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50 におい・かおり環境学会誌 53巻 1 号 令和 4 年

― 研究論文 ―

ダージリン紅茶セカンドフラッシュに特徴的な
香気成分の解析と自律神経活動に及ぼす効果
大野 敦子1*,鈴木 萌人1,矢田 幸博2

1
三井農林株式会社 R&D 本部 〒426-0133 静岡県藤枝市宮原 223-1
2
筑波大学大学院人間総合科学学術院 グローバル教育院 ヒューマンバイオロジー学位プログラム
〒305-8577 茨城県つくば市天王台 1-1-1

紅茶の香りが自律神経活動に及ぼす効果について検討した結果,ダージリン紅茶セカンドフラッシュの香
り吸入後に縮瞳率および指尖皮膚温は有意に上昇した.その効果は,アッサム紅茶とウバ紅茶の香りの効果
より大きかったことから,交感神経活動を抑制し,副交感神経活動を優位にする鎮静作用が高いことが示唆
された.香気成分分析によりダージリン紅茶セカンドフラッシュに特徴的な香気成分;ゲラニオール,ホト
リエノール,2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン,2-フェニルエチルアルコールを選定し,紅茶飲
用時の規定濃度でそれぞれ吸入した結果,ホトリエノールのみが縮瞳率を有意に上昇させた.濃度依存性を
検討した結果,ホトリエノールは 5 ppm 以下の低濃度において縮瞳率は有意に上昇した.さらに,ホトリ
エノール 50 ppm 吸入後に縮瞳率ばかりでなく,指尖皮膚温も有意に上昇したことから,ホトリエノールは
ダージリン紅茶セカンドフラッシュと同様の鎮静作用を有することが示された.以上の結果から,ホトリエ
ノールはダージリン紅茶セカンドフラッシュの香りによる鎮静作用の発現に寄与する最も重要な成分である
ことが示唆された.

ヒドロキシ -3
(2H)
-フラノン(以後 DMHF と略記する)
1. 緒言
が,メイラード反応由来の香りの鎮静作用を担うことが
食品は,その栄養学的な機能ばかりでなく,抗コレ 示唆されている12)~14).DMHF は SFDJ の香りに含まれ
ステロール1),体脂肪低減2),腸内環境改善3)などの健康 ることから15),このような成分が SFDJ の香りの鎮静作
機能の面からも注目されている.近年では,食品由来の 用の発現に関与している可能性が考えられる.また,精
香りが心身の健康に寄与するものとして,リラックス効 油の香りの鎮静作用を担う香気成分として報告されるリ
4),5) 6), 7) 8), 9)
果 ,抗ストレス効果 ,ダイエット効果 など, ナロール17)~19)やゲラニオール20)は紅茶の主要な香気成
香りの効果効能への関心が高まっている.著者らも,ダー 分であることから,これらの香気成分が SFDJ の香りの
ジリン紅茶セカンドフラッシュ(以後 SFDJ と略記する) 有効性に関与していることは想像に難くない.しかしな
の香りが,心理生理的なリラックス効果10) や睡眠改善 がら,紅茶の香りから 600 種類以上もの香気成分が同定
11)
効果 をもたらすことを報告している.これらの生理 されていることからも16),紅茶の香りのプロファイルは
的な効果の発現は,自律神経活動に対して SFDJ の香り 複雑であるといえ,有効性に関与する香気成分はいまだ
が交感神経活動を抑制し,副交感神経活動を優位にする 明らかになっていない.
鎮静的な作用によるものと考察している10),11).アッサム そこで,本研究では,SFDJ の香りの鎮静作用に関与
紅茶(以後 AS と略記する),ウバ紅茶(以後 UV と略 する香気成分を探索し,SFDJ に特徴的な香気成分が自
記する),アールグレイ紅茶に比べて,SFDJ の香りは 律神経活動に及ぼす効果を検証した.その結果,SFDJ
香りに対する嗜好性が高いだけでなく,心理生理的なリ に特有の香気成分;ホトリエノールが,既報の香気成分
ラックス効果が高いことが示唆されている10).さらに, のゲラニオールや DMHF 以上に,低濃度にて鎮静作用
香りに対する嗜好性および心理的な効果と生理的なリ を発現することが認められ,SFDJ の香りの鎮静作用に
ラックス効果に関連性が認められないことから,SFDJ 重要な成分であることが示唆されたので報告する.
の香り特有の成分が生理的な効果に関与する可能性が推
2. 方法と材料
察されている10).香気成分単体の有効性については,こ
れまでにメイラード反応で生成される香りが含有する香 2.
1 試験概要
気成分;2,3-ジメチルピラジンおよび 2,5-ジメチル-4- 本研究は,試験Ⅰ(紅茶の香りの生理学的評価),試

