MPPT説明

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論 文

PV アレイにおける MPPT ユニットの


適切な配置の検討

准会員 竹田 雄亮(神奈川工科大学)   正会員 板子 一隆(神奈川工科大学)

Investigation of Appropriate Placement of MPPT Unit in a PV Array


 Sub-member Yusuke Takeda (Kanagawa Institute of Technology), Member Kazutaka Itako (Kanagawa Institute of Technology)

キーワード:太陽光発電システム0337部分影39 アレイ

The PV generation system operates in maximum power point of PV array by MPPT control of power conditioning system
(PCS). However, there is a problem that maximum power of the PV array configuration greatly decreases by partial
shadow. For this problem, the method which connects MPPT unit to every PV panel between PCS and PV array is
investigated. In the present day, this method is in practical use. However, the appropriate placement of MPPT units was
still not clear. This paper investigates the appropriate placement of MPPT units from the viewpoint of acquisition of
electric power and system stability, simulating P-V and I-V characteristics of some representative patterns connected
MPPT unit to each PV panel in the PV array configuration. And, power utilization factor of the proposed PV array system
is evaluated in simulation and experiment, compared to the conventional PV array system.
より導き出し、電力取得とシステムの安定性の観点から
1.まえがき
MPPT ユニットの適切な配置の検討を行った。また、提案
太陽光発電システムは、一台のパワーコンディショナ した MPPT ユニットの適切な配置での PV アレイシステム
(PCS)の MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御により、 と従来の PV アレイシステムの比較実験を行い、本提案法
PV アレイを一括で制御し、アレイの最大電力点で動作して の有効性を確認した。なお、本論文で得られた知見は太陽
いる(一括集中型システム)
。しかしながら、部分的な影が 光発電システムに MPPT ユニットを設置する際の指針を与
生じた場合に、各ストリングの最大電力点が一致せず、各 えるものとして有用であると考えられる。
パネルの最大電力の合計の電力が取り出せない。そのため、
2.MPPT ユニットを持つ PV アレイの回路解析
アレイの最大電力が大幅に減少するという問題がある。こ
の問題に対して、様々な方法が研究されてきた(1)-(5)。  システム構成
現在、上記問題を解決する方法として、既設の太陽光発 図 1 に MPPT ユニットを取り付けた PV アレイの構成を
電システムの PV パネルに MPPT 制御を行う昇降圧形 DC- 示している。 PV アレイは複数のストリングが並列に接続
DC コンバータ(MPPT ユニット)を取り付けることで、パ されている。 ストリングには PV パネルと MPPT ユニット
ネルの最大電力を取り出す分散型システムが実用化されて を接続している PV パネル(MPPT ユニット付き PV パネル)
きている。しかし、MPPT ユニットの適切な配置はまだ明 が直列に接続されている。
確になっていない。そのため、MPPT ユニットを太陽光発
電システムに導入した場合、PCS の動作が不安定になる事
例も生じている。
本論文では、PCS の動作が不安定にならず、取得電力が
向上する MPPT ユニットの適切な配置を検討する(6)-(7)。そ
こで、MPPT ユニットを太陽光発電システムに導入した場
合の PV アレイシステムの P-V 特性をシミュレーションに
図 1 MPPT ユニットを用いた PV アレイシステム
Fig.1 PV array system with MPPT unit

TRANS. of IEIEJ, Vol. 39 No. 9 57( 1 )


