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総合医と専門医の協働で診る、臓器別疾患群

Chronic Organ Disorder

札幌医科大学 総合診療医学講座
総合内科専門医+家庭医療専門医+リハビリ認定医

佐藤健太
Dr.kenta.sato@gmail.com
0.慢性臓器障害との出会い
それは必然だった…

1.慢性臓器障害の特徴
6大臓器障害 × 5つのステージ

2.臓器群アプローチ
横軸目線で「森を視てから木を診よう」

3.ステージアプローチ
縦軸目線で「病期の移り変わり」を捉えよう

4.ケーススタディ
横軸と縦軸で全体を診る練習問題

5.研修と実臨床への応用
初学者の時短学習に、ベテランの苦手克服に
0.慢性臓器障害との出会い
それは必然だった…

1.慢性臓器障害の特徴
6大臓器障害 × 5つのステージ

2.臓器群アプローチ
横軸目線で「森を視てから木を診よう」

3.ステージアプローチ
縦軸目線で「病期の移り変わり」を捉えよう

4.ケーススタディ
横軸と縦軸で全体を診る練習問題

5.研修と実臨床への応用
初学者の時短学習に、ベテランの苦手克服に
(1~3年目)
鮮やかな診断! 何でも診れる!
でも、現代医学の限界もたくさん…
家庭医療(4~6年目)
現代医学の限界じゃなかった!
心理社会的問題や 複雑な問題も対処できる!!
リハビリ(7~10年目)
家に帰れない、吸痰地獄、永遠の鎮静
そんな辛い人生でも整えられる!
外来診療・訪問診療
生存退院できても、病気の苦痛が続く人たち
癌ほど短期決戦でなく、病状は不安定。

そんな慢性疾患の
下降期~終末期への関心
全体像を横軸で俯瞰するのがマルモ
縦軸で俯瞰するのが慢性臓器障害
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 年齢(歳)

運動不足 肥満 体重減少 低栄養

高血圧 左室肥大 起立性低血圧


糖尿病
慢性
慢性腰痛心+腎 障害
網膜症 腎症 薬剤性低血糖

膝関節症
心不全 急性増悪頻発

肺癌 術後呼吸障害

脳梗塞 認知症 せん妄


嚥下障害・片麻痺

慢性 脳+筋 障害 易転倒 骨折
誤嚥性肺炎
寝たきり

マルモ
生存期間 × QOL の面積最大化が目標

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 年齢(歳)

運動習慣・適正体重
高血圧
糖尿病 腎症
膝関節症 慢性腰痛
心不全
脳梗塞

心身機能
QOL
0.慢性臓器障害との出会い
それは必然だった…

1.慢性臓器障害の特徴
6大臓器障害 × 5つのステージ

2.臓器群アプローチ
横軸目線で「森を視てから木を診よう」

3.ステージアプローチ
縦軸目線で「病期の移り変わり」を捉えよう

4.ケーススタディ
横軸と縦軸で全体を診る練習問題

5.研修と実臨床への応用 初
学者の時短学習に、ベテランの苦手克服に
日本人の死因トップ10

COPD 臓器不全死
肝疾患
腎不全 悪性新生物

非内因
加齢
動脈硬化
非内因

動脈硬化 感染症
or 加齢 心不全
慢性臓器障害
Chronic Organ Disorder
慢性経過で臓器機能が落ちていく疾患群

慢性心障害(CHD :Chronic Heart Disorder)


慢性肺障害(CPD :Chronic Pulmonary Disorder)

慢性肝障害(CLD :Chronic Liver Disorder)


慢性腎障害(CKD :Chronic Renal Disorder)

慢性脳障害(CBD :Chronic Brain Disorder)


慢性筋障害(CMD :Chronic Motor Disorder)
慢性臓器障害
今後、日本全国でそのインパクトは増し続けていく!

