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ウェルナー型錯体の合成 藤井康平
ウェルナー型錯体の合成 藤井康平
ウェルナー型錯体の合成
学籍番号 062101289
藤井康平
実施日
K[Co(edta)]・2H2O 2023/5/22
Co(acac)3 2023/5/18
[Co(NH3)6]Cl3 2023/5/23
Fe(acac)3 2023/5/24
目的
実験手順
K[Co(edta)]・2H2O
100ml ビーカーに蒸留水 12ml を入れ, 次に塩化コバルト(Ⅱ)六水和物 1.60g, 酢酸カリウ
ム 4.03g, エチレンジアミン四酢酸 2.00g を入れた.
このビーカーをドラフト内の湯浴で加熱攪拌した.
その後, 30%過酸化水素水を冷蔵庫から取り出し, 3%過酸化水素水になるように水で希釈し
た.
3%過酸化水素水 6.0ml をそのビーカーに加えた.
その後, 漏斗を用いて自然ろ過した.
ろ過後の溶液を氷浴で冷却した.
十分に冷却した後, 十分に攪拌しながらゆっくりとエタノールを加えた.
生成した固体を吸引ろ過によって回収し, 収量を記録した.
Co(acac)3
[Co(NH3)6]Cl3
Fe(acac)3
結果
K[Co(edta)]・2H2O
塩化コバルト(Ⅱ)六水和物 237.93g/mol
酢酸カリウム 98.14g/mol
H4EDTA 292.24g/mol
K[Co(edta)]・2H2O 422.27g/mol
得られた錯体は K[Co(edta)]・2H2O であり, 分子式より, 塩化コバルト(Ⅱ)六水和物, 酢酸
カリウム, H4EDTA は同じ mol 数使われる. それぞれの mol 数を求めた.
1.60𝑔
塩化コバルト(Ⅱ)六水和物 237.93𝑔/𝑚𝑜𝑙
= 0.00672𝑚𝑜𝑙
4.03𝑔
酢酸カリウム = 0.041𝑚𝑜𝑙
98.14𝑔/𝑚𝑜𝑙
2.00𝑔
H4EDTA = 0.00684𝑚𝑜𝑙
292.24𝑔/𝑚𝑜𝑙
2.2252
× 100 = 78.418%
2.8376
収率は 78.4%となった.
Co(acac)3
この実験に関連する化合物の分子量を以下に示す. これを元に収量を計算した.
塩基性炭酸コバルト 534.74g/mol
アセチルアセトン 100.13g/mol (密度 0.974g/ml)
Co(acac)3 356.26g/mol
0.66𝑔
塩基性炭酸コバルト (2CoCO3・3Co(OH)2・H2O) 534.74𝑔/𝑚𝑜𝑙
0.66𝑔
× 5 = 0.00617𝑚𝑜𝑙
534.74𝑔/𝑚𝑜𝑙
となる. アセチルアセトンはコバルトに対して三等量必要であるので,
0.00617mol×3=0.0185mol
0.419𝑔
× 100 = 19.1%
2.20𝑔
収率は 19.1%となった.
[Co(NH3)6]Cl3
この実験に関連する化合物の分子量を以下に示す. これを元に収量を計算した.
塩化コバルト(Ⅱ)六水和物 237.93g/mol
塩化アンモニウム 53.49g/mol
[Co(NH3)6]Cl3 267.48g/mol
5.93𝑔
= 0.0249𝑚𝑜𝑙
237.93𝑔/𝑚𝑜𝑙
4.03𝑔
= 0.0753𝑚𝑜𝑙
53.49𝑔/𝑚𝑜𝑙
28
13𝑚𝑙 × 100 × 0.9𝑔/𝑚𝑙
= 0.1923𝑚𝑜𝑙
17.03𝑔/𝑚𝑜𝑙
となる.
こ の 時 , コ バ ル ト は 0.0249mol, ア ン モ ニ ア は (0.1923+0.07532)=0.1998mol, 塩 素 は
(0.0249+0.0753×2)=0.1251mol である. 1:6:3 の比に対して一番少ない mol 数をもつ成分
は, Co である. よって, [Co(NH3)6]Cl3 の mol 数は, 0.0249mol である. 以上より錯体の重量
は
1.320𝑔
× 100 = 19.8%
6.66𝑔
収率は 19.8%となった.