Corresponding author : E-mail a.ohno@mitsui-norin.co.jp
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験Ⅱ(紅茶の香気成分分析),試験Ⅲ(SFDJ に特徴的 ティーシーズンの紅茶),ディンブラ紅茶(スリランカ


な香気成分の生理学的評価),試験Ⅳ(DMHF およびホ 中央山岳地帯の南西部のディンブラで生産された紅茶,
トリエノールの濃度依存性評価),試験Ⅴ(ホトリエノー 以後 DI と略記する)
,キーモン紅茶(中国安徽省で生
ルの生理学的評価)の内容で実施した. 産された工夫紅茶,以後 KE と略記する)の市販されて
いる紅茶葉 5 種類を用いた.
2.2 試験環境 2.5.2 試薬
試験室は,室温 25℃,相対湿度 50%,照度 300 lux trans-2-ヘキセナール(純度≧97.0%,東京化成工業
に設定し,窓・ドアを閉鎖して静寂を維持した.測定室 社),cis-3-ヘキセノール(純度≧97.0%,東京化成工業
の床面積は約 170 m2 で,瞳孔対光反応測定と指尖皮膚 社)
,リナロール(純度≧96.0%,東京化成工業社),ホ
温測定で区分けをして実施した.なお,本試験は嗅覚測 トリエノール(純度≧95.0%,曽田香料社),ゲラニオー
21)
定法安全管理マニュアル を参考に実施した. ル(純度≧96.0%,東京化成工業社),β-ダマセノン(純
度≧98.0%,Sigma Aldrich 社),2-フェニルエチルアル
2.3 被験者 コール(純度≧98.0%,東京化成工業社)
,フェニルア
対象者には,紅茶が苦手でない,喫煙しない,冷え セトアルデヒド(純度≧90.0%,Sigma Aldrich 社),メ
性でない,薬物治療を受けていない,アトピー性皮膚炎 チルサリシレート(純度≧99.0%,東京化成工業社),2,5-
などの皮膚疾患症状がないことを確認し,試験Ⅰでは健 ジ メ チ ル-4-ヒ ド ロ キ シ-3
(2H)-フ ラ ノ ン( 純 度≧
常女性 18 名(32.6±4.7 歳),試験Ⅲでは健常女性 9 名
(44.1 98.0%,東京化成工業社)
,シクロヘプタノール(純度
±12.7 歳),試験Ⅳでは健常女性 9 名(42.8±8.9 歳),試 ≧98.0%,東京化成工業社),ツィーン 20(関東化学社)
験Ⅴでは健常女性 20 名(33.4±3.9 歳)を対象に試験を を用いた.
実施した(年齢は,平均値±標準偏差で示した).被験
者には試験前夜は 7 時間以上の十分な睡眠を取ること, 2.6 測定項目
試験前の食事では刺激物を控える他,カフェイン含有飲 2.6.1 香りの強度に関する主観評価
料の摂取を制限し,試験当日は香りのある香粧品をつけ 標品の香り吸入後に香りの強度について主観評価し
ないことを指示した. た.香りの強度は 0(強度の最小:香りを全く感じない)
か ら 100( 強 度 の 最 大: 香 り を 強 く 感 じ る ) ま で の
2.4 倫理的配慮 100 mm の Visual Analogue Scale(以後 VAS と略記す
22), 23)
試験は,ヘルシンキ宣言に示された倫理規定に基づ る) を用いた.なお,香り強度スコアは 0~25:0
いて実施した.被験者には本試験の目的,実施内容,試 点(香りをほとんど感じない),26~50:1 点(香りを
験により想像されるリスクを説明し,同意書にて同意を わずかに感じる)
,51~75:2 点(香りを感じる)
,76~
得た.本試験は所属機関である三井農林株式会社にて外 100:3 点(香りをはっきり感じる)とした.
部試験実施の申請およびデータ公表の可否について承認 2.6.2 瞳孔対光反応測定
を受けた後に,受託臨床試験機関のチヨダパラメディカ ゴーグル様の電子瞳孔計のイリスコーダデュアル
ル ケ ア ク リ ニ ッ ク(CPCC) に 倫 理 審 査 を 委 託 し, C10641(浜松ホトニクス社,静岡)を用いて,瞳孔対
CPCC 倫理審査委員会にて審査および承認の下,本試験 光反応を計測した24),25).計測方法はゴーグルを顔面に装
を実施した.倫理審査承認番号は MTN18C3(試験Ⅰ), 着して,遮光した状態で 2 分間暗順応させた後,0.1 秒
MTN19C5(試験Ⅲ,Ⅳ),MTN20C1(試験Ⅴ)である. の光刺激を行い,瞳孔の縮瞳・散瞳反応を解析した.試
また,試験内容は大学病院医療情報ネットワークに登録 験品(コントロール品と標品)の香り吸入において,光
されたものであり,UMIN 登録番号は UMIN000034226 刺激前の初期状態の瞳孔直径 D1,光刺激後の瞳孔直径
( 試 験 Ⅰ ),UMIN000037861( 試 験 Ⅲ, Ⅳ ),UMIN D2 の変化量を D1−D2 とし,縮瞳する割合である縮瞳率
000039348(試験Ⅴ)である. (以後 CR と略記する)を CR=
(D1−D2)/D1 から求めた.
コントロール品の吸入後の縮瞳率を CR1,標品の香り吸
2.5 試験品 入後の縮瞳率を CR2 とし,標品とコントロール品の香
2.5.1 紅茶葉 り吸入後の縮瞳率差分(以後ΔCR と略記する)をΔCR
SFDJ(インド北東部ヒマラヤ山麓のダージリンで生 =CR2−CR1 から求めた.光刺激による瞳孔径変化の解
産された紅茶の二番茶),AS(インドのヒマラヤ山脈南 析により,自律神経活動,特に副交感神経活動に対する
東部のアッサムで生産された紅茶の二番茶),UV(スリ 作用を解析した24),25).
ランカ中央山岳地帯の南東部のウバで生産されたクオリ
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2.6.3 指尖皮膚温測定 導した.