①病期 の 拡張
②病型 の 拡大
③予後 の 延⾧
①対象となる の 拡張
病状完成前に見つけて専門医につなごう!?
古典的病期 新しい病期
慢性心障害 うっ血性心不全 20万 慢性心不全 120万
症状・うっ血でてからカウント リスクがあれば、心臓正常でも心不全StageA

慢性肺障害 進行期COPD 20万 スパイロ異常のみ500万

慢性肝障害 原発性胆汁性肝硬変 原発性胆汁性胆管炎


肝硬変になってからカウント 全体で 150万 肝炎・胆管炎の時点で診断しよう 全体で 数千万
慢性腎障害 慢性腎不全 慢性腎臓病
追い詰められてから介入しても無駄 100万 無症状でもGFRと尿蛋白で見つけよう 1300万
慢性脳障害 アルツハイマー型認知症 アルツハイマー病
400万 前段階から診断しよう ?人

慢性筋障害 多発骨折・寝たきり ロコモとフレイル


寝たきりになったら施設で胃ろう 200万 転ばぬ先に予防しよう 5000万
②対象となる の 拡大
患者数多い、見つけにくい、特異的治療ない、予後は同等
古典的病型 新しい病型
慢性心障害 HFrEF HFpEF
心筋梗塞後、拡張型心筋症 高血圧性心疾患、高齢・女性・糖尿病の拡張能障害

慢性肺障害 気腫型COPD 非気腫型COPD


慢性肺気腫 慢性気管支炎

慢性肝障害 ウィルス性肝炎 NAFLD


B型肝炎、C型肝炎 メタボリック症候群、糖尿病・脂質異常症など

慢性腎障害 慢性糸球体腎炎 慢性腎臓病


IgA腎症 糖尿病性腎症、良性腎硬化症(高血圧性)

慢性脳障害 脳血管性認知症 アルツハイマー病


高血圧・糖尿病・脂質など 高血圧・糖尿病・脂質など

慢性筋障害 骨粗鬆症・骨折 サルコペニア


食事・運動不足、ステロイド性、他 加齢性、廃用性、低栄養性
臓器障害の程度は検査ひとつでは捉えきれない
器質障害 ≒ 画像検査での解剖学的変化
機能障害 ≒ 機能検査での数値変化
自覚症状 ≒ 症状スコアでの変化
GOLD2011 GOLD2017
ス 病
パ 歴
イ (
ロ 増
( 悪
機 歴
能 )



病歴(症状スコア)


機能検査は良いのに症状が強いと予後が悪い
そもそも重症度に画像検査は求めてない

経過(年)
器質評価 機能評価 症状評価
分かりやすいが 臓器障害を直接反映 臓器非特異的で流されがち
予後・QOLに直結しない 評価が漏れやすい 生命予後やQOLに直結する

心臓 X線、心電図
エコー
BNP、
6分間歩行試験
NYHA機能分類

逸脱酵素・Trop シャトルウォーキング試験

肺 X線、CT スパイロ
ピークフロー
FHJ分類、mMRC、CAT
BODE index

肝臓 エコー・CT
逸脱酵素・ALT
合成能(Alb・PT)
解毒能(Bil、NH3)
?
肝性脳症の分類

腎臓 エコー
尿検査
BUN・Cr・電解質
血ガス(酸塩基平衡)
?
透析導入基準の
症状・日常生活障害度

脳 CT・MRI HDS-R・MMSE FAST


CGA

筋 骨密度、Xp
筋量
筋力・歩行速度
TUG test、SPPB
ADL
疼痛スケール
③治療改善で の 延⾧
結果的に、内部障害リハやサバイバーケアのニーズが増大

心肺肝腎の障害

脳・筋の障害

感覚器の障害
③ のリハビリ
QOL・ADL改善の「補助療法」や思いやりでなく
生命予後改善、疾患再発予防効果絶大の「原因治療」
疾患名 生命予後改善 QOL改善 その他
慢性心不全 ◎ ◎ 再入院減少
慢性心障害 致死的再梗塞の減少
心筋梗塞後・CAD ◎ ◎
COPD ○ ◎ 再入院減少
慢性肺障害
拘束性換気障害 ○ ○
慢性肝炎 ? ? VO2maxが増加
NASH/NAFLD ? ? 肝機能や脂肪化改善
慢性肝障害
肝硬変 ○ ?
肝移植患者 ? ○
CKD ○ ○
慢性腎障害 透析時間短縮
透析 ○ ○
介護依存度や
脳卒中 ◎ ◎ 施設入所率低下
慢性脳障害
認知症 × ○ 認知機能・ADL改善
慢性臓器障害
6大臓器障害 に多彩な病態を包含し、全体像や共通点を重視

病期の拡張
膨大な患者への、継続的で包括的な予防医療は腕の見せ所!