 0337 ユニットの制御方法 
図 2 に MPPT ユニットに用いている昇降圧形 DC-DC コ 
ンバータを示す。 MPPT ユニットには MPPT 制御として 
山登り法が用いられている。図 3 は山登り法の制御の概念 
図を示している。スタート点①で電力 P0 を求め、⊿V だけ 
ずらした動作電圧点②で演算した電力 P と比較する。P が 
P0 よりも大きい場合、⊿V の符号はそのままで、P0 が P よ 
、⊿V の符号を反転し、P を P0 として
りも大きい場合(⑤) 
次の制御が開始される。この動作を繰り返すことで P-V 特 
性上で山を登っていくように最大出力動作点である電力ピ  図 4 図 1 の PV アレイシステムの等価回路
ーク点に追従する。これにより、MPPT ユニットは PV パ  Fig.4 Equivalent circuit of PV array system of Fig.1
ネルの最大電力を取り出している。入力側で取り出された 、y はストリングの数、IPV はストリング電流、
ネルグループ)
電力はユニットの出力側にそのまま伝達される。そのため、 VPV は PV パネルの出力電圧、VMPPTα は MPPT ユニットの
各ユニットはそれぞれ単独で定電力源として動作を行って 出力電圧、VPCS は PCS 入力電圧、Xα(0~1.0)は PV パネルの
いる。具体的には、MPPT ユニットはセンサによりユニッ 影の割合を示している。ただし、α は MPPT ユニット付き
トの入力側の電圧と電流を読み取り、電力を算出する。そ PV パネルの番号で、1~M までの整数である。前節で示し
して、入力側の電圧を⊿V 変化させ、前の電力と比較し、 たように MPPT ユニットは PV パネルから最大電力を取り
電力が大きい電圧点に追従することで、ユニットの入力側 出すことができるので、MPPT ユニット付き PV パネルは
は常に最大電力付近の電圧で動作している。すなわち、制 気象条件によって変動する定電力源と見なすことができる。
御対象は入力側の電圧になる。入力側の電圧が決まると、 これにより、影が存在するストリングにおいて、PV パネル
太陽電池の I-V 特性から入力電流もそれに伴って確定する に MPPT ユニットを取り付けることで、今まで取り出せて
ため、入力電力 P も確定する。一方、ユニットの出力側の いなかった電力を取り出すことが可能になる。そこで本論
電圧と電流はその制御の対象ではないため、出力側の回路 文では、出力の増加を目的として、影のあるパネルには必
条件によって入力電力 P を満たす値に受動的に定まる。し ず MPPT ユニットを接続し、状況によって影のないパネル
たがって、ユニット間の連携した制御は行われず各々単独 にも MPPT ユニットを接続することを前提とする。そのた
でパネルから最大電力を取り出す制御のみ行っている。 め、各ストリングには以下の 3 つの回路構成が存在する。
Ⅰ. ストリング(a)
このストリングは MPPT ユニット付き PV パネルだけで
構成されている。
Ⅱ.ストリング(b)

図 2 昇降圧形 DC-DC コンバータ このストリングは PV パネルのみで構成されている。こ


Fig.2 Buck-boost DC-DC converter のストリングでは、前提条件から全ての PV パネルに影が
存在しない。
Ⅲ.ストリング(c)
このストリングは MPPT ユニット付き PV パネルおよび
PV パネルのみの両方から構成されている。
これらのストリングではバイパスダイオードとブロッキ
Δ
ΔV ΔV
ングダイオードを考慮すると、3 つの回路モード(モード 1
図 3 山登り法の概念図 〜3)が生じる。そこで、以下に各モードにおけるストリン
Fig.3 Conceptual diagram of P&O method
グの動作解析を示す。
 等価回路と各モードの動作 (1) モード 1(ノーマルモード)
(ISC≧IPV>0)
図 4 に図 1 の PV アレイシステムの等価回路を示してい このモードはストリング電流IPV がPV パネルの短絡電流
る。 ここで、M は MPPT ユニット付き PV パネルの数 ISC より低いときに生じ、すべてのストリング(ストリング
、N は PV パネルの数(PV パ
(MPPT ユニットグループ) (a)~(c))に存在する。図 5 にストリング(c)の等価回路を示

TRANS. of IEIEJ, Vol. 39 No. 9 58( 2 )


ストリング電流 IPV が PV パネルの短絡電流 ISC より大きい
ため、バイパスダイオードが動作する。したがって、VPV は
0 になり、
PV パネルグループの出力電圧NVPV も0 となる。