温度ロガー LT-8A(グラム社,埼玉)を用いて,末
梢部位(人差し指腹中央部)の皮膚温(以後 FT と略記 2.
9 試験Ⅱ:紅茶の香気成分分析
する)を計測した26).コントロール品の吸入後の指尖皮 2.
9.1 試料調製
膚温を FT1,標品の香り吸入後の指尖皮膚温を FT2 とし, 生理学的評価に用いた 3 種類(SFDJ,AS,UV)と
標品の香り吸入による指尖皮膚温の変化(以後ΔFT と 合わせて,2 種類(DI,KE)の合計 5 種類の紅茶葉を
略記する)をΔFT=FT2−FT1 から求めた.末梢部位の 各 5 g 秤量し,熱水 300 mL で抽出後,ろ過,冷却して
皮膚温の解析により,自律神経活動,特に交感神経活動 得た紅茶抽出液を試料溶液とした.なお,抽出時間は,
26)
を解析した . 茶葉の形状などの特徴毎に推奨されている抽出方法を参
考 に,SFDJ お よ び KE:4 分,AS:3 分,UV お よ び
2.7 統計解析 DI:2 分 30 秒とした.
データは平均値±標準誤差(SEM)で示した.標品 2.
9.2 固相マイクロ抽出 -GC-MS 分析方法
とコントロール品の 2 条件間の差を対応のある t 検定
(両 trans-2-ヘキセナール,cis-3-ヘキセノール,リナロー
側検定)により検定した.コントロール品と紅茶 3 種類, ル,ホトリエノール,ゲラニオール,β-ダマセノン,
それぞれの縮瞳率の差は一元配置分散分析により検定し 2-フェニルエチルアルコール,フェニルアセトアルデヒ
た後,Fisherʼs LSD 法により多重比較検定を行った. ドおよびメチルサリシレートは,固相マイクロ抽出(以
統計解析は解析ソフトウェアの SPSS Statistics 25(IBM -GC-MS で測定した27).適宜希
後,SPME と略記する)
社,ニューヨーク州アーモンク,USA)を用いた.p<0.05 釈した試料溶液 10 mL と塩化ナトリウム 3 g をガラスバ
を統計学的有意差ありと判定した.なお,p=0.06~0.10 イアルに入れ,内部標準物質(シクロヘプタノール,
であった場合には有意傾向ありと判定した. 0.5 µg)を添加したものを分析試料とした.ガラスバイ
アルのヘッドスペースガスを Supelco SPME ファイバー
2.8 試験Ⅰ:紅茶の香りの生理学的評価 (50/30 µm Divinylbenzene/Carboxen/Polydimethyl-
2.8.1 試験品調製 siloxane, Sigma Aldrich 社)を用いて,60℃で 30 分間,
SFDJ,AS および UV の紅茶葉 3 種類を各 10 g 秤量し, 抽出した.ガスクロマトグラフは TRACE GC ULTRA
熱水 600 mL で抽出後,ろ過して得た紅茶抽出液を標品 (Thermo Fisher Scientific 社)を使用した.クロマト用
とした.なお,抽出時間は茶葉の形状などの特徴毎に推 カ ラ ム は Sigma Aldrich 社 の SUPELCO WAX10
奨されている抽出方法を参考に,SFDJ:4 分,AS:3 分, (0.25 mm I.D.×60 m×0.25 µm)を使用し,キャリアー
UV:2 分 30 秒とした.それぞれの試験品 150 mL をフラッ ガス:ヘリウム(注入口圧:100 kPa),注入口温度:
プ付きの保温カップに入れて,標品の温度は 80~85℃ 240℃,注入法:スプリット注入(スプリットフロー:
に保持した.なお,コントロール品は室温の超純水とし 10 mL/分),オーブン温度は 40℃から 100℃まで 3℃/分,
た. 200℃まで 5℃/分,240℃まで 8℃/分で昇温した.質量
2.8.2 試験手順 検出器は TSQ QUANTUM XLS(Thermo Fisher Sci-
被験者は換気された試験室に入室後,座位にて 30 分 entific 社)を使用した.イオン化電圧:70 eV(EI),イ
間安静にし,試験環境に純化させた.生理学的評価は瞳 オン源温度:200℃,測定モード:スキャン(m/z:35
孔対光反応測定,指尖皮膚温測定の順に実施した.瞳孔 ~375)で測定した.香気成分濃度はそれぞれの標準品
対光反応測定は,2 分間の安静待機後,2 分間の安静待 から得られた検量線により算出した.
機後,試験品(コントロール品あるいは標品)を 2 分間 2.
9.3 LC-MS 分析方法
提示した後に測定し,継続して 2 分間の安静待機後,試 DMHF は LC-MS で測定した28).試料を 0.45 µm フィ
験品(標品あるいはコントロール品)を 2 分間提示した ルター(ADVANTEC 社)でろ過した液 5 µL を LC-MS
後に測定した.これら一連の測定をそれぞれの標品で に供した.液体クロマトグラフは Agilent 1100 Series
行った.また,指尖皮膚温測定も同様の手順で実施した. (Agilent technologies 社)を使用した.カラムは Atlan-
香りの提示方法は試験品を入れた保温カップを座位 tis T3 Column(3 µm, 2.1×100 mm, Waters 社)を使用
の被験者の鼻下約 3 cm の位置に静置した.測定時に保 し,流速:0.2 mL/min,カラム温度:40℃で測定した.
温カップのフラップ(縦 1 cm×横 2 cm の開口部)を開 移動相 A:0.1%(v/v)ギ酸添加水,移動相 B:0.1%(v/
けて,被験者には開口部から立ちのぼる香りを 2 分間吸 v)ギ酸添加アセトニトリルを使用した.グラジエント
入させた.なお,被験者には測定中は深呼吸や息堪えを 条 件 は 1 分 ま で 移 動 相 B:5%,21 分 ま で 移 動 相 B:
せずに通常の呼吸下で香りを吸入するように,事前に指 80%,24 分まで移動相 B:100% とした.質量検出器は
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3200 QTRAP(AB SCIEX 社)を使用し,イオン化法: 2.11.2 試験手順