Fe(acac)3
この実験に関連する化合物の分子量を以下に示す. これを元に収量を計算した.
塩化鉄(Ⅲ)六水和物 270.30g/mol
アセチルアセトン 100.12g/mol
酢酸ナトリウム三水和物 136.08g/mol
Fe(acac)3 353.17g/mol
3.00𝑔
= 0.011𝑚𝑜𝑙
270.30𝑔/𝑚𝑜𝑙
3.31𝑔
= 0.033𝑚𝑜𝑙
100.12𝑔/𝑚𝑜𝑙
353.17𝑔
0.011𝑚𝑜𝑙 × = 3.88𝑔
𝑚𝑜𝑙
1.18𝑔
× 100 = 30.4%
3.88𝑔
収率は 30.4%となった.
考察
K[Co(edta)]・2H2O
課題 1
温度が高い状態でモノクロロ酢酸と酸素が反応してしまうと, 有毒で腐食性のある塩化水
素及びホスゲンが発生してしまい非常に危険だからである.
課題 2
反応で使用する物質の情報をまとめる.
分子量
NaOH 40.00g/mol
モノクロロ酢酸 94.50g/mol
エチレンジアミン 60.10g/mol
(𝑥 − 0.0998)𝑚𝑜𝑙
= 10−4𝑀
(𝑥 + 0.1164)𝑚𝑜𝑙 −3
(15𝑚𝑙 × + 40𝑚𝑙) × 10 𝐿
0.2325𝑚𝑜𝑙
こ れ を 計 算 す る と , x=0.099805mol で あ る . よ っ て , pH=10 に 保 つ た め に は ,
0.1164ml+0.0998mol=0.2162mol の NaOH が必要である.
(𝑥 − 0.0998)𝑚𝑜𝑙
= 10−1 𝑀
0.1164 + 0.0998 𝑥𝑚𝑜𝑙
[{15𝑚𝑙 × ( ) 𝑚𝑜𝑙 + 40𝑚𝑙} + 12𝑀 ] 𝐿
0.2325
課題 3
図 1 K[Co(edta)]・2H2O の構造
課題 4
図 2 K[CoCl(Hedta)]の構造
Co(acac)3
課題 1
Co(acac)3 が生成する際の反応式は,
このようになると考えられる.
課題 2
課題 3
アセチルアセトンの構造を以下に示す.
図 3 アセチルアセトンの構造
二つのカルボニル炭素の間にある炭素のプロトンが脱離したアニオンがアセチルアセトナ
ト配位子である. この時, 二つのカルボニル酸素が金属イオンに対して配位すると考えら
れる. つまり, 二座配位子であると考えられる. acac が 3 つ配位した Co(acac)3 には二つの
構造異性体(Δ, Λ)が存在する. それぞれの構造を以下に示す.
図 4 Co(acac)3 の異性体の構造
図 5 考案した二座配位子の構造
課題 4
コバルトイオンに配位している配位子の違いによって色に大きな違いが出ることを利用す
る. 上道水を塩素で処理した際の残留塩素の目安を知りたい時に, 色の変化が使えるので
はないかということを考案する. 残留塩素の量が多いと人体にとってあまりよくないため,
塩素量をチェックする必要がある. 検出方法は, 少量の処理済み水道水に対して Co(acac)3
を加え, 色が桃色になれば基準を満たし, それよりも色が濃い, または短波長側の色である
場合は基準を満たしていないという基準で判断する方法を取る.