図 5 ノーマルモード この場合、PCS 入力電圧 VPCS は MPPT ユニットグループの


Fig.5 Normal mode 電圧 VMPPT と同じになる。したがって、このストリング(c)
す。 ただし、同図においてストリング(a)では PV パネルを はストリング(a)と同じになるので、IPV は式(1)で表される。
含めない。また、ストリング(b)では MPPT ユニットを含め
ない。
・ストリング(a)の場合
このストリングは MPPT ユニット付き PV パネルのみで 図 6 バイパスモード
構成されているので、PCS 入力電圧 VPCS に対してストリン Fig.6 Bypass mode
グの電力は一定になる。このストリングにおいて、ストリ (3)モード 3(ブロッキングモード)(NVOC <VPCS,IPV =0)
ング電流 IPV は式(1)で示される。 このモードはストリング(b)に存在する。ここで、VOC は PV
M パネルの開放電圧である。このモードでは PCS 入力電圧
 ( P )
(1) VPCS が PV パネルグループの開放電圧 NVOC より大きい場
I PV (VPCS )  1
VPCS PV パネルは発電を行わず IPV は 0 になる。
合、 したがって、
ここで、ηα[%]は各 MPPT ユニットの効率、Pα [W]は各 ストリング電力 Pst は 0 になる。
MPPT ユニット付き PV パネルの最大電力を示している。
・ストリング(b)の場合
このストリングは PV パネルのみで構成されている。こ
のストリングでは、PCS 入力電圧 VPCS は PV パネルグルー 図7 ブロッキングモード
プの出力電圧 NVPV となる。 よって、ストリング電流 IPV は Fig.7 Blocking mode
式(2)の I-V 特性式で表される。ただし、ストリング(b)には 以上から、式(5)に示すように、PCS 入力電流 IPCS は各ス
影がないため、ここでは Xα=0 とする。 トリング電流 IPV の総和として表される。
y
 q VPV 
(VPV ) I sc (1  X  )  I 0 exp(
I PV  )  1 (2) I PCS   I PV (VPCS ) (5)
 nkT a   1

ここで、n [ - ]はダイオード因子、T [K]はセル温度、q [C] ここで、β はストリング番号であり 1~y の整数である。


は電気素量、ISC [A]は PV パネルの短絡電流、k [J / K]はボル 以下に、MPPT ユニットを PV パネルに接続した場合の 3
ツマン定数、I 0 [A]は逆飽和電流、 a はパネル 1 枚の PV セ 種類の PV アレイシステムの P-V 特性を(1)~(5)式を用いて
ルの数である。 シミュレーションを行い、MPPT ユニットの適切な配置の
・ストリング(c)の場合 検討を行った。
このストリングは MPPT ユニット付き PV パネルおよび
3.シミュレーションによる適切な配置の検討
PV パネルのみの両方から構成されている。このモードでは、
PV パネルのバイパスダイオードが導通していないので IPV 本論文では、図 8 に示すように家庭用 PV アレイシステ
は式(2)から算出できる。このとき、MPPT ユニットグルー ムを想定し、その P-V 特性のシミュレーションを行った。
プの出力電圧 VMPPT は式(3)で表される。 1 つのストリングは 6 枚の PV パネルを直列に接続し、6 つ
M
のストリングを並列に接続してアレイを構成している。ス
M  ( P )
トリングは前述のストリング(a),(b),(c)のいずれかの構成と
VMPPT ( I PV )  VMPPT  1

 1 I PV (3) なる。同図の灰色の PV パネルは建物の影により日射強度


この場合、PCS 入力電圧 VPCS は式(4)で表される。 が低下している状態を想定し、影割合 Xα は 0.9[-]としてい
る。また、MPPT ユニットの効率は 100[%]とする。表 1 に
VPCS  NVPV ( I PV )  VMPPT ( I PV ) (4)
シミュレーションに用いた PV パネルの公称値を示す。こ
(2) モード 2(バイパスモード)
(IPV> ISC) の場合、アレイの公称開放電圧 VarOCr は 276[V]、アレイの
このモードはストリング(c)に存在する。このモードでは、 公称短絡電流 IarSCr は 37.7[A]になる。以下のシミュレーシ

