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Derivation of Theoretical Formulas of Sequence Currents On Underground Cable Systems
Derivation of Theoretical Formulas of Sequence Currents On Underground Cable Systems
277–282
–3–
論 文
地中ケーブル系統の対称分電流理論式の導出
正 員 雨谷 昭弘∗ 正 員 大野 照男∗∗
Recently, many long cable lines are under construction and planned. A reliable operation of a cable system necessi-
tates an accurate calculation of sequence impedances of the system. It has been a common practice that those sequence
impedances or currents are measured after the installation and it is difficult to predict those values beforehand. This
paper derives theoretical formulas of the sequence currents for a cross-bonded cable and a normal-bonded cable. The
accuracy of the proposed formulas is verified through a comparison with EMTP simulations.
キーワード:ケーブル,対称分電流,対称分インピーダンス
Keywords: cable, sequence current, sequence impedance
が現状である。
1. 緒 言
上記に鑑み,本論文では,ケーブル系の対称分電流計算
最近,世界各国で多数の地中ケーブル送電線が計画,ある の理論式を導出し,EMTP シミュレーション結果との比較
いは建設されている。その代表例がデンマークの 400 kV, により,提案理論式の導出における仮定と計算精度の確認
400 km のケーブル建設であろう (1) 。デンマークでは,1995 を行う。
年より,100 kV 以下の送配電線を全て地中ケーブルとして
2. 対称分電流理論式の導出
きたが,2008 年 11 月,さらに,132 kV,154 kV の全架空
線と,400 kV の新規ルートを地中化することが,議会で決 地中ケーブル送電線では,ケーブルの温度上昇を抑制す
定され,132 kV 以上の地中ケーブル総延長は 3000 km に るために,3 相ケーブルの金属シースを一定距離(数 100 m
達する予定である。また,イタリアでは,シシリー島と本 程度)毎にクロスボンドして,シース電流を低減するクロス
土を結ぶ 38 km の海底ケーブルが建設中である (2) (3)
。 ボンドケーブルが一般的である (7) 。海底ケーブル等の特殊
送電系統の運用には,潮流計算や安定度計算が必要であ 条件化では,ケーブル端のみで接地をとるノーマルボンド
り,このためには,系統の対称分電流の計算が不可欠とな ケーブルが利用されることもある。本章では,メジャーセ
る。架空送電系での対称分電流計算法は,大学電気工学系 クション数 m が 3 程度(数 km)以上のクロスボンドケー
の教科書に必ず記述されており,周知である (4) 。一方,ケー ブル,およびノーマルボンドケーブルの対称分電流理論式
ブル系統についてみると,ケーブル本体のみに着目した対 の導出を行う。
称分電流計算法は提案されている (5) (6)
ものの,クロスボン 〈2・1〉 中・長距離クロスボンドケーブル ケーブル線
ド,ノーマルボンドといったシース接地の影響や,両端の 路の接地設計において,ケーブルの区間長や接続部の位置
変電所,ノーマルジョイントにおける接地抵抗の影響など は,シース電圧・電流を小さくすることを目的として,各
を含め,ケーブルシステム全体を考慮した対称分電流計算 メジャー・マイナーセクション長のバランスがとれるよう
法は確立されていない。従って,例えば,我が国では実系 に設計されるため,メジャーセクション数 m ≥ 3 程度のク
統,または試験装置を利用した測定データを用いているの ロスボンドケーブルでは,各相シース電流がほぼ一定とな
る。従って,3 相の心線,金属シース,計 6 導体からなる
∗ 同志社大学 工学部 6 × 6 インピーダンス行列を,3 相心線および等価金属シー
