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外交研究会国際法ゼミ第2回

2024年5月27日(月)(18:50-20:30)
担当:李

CHAPTER1:国際社会のルールはこうしてできた
ーー国際法の成り立ち

キーワード:ウェストファリア条約 グロティウス 主権国家 普遍的国際法

導入Q:国際法の歴史的発展を理解する意義は何か?

⃝社会と法の関係
・社会あるところ法あり
独立した政治共同体が接触・交流すると、その関係を規律する社会規範が必要となる

・初期の国際法の萌芽
主要文明圏に存在古代→メソポタミア、エジプト、インド、中国
Ex)紀元前25世紀、メソポタミア都市国家ラガシュとウンマの国境画定条約

⃝近代国際社会の成立と近代国際法
・16∼17世紀のヨーロッパ=近代国際法の直接の起源

・中世ヨーロッパの統一
キリスト教世界の統一が理念として存在し、ローマ教皇と神聖ローマ皇帝が権威を持つ

・16世紀の変化
宗教改革でローマ教皇の権威が弱まり、商業資本の発達で封建領主の力が衰える
→強力な君主国家の出現と、主権国家による近代国際社会の成立

・ウェストファリア条約(1648年):
三十年戦争の終結
主権国家を基礎とする近代国際社会の誕生を確認
Q:主権国家の概念は時代とともに変化してきました。では、ウェストファリア条約の時
代から現代までの主権国家の定義や役割について、どのような変遷があったと思います
か?
Q:主権国家の概念が、経済のグローバル化や国際機関の発展によってどのような挑戦を
受けているか?

⃝近代国際法を基礎づけた学者たち
・自然法論
ヒュゴー・グロティウス(1583-1645): 『戦争と平和の法』著者。合理的自然法論を展
開し、近代国際法の基礎を築く
他の著名な学者:ビトリア、スアレス、プーフェンドルフ、ヴォルフ

・法実証主義
18世紀以降、国家慣行や条約に基づく実定国際法の確立
代表的学者:バィンケルスフーク、ヴァッテル、モーゼル

⃝国際法と非ヨーロッパ
・大航海時代
15∼16世紀、ポルトガルとスペインが新航路を開拓し、全世界へ膨張
トルデシリャス条約(1494年)とサラゴサ条約(1529年)により勢力圏を分割

・非ヨーロッパとの関係
スペインのアメリカ大陸征服と先住民迫害
→ビトリアの異議:先住民の権利を認めるが、結果としてスペインの植民を正当化
ポルトガルの奴隷貿易→アフリカからの奴隷輸出

⃝ 植民地の分割
・16世紀末∼17世紀初頭
スペインとポルトガルが航路を独占
オランダ、イギリス、フランスが東インド会社や西インド会社を設立し、植民地獲得に乗
り出す

・アメリカ大陸:オランダ、イギリス、フランスが進出
→イギリスが優位に立つ。
・アジア:オランダがジャワ・マラッカ方面に進出
イギリスがフランスを駆逐し、インドを支配
フランスはインドシナへ進出

・18世紀まで
新大陸、アフリカ沿岸部、日本、中国を除くアジアがヨーロッパ諸国に植民地化される

・19世紀
ドイツ、イタリア、ベルギーが参入
1884∼85年のベルリン会議でアフリカの分割が進む

⃝対非ヨーロッパ関係において形成された国際法のルール
・ヨーロッパ国際法
独立・平等の主体間の関係を調整
非ヨーロッパ地域に対しては平等な主体と認めず、一方的な征服や布教の対象とする

・領域取得の方式
「発見」と「先占」の法理:無人地または先住民の存在を無視し、ヨーロッパ諸国の植民
地拡張に適用
・「正当戦争」と「征服」:非ヨーロッパの強力な王国に対し、キリスト教布教の権利侵
害を理由に武力行使

⃝非ヨーロッパ諸国のヨーロッパ国際法への参入
・米国・中南米諸国
18∼19世紀初頭に独立 psヨーロッパ・キリスト教文明の影響が強い

・非キリスト教国の登場
トルコ、中国、日本がヨーロッパ国際法に参入
ただし、領事裁判制度や関税自主権の制限などで完全な対等関係ではない

⃝日本のヨーロッパ国際法への参入
・外圧による開国: 黒船来航により国際法関係に引き入れられる
不平等条約の締結:領事裁判制度、関税自主権の制限、片務的最恵国待遇などの不平等
条約
・明治政府の対策:
「富国強兵」、「殖産興業」の政策で「文明国」として認められることを目指す
不平等条約改正のための努力が続く

・日露戦争後の評価
国際法を遵守する国としての評判を確立
不平等条約の改正に成功し、国際連盟での地位も向上

⃝ヨーロッパ国際法から普遍的国際法へ
・第二次大戦後の変化
植民地から解放される国々が独立・平等な主権国家として国際社会に登場

・国際法の変革
外国人財産の国有化、外交的保護権、国家責任法など伝統的ルールの見直しが進む

Q:気候変動問題に対する国際法の役割は何か?パリ協定など具体的に考えてください。

⃝今日の国際法の特徴
・戦争・武力行使の違法化
自衛権の行使などを除き、武力行使は一般的に禁止

・国際社会の組織化
国連や専門的・技術的組織、地域的組織の設立

・個人に係る国際法の発展
国際人権規約や国際刑事裁判所(ICC)の設立

・協力の国際法の発展
国際経済、国際環境の保護など、共通利益のための協力が重要視される

Q:現代の国際法は、例えばウクライナ危機のような国際紛争にどう対処しているか?ど
う対処すべきか?
最後に
現代の国際社会は、かつてないほどの変化と挑戦に直面しています。ウクライナ危機、気
候変動の進行、サイバー攻撃の増加、人権問題など、国際的な課題は多岐にわたります。
歴史を振り返れば、ウェストファリア条約から始まり、ヒュゴー・グロティウスの自然法
論、そして現代の国際刑事裁判所や気候変動に関するパリ協定まで、国際法は常に変化す
る国際社会に対応しながら進化してきました。これは、国際法が単なる理論ではなく、現
実の国際関係に実際的に影響を与えていることを示しています。
今国際秩序が揺らいでいる時だからこそ、ぜひ外研の国際法ゼミで皆さんと国際法を学ぶ
意義について考えていきたいです。
水平社宣言:「人の世に熱あれ、人間に光あれ」

ref.
ビジュアルテキスト『国際法』 第三版「有斐閣」
石本泰雄『国際法の構造転換』(有信堂高文社, 1998年)
大沼保昭編『戦争と平和の法〔補正版〕』(東信堂, 1995年)
柳原正治『グロティウス 新装版』(清水書院, 2014年)
外務省 よくある質問集https://www.mofa.go.jp/mofaj/comment/faq/index.html
地球環境研究センター 国際法学から見た気候変動交渉の30年https://cger.nies.go.jp/
cgernews/202010/358001.html
国連 気候変動と国連https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/
sustainable_development/climate_change_un/

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