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T.E. Larson And R.V. Skold**: 第2図 軟 鋼 の 腐 食 に 対 す るCl-/Hco3-の 影 響
T.E. Larson And R.V. Skold**: 第2図 軟 鋼 の 腐 食 に 対 す るCl-/Hco3-の 影 響
T.E. Larson And R.V. Skold**: 第2図 軟 鋼 の 腐 食 に 対 す るCl-/Hco3-の 影 響
緒 言
配 水 管 に お け る送 水 容 量 の減 少 に対 し,浄 水 方 法 が 与 最近
え る影 響 に つ い て の研 究 が,1954年 イ リ ノイ州 立 水 質 調 の報 告
塞 物 に よ り,配 水管 系 の送 水 容 量 が極 端 に減 少 す る事 実 関連が
か らす れ ば,こ の よ うな研 究 は有 意 義 で あ る。 配 水 管 で Stern
の 閉 塞 は,(1)沈 降 した混 濁 物,懸 濁 物 の よ うな微 少 破 3)に よ
る腐 食 生 成 物 の 生 成 あ るい は堆 積)な どに よ る と思 わ れ れ た の は,著 者 の大 変 喜 び とす る所 で あ る。
る。 この 処 理 方 法 の 研 究 の主 題 は さび こぶ を生 じた り防 実験 は 室温 で空 気 を飽 和 させ,ま たCO2でpHを 調
止 した りす るに は 水 質 を どの よ うに変 化 させ れ ば よ いか 整 した溶 液18lの 中 に,試 験 片 全 体 を浸 漬 して行 なわ れ
を定 め る こ とに あ る。 さび こぶ は腐 食 の副 産 物 で あ るか た 。装 置4)は 試 験 片 が垂 直 方 向 に 一 定 速 度 で循 環 す る よ
ら実 験 室 で の 研 究 は も っぱ ら腐 食 に関 連 す る よ うな水 の うに な って い る。 速 度 は0.9ft/sec以 上 に は し なか っ
鉱 物 質 成分 に つ い て行 な われ た。 た 。Caを 含 まな い重 炭 酸 溶 液 中 の 鋼 の 腐食(あ る いは
が 示 され た 。 さ らに水 道 水 に始 め よ り存 在 す る重 炭 酸 塩 試 験 に用 い た特
抑 制 剤 と塩 化 物,硫 酸 塩 との比 率 はpH 7∼8に お け る水 別 の水 質 と試 験
の 腐 食 性 を 示 す 基 本的 因子 で あ る よ うに思 わ れ る(第1 条 件 に対 してだ
変化に非 る。 腐 食 の環 境
常 に敏 感 が変 わ る と,別
第3図 鋼 の 腐 食 速 度 に 対 す るpH
であ るこ の 関係 が成 立 す
の 影 響(Cl-/HCO3-=0.2)
とが わ か る で あ ろ う。
った 。 た 第4図 は 第3図 の場 合 よ
とえ ば 塩 り塩化 物 の 多 い水 で の最 近
化 物/ア の 試験 結果 で あ る。 両 図 の
ル カ リ度 一般 傾 向 は 似 て い るが
,塩
第1図 軟 鋼 の 腐 食 に 対 す るCl-/HCO3-の 影 響 0.2∼0.3 化 物 の 多 い水 で の腐 食 速 度
に お いて,遊 離 塩素 の存 在 は鋼 の腐 食 速 度 を 増 す こ とが は 少 な い 水 よ りか な り大 き
知 られ て い る(第2図)。 瞬 間 的 な腐 食 速 度 を 求 め る方 法 い。 これ らの 両試 験 とも低
2)が 発 展 した。 この方 法 は極 端 に小 さ な電 流 密 度 で 起 る 流 速 で 行 な わ れ た。 ま た両
* 訳 者 小 瀬 豊 鉄 道 技 術 研 究 所
れ た こ とに 注 意 す べ き で あ
** Illinois State Water Survey る 。Whitman, Russellお
第4図 腐 食 速 度 に対 す る
(原 文)Laboratory Studies Relating Mineral Quality of
よ びAltieri5)の 結 果 は,
Water to Corrosion of Steel and Cast Iron: Corrosion, pHの 影響
Vol.14, No.6, 285t∼288t (1958) June (Cl-/HCO3-=1.0) そ れ ぞ れ のpHで アル カ リ
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216 資 料 防蝕技術