ESI ポジティブモード,イオン化電圧:5500 V,イオン 被験者は換気された試験室に入室後,座位にて 30 分
源温度:600℃で測定した.DMHF 濃度は標準品から得 間安静にし,試験環境に純化させた.生理学的評価とし
られた検量線により算出した. て瞳孔対光反応測定を実施した後,香りの強度に関する
主観評価を実施した.瞳孔対光反応測定は 2 分間の安静
2.10 試験Ⅲ:SFDJ に特徴的な香気成分の生理学的評 待機後,試験品(コントロール品あるいは標品)を 2 分
価 間提示した後に測定し,継続して 2 分間の安静待機後,
2.10.1 試験品調製 試験品(標品あるいはコントロール品)を 2 分間提示し
試験Ⅱの香気成分分析結果をもとに,試験には SFDJ た後に測定した.これら一連の測定を 10 種類の標品で
に特徴的な 4 種類の香気成分:ゲラニオール,ホトリエ 行った.
ノール,2-フェニルエチルアルコールおよび DMHF を 香りの提示方法は簡易揮散装置29) を用いて,それぞ
選定した.標品の提示濃度はゲラニオール:0.20 ppm, れの標品を空気と混合希釈して提示した.なお,被験者
ホトリエノール:0.10 ppm, 2-フェニルエチルアルコー には測定中は深呼吸や息堪えをせずに,通常の呼吸下で
ル:0.40 ppm, DMHF:0.10 ppm とした.試験品は各標 香りを吸入するように,事前に指導した.
品の重量に対して同量のツィーン 20 を添加して超純水 2.12 試験Ⅴ:ホトリエノールの生理学的評価
に分散させたエマルション状態とした.試験品 100 mL 2.12.1 試験品調製
を 200 m L のガラスボトルに入れて,室温に保持した. ホトリエノールを,50 ppm の濃度に超純水で希釈し
なお,コントロール品は標品毎に超純水に標品と同量の て,調製した.試験品 150 mL をフラップ付き保温カッ
ツィーン 20 を添加して調製し,室温に保持した. プに入れて,室温に保持した.なお,コントロール品は
2.10.2 試験手順 室温の超純水とした.
被験者は換気された試験室に入室後,座位にて 30 分 2.12.2 試験手順
間安静にし,試験環境に純化させた.瞳孔対光反応測定 被験者は,換気された試験室に入室後,座位にて 30
は 2 分間の安静待機後,試験品(コントロール品あるい 分間安静にし,
試験環境に純化させた.生理学的評価は,
は標品)を 2 分間提示した後に測定し,継続して 2 分間 瞳孔対光反応測定,指尖皮膚温測定の順に実施した.瞳
の安静待機後,試験品(標品あるいはコントロール品) 孔対光反応測定は,2 分間の安静待機後,試験品(コン
を 2 分間提示した後に測定した.これら一連の測定を 4 トロール品あるいは標品)を 2 分間提示した後に測定し,
種類の標品で行った. 継続して 2 分間の安静待機後,試験品(標品あるいはコ
香りの提示方法は矢田らが考案した簡易揮散装置29) ントロール品)を 2 分間提示した後に測定した.これら
を自作して,それぞれの標品を空気と混合希釈して提示 一連の測定をそれぞれの標品で行った.また,指尖皮膚
した.なお,成人の平均呼気量は 5.0 L/分程度であるた 温測定も同様の手順で実施した.
め,揮散装置の流速を 1 分間あたり 5.0 L に調整し,被 香りの提示方法は試験品を入れたフラップ付きカッ
験者に提示した.被験者には測定中は深呼吸や息堪えを プを座位の被験者の鼻下約 3 cm の位置に静置した.被
せずに,通常の呼吸下で香りを吸入するように,事前に 験者には,測定時に保温カップのフラップを開けて,開
指導した. 口部(縦 1 cm×横 2 cm)からの香りを 2 分間吸入させた.
2.11 試験Ⅳ:DMHF およびホトリエノールの濃度依 なお,被験者には測定中は深呼吸や息堪えをせずに,通
存性評価 常の呼吸下で香りを吸入するように,事前に指導した.
2.11.1 試験品調製
3. 結果
試験には DMHF とホトリエノールの 2 種類の香気成
分を選定した.標品の提示濃度はそれぞれ 0.05 ppm, 3.1 試験Ⅰ:紅茶の香りの違いによる自律神経活動に
0.50 ppm, 5.0 ppm, 50 ppm および 100 ppm とした.試験 及ぼす効果
品は各標品の重量に対して同量のツィーン 20 を添加し 標品とコントロール品の香り吸入後の CR について,
て超純水に分散させたエマルション状態とした.試験品 そ れ ぞ れ の 紅 茶 で 比 較 し た 結 果 を 表−1 に 示 し た.
100 mL を 200 m L のガラスボトルに入れて,室温に保 SFDJ および UV の香り吸入後に CR が有意に上昇し,
持した.なお,コントロール品は超純水としたが,標品 AS の香り吸入後には上昇する有意傾向が認められた.
の成分濃度毎に標品と同量のツィーン 20 を添加して室 3 種類の標品とコントロール品の CR 差分値(ΔCR)に
温に保持した. ついて一元配置分散分析を行った結果,ΔCR の効果は
有 意 で あ っ た[F
(2, 51)=11.57, p<0.000,η2=0.31].
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表−1 3 種類の紅茶の香りとコントロール品吸入後の縮瞳率