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ョンでは日射強度 1000[W/m2]、パネル温度 25[℃]としてい 3062[W]である。ここで、ポテンシャル電力 PO に対して PV
る。なお、影のついた PV パネル(Xα=0.9)の各値は、式(2) アレイから取得できる電力の割合を表す電力利用率U を以
より、最適動作電圧 VOP は 29.0[V]、最適動作電流 IOP は 下の式(6)で定義する。
0.562[A]、
最大電力Pmaxは16.3[W]、
開放電圧VOCは37.0[V]、 Pmax
U  100[%] (6)
短絡電流 ISC は 0.629[A]となる。ここで、各 PV パネルの最 P0
大電力の総電力 PO をポテンシャル電力と定義すると、この この条件では、電力利用率 U は 65.8 [%]となる。従来 PV
アレイ構成での PO は 4655 [W]になる。 アレイシステムの場合、アレイの出力電力は PV アレイの
一部の PV パネルに影が存在するとき、ポテンシャル電力
表 1 シミュレーションに用いた PV パネルの公称値
Table.1 Nominal values of PV panel PO を引き出すことができないことが分かる。
日射強度 1000[W/m2] パネル温度 25[℃]  0337 ユニット付き 39 アレイシステム
公称最適動作電圧 VOPr 36.6[V] 本節では、出力改善のために MPPT ユニットを接続した
公称最適動作電流 IOPr 5.74[A] 場合の検討を行う。
公称最大電力 Pmaxr 210[W]  シミュレーション 
公称開放電圧 VOCr 46.0[V] 影付き PV パネルの最大電力を取り出すために MPPT ユ
公称短絡電流 ISCr 6.29[A] ニットを影付きのPV パネルのみに使用した場合を図10 に

 示す。このアレイはストリング 1~5 がストリング(c)で、ス


 従来の 39 アレイシステム トリング 6 がストリング(b)で構成されている。この PV ア

図 8 は、従来の PV アレイシステムを示している。図 9 レイシステムの P-V 特性を図 11 に示す。ストリング 1~5


はこの PV アレイシステムの P-V 特性を示す。 同図より、 おいて PCS 入力電圧が 0[V]付近でモード 2 が生じ、ストリ

PV アレイの P-V 特性には複数の電力ピーク点が発生する ング 6 おいて PCS 入力電圧がアレイの公称開放電圧 VarOCr


ことが分かる。これは各ストリングの最大電力点電圧が一 を超えてモード 3 が生じている。それ以外の大部分はモー
致していないのが原因である(ストリング間ミスマッチ)。
そ ド 1 となる。ここで、ストリング 5 に着目した場合、図 9
のため、従来の PV アレイシステムの最大電力 Pmax は では最大電力 Pst5max は 1050[W]になっており、図 11 では最

図 10 シミュレーション 1 の PV アレイ構成


図 8 従来の PV アレイ構成 Fig.10 PV array system of simulation 1
Fig.8 Conventional PV array system

図 9 従来の PV アレイの P-V 特性 図 11 シミュレーション 1 の P-V 特性


Fig.9 P-V characteristics of conventional PV array system Fig.11 P-V characteristics of simulation 1
TRANS. of IEIEJ, Vol. 39 No. 9 60( 4 )
大電力 Pst5max は 1066[W]と影の付いたパネル 1 枚分の電力
が増加している。したがって、影の付いたパネルの最大電
力を取り出せていることがわかる。しかし、各ストリング
の最大電力点電圧がPCS入力電圧において一致していない
ので、アレイの最大電力 Pmax は 3414[W]である。したがっ
て、電力利用率 U は 73.3[%]にとどまっており、大幅な改
善は得られない。
 シミュレーション 
次に影付き PV パネルだけでなく、全ての PV パネルの
最大電力を取り出すために MPPT ユニットをすべての PV 図 14 シミュレーション 2 の I-V 特性
Fig.14 I-V characteristics of simulation 2
パネルに使用した場合を図 12 に示す。このアレイはすべて
のストリングがストリング(a)で構成されている。この PV 公称短絡電流 IarSCr を超える大電流が流れる。ここで、PCS
アレイシステムの P-V 特性を図 13 に示す。このとき、スト の入力電流が IarSCr となる PCS 電圧 VPCSmin は式(7)で計算で
リング 1~6 ではモード 1 が生じる。同図より、全ての MPPT きる。
ユニット付き PV パネルの最大電力が引き出され、アレイ y
M 
の最大電力 Pmax は 4655[W]になる。この PV アレイシステ
  (  P )
  