マグネ タ イ トに
接 した 灰 色 の 相
は,偏 光 で 見 る と
pH 6.0 pH 6.5 pH 7.0 二つ 以 上 の成 分 が
18mdd 24mdd 84mdd
見 られ る。 す な わ
ち,単 斜 構 造 を も
つ長 い針 状 の 輝 石
第6図 研 摩 し てな い 鋳 鉄 管 切 口
pH 7.5 pH 8.0 pH 8.5 CaSiO3あ るい は
の 顕 微 鏡 写 真 エ ッ チ せ ず,
175mdd 190mdd 190mdd
100×(本 図 で は21×) FeSiO3 (Mgあ る
第5図 第4図 で用 い た 鋼 試 験 片 の 腐 食 生 成物(4/7)
い はMn)
度,塩 化 物 とも異 な る濃 度 で 得 られ た。 第5図 は 第4図 と立 方 構造
で用 い た試 験 片 に 付 着 した 腐 食 生成 物 の型 態 を示 して い を もつ 多面
る。 これ らの写 真 は 試 験 の 終 了 した 時(35日 後)に 写 し 体 の ざ くろ
た も の で,腐 食 速 度 は 終 了 時 の値 で あ る。pHの 大 とな 石Ca3Al2・
るほ ど,さ び こぶ が 大 き い こ とに 注 目 す る と 面 白 い。 (SiO4)3あ る
Caが 存 在 す る と予 想 通 りCl/ア ル カ リ度0,4で,Ca濃 い はFe3Al2
度 を高 め るほ ど またpHを 大 にす るほ ど鋼 の 腐 食 は減 少 ・(SiO4)3で
す る。 あ る。 この
鋳 鉄 第7図 鋳 鉄 加 工 面 の 腐 食 に 対 す るCa,
大変不溶性
ア ル カ リ度 の 影 響
鋳 鉄 に お け る腐 食 の受 け 方 は 鋼 と異 な る。鋳 鉄 は フ ェ の 珪 酸 塩
ア ル カ リ度:125ppm (CaCO3と して),
ラ イ トあ るい は パ ー ライ トの組 織 の中 に グ ラ フ ァイ トを 流 速:0.08∼0.85ft/sec,温 度:室 温 の 「皮 膜 」
被 覆 す る前 に 面 を平 滑 に す る 目的 で,す べ て 部 分 的 に 研 速 に あ る時 間 暴 露 され る必 要 が あ る。 第7図 に お いて 腐
摩 され る こ とが調 査 の結 果 わか った 。 こ の行 程 で 大 部分 食 速 度 の大 幅 な変 化(Caの 各 濃 度 で約10倍)が み られ
の 鋳 鉄 管 内 面 は表 面 の10∼50%の 部 分 が 研摩 され る。 る。 この よ うな 変 化 はCa硬 度125ppmの 水質をは じ
実 際 に使 用 され て い る大 部 分 の鋳 鉄 管 は タ ール で被 覆 め と して,各 水 質 に お い て現 われ る。 第7図 の 腐 食 速度
休 日 な どで 腐 食抑 制 作用 が部 分 的 に な った 水 の,軽 微 で で あ る。
研 摩 しな い鋳 鉄 管 内面 の強 い耐 食 性 を示 す 皮 膜 は,ど に減 少 して い くの を示 して い る。 腐 食 速 度 の 減 少 は,
は エ ッチ しな い 切 口の顕 微 鏡 写 真 を示 す 。 度 の大 き い所 で カ ーブ が水 平 とな る。 こ の試 験 片 に は 暗
管 の内 面 の 皮 膜 を 削 る と現 われ る 金 属 面 と灰 色 の 相 赤 色 の小 さな 班 点,あ るい は全 体 に 白味 を 帯 び た 赤 色 の
の間 に存 在 す る黒 い 相 は,立 方 構 造 を もつ 磁 性 酸 化 鉄 析 出物 で お お わ れ た ふ く らみ が現 わ れ た 。 これ らの 班点
(Fe3O4)で あ る こ とが わ か った。 あ る いは ふ くらみ は 塩 素 を添 加 す る前 に も生 じ,さ らに
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Vol.8, No.5 鉄 鋼 の腐 食 と水 中 鉱 物 質 の 関 係 に 関 す る実 験 研 究 217
125ppmの 場合
進 行 す る と さび こ
よ りお そ い。
ぶ を形 成 す る よ う
最 近,Ca硬
に な る。 同 様 の 生
度85ppm, (Cl
成 物 は小 規 模 では
+SO4)/ア ル カ
あ るが,S.I. -0.1
リ度0.29の 水
の 試験片 に も 生
に つ い て の結 果
じた。56ppmの
が 得 ら れ た。
NaClを 添加 する
ClとSO4の 割
と腐 食 速 度 の増 加