データは平均値±SEM を示す(n=18).†は p<0.10,** は p<0.01,*** は p<0.001


を示す(対応のある t 検定).

表−2 3 種類の紅茶の香りとコントロール品吸入後の指尖皮膚温

データは平均値±SEM を示す(n=18)
.** は p<0.01 を示す(対応のある t 検定).

図−1 3 種類の紅茶の香りによる自律神経活動に及ぼす作用
(a)ΔCR,(b)ΔFT(℃).データは平均値±SEM を示す(n=18).†は p<0.10,* は
p<0.05,** は p<0.01,*** は p<0.001 を示す(Fisherʼs LSD 法による多重比較検定).

Fisher PLSD 法による多重比較の結果,SFDJ と AS と 3.


2 試験Ⅱ:SFDJ に特徴的な香気成分の定量
の 間(p=0.000) に 有 意 差 が 認 め ら れ た が,SFDJ と 5 種類の紅茶葉の香気成分を分析し,紅茶の主要な香
UV との間(p=0.106)は有意な差は認められなかった(図 気成分として 10 種類を定量した(表−3).その結果,
−1−(a)). SFDJ は他の紅茶に比べてゲラニオール,ホトリエノー
標品とコントロール品の香り吸入後の FT について, ル,2-フェニルエチルアルコール,DMHF の香気成分
そ れ ぞ れ の 紅 茶 で 比 較 し た 結 果 を 表−2 に 示 し た. の含有量が約 2 倍~8 倍程度多く,特にホトリエノール
SFDJ の香り吸入した場合のみ,FT が有意に上昇した. と DMHF は SFDJ にのみに高含有であった.
3 種類の標品とコントロール品の FT 差分値(ΔFT)に
ついて一元配置分散分析を行った結果,ΔFT の効果は 3.
3 試験Ⅲ:SFDJ 主要香気成分が副交感神経活動に
2
有 意 で あ っ た [F(2, 51)=3.60, p<0.034, η =0.12]. 及ぼす効果
Fisher PLSD 法による多重比較の結果,SFDJ と UV と 標品とコントロール品の香り吸入後の CR をそれぞれ
の間(p=0.011)に有意な差が認められ,DSFJ と AS の香気成分で比較した結果を表−4 に示した.ホトリエ
との間(p=0.097)には有意傾向が認められた(図−1 ノールを吸入した場合にのみ,CR は有意に上昇した.
−(b)
).
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3.4 試験Ⅳ:DMHF およびホトリエノールの香り強度 ても香りとして感知された.一方,CR は 50 ppm およ