病型の拡大
新しい病型は専門的な診療が不要で、総合医の得意領域!

予後の延⾧
短期的な専門医療を凌駕しうる、内部障害の⾧期リハ!
0.慢性臓器障害との出会い
それは必然だった…

1.慢性臓器障害の特徴
6大臓器障害 × 5つのステージ

2.臓器群アプローチ
横軸目線で「森を視てから木を診よう」

3.ステージアプローチ
縦軸目線で「病期の移り変わり」を捉えよう

4.ケーススタディ
横軸と縦軸で全体を診る練習問題

5.研修と実臨床への応用
初学者の時短学習に、ベテランの苦手克服に
臓器別疾患は山程ある

類 臓器 一般病態 勉強が追いつかない…
特殊病態
メタボリック 物質・中毒 虚血性 感染性 自己免疫 特発性
Metabolic Toxic Ischemic Infectious Immune Idiopatic

心 心障害 HFpEF
・高血圧性心疾患
アルコール
性心筋症
心筋梗塞 ウィルス 膠原病性 特発性

肺 肺塞栓 結核 間質性 間質性


系 肺障害 非気腫型 気腫型
COPD COPD
・慢性気管支炎 気管支喘息

肝 肝障害 NAFLD
・メタボリック症候群
アルコール
性肝障害
虚血性 B型
C型
AIH
PBC・
ウィルソン

腎 PSC

系 腎障害 慢性腎臓病
・糖尿病性腎症
薬剤性障害 虚血性
尿細管壊死
慢性感染 IgA腎症
血管炎
多発嚢胞
形成異常
・腎硬化症

脳 脳障害 アルツハイマ
ー型認知症
アルコール・
薬剤性障害
脳血管性 HIV
CJD
SLE
MS
DLB・FTD
CBD・
筋 PSP

系 サルコペニア アルコール・ PAD ウィルス 多発筋炎 筋ジス


筋障害 ・加齢性 薬剤性
・廃用性 ミオパチー
・低栄養性

類 臓器 特殊病態
一般病態は 特殊病態
メタボリック 物質・中毒 虚血性 感染性 自己免疫 特発性
Metabolic Toxic Ischemic Infectious Immune Idiopatic
専門医が診てくれる
心 心障害 HFpEF
・高血圧性心疾患
アルコール
性心筋症
心筋梗塞 ウィルス 膠原病性 特発性

肺 研修中の知識は 肺塞栓 結核 間質性 間質性


系 肺障害 非気腫型 気腫型
5年で古くなる
COPD COPD
・慢性気管支炎 気管支喘息

肝 肝障害 NAFLD

・メタボリック症候群
アルコール
性肝障害
虚血性 B型
C型
AIH
PBC・
ウィルソン

腎 PSC

系 腎障害 慢性腎臓病
最先端の治療法
・糖尿病性腎症
薬剤性障害 虚血性
尿細管壊死
慢性感染 IgA腎症
血管炎
多発嚢胞
形成異常
をまねるより
・腎硬化症

脳 脳障害 紹介適応から学ぶ
アルツハイマ アルコール・
ー型認知症 薬剤性障害
脳血管性 HIV
CJD
SLE
MS
DLB・FTD
CBD・
筋 PSP

系 自分で診るなら
サルコペニア アルコール・ PAD ウィルス 多発筋炎 筋ジス
筋障害
自己研鑽がっちり
・加齢性 薬剤性
・廃用性 ミオパチー
・低栄養性
一般病態

類 臓器 一般病態 特殊病態

メタボリック
Metabolic
物質・中毒
Toxic
自分で診ましょう
虚血性 感染性
Ischemic
自己免疫
Infectious Immune
特発性
Idiopatic

心 心障害 HFpEF アルコール


性心筋症
心筋梗塞 ウィルス 膠原病性 特発性

リスク管理が中心
・高血圧性心疾患
肺 肺塞栓 結核 間質性 間質性
系 肺障害 非気腫型 気腫型
・血圧
COPD COPD
・血糖
・慢性気管支炎 気管支喘息