合 は 種 々変 化 さ
が見 られ る。 ま た
第10図 鋳 鉄 加工 面 に お け る腐 食 せ た が,塩 化物
後 の例 が示 す よ う
速 度 の 経 時 変 化(流 速0.85ft/sec) と硫 酸 塩 との 間
第8図 鋳 鉄 加工 面 に おけ る腐 食 に,同 時 にS.I.の
に 腐 食 速 度,さ び こぶ の程 度 に相 違 が 見 られ な い 。 これ
速 度 の 経 時 変 化(流 速0.085ft/sec) 減少が 見 ら れ る
ら の 結 果 は,流 速0.085, 0.34, 0.85ft/secの 三 つ の グル
が,こ の よ うにCa濃 度 の高 い場 合 に は 腐 食 速 度 に影 響 ー プ に 分 け て ま と め た 。結 果 は 第8, 9図 で示 され た と同
を与 え な い。17日 後 に5ppmのSiO2を 単独添 加 した
じ傾 向 を 示 し た 。
結 果 は,腐 食 速 度 に 明 らか な影 響 を与 え な い 。 この場
低 流 速(第11図)の 場 合,S.I. 0で は-0.3, -0.8
合,濃 度 を 一定 に維 持 す る手 段 は 取 らな か った 。 の も の よ り減 少
第9図 は0.34ft/secに お け る 同様 な結 果 で あ るが, の速 度 が 速 や か
遊 離 塩 素 の代 りに で,最 終の腐食
ク ロ ラ ミン を用 い
速 度 も小 さい 。
た。 腐 食 速 度 の減 S.I. -0.8の 四
少 が急 速 で あ る こ つ の溶 液 の 中 二
と と最 終値 の低 い つ は,82日 後
こ とは,早 い流 速 S.I.が 正 の方
が 抑 制 剤 と して の 第11図 鋳 鉄 加 工 面 に お け る腐 食
向 に 変 化 した 。
Caの 拡散速度を 速 度 の 経 時 変 化(流 速0.085ft/sec)
こ の よ うたCa
増 加 させ た こ との
濃 度 の低 い水 にお いて は,S.I.が 正 の 方 向 に変 化(-
証 明 とな る。 この 0.8よ り0あ るい は-0.3)す る と同 時 に腐 食 速 度 が減
よ うな 比 較 的Ca
少 す る。
濃度 の 高 い 所 で
中 間 の流 速(第12図)で は,腐 食 速 度 の 落 ち方 が低 流
第9図 鋳 鉄 加工 面 に おけ る腐 食
は,S.I.を 小にし
速 度 の 経 時 変 化(流 速0.34ft/sec) 速 の場 合 よ りわず
て も腐食 速 度 に影
か に 大 きい。 不 明
響 が な い。 遊 離 塩 素 が存 在 す る場 合 に 起 る と同 じ よ うな な 理 由 に よ り,
さび こぶ は,S.I. -0.3で も認 め られ た が,大 き さも小 S.I. -0.8で は0
相互の影響 速 度 に 達 す る。 し
四 つ の 試験 条件 の下 で行 な った 結 果 を 第10図 に 示 す。 こ 場 合が 最 も 小 さ
れ らの 試 験 片 は,塩 素 あ る い は ク ロ ラ ミンの 有 無 に か か い。82日 後 のS.I. -0.3か ら-0.8へ の変 化 は 結 果 と
わ らず,い ず れ も さび こぶ を 示 し,第8, 9図 のCa硬 度 して腐 食 速 度 を増 し,S.I. 0へ の正 の方 向へ の変 化 は
125ppm, S.I. -0.3に お け る試 験 片 と同 様 の外 状 を 示 し 腐 食 速 度 を減 じた 。 代 表 的 試 験 片 の 洗 浄前 後 の状 況 を第
た 。Ca濃 度 が低 い に かか わ らず,流 速 が 大 き くpHが 13図 に示 す 。
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218 資 料 防蝕 技 術
とが わ か った が,こ の ことは 腐 食 抑 制 剤 に お い て完 全 防
食 に は不 十 分 な濃 度 しか 存 在 しな い場 合,一 様 な腐 食 で
は な く孔 食 を 示 す こ と と 似 て い る 。 実 際,さ び こぶ を生
じた 試 験 片 に,孔 食 腐 食 あ る い は “deferrotization” が
見 られ る。 ま た さび こぶ の 生 成 は,通 常 の 腐 食生 成 物 で
あ る水 酸 化 第 二 鉄 の他 に,炭 酸 カル シ ウ ムが 析 出 して支
持 構造 と して働 く こ とに よ る。
も しS.I.が0に 十分 近 くな い か,あ る い はCaと ア