と生理作用の濃度依存性 び 100 ppm を吸入した後に有意に上昇したが,5 ppm
5 段階濃度の DMHF の香り強度スコア,コントロー 以下では吸入後の上昇は認められなかった.
ル品と 5 段階濃度の標品の香り吸入後の CR を比較した 5 段階濃度のホトリエノールの香り強度スコア,コン
結果を表−5 に示した.DMHF はいずれの濃度におい トロール品と 5 段階濃度の標品の香り吸入後の CR を比
較 し た 結 果 を 表−6 に 示 し た. ホ ト リ エ ノ ー ル は
表−3 5種類の紅茶の香気成分定量値 5 ppm,50 ppm および 100 ppm の濃度において香りと
して感知された.一方,CR は 0.05 ppm, 0.5 ppm, 5 ppm
お よ び 50 ppm を 吸 入 し た 後 に 有 意 に 上 昇 し た が,
100 ppm では吸入後の上昇は認められなかった.

3.5 試験Ⅴ:ホトリエノールが自律神経活動に及ぼす
作用
ホトリエノールとコントロール品の吸入後の CR を比
(a)に示した.コントロール品
較した結果を図−5− (0.36
±0.01)に比べてホトリエノール吸入後(0.39±0.01)に
単位:ppb,tr:定量限界以下 CR は有意に高値を示した(p=0.007).

表−4 SFDJ主要香気成分とコントロール品吸入後の縮瞳率比較

データは平均値±SEM を示す(n=9).* は p<0.05 を示す(対応のある t 検定).

表−5 5段階濃度のDMHFの香り強度スコアと縮瞳率

データは平均値±SEM を示す(n=9).* は p<0.05 を示す(対応のある t 検定).

表−6 5段階濃度のホトリエノールの香り強度スコアと縮瞳率

データは平均値±SEM を示す(n=9).* は p<0.05,** は p<0.01 を示す(対応のある t 検定).


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図−5 ホトリエノールが自律神経活動に及ぼす作用
(a)CR,(b)FT.データは平均値±SEM を示す(n=20)
.*** は p<0.001 を示す(対応
のある t 検定).