肝 肝障害 NAFLD
・メタボリック症候群
アルコール
性肝障害
虚血性 B型
・脂質C型
AIH
PBC・
ウィルソン

腎 PSC

系 腎障害 慢性腎臓病 薬剤性障害 ・喫煙慢性感染


虚血性 IgA腎症 多発嚢胞
・糖尿病性腎症 尿細管壊死 血管炎 形成異常
・腎硬化症 ・飲酒
脳 脳障害 アルツハイマ アルコール・ ・薬剤HIV
脳血管性 SLE DLB・FTD
ー型認知症 薬剤性障害 CJD MS CBD・
筋 ・加齢
PSP


筋障害 サルコペニア
・加齢性
アルコール・
薬剤性
・食事ウィルス
PAD 多発筋炎 筋ジス

・廃用性
・低栄養性
ミオパチー ・運動
共通のリスクで色々起こす
リスク因子 慢性臓器障害
・血圧 ・心臓
・血糖 ・肺
・脂質 ・肝臓
・腎臓
・喫煙
・脳・神経
・飲酒
・筋・骨
・薬剤
動脈硬化性疾患
・加齢
・食事 悪性腫瘍
・運動 感染症
一つのリスクは、全臓器を平等に侵す
リスク因子 慢性臓器障害
・血圧 ・心臓
・血糖 ・肺
・脂質 ・肝臓
・腎臓
・喫煙
・脳・神経
・飲酒
・筋・骨
・薬剤

・加齢 一つ見つけたら
・食事 他もあるのが普通
・運動
一つの病気は、複数リスクの積み重ね
リスク因子 慢性臓器障害
・血圧 ・心臓
・血糖 ・肺
・脂質 ・肝臓
・腎臓
・喫煙
・脳・神経
・飲酒
・筋・骨
・薬剤

・加齢 一つ見つけたら
・食事 他もあるのが普通
・運動

類 臓器 一般病態 特殊病態
メタボリック 物質・中毒 虚血性 感染性 自己免疫 特発性
Metabolic Toxic Ischemic Infectious Immune Idiopatic

心 心障害 心肺障害(基本的)
HFpEF アルコール 心筋梗塞
・高血圧性心疾患 性心筋症
ウィルス 膠原病性 特発性

肺 急変がわかりやすく、救急や病棟でよく出会う
肺塞栓 結核 間質性 間質性
系 肺障害 非気腫型 気腫型
症状が明確で、臨床症状
COPD COPD (NYHA、mMRC)で評価
・慢性気管支炎 気管支喘息

肝 肝障害 NAFLD
肝腎障害
・メタボリック症候群
アルコール
(応用的)
性肝障害
虚血性 B型
C型
AIH
PBC・
ウィルソン

腎 出会っても脇役的
PSC
薬剤性障害(薬剤選択の参照値?)
系 腎障害 慢性腎臓病 虚血性 慢性感染 IgA腎症 多発嚢胞
沈黙の臓器。臨床検査
・糖尿病性腎症
・腎硬化症
(PT・Alb、電解質・酸塩基)で評価
尿細管壊死 血管炎 形成異常

脳 脳障害 アルツハイマ
脳筋障害
ー型認知症
アルコール・ 脳血管性
(発展的)
薬剤性障害
HIV
CJD
SLE
MS
DLB・FTD
CBD・
筋 PSP

系 リスク因子が共通で数も多いが、流されがち
筋障害 サルコペニア アルコール・ PAD ウィルス 多発筋炎 筋ジス
馴染みの薄い機能検査
・加齢性 薬剤性 (HDS-R、歩行速度)が必要
・廃用性 ミオパチー
・低栄養性
慢性臓器障害
たくさんの病因が含まれる
稀で特殊なものほど後回し(学習効率が悪く、将来使える可能性も低い)
ありふれた一般病態を丁寧に繰り返し診よう

一つの病気やリスクに囚われない
臓器障害などがあるのに、リスクが一つなんて考えにくい
リスクがあれば、臓器障害があれば、他の疾患も把握しよう
0.慢性臓器障害との出会い
それは必然だった…