VPCS min  1  1 (7)
ムはポテンシャル電力 PO を引き出すことができ、電力利用 I arSCr
率 U は 100[%]となる。しかし、このアレイの出力電力特性 ただし、ηβα[%]は各 MPPT ユニットの効率、Pβα [W]は
は MPPT ユニットの定電力特性により PCS 入力電圧に対 各MPPTユニット付きPVパネルの最大電力を示している。
して平坦な特性となるため、PCS の MPPT 制御の動作点が 式(7)より、この条件において VPCSmin は 123[V]になる。した
不定になる。図 14 にこのアレイシステムの I-V 特性を示 がって、PCS 入力電圧が 123[V]を下回ったとき、PCS の入
す。同図より、あるタイミングで PCS の MPPT 制御の動作 力電流がアレイの公称短絡電流を超えてしまい、システム
点が低電圧側に移動した場合、PCS の入力電流がアレイの の緊急停止や機器の故障が起きる恐れがある。 PCS の
一方、
MPPT 制御の動作点があるタイミングで高電圧側に移動し
た場合、PCS が過電圧を検知し動作が停止して、発電が行
えない恐れがある。したがって、このアレイ構成でのシス
テム運用は非常に危険である。このアレイ構成でシステム
を運用する場合、PCS を従来用いられている MPPT 制御で
はなく定電圧で制御すれば、ポテンシャル電力を取り出す
ことができ、システムの安定した動作が可能になる。しか
しこの場合、定電圧制御可能な PCS を新たに導入する必要
があるので、既設のシステムをそのまま生かすことが出来
ない。

図 12 シミュレーション 2 の PV アレイ構成  シミュレーション 


Fig.12 PV array system of simulation 2 全ての PV パネルに MPPT ユニットを取り付けた場合、
アレイの P-V 特性が平坦になり、PCS の MPPT 制御の動作
点が不定になる。そこで、影が全く存在しないストリング
の全ての PV パネルに MPPT ユニットを接続しない場合を
図 15 に示す。このアレイはストリング 1~5 がストリング
(a)で、ストリング 6 がストリング(b)で構成されている。図
16 にこのアレイシステムの P-V 特性を示す。ストリング 6
おいて PCS 入力電圧がアレイの公称開放電圧 VarOCr を超え
る場合、モード 3 が生じ、それ以外ではモード 1 が生じる。

図 13 シミュレーション 2 の P-V 特性 同図より、PCS の MPPT 制御は、ストリング(a)の出力電力


Fig.13 P-V characteristics of simulation 2
TRANS. of IEIEJ, Vol. 39 No. 9 61( 5 )
が PCS 入力電圧に対して一定になるが、ストリング(b)の 1 回っている。また、同図において全てのパネルに影が生じ
つの電力ピーク点を確実に見つけることができる。したが ない場合のアレイの出力電流の特性を破線で示す。この条
って、PCS の動作電圧は MPPT 制御によって最適動作電圧 件の場合、VPCSmin は 200[V]になる。影がない厳しい状態で
VOP=222[V]付近となるため、この条件でのアレイの最大電 も VPCSmin は VOP を超えず、
安全に動作できると考えられる。
力 Pmax は 4655[W]になる。この PV アレイシステムはポテ  適切な 0337 ユニットの配置法
ンシャル電力 PO を引き出すことができ、電力利用率 U は 以上の検討より、電力の取得とシステムの安定性の観点
100[%]となる。図 17 にこのアレイシステムの I-V 特性を示 から、図 18 に示すような MPPT ユニットの適切な配置法
す。このアレイシステムの VPCSmin は式(8)で計算できる。 を提案する。同図の等価回路は PCS の MPPT 動作点を決定
h
 M
 する影が生じないストリング群(ストリング(b)グループ)
  (  P )
 
 1 1  (8) と、各ストリングの最大電力点の電圧の不一致を回避する
VPCS min  
I arSCr  I SCr  ( y  h) ストリング群
(ストリング(a)グループ)
で構成されている。
ただし、h はストリング(a)の数である。式(8)より、この すなわち、影が生じるストリングには全てのパネルに
条件において VPCSmin は 108[V]になるため、VOP を大幅に下 MPPT ユニットを接続し、影のないストリングには MPPT
ユニットを接続しない構成とすることで、PCS は安全に動
作し、PCS に搭載されている MPPT 制御によってポテンシ
ャル電力 PO を引き出すことができるようになる。ただし、
PCS の入力電流やユニットの出力電流の限界に留意して設
置することが肝要である。
本提案法は既設の太陽光発電システム利用者や新規の利
用者に対して、パネル毎に MPPT 制御を行う分散型システ
ムを導入する際に従来システムをそのまま生かして、安全
にかつ分散型の利点を最大限に活用することが可能になる
Fig.15 PV array system of simulation 3
というメリットがある。
図 15 シミュレーション 3 の PV アレイ構成