第13図 第12図 で用 い た 鋳 鉄 試 験 片 の 腐 食 状 態 ル カ リ度 の両 方 または 一 方 が 低 す ぎ るな らば,炭 酸 カル
(上 洗浄前 下 洗浄後) シ ウム の支 持 構 造 は 十 分 発 達 せ ず,析 出 した炭 酸 カル シ
ら-0.8へ の変
ウ ムは銃 の析 出物 と一 しよに な り,か え って 防食 作 用 を
化 では 腐 食 速 度
示 す で あ ろ う。S.I. -0.8, pH 6.8, Ca濃 度 の高 い
が 増 し,0か ら
場 合(第8, 9図)の 試 験 片 は,白 味 を帯 び た赤 色 の析 出
-0 .3へ の変 化
物 で厚 く(1/15
in)固 く被 覆 され て お り,1/2 in位 の間 隔 で
で は あ ま り変 ら
ひ びが 入 っ て もは が れ な い 。 この被 覆 物 の下 で は孔 食 は
な い 。S.I. -0.8
見 られ ず,O2お よび他 の 腐食 性 物 質 の拡 散 を効 果 的 に
で は,他 の流 速
防 いで い る。
のCa硬 度125
結 論
第14図 鋳 鉄 加 工 面 に お け る腐 食 ppmに お け る 1) これ らの 試 験 結 果 か ら推 定 され る よ うに,空 気 飽
速 度 の 経 時 変 化(流 速0.85ft/sec) と 同 様,最 初一
和 の水 道 水 の 腐 食 性 は 次 の条 件 に支 配 され る。(a)抑 制
様 な 腐 食 を 受 け た 。S.I. -0.3の 水 で は,試 験片の表 性 成 分 に 対 す る腐 食性 成 分 の割 合(b)腐 食 性 お よび抑
面 は 腐 食 生 成 物 で ざ ら ざ らに な り,さ び こぶ は全 面 に生 制 性 成 分 の 濃 度 と効 力 の程 度(c)腐 食 性 お よび 抑 制 性
じた 。S.I. 0で も-0.3と 同 様 な腐 食 生 成 物 を生 じ た 成 分 の 保 護 面 へ の 拡散 速 度 に影 響 を も た らす 流 速 の 大 小
が,さ び こぶ は数 も少 な く,小 さ い。 な ど。 水 道 水 に お け る腐 食 性 成 分 は塩 素 イ オ ン,硫 酸 イ
討 論 オ ンな どで あ り,抑 制 性成 分 は重 炭 酸,炭 酸,水 酸,カ
1) 重 炭酸 イオ ンは鋼 の腐 食 に対 す る有 効 な 抑 制 剤 で ル シ ウ ム イオ ンな どで あ る。 それ ぞれ の相 対 的 な効 力 は
あ るが,Caが な い とき は作 用 が 緩 や か で あ る。 これ に 一 定 した もの で な く,他 の成 分 に も影 響 され るで あ ろ
炭 酸 塩 の尺 度 で あ るア ル カ リ度 は,そ れ だ けで 腐 食 抑 制 要 最 少 の抑 制 剤濃 度 が存 在 す る こ とは 当然 で あ る。 流 速
の作 用 を もつ。 を 増 加 す る と,腐 食性 成 分 と抑 制 性 成 分 の比 が 小 な る間
れ た。 しか し これ は ア ル カ リ度 が存 在 す る場 合 だ けに 成 特 別 の 流 速 で は保 護 が不 完 全 で,孔 食 と さび こぶ が そ れ
立 す る こ とで あ ろ う。 そ れ 単 独 あ るい は 併行 して起 る。 鋳 鉄 の さび こぶ を 防止
と無 関 係 に有 効 な抑 制 剤 で あ る こ とは,理 論 的 に も実 験 性 成 分 を 含 まな い よ うな水 質 に対 して のみ 必 要 とな る。
的 に も矛 盾 した こ とで は な い。 これ は腐 食 電 池 の カ ソ ー この 問題 は また,抑 制 剤 を効 果 の発 揮 で き る点 まで適 当
て も,塩 基 性 の カ ソ ー ド反 応 がCaCO3の 生 成 を誘 発 す 参 考 文 献
るか らで あ る。 この よ うなCaCO3の 析 出 速 度 は,Ca 1) T.E. Larson: J. AWWA., 47, 1061•`72 (1955) Nov.
よ り増 大 す る。 またpHをCaCO3の 飽 和pH,あ るい 4) O.B.J. Fraser et al: Ind. Eng. Chem., 19, 332 (1927).
4) さ び こぶ は 完 全 防食 に近 い条 件 下 で形 成 され る こ (1957) Oct.
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