1.慢性臓器障害の特徴
6大臓器障害 × 5つのステージ

2.臓器群アプローチ
横軸目線で「森を視てから木を診よう」

3.ステージアプローチ
縦軸目線で「病期の移り変わり」を捉えよう

4.ケーススタディ
横軸と縦軸で全体を診る練習問題

5.研修と実臨床への応用
初学者の時短学習に、ベテランの苦手克服に
ステージ A期 B期 C期 D期 E期
リスク期 不顕性期 有症候期 非代償期 終末期
臨床像 (検査正常) (器質異常) (症状出現) (入院率増加) (予後半年)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 年齢(歳)

運動不足 肥満 体重減少 低栄養

高血圧 左室肥大 起立性低血圧


糖尿病 網膜症 腎症 薬剤性低血糖

膝関節症 慢性腰痛
心不全 急性増悪頻発

肺癌 術後呼吸障害

脳梗塞 嚥下障害・片麻痺
認知症 せん妄
易転倒 骨折
誤嚥性肺炎
寝たきり
心身機能
QOL
ステージA…リスク期
「リスクはある」が、臓器障害はない
血圧の高い人、タバコを吸う人、
体重の多い人、運動しない人、お年寄り

疾病というより体質・特性
ステージB…不顕性期
「器質的異常はある」が、臨床症状や機能障害はない
高血圧性心肥大や心筋梗塞後、軽度肺気腫や肺癌術後
慢性腎臓病G3aやNAFLD
軽度びまん性脳萎縮、サルコペニアや骨粗鬆症

異常はあるが、投薬で予後改善するかは別途評価
ステージC…有症候期
「臨床症状や合併症がある」が、増悪は繰り返さず安定
急性心不全やCOPD急性増悪の初回発作後
CKD:G4で電解質異常合併、肝硬変で腹水合併
認知機能障害で介護導入後、骨折後のリハビリ継続中

重症に見えるが、まだまだ先は⾧く、苦しい
ステージD…代償不全期
「急性増悪を繰り返す」状態で、不安定な下降期
風邪ですぐ増悪する、心不全やCOPD
溢水で入退院を繰り返す、腎不全や肝硬変
せん妄や誤嚥性肺炎を繰り返す、認知症
転倒や褥瘡を繰り返す、歩行機能障害
不安定性が増し、本人も周りも、辛く苦しい
ステージE…終末期
「死期」が差し迫っており、常時苦しい終末期
半年以内に死亡しても驚かない心不全や肝硬変
HOT導入しても動けず食べれないCOPDや腎不全
会話・食事も困難な認知症、寝たきりの神経筋疾患

いわゆる「非がん終末期」モード。いつから?
健康増進 Health promotion
健康度を高める活動で、主観的健康感やQOLを向上(ポジティブの貯金)
職場・生活環境改善、小児と親世代のヘルスリテラシー教育、etc。

疾病予防 Disease prevention


特定の疾病に対する、予防効果のある医学的介入(ネガティブの除去)
心血管イベントを防ぐアスピリンやスタチン、
感染症を防ぐ予防接種、骨折を防ぐビスフォスフォネート

苦痛緩和 Palliative care


終末期に限らず、進行期・増悪時の様々な苦痛(Total pain)を防ぐ
呼吸困難感に対するオピオイド、セデーションに用いるベンゾ。
予後改善薬 Controller
生命予後や臓器予後を改善させ、経過を延⾧させる薬剤
心・腎障害のACE阻害薬、肺障害のLAMAなど
進行期で伸ばせる予後がない・副作用が出てきている状況では中止を検討

症状改善薬 Reliever
急性増悪時の症状を緩和し、短期予後を改善
心・腎障害のループ利尿薬、肺障害のSABA、脳障害の抗精神病薬など
漫然と継続すると⾧期予後を縮めるが、終盤では苦痛緩和として継続する

蘇生治療 Ressucitation
心肺蘇生処置、臓器補助療法などで即死を回避する
CPR、IABP・ECMO・PCPSや、人工呼吸、血液透析など
ステージC~Dの単臓器障害は良いが、ステージEや複数臓器障害では害が上回る
指導 Education
臓器障害が完成していない患者への、食事指導や運動指導
特定の疾病の患者会よりは、年齢別・性別・職域別の健康講演会などが効果的
地域にあるジムやサロンなど、住民が継続的に活動している場や機会を探す