また,ホトリエノールとコントロール品の吸入後の 紅茶の主要な香気成分 10 種類の中に含まれていた.し


FT を比較した結果を図−5−(b)に示した.コントロー かしながら,リナロールが 5 種類の紅茶に共通して同程
ル品(32.5±0.6℃)に比べてホトリエノール吸入後(33.2 度含まれていたことを考慮すると,SFDJ の香りの鎮静
±0.7℃)に FT は有意に高値を示した(p=0.0003). 作用は既報のリナロールによるものではなく,これまで
に十分に検討されていない香気成分が関与している可能
4. 考察
性が考えられた.そこで,SFDJ に特徴的な 4 種類の香
本研究では,SFDJ の香りの鎮静作用に関与する成分 気成分:ゲラニオール,ホトリエノール,2-フェニルエ
を探索し,SFDJ に特徴的な香気成分が自律神経活動に チルアルコールおよび DMHF について,分析結果をも
及ぼす効果を検証した.本試験における生理学的評価と とに,それぞれの香気成分を SFDJ 飲用時の想定濃度に
しては,香りが自律神経活動に及ぼす影響を明らかにす 調製した.次に副交感神経活動に対する作用を比較検討
るために,副交感神経活動を反映する瞳孔対光反応測定 した結果,ホトリエノールのみが SFDJ 飲用時の想定濃
および交感神経活動を反映する指先皮膚温測定を行っ 度;0.10 ppm でも縮瞳率の有意な上昇が認められた.
た.これらの評価手法は,香りの有効性評価において呼 これまでに,ゲラニオールおよび 2-フェニルエチルア
吸統制が必要とされる心拍変動解析とは異なり,自然呼 ルコールの抑うつ作用20),32),DMHF の鎮静作用15) が報
吸下で安静状態の自律神経活動を簡便でかつ高感度に評 告されている.しかしながら,先行研究におけるゲラニ
29)~31)
価できるという利点がある .著者らの先行研究で オールと 2-フェニルエチルアルコールの生理作用は動
は,本評価手法により,SFDJ の香りが自律神経活動に 物を対象に高濃度を投与した試験であること,また,
対する鎮静作用を有することを明らかにしている.そこ DMHF はひとを対象としているが高濃度提示条件にお
で SFDJ,AS および UV の香りの生理効果を比較した ける作用であり,本研究のように飲用時を想定した低濃
結果,AS と UV の香りに比して,SFDJ の香りの吸入 度提示条件における作用は認められていない.これまで
により縮瞳率および指尖皮膚温は有意に上昇したことか にホトリエノールの生理作用に関する報告はなく,低濃
ら,SFDJ の香りは交感神経活動を抑制し,副交感神経 度のホトリエノール吸入により鎮静作用が認められたこ
活動を優位にする鎮静作用が高いことが示唆された.し とは大変興味深く,ホトリエノールが SFDJ の香りの鎮
たがって,SFDJ の香りに含有される香気成分が鎮静作 静作用において重要な因子であることを示唆するもので
用の発現に寄与していることが推察された.そこで, ある.一方,DMHF は,低濃度の揮散条件では副交感
SFDJ を含む 5 種類の紅茶の香気成分分析により,紅茶 神経活動に対する作用は認められなかったものの,先行
の主要な香気成分 10 種類を同定し,定量した.その結果, 研 究 で は ヒ ト で 鎮 静 作 用 が 認 め ら れ て い る こ と15),
ゲラニオール,ホトリエノール,2-フェニルエチルアル SFDJ に特異的に多く含まれていることから,ホトリエ
コールおよび DMHF の 4 種類の香気成分が SFDJ に高 ノールとの比較検証として,DMHF の香りの強度と生
含有であったことから,以後の生理学的評価の対象成分 理作用の濃度依存性についても検討した.その結果,ほ
とした.ラベンダーをはじめ様々な精油に含まれる鎮静 とんどの被験者が DMHF;5 ppm 以下の揮散濃度でも,
17)~19)
作用を担う成分として報告されるリナロールも , DMHF の香りを感知していたが,この濃度範囲では縮
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瞳 率 の 変 化 は 認 め ら れ ず,DMHF;50 ppm お よ び の 5 月下旬頃,東方美人茶では 5 月上・中旬に多く発生