〒 610-0321 京田辺市多々羅都谷 1-3
Faculty of Engineering, Doshisha University ス 1 導体,計 4 導体の 4 × 4 インピーダンス行列に縮約で
1-3, Miyakodani, Tatara, Kyo-Tanabe 610-0321 きる (8) (9) 。なお,メジャーセクション数が小さい場合であっ
∗∗ 東京電力(株)系統運用部 ても,各マイナーセクション長のバランスが良ければ,同
〒 100-8560 東京都千代田区内幸町 1-1-3
Tokyo Electric Power Company 様の縮約が可能である。
1-1-3, Uchisaiwai-cho, Chiyoda-ku, Tokyo 100-8560 ( 1 ) 原インピーダンス行列 3 相の心線,金属シー
c 2011 The Institute of Electrical Engineers of Japan. 277
(a) Cross-bonded cable system with m-major sections
ここで,c:心線,s:金属シース,m:心線・シー
ス相互,t:転置行列
(V1 ) = Z (I1 ) · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (4) 以上より,次の関係式が得られる。
t ⎛ ⎞ ⎡ ⎤⎛ ⎞
(V1 ) = E E E Vs ⎜⎜⎜ E ⎟⎟⎟ ⎢⎢⎢Z11 Z12 Z13 ⎥⎥⎥ ⎜⎜⎜Ia⎟⎟⎟
⎜⎜⎜ 2 ⎟⎟⎟ ⎢⎢⎢ ⎥⎜ ⎟
ここに, · · · · · · · · · · · · · · (5) ⎜⎜⎜α E ⎟⎟⎟ = ⎢⎢⎢Z12 Z22 Z12 ⎥⎥⎥⎥⎥ ⎜⎜⎜⎜⎜Ib⎟⎟⎟⎟⎟
t ⎜⎝ ⎟⎠ ⎢⎣ ⎥⎦ ⎜⎝ ⎟⎠
(I1 ) = Ia Ib Ic Is αE Z13 Z12 Z11 Ic
⎛ ⎞ ⎡ ⎤−1 ⎛ ⎞
Fig. 2(a) に零相電流測定回路を示す。 ⎜⎜⎜Ia⎟⎟⎟ ⎢⎢⎢Z11 Z12 Z13 ⎥⎥⎥ ⎜⎜⎜ E ⎟⎟⎟
⎜⎜⎜⎜ ⎟⎟⎟⎟ ⎢⎢⎢⎢ ⎥⎥⎥ ⎜⎜⎜ 2 ⎟⎟⎟
∴ ⎜⎜Ib⎟⎟ = ⎢⎢Z12 Z22 Z12 ⎥⎥⎥ ⎜⎜⎜α E ⎟⎟⎟
ケーブル線路両端の変電所シース接地抵抗を Rg とすると, ⎝⎜ ⎠⎟ ⎣⎢ ⎥⎦ ⎜⎝ ⎟⎠
Ic Z13 Z12 Z11 αE
⎡ ⎤⎛ ⎞
V s = −2RgIs · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (6) ⎢⎢ Z11 Z22 −Z12
2
Z12 (Z13 −Z11 ) Z12
2
−Z13 Z22 ⎥⎥⎥ ⎜⎜⎜ E ⎟⎟⎟
1 ⎢⎢⎢⎢ ⎥
⎥ ⎜
⎜ ⎟⎟
= ⎢⎢⎢Z12 (Z13 −Z11 ) 2
Z11 −Z13
2
Z12 (Z13 −Z11 )⎥⎥⎥⎥ ⎜⎜⎜⎜α2 E ⎟⎟⎟⎟
通常の水平配列,三角配列において,Zsa = Zsc が成立 Δ ⎣⎢ 2 ⎥
⎦ ⎜
⎝ ⎟⎠
Z12 −Z13 Z22 Z12 (Z13 −Z11 ) Z11 Z22 −Z12 2
αE
することから,(4)∼(6) 式を解くと,次の解が得られる。 · · · · · · · · · · · · · · · · · · (12)
⎫
Ia = Ic = (Z22 − Z12 )E/Δ0 ⎪
⎪
⎬
⎪
⎪ · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (7) ここに,
Ib = (Z11 − Z21 )E/Δ0 ⎭
Z11 = Zaa − Zsa2 /Zss
ここに,
Z22 = Zbb − Zsb2 /Zss
Δ0 = Z11 Z22 − Z12 Z21 Z12 = Zab − Zsa Zsb/Zss
Z11 = Zaa + Zac − 2Zsa2 /Z ss Z13 = Zab − Zsa Zsc/Zss
Z22 = Zbb − Zsb2 /Z ss
上式より,次の結果が得られる。
Z12 = Zab − Zsa Zsb/Z ss, Z21 = 2Z12
1
Z ss = Zss + 2Rg I1 = (Ia + αIb + α2 Ic)
3
E
(7) 式より,零相電流 I0 は,次式で与えられる。 = (Z11 − Z13 )(Z11 + Z13 + 2Z12 )
3Δ2
I0 = (2Ia + Ib)/3 + Z22 (2Z11 + Z13 ) − 3Z12
2
· · · · · · · · · · · · · · · · (13)
E
= (Z11 + 2Z22 − 2Z12 − Z21 ) · · · · · · · · · · · · · · (8)
3Δ0 ここに,Δ2 = (Z11 − Z13 ) Z22 (Z11 + Z13 ) − 2Z12 2
れる。 果となる。
⎫ E