訓練 Training
臓器障害が進行した患者への、病状や病態に応じた個別的な訓練。
「医学的根拠に基づいた、専門職による、機能の向上を目指した集中的介入」
処方箋を発行してPT・OT、栄養士RDに介入を依頼
増悪相の超急性期や、ステージD後半~Eでは返って生命予後を短縮する

補助 Support
臓器障害や心身機能が低下した患者への、 「障害が気にならない環境づくり」
過度な負荷を与えずに、患者の生活上の苦労をへらすために
移動しやすい環境整備、関係者の病状理解と適切な介助法習得など
慢性臓器障害
慢性臓器障害は、慢性経過の疾患です
「いま」どこにいるかを認識しよう
器質異常に囚われすぎず、機能障害や予後予測でステージング

慢性臓器障害は、緩徐進行性疾患です
ステージが進んだのに、前ステージの治療では逆効果…
予防、薬物療法、非薬物療法の切り替えに習熟しよう

一つの臓器障害の経験を、他の臓器障害に活かそう
経験ステージを広げながら、自然史・全体像を掴もう
0.慢性臓器障害との出会い
それは必然だった…

1.慢性臓器障害の特徴
6大臓器障害 × 5つのステージ

2.臓器群アプローチ
横軸目線で「森を視てから木を診よう」

3.ステージアプローチ
縦軸目線で「病期の移り変わり」を捉えよう

4.ケーススタディ
横軸と縦軸で全体を診る練習問題

5.研修と実臨床への応用
初学者の時短学習に、ベテランの苦手克服に
ケーススタディ
僻地在住で、夫の死後も一人暮らしを続けていた82歳女性。

20年前に糖尿病を指摘
薬物療法で厳密コントロールしてHbA1c6%台。
食事療法で血圧・脂質やBMIも正常範囲で推移。
罹病期間は⾧く、慢性心不全と慢性腎臓病を合併。

この数年で急激に認知機能障害が進行
・迷子による警察保護、ぼーっと過ごしている
・徐々に増える転倒に伴う外傷

僻地独居が難しく、都市部の娘夫婦宅で同居を開始した。
Bad practice
臓器障害のステージ考慮せず
3臓器とも等しく全力投球

糖尿病を「疾患」と認識して
血糖値正常化を目指して全力投球
Bad end
転居後の担当医師は、家族に服薬管理と食事療法の遵守を指示
・血糖降下薬と糖質制限を継続し、HbA1c6%前後
・利尿薬を追加し、下腿浮腫のない状態に
・認知症に対してドネペジルを開始し最大量に増量

その後は返って転倒を繰り返し、尿失禁も出現
半日~数日程度閉じこもって寝込むようになり
目を離せなくなった家族が音を上げてしまった。

療養病院に入院させ、特養入所を待つこととなった。
その後の人生は、以下略……
Good practice
転居後に担当した医師は、
個々の疾患を評価する前に、全体像把握に努めた。

スクリーニング検査で肺・肝障害はステージA
軽度浮腫、軽度心拡大、BNP100台で、 心障害ステージC
GFR40程度、電解質異常・貧血を伴い、腎障害ステージC

腰下肢痛や骨折歴ないが、転倒が多く筋障害ステージC~D
脳機能は明らかに低下、急変はないが脳障害ステージC~D

全体としては4臓器障害
ステージC~D(脳・筋>腎・心)と判断した。
Good practice
障害がなければ平均余命中央値は10年程度
脳・筋障害がコントロールできれば安定した人生が続く見込み
介護・看取り話の前に、治療可能な特殊病態精査を優先。

器質評価では、頭部CTで病的所見なし。骨・関節もほぼ正常
機能評価では、HDS-Rで見当識・減算の減点あり意識障害疑い
筋は筋萎縮と脱力が目立つ

低血糖を疑って血糖降下薬を中止、寝込まなくなった。
脱水・低K血症があり利尿薬を中止、力が出るようになった。
朝から元気に過ごせる様になり、近隣の散歩・買い物もでき
徐々に精神的活動性と日常活動量・歩行機能が改善した。
薬剤性低血糖

