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KISHIDAIA, No.118, Feb.

2021
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沖縄島におけるホムラハエトリの初記録
馬場友希 1・盛口 満 2
1 国立研究開発法人 農研機構 農業環境変動研究センター
2 沖縄大学

ホムラハエトリ Cosmophasis lami はフィジー,セーシェル諸島,ココス諸島,シ


ンガポール,フィリピン,フランス領ポリネシアなど熱帯域を中心に広く分布し,近年
日本からも分布が確認されている (Suguro 2013).国内ではこれまで沖縄県の石垣島
からしか分布が確認されていなかったが (新海ほか 2020),この度,筆者らは沖縄島
から初めて本種を採集したので,その記録を報告する.
1♂, 2-VIII-2020, 沖縄県那覇市字大道 盛口 満採集・馬場友希 同定 (図 1, A–B)
採集場所は住宅地の周辺であり,路傍の植生上で見られた (図 1, C–D).多くの分布域
において本種は人工的な環
境で見られるため,資材や
物資に混入するなど人為的
な影響によって本来の生息
域以外にも分布を拡大して
いると考えられる (Żabka
& Waldock 2012).日本に
おいても石垣島の周辺の
島々では分布が確認されて
おらず,さらに空港の植え
込みなど人為的環境でしか
生息が確認されていないた
め,自然分布ではなく人為
的な移入の疑いがある.今
回本種を採集した場所で
は,複数の個体が確認され
たため,すでに沖縄島にも
定着している可能性があ
図 1. 沖縄島で初めて確認されたホムラハエトリ.A,オ
る.島内における移入・定着 ス全形 (スケ-ル:1.0 mm).B,オスの左触肢 (ス
状況を把握するためにも, ケ-ル:0.2 mm).C,生息環境.D, 野外での様
子.
今後他の場所でも本種の生
息を調査・確認する必要がある.
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KISHIDAIA, No.118, Feb. 2021
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引用文献
新海 明・谷川明男・安藤昭久・池田博明・桑田隆夫 2020. CD 県別クモ類分布図. Ver.
2020. 著者自刊
Suguro, T. 2013. The first record of Cosmophasis lami (Araneae: Salticidae) from
Japan. Acta Arachnologica 62: 19–22.
Żabka, M. & Waldock, J. 2012. Salticidae (Arachnida: Araneae) from Oriental,
Australian and Pacific regions. Genus Cosmophasis Simon, 1901. Annales
Zoologici, Warszawa 62: 115–198.

宮城県からのヒゲナガツヤグモの初記録
釣舟富紀子・馬場友希 1
1 国立研究開発法人 農研機構 農業環境変動研究センター

著者らはワシグモ科のヒゲナガツヤグモ
Micaria dives (Lucas 1846) を宮城県から
初めて採集したので報告する (図 1).本種
はヨーロッパ,トルコ,イスラエル,コーカ
サス地方,ロシア,中央アジア,インド,中
国,韓国,日本などヨーロッパから東アジア
に か け て 広 く 分 布 す る (World Spider
Catalog 2020).国内では本州,四国,九州
の 1 都 1 府 17 県から記録があるが (新海
ほか 2020),本州で分布が確認されている
図 1. 採集されたヒゲナガツヤグモのメス
地域は中国地方 (岡山県) から北関東 (茨
城県・栃木県) までであるため,これは東北地方初の貴重な記録となる.本種は平地に
多く,市街地の公園,庭園,河原,荒れ地などの石下や隙間,落葉中などの地表付近に
よく見られ (新海 2017),本個体も民家の庭の砂利の合間で採集された.標本は 80%
エタノールで固定・保存し,馬場が保管している.
採集データ: 宮城県仙台市宮城野区岩切 20-IX-2020 1F 釣舟富紀子 採集同定・馬場
友希同定確認
引用文献
新海 明・谷川明男・安藤昭久・池田博明・桑田隆夫 2020. CD 県別クモ類分布図. Ver 2020. 著
者自刊
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