける鉄筋コンクリート断面とみなして算定

47
JEC-TR-00007:2015

し,圧縮時,引揚時について,コンクリートおよび鉄筋に発生する応力度が損傷限界耐力度以下であ
ることを照査する。
c) 最小鉄筋比
躯体の主鉄筋量は,鉄筋比(全主鉄筋量/躯体断面積)が最小鉄筋比0.1%以上とする。

5.3.3 杭基礎の設計
5.3.3.1 適用
本項は,杭基礎の設計に適用するものとする。杭基礎を適切に設計するためには,本項に記述されてい
る事項を十分に理解し,適切に運用しなければならない。
杭基礎は一般に良質な支持層が深い地盤で,支持層まで先端を到達させた杭体を逆T字基礎やマット基
礎等と組み合せる基礎で,杭体には鋼管,既製コンクリート(PHC),場所打ちコンクリート等が使用さ
れる。

5.3.3.2 安定照査
杭基礎の安定照査は,圧縮支持力,引揚支持力および水平支持力について実施する。なお,杭相互の間
隔が小さい場合は群杭としての照査を実施する必要がある。
a) 圧縮荷重に対する照査
杭に働く圧縮力が,地盤の圧縮に対する損傷限界耐力以下であることを照査する。
Rca ≧ C p

F {q p・Ap + (t s・Au s + t c・Au c )}


1
Rca = ・・・・式5.14
1.5
C p = Pc + W p
ここに,
Rca:単杭における地盤の圧縮に対する損傷限界耐力(kN)
Cp:杭1本あたりに作用する圧縮力(kN)
qp:杭の極限先端支持力度(kN/ m2)
Ap:杭先端の断面積(m2)
τs:砂質土の極限周面摩擦力度(kN/m2)
τc:粘性土の極限周面摩擦力度(kN/m2)
Aus:砂質土層に接した杭の表面積(m2)
Auc:粘性土層に接した杭の表面積(m2)
F: 地盤の不確定性に対する耐力係数:0.75(=1/1.33)
Pc:杭頭に作用する杭1本あたりの圧縮力(kN)
Wp:杭1本あたりの重量(kN)
b) 引揚荷重に対する照査
単杭の杭頭に働く引揚力が,単杭の引揚に対する損傷限界耐力以下であることを照査する。
Rta ≧ Pt
1 ・・・・式5.15
Rta = F (t s・ Aus + t c・ Auc ) + W p
1 .5
ここに,

48
Pt:杭頭に作用する杭1本あたりの引揚力(kN)
Rta:単杭における基礎地盤の引揚に対する損傷限界耐力(kN)
F:地盤の不確定性に対する耐力係数:0.75(=1/1.33)
τs:砂質土の極限周面摩擦力度(kN/m2)
τc:粘性土の極限周面摩擦力度(kN/m2)
Aus:砂質土層に接した杭の表面積(m2)
Auc:粘性土層に接した杭の表面積(m2)
Wp:杭1本あたりの重量(地下水位以下の部分については浮力を考慮する)(kN)
c) 水平荷重に対する照査
単杭の杭頭における水平変位量が,許容水平変位量以下であることを照査する。
d 0 ≧ d ・・・・式5.16
ここに,
δ:杭頭水平変位量(mm)
δ0:杭頭許容水平変位量(mm)

5.3.3.3 基礎体の構造計算
基礎体の構造計算は,次のとおりとする。
a) 柱体部の設計
柱体部の設計は,逆T字基礎の設計に準じる。
b) 床板部の設計
杭頭反力によって生じる床板部に作用するせん断力,曲げモーメントによって床板部に発生する応
力度は,損傷限界耐力度以下とする。
c) 杭体の設計
杭体に生じるせん断力および曲げ応力度は,損傷限界耐力度以下とする。
d) 基礎体と杭の結合
杭と床板の結合方法は原則として杭頭剛結合として設計するものとし,結合部に生じる応力度に対
して損傷限界耐力度以下とする。

5.3.3.4 その他留意事項
その他留意しなければならない事項は,次のとおりとする。
a) ネガティブフリクション
杭等が圧密の可能性のある軟弱層を貫いて支持されている基礎では,地下水位の変動や鉄塔周辺の
盛土等によってその軟弱層に圧密沈下が生じ,ネガティブフリクション(負の摩擦力)として先端荷
重および杭等の応力度を増加させるため,これを基礎に作用する荷重として検討する必要がある。
b) 地盤の液状化
液状化とは地震等の衝撃・振動によって土粒子の間の水圧が急激に上昇し,飽和した砂質土層がせ
ん断強度を失い,土粒子間の構造が破壊し,泥水状の液体状態になる現象である。液状化が発生する
と側方流動,地盤沈下等地盤に悪影響をおよぼすことがあるので,事前に十分な調査検討を実施する
必要がある。