薬剤性
低K性四肢麻痺
Good practice
再評価では、
有意な認知機能障害は認めず、軽度脳萎縮のみ=ステージB
運動機能も改善し、膝関節症+サルコペニアのみ=ステージB
腎臓と心臓は特殊病態なく、投薬で安定しておりステージC

腎・心障害ステージC>脳・筋障害ステージBと判断を修正。
・コントローラー(予後改善薬)をベースに
・必要時少量のレリーバー(症状改善薬≒利尿薬)に整理

家族宅での生活を続け、高齢者サロンの運営にも関わり、
多くの交流や役割を楽しみながら元気に過ごしている。
複雑度に応じた、問題リストの使い分け

複雑度 カルテ記載法 問題リスト

単純 基本の型 1~3個のプロブレムを列挙
× それぞれ評価・介入
Simple
応用の型

複合 正式な問題リスト 5~10個の内科系疾患多数
× 臓器・診療科ごとにまとめる
Complicated
By ploblemの記載
慢性臓器障害
複雑 全体像のラベリング 10個以上かつ心理社会面
× 詳細網羅より全体俯瞰で
Complex
全体>部分の評価
マルモ
混沌 医師記録には レクチャー・書籍では
Chaotic 収まりません・・・ 伝達しづらい奥義
Multimorbidity時代の プロブレムリストの作り方 日本内科学会雑誌第106巻第12号 (jst.go.jp)
ケースへの当てはめ
単純問題リスト
2型糖尿病(起立性低血圧・便秘・下肢感覚障害、網膜症・DKDstage4)
診断日、分泌能・抵抗性、定期検査・最終検査、治療薬
本態性高血圧症
発症年齢、二次性除外検査歴、目標値、治療薬一覧
脂質異常症
発症年齢・家族歴、初診時LDL(家族性・2次性除外済)、目標値、スタチン強度
慢性心不全(HFpEF、心カテ歴、BNP100台、NYHAⅡ)
再構成問題リスト
〇〇内科:ARB・フロセミド、DNAR・ACP
慢性腎臓病G3bA2
慢性心・腎障害StageC(動脈硬化性:DM・HT・DL)
高カリウム血症
慢性脳・筋障害StageB(軽度脳萎縮・サルコペニア+膝関節症)
正球性貧血
生活状況:夫死去後・独居困難→娘夫婦同居・周囲に知人なし
頻回転倒
治療方針:十分な心腎コントローラー+介護予防策徹底
両膝変形性関節症
詳細プロブレムは2024/2/12、ACP最新版は2024/4/15参照(DNAR)
骨粗鬆症
軽度脳萎縮・MMSE
独居困難
ポートフォリオで使いやすい項目

1.包括的統合アプローチ
3)医師・患者関係の継続性、地域の医療機関としての地域住民や他の医療機関との継続性、
診療情報の継続性などを踏まえた医療・ケアを提供する能力を身につける。

2.一般的な健康問題に対応する診療能力
3.患者中心の医療・ケア
4.連携重視のマネジメント
1)患者や家族、地域にケアを提供する際に多職種チーム全体で臨むために、
様々な職種の人と良好な人間関係を構築し、リーダーシップを発揮しつつコーディネートする能力を身につける。
2)切れ目のない医療および介護サービスを提供するために、医療機関内のみならず
他の医療機関、介護サービス事業者等との連携が円滑にできる能力を身 につける。

5.地域包括ケアを含む地域志向アプローチ
6.公益に資する職業規範
7.多様な診療の場に対応する能力
3. 慢性疾患のケア
糖尿病などのSimple症例のほうがおすすめ

4. 多疾患併存
17a. 複雑困難事例のケア
プロブレムを整理するときに使える

9. 障害とリハビリテーション
内部障害リハで書ける

18b. 倫理的に困難な意思決定を伴う事例のケア
20b. 人生の最終段階におけるケア
予後予測と治療ステップダウンなど
ケースへの当てはめ
4. 多疾患併存
考察や事例記述の基本骨格は「マルモの診かた」
マルモのトライアングルを使ってカンファレンスをしてみよう | 2021年 | 記事一覧 | 医学界新聞 | 医学書院 (igaku-shoin.co.jp)