図 18 提案法の等価回路
Fig.18 Equivalent circuit for proposed method

なお、影無しパネル1ストリング分をどうしても確保で

図 16 シミュレーション 3 の P-V 特性 きず、図 18 のストリング(b)グループの中のあるパネルに


Fig.16 P-V characteristics of simulation 3 影が生じる場合、そのストリングは複数の電力ピークが発
 生し、ポテンシャル電力を取り出すことは困難になる。こ
 のような条件でも本方式を適用したい場合、図 10 に示した
 ストリングのように影がかかる可能性のあるパネルに対し
 て MPPT ユニットを取り付けることで、ストリングの電力
 ピークが 1 つになりポテンシャル電力を取り出すことが可
 能になる。ただし、その適用の際には、図 11 の各ストリン
 グの P-V 特性からも分かるように、影付きパネルの数すな
 わち挿入する MPPT ユニットの数によって、ストリングの
 最大電力点が移動するため、PCS の MPPT 動作電圧の範囲
図 17 シミュレーション 3 の I-V 特性 に注意する必要がある。
Fig.17 I-V characteristics of simulation 3

TRANS. of IEIEJ, Vol. 39 No. 9 62( 6 )


表 2 各太陽電池模擬装置のパラメータ
Table.2 Each parameter of the PV simulator

最適動作電圧 VOP[V] 最適動作電流 IOP[A] 最大電力 Pmax[W] 開放電圧 VOC[V] 短絡電流 ISC[A]

PV1 14.8 3.72 55.1 21.8 4.0


PV2 14.1 0.79 11.1 18.1 1.08
PV3 16.0 3.11 49.8 20.4 3.46
PV4 16.0 3.11 49.8 20.4 3.46

実験結果
.電力比較実験 図21 は従来のPV アレイシステムのP-V 特性を示してい
 実験方法 る。 同図より、各ストリングのストリング最大電力点電圧
提案する配置法の妥当性を確認するために、 本論文では、 が電子負荷電圧 VEL において一致せず、
PV アレイの P-V 特
従来 PV アレイと本提案法を用いた PV アレイの実験回路 性には 2 つの電力ピーク点が発生する。 そのため、各パネ
を用いて、P-V 特性の比較実験を行った。図 19 は従来アレ ルの最大電力を取り出すことができず、アレイの最大電力
イを示し、1 つのストリングは 2 枚の PV パネルを直列に接 Pmax は 124.0[W]である。ここで、電力利用率 U は 74.8 [%]
続し、2 つのストリングを並列に接続した構成となってい となる。
る。図 20 は本提案法を用いたアレイを示し、 ストリング 図22 は提案法を用いたPV アレイシステムのP-V 特性を
1 がストリング(a)で、ストリング 2 がストリング(b)で構成 示している。同図より、ストリング 1 の出力電力が電子負
されている。PV アレイの出力側には、電子負荷を接続して 荷電圧 VEL に対して一定になっているため、本シミュレー
いる。本実験では、気象条件による変動を排除するために ションにおいて MPPT ユニット付き PV パネルを定電力源
PV パネルの代わりに太陽電池模擬装置を使用する。太陽電 として扱ったことの妥当性が確認できる。したがって、ア
池模擬装置の各パラメータを表 2 に示す。図 19 と図 20 の レイの最大電力点がストリング 2 の最大電力点になるため、
PV2 は影を想定し、太陽電池模擬装置の短絡電流を低く設 PCS の MPPT 制御で一つの電力ピーク点を確実に見つける
定している。使用した MPPT ユニットの効率は 86.4 [%]、
ポテンシャル電力 PO は 165.8[W]である。