49
JEC-TR-00007:2015

5.3.3.5 マット型杭基礎
基礎体にマット基礎を適用したマット型杭基礎は,逆T字型の床板を用いた杭基礎と杭頭に加わる荷重
の計算式が異なっていることを除いて,基本的に同様の設計をおこなう。

5.3.4 マット基礎の設計
5.3.4.1 適用
本項は,マット基礎の設計に適用するものとする。マット基礎を適切に設計するためには,本項に記述
されている事項を十分理解し,適切に運用しなければならない。

5.3.4.2 安定照査
マット基礎の安定照査は,圧縮荷重,転倒および水平荷重について実施する。
a) 圧縮荷重に対する照査
床板底面に働く最大接地圧は,床板底面地盤の圧縮に対する損傷限界耐力度以下となることを照査
する。圧縮支持力度の算定は,Terzaghiの支持力式を基本とする。
qa ≧ Qd max

F (ic × a × c × N c + ig × b × g 1 × B × N g + iq × g 2 × D f × N q )
1
qa =
1.5 ・・・・式5.17
V
Qd max = m
A
ここに,
qa:床板底面地盤の圧縮に対する損傷限界耐力度(kN/m2)
Qdmax:床板底面に働く最大接地圧(kN/m2)
F:地盤の不確定性に対する耐力係数:0.75(=1/1.33)
ic,iγ,iq:荷重の傾斜に対する補正係数
α,β:基礎の形状係数
Nc,Nγ,Nq:支持力係数
c:床板底面地盤の粘着力(kN/m2)
γ1:床板底面下にある地盤の単位体積重量(kN/m3)
γ2:床板底面より上方にある地盤の単位体積重量(kN/m3)
(γ1,γ2は地下水位以下の部分には,水中単位体積重量を用いる)
B:床板幅(m)
Df:設計地表面から床板底面までの深さ(m)
V:床板底面に加わる全圧縮力(kN)
V=2(C-T)+G+Ws
C:上部構造からの圧縮力(kN)
T:上部構造からの引揚(kN)
G:基礎体の重量(kN)
Ws:床板直上の土の重量(kN)
(G,Wsの地下水位以下の部分には,浮力を考慮する)
A:床板底面積(m2)
μ:床板底面に働く転倒モーメントによる接地圧倍率

50
b) 転倒に対する照査
基礎に作用する荷重に応じた偏心量を求め,偏心量が許容偏心量以内であることを照査する。
許容偏心量は,床板底面の接地圧分布が三角形となって基礎の一部に浮き上がりが生じるため,床
板底面の1/2が地盤に密着する状態を許容偏心量とする。
B
e<e0 = ・・・・式5.18
3
ここに,
e:偏心量(m)
e0:許容偏心量(m)
c) 水平荷重に対する照査
上部構造からの水平力が損傷限界耐力以下となることを照査する。
q Ha ≧ 4 × Q
1 ・・・・式5.19
q Ha = F (c¢ × A¢ + V × tan f )
1 .5
ここに,
qHa:地盤の水平力に対する損傷限界耐力(kN)
Q:上部構造からの水平力(kN/脚)
F:地盤の不確定性に対する耐力係数:0.75(=1/1.33)
c':床板底面と地盤との間の付着力(kN/ m2)
A':接地圧が働いている床板底面積(m2)
φ:床板底面地盤の内部摩擦角(°)
V:床板底面に加わる全圧縮力(kN)

5.3.4.3 基礎体の構造計算
基礎体の構造計算は,次のとおりとする。
a) 柱体部の設計
柱体部の設計は,逆T字基礎の設計に準じる。
b) 床板部の設計
床板部に作用するせん断力,曲げモーメントによって床板部に発生する応力度は,損傷限界耐力度
以下とする。

5.3.5 主脚材の定着設計
上部構造からの荷重は鉄塔の主脚材を介して,基礎体さらには地盤に伝達されるので,主脚材とコンク
リートの付着応力度,コンクリートの支圧応力度,せん断応力度等は損傷限界耐力度以下とする。

51

You might also like