[Co(NH3)6]Cl3
課題 1
図 6 ペルオキソデカアンミンジコバルトイオンの模式図※3
このイオンの化学式は[(NH3)5Co(O2)Co(NH3)5]4+である. このイオンが酸素を離して単核
の錯イオンになるとき, 一つの Co に着目すれば, 酸素が解離してアンモニアが配位し,
[Co(NH3)6]2+ができると考えられる. この時, 文献※3 によると, 不均一系の触媒として活性
炭などがあると速やかに変換されると記述がある. つまり, 活性炭には配位子交換反応の
触媒としての役割があると考えられる. 今回の実験では, 最終的に[Co(NH3)6]Cl3 が生成す
るが, 途中段階ではすべての配位子がアンミンではなく, Cl も配位子として機能していた可
能性が考えられる. 上の文献と同様に考えると, 活性炭はこの時すべての配位子をアンミ
ンに交換したと考えられる. 以上より, 活性炭の役割は全ての配位子をアンミンに交換し
て[Co(NH3)6]3+をつくることだと考えられる.
課題 3
塩化コバルト(Ⅱ)六水和物の代わりに酢酸コバルト(Ⅱ)四水和物を用いる方法が考えられ
る. 実験操作は塩化コバルトを用いた時と同様のことをすればよい. この時, 対のアニオン
は CH3COOH-となる. 酢酸コバルトを用いる理由は, 酢酸イオンが一価の陰イオンである
こと, 水に可溶で水和物を作り安定に存在するということ, 生成する錯体の安定性が高い
ことが主に挙げられる.
Fe(acac)3
課題 1
課題 2
その他の考察
エチレンジアミンテトラアセタトコバルト(Ⅲ)酸カリウムを合成で, ろ液にエタノールを
加えた時にビーカーの底にオイル状の物質が見られる場合があると実習書に記載があった
が, これがどのような物質であるかについて考察する. このオイル状の物質は, 結晶となら
なかったアモルファスであると考えられる. アモルファスの定義を述べる. “固体物質の状
態を示す形容詞で,amorphous(日本語では無定形)を仮名書きしたもの.固体の分類で,無
定形や非晶質の固体は,それぞれ“外形の不定”および“原子・分子配列の長距離規則度の欠
如”に着目したもので,これに対して“熱力学的非平衡”に着目したのがガラス状態の固体で
ある.無定形と非晶質とは学術的には同義語ではないが,最近の半導体や合金などの科学技
術領域では,両者は同義に用いられることが多く,アモルファスと名詞的にも用いられてい
る.”※5 つまり, 今回のオイル状の物質は, 液体ではなく固体で, 原子配列に規則性がない状
態のエチレンジアミンテトラアセタトコバルト(Ⅲ)酸カリウムであると考えられる.
ヘキサアンミンコバルト(Ⅲ)塩化物の合成について, 初めに塩化アンモニウムを入れた理
由について考える. この錯体を合成するステップで, アンモニアを加える操作がある. この
時, 水酸化物イオンが発生し, 塩基性に偏りすぎると水酸化コバルトが発生してしまうと
考えられる. 水酸化コバルトは難溶性の塩なので, 一度生成するとコバルトイオンを取り
出すのは難しい. このため, 溶液を塩基性に偏らせないために塩化アンモニウムを用いて
いると考えられる.
ヘキサアンミンコバルト(Ⅲ)塩化物の合成で, アスピレーターを使用した後に析出した固
体をろ紙で一日乾燥させたところ, 次の日にろ紙が紫色になっていた. この理由について
考える. 吸引ろ過後, あまり乾燥していない状態でろ紙にはさみこんだため, 何らかのイオ
ンの水溶液になっていた部分があると考えられる. 色について調べたところ,
[Co(NH3)6]Cl3 は黄色だが, [Co(NH3)5Cl]Cl2 は紫色※6 であることが分かった. 実験当日は,
完全にアンミン配位子で置換されなかったイオンが残っており, ろ紙がその色に染まって
しまった可能性が考えられる.
まとめ
参考文献
1 スクエア最新図説化学 改定 6 版 第一学習社 (2018) p173
2 無触媒下における一酸化窒素のアンモニアによる還元反応およびアンモニアの酸素によ
る酸化反応 笠岡成光 笹岡英司 長広盛彦 川上喜好 日本化学会誌 1979 No.1 p138
3 可逆的吸着剤としてアンミンコバルト錯体を用いる酸素の吸収および放出の教材化 斎
藤一夫 中鉢豊 The Chemical Society of Japan 第 25 巻 第 4 号 p61