 図 19 従来 PV アレイシステム 図 21 従来 PV アレイシステムの P-V 特性
 Fig.21 P-V characteristics of conventional PV array system
Fig.19 Conventional PV array system








図20 提案法を用いたPV アレイシステム
 Fig.20 Proposed PV array system 図22 提案法を用いたPV アレイシステムのP-V 特性
Fig.22 P-V characteristics of proposed PV array system

TRANS. of IEIEJ, Vol. 39 No. 9 63( 7 )


ことができる。この実験条件では、アレイの最大電力 (5) N. Kumar, I. Hussain, B. Singh, and B. K. Panigrahi, “MPPT in
Pmax=156.8 [W]である。電力利用率 U は 94.6 [%]になる。し Dynamic Condition of Partially Shaded PV System by Using WODE
たがって、提案 PV アレイシステムでは、PV アレイの一部 Technique,” IEEE Trans. Sustain. Energy, Vol.8, no.3, pp. 1204 – 1214,
の PV パネルに影が存在する場合でも、ポテンシャル電力 July 2017
PO をほぼ取り出せることが確認された。また、本実験条件 (6) Y.Takeda, K.Itako, and K.Yoshihara,”Best Solution for Placement of
本提案法を用いた PV アレイシステムの最大電力 Pmax
では、 MPPT Units in a PV array” , Proceedings of Grand Renewable Energy
は従来PVアレイシステムPmax と比較して1.26 倍となった。 2018
以上より、本提案法の有効性が確認された。 (7) Y.Takeda, and K.Itako, ”Power Acquisition Effect for Appropriate
Placement of MPPT Units in a PV array” , Proceedings of International
.まとめ
Conference on Future Environment and Energy 2019
本論文では、MPPT ユニットを太陽光発電システムに導 
入した場合の PV アレイシステムの P-V 特性をシミュレー 著者紹介
ションにより導出し、電力取得とシステムの安定性の観点        竹田 雄亮 (准会員) 2018 年神奈川工科
から MPPT ユニットの適切な配置の検討を行った。本論文 大学工学部電気電子情報工学学科卒業。
で提案する MPPT ユニットの適切な配置、すなわち PCS の 2018 年神奈川工科大学大学院工学研究科電
MPPT 動作点を決定するために影が生じないストリング群 気電子工学専攻入学。太陽光発電システム
に MPPT ユニットを接続しないグループと、各ストリング の MPPT 制御に関する研究に従事。電気設
間のミスマッチを回避するために影付きパネルを含む残り 備学会准会員。
のストリングの全ての PV パネルに MPPT ユニットを接続
したグループで PV アレイを構成することにより、システ 板子 一隆 (正会員) 1991 年日本大学大
ムは安定し、PCS でポテンシャル電力を取り出すことが可 学院工学研究科電気工学専攻修了。現在、神
能になる。一般家庭を想定した影付きアレイのシミュレー 奈川工科大学工学部電気電子情報工学科教
ション条件において電力利用率 U は従来アレイの 65.8%か 授。同大学先進太陽エネルギー利用研究所
ら 100%に改善できることが明らかになった。また、本提案 教授。1999 年~2000 年ブラウンシュヴァイ
法の有効性が実験によっても確認された。 ク工科大学客員研究員(ドイツ)。2011~2012
以上より、本提案法を用いることで、既存のシステムを 年度神奈川県立産業技術総合研究所客員研究員。博士(工学)。2010
生かして、PCS の動作の安定性を確保しつつ大幅な出力電 年第 21 回電気設備学会論文奨励賞受賞。2013 年第 61 回電気科学
力増加の得られることが明らかとなった。 技術奨励賞受賞。2014 年 ICEE Best Paper Award 受賞。主としてパ
           (受付 2019 年 3 月 12 日) ワーエレクトロニクス制御の研究に従事。電気設備学会,電気学会
(東京支部委員),SAS(評議員), 日本太陽エネルギー学会,計測自動
参考文献 制御学会,電気化学会,IEEE 各会員。
(1) 竹田 雄亮,吉原 一樹,板子 一隆:
「太陽光発電システムのた 
めの新型 MPPT 制御方式の効果の検討」
,平成 29 年度電気学会 
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(2) E. Dallago et al. “Direct MPPT Algorithm for PV Sources With Only 
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