内科疾患の整理と評価・介入を手短に説明するとこで慢性臓器障害も使う

①簡単な事例紹介
慢性臓器障害は単疾患の詳細まで説明しない(文字数制限が…)
②Step1. 心理社会面も含めた網羅的なプロブレムの収集
③Step2・3. バランスモデルを意識しながら、四則演算で整理する
割り算:内科疾患は慢性臓器障害で整理して、プロブレムを圧縮
掛け算:全体に好影響のあるレバレッジとして、減薬とやりがい処方
引き算:臓器障害ステージを参考に過剰治療を減らす
④結果をドヤる
めちゃくちゃ良くなりました!
足し算:余裕ができてから、足りていない標準治療を慎重に開始
⑤謙虚に考察する
文献引用しながら、反省点を深めたり、学んだことを拡張したり
0.慢性臓器障害との出会い
それは必然だった…

1.慢性臓器障害の特徴
6大臓器障害 × 5つのステージ

2.臓器群アプローチ
横軸目線で「森を視てから木を診よう」

3.ステージアプローチ
縦軸目線で「病期の移り変わり」を捉えよう

4.ケーススタディ
横軸と縦軸で全体を診る練習問題

5.研修と実臨床への応用
初学者の時短学習に、ベテランの苦手克服に
総合医の では

枝葉末節より

特殊病態より

一点突破より
日本人の死因トップ10

COPD 臓器不全死
肝疾患
腎不全 悪性新生物

非内因
加齢
動脈硬化
非内因

動脈硬化 感染症
or 加齢 心不全
Common Diseaseをフルカバーするには
通常の内科・救急研修で学ぶ
「心血管救急」「感染症」「悪性腫瘍」対策に加え

継続外来・在宅や一般内科・包括ケア病棟でしか学べない
加齢とともに増える 「慢性臓器障害」
年齢自体で増える 「老年症候群」 も学ぼう

事故・自殺対策も
救急で、自殺企図・多発外傷後治療に強くなるだけでなく
外来や地域で、その予防と早期発見・介入のほうが重要
一般病態

類 臓器 一般病態 特殊病態

メタボリック
Metabolic
物質・中毒
Toxic
繰り返したくさん診る
虚血性感染性
Ischemic
自己免疫 特発性
Infectious Immune Idiopatic

心 心障害 HFpEF アルコール


性心筋症
心筋梗塞 ウィルス 膠原病性 特発性

病名は同じでも
・高血圧性心疾患
肺 肺塞栓 結核 間質性 間質性
系 肺障害 非気腫型 気腫型
リスクの組み合わせは多彩
COPD COPD
・慢性気管支炎 気管支喘息

肝 肝障害 NAFLD
・メタボリック症候群
アルコール
性肝障害
虚血性 B型 AIH
慢性臓器障害以外の
C型 PBC・
ウィルソン

腎 組み合わせパターンも無限
PSC

系 腎障害 慢性腎臓病
・糖尿病性腎症
薬剤性障害 虚血性
尿細管壊死
慢性感染 IgA腎症
血管炎
多発嚢胞
形成異常

年齢や性別
・腎硬化症

脳 脳障害 アルツハイマ
ー型認知症
アルコール・
薬剤性障害
脳血管性 HIV SLE
家族関係や職場状況
CJD MS
DLB・FTD
CBD・
筋 歩んできた人生だって様々
PSP

系 サルコペニア アルコール・ PAD ウィルス 多発筋炎 筋ジス


筋障害 ・加齢性 薬剤性
・廃用性 ミオパチー
・低栄養性
0.慢性臓器障害との出会い
それは必然だった…

1.慢性臓器障害の特徴
6大臓器障害 × 5つのステージ

2.臓器群アプローチ
横軸目線で「森を視てから木を診よう」

3.ステージアプローチ
縦軸目線で「病期の移り変わり」を捉えよう

4.ケーススタディ
横軸と縦軸で全体を診る練習問題

5.研修と実臨床への応用
初学者の時短学習に、ベテランの苦手克服に
参考書籍

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