c
Zaa = Zbb
c
= Zc, Zaa
s
= Zbb
s
= Zs ⎪
⎪
⎬ I1 = · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (14)
⎪ · · · · · · · · · · · (9) Zc − Zm
Zab = Zac = Zm, Zsa = Zsb = Zn⎪
c c ⎭
〈2・2〉 ノーマルボンドケーブル Fig. 3 のノーマルボ
このとき, ンドケーブルについて考える。
(1) 式の 6 × 6 インピーダンス行列と Fig. 3 の回路から,
Z11 = Zc + Zm − 2Zn2 /Z ss
次式が得られる。
Z22 = Zc − Zn2 /Z ss
(E) = [Zc] (I) + [Zm] (Is) · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (15)
Z12 = Zm − Zn2 /Z ss
(V s) = [Zm] (I) + [Zs] (Is) = −2 Rg (Is) · · · · · · (16)
従って,次の結果が得られる。
⎫ t
Ia = Ib = Ic ≈ E/Δ1 , Is ≈ −3ZnE/Z ssΔ1 ⎪
⎪
⎬ ここに,(I) = Ia Ib Ia :心線電流,
⎪
⎪
⎭
t
I0 ≈ E/Δ1 (Is) = Isa
Isa :シース電流 Isb
⎤ ⎡
· · · · · · · · · · · · · · · · · · (10) 1 1⎥⎥⎥ ⎢⎢⎢1
⎥⎥ ⎢⎢
Rg = Rg ⎢⎢⎢⎢1
1 1⎥⎥⎥⎥
ここに,Δ1 = Zc + 2Zm − 3Zn2 /Z ss ⎥⎦ ⎢⎣
1 1 1
〈2・1・2〉 正相電流 Fig. 2(b) の線路終端において, (16) 式より,シース電流 (Is) は次式で与えられる。
Isa + Isb + Isc = 0 となるので,V s = 0 が得られる。従っ
て,次式が成立する。 (Is) = − [Zs] + 2 Rg −1 [Zm] (I) · · · · · · · · · · · · · (17)
t ⎫
(V1 ) = E α2 E αE 0 ⎪ ⎪
⎪
⎬ (15) 式と (17) 式より,心線電流 (I) は次式となる。
t ⎪ ⎪ · · · · · · · · · · · · · · · · · · (11)
Is ⎪ ⎭ −1
(I1 ) = Ia Ib Ic (I) = [Zc] − [Zm] [Zs] + 2 Rg −1 [Zm] (E)
ここに,α = exp ( j2π/3) · · · · · · · · · · · · · · · · · · (18)
ス接地を無視することによって,理論式を簡略化している
ことから生じたものである。
正相電流は,ノーマルボンドケーブルの方が大であり,
ノーマルボンドの場合,正相インピーダンスが,クロスボ
ンドケーブルより小であることが分かる。これは,コア電
流の帰路が,クロスボンドケーブルでは,各相シースに分
流するのに対し,ノーマルボンドケーブルでは,同相シー
Fig. 5. Layout of the cable. スのみであることによる(Zc − Zm > Zc − Zs)。
また,零相電流は,その位相からも確認できるとおり,ク
Table 1. Comparison of proposed formulas with EMTP ロスボンドの場合も,ノーマルボンドの場合も,ケーブル
simulations.
(a) Cross-bonded cable
線路両端の変電所におけるシース接地抵抗の影響を大きく
受ける。結果として,零相インピーダンスは,クロスボン
ドとノーマルボンドの場合で,あまり差がない結果となる。
4. 結 論
本論文では,ケーブル本体のみでなく,クロスボンド,
ノーマルボンドといったシース接地を含め,ケーブルシス
テム全体を考慮したケーブル線路の対称分電流理論式を導
(b) Normal-bonded cable 出した。特に,ケーブル線路の大多数を占めると考えられ
る,メジャーセクション数 m ≥ 3 程度のクロスボンドケー
ブルについて,比較的簡易な理論式を用いることで,実測
を行うことなく対称分電流を計算できることを示した。
さらに,3 章において,理論式による計算結果と,EMTP
シミュレーション結果との比較により,提案理論式の導出
における仮定は妥当であることと,その精度が十分である
ことを示した。
(平成 22 年 8 月 16 日受付,平成 22 年 10 月 14 日再受付)
ln(R3/R2) ln(61.40/32.60)
εr = εr = · 2.4 = 2.729
ln(Rso/Rsi) ln(59.50/34.10)
· · · · · · · · · · · · · · · · · · (27) 文 献