100 ppm の高濃度で縮瞳率の有意な上昇が認められた. し,食害を受けた茶葉ほどマスカット様,リンゴ様の果
一方,ホトリエノールの生理作用は 0.05 ppm の低濃度 実 フ レ ー バ ー が 強 く な る と い わ れ て い る35). 近 年,
から濃度依存的に認められたが,低濃度ではほとんどの SFDJ の芳醇なマスカテルフレーバーに関連する香気成
被験者がホトリエノールの香りを感知できなかった.し 分として,ホトリエノールや DMHF,ゲラニオール,
たがって,高濃度で生理作用を示す DMHF とは異なり, 2-フェニルエチルアルコール以外にもβ-ダマセノン,
ホトリエノールは香りとして感知できないほどの低濃度 4-メルカプト-4-メチル-2-ペンタノンなどの存在が明ら
でも生理作用を示すことが示唆された.さらに,ホトリ かになってきている33).したがって,これらの香気成分
エノールの最終的な生理評価により,縮瞳率の有意な上 や既知の成分などが相まって,SFDJ の華やかで芳醇な
昇が観察されただけでなく,指尖皮膚温の有意な上昇が 香りが形成されることで嗜好性を高め,心理的な鎮静作
認められたことからも,SFDJ の香りと同様に交感神経 用とともに生理的な鎮静作用を発現する可能性がある.
活動を抑制することで相対的に副交感神経活動を高める ホトリエノールの作用機序については,香気成分と
という生理的な鎮静作用を発現することが示唆された. して嗅覚受容体に作用し,嗅覚神経を介して,大脳皮質
これまでに,大畑らによるメイラード反応で生成す 嗅覚野に伝達する経路と推察している.しかしながら,
る香りの有効性研究において,DMHF は高濃度でない ホトリエノールと同様に針葉樹林由来のセドロールは感
と鎮静作用が認められないこと,メイラード反応で同時 知できないほどの低濃度でも生理的な鎮静作用を発現す
に産生される 2,3-ジメチルピラジンは微香性で,DMHF ることから解析を進めた結果,実験動物において下気道
に比して低濃度で鎮静作用が高いことを報告してい (気管→迷走神経への刺激→大脳)を介すること,ヒト
15)
る .したがって,香りとして強く感じられる DMHF では上気道と下気道の 2 つの経路を介することが示唆さ
と相まって 2,3-ジメチルピラジンが香りの鎮静作用を れている36),37).したがって,ホトリエノールも 2 つの経
担っている可能性があることから,メイラード反応由来 路を介する可能性があるため,今後,作用機序解明に向
の香ばしく美味しい香りとして心理生理的な鎮静作用を けた検討が必要であると思考している.
15)
もたらしたものと推察している .一方,著者らは, ホトリエノールが香りとして感知できない低濃度で
SFDJ の香りによる生理的な鎮静作用は,嗜好性や心理 も生理的な有効性を示すという点では,好みや快不快に
的な作用に関係なく発現することを明らかにしてい 関わらずユニバーサルな香りとして,多くの人が快適に
10)
る .本研究では,ホトリエノールの吸入によって生理 利用できるものと期待される.ただし,本研究では紅茶
的な鎮静作用は認められたが,SFDJ の香りと同様の主 の香りの有効性や有用性の一端を明らかにしたに過ぎ
観的なストレスや抑うつ・不安感の低減などの心理的な ず,今後,ホトリエノールやその他の香気成分について
作用は認められなかった(結果示さず).先行研究と合 は詳細に検討していく必要がある.
わせて,本研究結果を考察すると,香りとして感知でき
5. 結論
ないレベルの濃度でも有効性を示すホトリエノールが
SFDJ の香りの生理的な鎮静作用を担っていること,一 SFDJ の香りは,AS と UV の香りよりも自律神経活
方,DMHF,ゲラニオール,2-フェニルエチルアルコー 動に対する鎮静作用が高いことが示唆された.SFDJ に
ルなど,その他の香気成分は SFDJ の香り立ちや嗜好性, 高含有の香気成分:ゲラニオール,ホトリエノール,2-
心理的な作用に関与している可能性があると考えられ フェニルエチルアルコール,DMHF の紅茶飲用時の規
た. 定濃度において,ホトリエノールのみが副交感神経活動
ホトリエノールはフローラルフルーティー調の香気 を高め,さらに,香りが感知されない低濃度から濃度依
を有し,SFDJ 特有の華やかで芳醇なマスカテルフレー 存的に副交感神経活動を高めることが示唆された.さら
33)
バーに寄与する香気成分と報告され ,台湾の高級烏龍 に,ホトリエノールに交感神経活動を抑制する作用が認
茶である東方美人茶の蜜香に寄与する香気成分であると められことから,ホトリエノールは SFDJ の香りと同様
34)
もいわれている .SFDJ や東方美人茶の生葉には,ホ の鎮静作用を有し,SFDJ の香りの鎮静作用の発現に寄
トリエノールの前駆物質である(3E)-2,6-ジメチルオク 与する最も重要な成分であると考えられた.
タ-3,7-ジエン-2,6-ジオールが多く含まれ,製茶工程の
加熱処理における前駆物質の脱水反応によってホトリエ キーワード:ホトリエノール,ダージリン紅茶セカン
ノールが生成する.この前駆物質は,生葉がチャノミド ドフラッシュ,香気成分,自律神経活動,鎮静作用
リヒメヨコバイによる食害ストレスを受けることで増加
する.チャノミドリヒメヨコバイは SFDJ では収穫時期
58 におい・かおり環境学会誌 53巻 1 号 令和 4 年

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Analysis of second flush Darjeeling tea aroma components and


their effects on autonomic nervous system activity

Atsuko OHNO1*, Moeto SUZUKI1, Yukihiro YADA2

1
Functional Development Team, R&D Unit, Mitsui Norin Co. Ltd., Fujieda, Shizuoka 426-0133, Japan
2
School of Integrative and Global Majors PhD Program in Human Biology,
University of Tsukuba, Tsukuba, Ibaraki 304-8577, Japan

Abstract Inhalation of the aroma of second flush Darjeeling tea elevated peripheral skin temperature
and miosis rate more significantly compared to inhalation of Assam tea and Uva tea aromas, suggesting
that Darjeeling tea has a strong sedative effect due to inhibition of sympathetic nerve activity corre-
spondingly making parasympathetic nerve activity dominant. On the supposition that aroma components
specific to Darjeeling tea were contributing to the overall sedative effect, analysis of the aroma compo-
nents was performed and the characteristic aroma compounds, Geraniol, Hotrienol, 2,5-Dimethyl-4-
hydroxy-3(2H)-furanone, 2-Phenylethyl alcohol were identified and selected. When each of these four
aroma compounds was inhaled at equivalent concentrations while drinking tea, only Hotrienol showed a
significant increase in miosis rate. Further, we studied the dose-dependency and found there was a
significant increase in miosis rate with a low Hotrienol concentration of not more than 5ppm. Peripheral
skin temperature also increased after inhalation of Hotrienol. Collectively, these findings indicate that
Hotrienol is the most important compound contributing to the sedative effect of second flush Darjeeling
tea aroma.
Key words : Hotrienol, second flush Darjeeling tea, aroma components, autonomic nervous system
activity, sedative effect

(受稿 令和 3 年 11 月 9 日)
(受理 令和 3 年 12 月 6 日)

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