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伊丹研有機化学実験レポート 062101289 藤井康平

テーマ Benzoin 縮合

参考文献: Kenneth L. Williamson., Organic experiments 9th ed

(a)Benzoin 縮合

日時 2023/7/3(月) , 7/4(火)

目的

ベンズアルデヒドを, チアミン塩酸塩を触媒として用いてベンゾイン縮合し, ベンゾイン


を得る.

試薬・生成物の情報

使用・生
分子量
密度(g/ml) 融点(℃) 沸点(℃) 成量 当量
(g/mol)
(mol)
チアミン 7.69×
337.27 24.5 0.052
塩酸塩 10-3
水酸化
40.00 2.13 0.266 1.8
ナトリウム

ベンズ
106.12 1.041~1.050 -26 179 0.148 1
アルデヒド

エタノール 46.08 0.808~0.812 -130 78 必要量


ヘキサン 86.18 0.66 -95 69 必要量
酢酸エチル 88.11 0.898~0.902 -83.6 77 必要量
ベンゾイン 212.24 132~137 344 0.0264 0.18

実験操作

7/3(月)
13:14 チアミン塩酸塩 2.9592g を 100ml スリ付きナスフラスコに入れた.
13:16 水 8ml を加え, 完全に溶かした.
13:22 エタノール 30ml を加えた.
13:31 氷浴につけ, 攪拌しながら NaOH 5ml を加えた.
13:46 攪拌を終了した.
13:47 pH 試験紙で pH が 9 であることを確認した.
13:49 ベンズアルデヒド 15ml を氷浴中で加えた.
13:53 湯浴で加熱し, 攪拌を開始した. (この時の湯浴の温度 52℃)
13:55 スリ付きナスフラスコに還流管を取り付けた.
14:02 湯浴が 70℃に達した.
15:36 湯浴からナスフラスコを引きあげた.
15:45 TLC で反応追跡を行った. (展開溶媒 酢酸エチル/ヘキサン=1/4)
15:51 氷浴中でナスフラスコを振ると, クリーム色の固体が析出した.
16:31 別の 100ml ナスフラスコの風袋を測定した. 69.7586g であった.
16:32 得られた固体を吸引ろ過した.
16:40 先ほどの 100ml ナスフラスコと固体の合計の重さを測定した. 76.9604g であった.
16:57 湯浴 80℃でエタノール 80ml を加えて溶かし, 静置した.
7/4(火)
13:10 氷浴で再結晶した溶液を 5 分間氷冷した.
13;15 冷却された EtOH を使用して吸引ろ過を行った.
13:20 紙箱の重さを測定した. 4.3017g であった.

結果

初めに NaOH を加えた時, 溶液の色は薄黄色に変化した.


90 分間の攪拌中に, 溶液の色は黄茶色へと変化した.
TLC は, 左と中心に 100 倍に希釈したベンズアルデヒドを, 右と中心に反応溶液をのせて
展開した. 以下に TLC の結果とそれぞれの物質の Rf 値を示す.
一番上のスポットの Rf 値は 0.58, その下は 0.25, さらにその下は 0.05 で
ある. 一番上のスポットは左に存在していることから, ベンズアルデヒド
であると考えられる. その下のスポットは生成物のベンゾインであると
考えられる. ベンゾインはヒドロキシ基を持ち, ヒドロキシ基は極性が高
いので下側に出ていると考えられる. さらにその下のスポットは, 反応の
触媒であるチアミン塩酸塩であると考えられる.

粗 収 量 は 76.9604-69.7586=7.2018g で あ っ た . 加 え た ベ ン ズ ア ル デ ヒ ド は 15ml で ,
147mmol である. この mol 数の半分だけベンゾインは生成するはずである. これを基に粗
収率を計算すると,

7.2018𝑔
× 100 = 46.16%
147 × 10−3 𝑚𝑜𝑙× 0.5 × 212.24𝑔/𝑚𝑜𝑙

46.2%であった.

考察

水酸化ナトリウムを加えることによってカルベンが発生する. このため, 水酸化ナトリウ


ムを入れる前に氷浴をする理由は, 反応性が高いカルベンが他のものと反応してしまうの
を防ぐためであると考えられる.

エタノールを加えた理由について考える. エタノールは, ベンズアルデヒドとチアミン塩


酸塩の両方を溶かすことができる溶媒として用いられていると考えられる. また, エタノ
ールに含まれるヒドロキシ基が酸素と水素結合することで, 反応中間体を安定化させ, 反
応を進みやすくさせているとも考えられる.
ベンズアルデヒドを加える前に pH を 9 にした理由について考える. もし酸性条件で反応を
行うと, カルベンは電子豊富であるため, 水素イオンと反応してカルベンが壊れてしまう
ことが予想される. また, 反応中間体におけるアニオンと反応してしまい, 望みの反応が上
手く進行しなくなる可能性も考えられる.

70℃で加熱を行う理由は, 溶媒として用いられているエタノールの沸点が 78℃だからであ


ると考えられる. もし 70℃よりも低いと, 次は反応の活性化障壁を超える分子が少なく反
応が遅くなってしまうので, 妥当な温度だと考えられる.

氷浴中でナスフラスコを振ることにより固体が析出した. この理由について考える. 直前
まで 70℃で 90 分間温めていたため, ナスフラスコ内の温度はかなり上がっていたと考えら
れる. この状態から, 氷浴に入れたため, 急激に容器内の温度が下がり, 過飽和現象が起き
たと考えられる. 過飽和の説明を以下に述べる. 「飽和の限度以上に物質が存在すること.
たとえば,飽和溶液の濃度(溶解度)より多く物質が溶けているなど,飽和蒸気圧以上に蒸気
が存在するなどの状態である.熱力学的に準安定であるから,その系を長時間放置するなど
何らかの衝撃を与えると,結晶が析出したり,蒸気が凝縮して,急激に平衡状態に移行して
安定化する.」氷浴に入れて振り混ぜる前までは固体が析出していなかったが, これは準安
定状態にあり, 実際は析出すべき量のベンゾインが溶けていたために, 振り混ぜるなどの
衝撃を与えることによってエネルギーを与え, 安定状態へと平衡を動かしたため固体が析
出したと考えられる.

粗収率が 50%程しかなかった原因を考える. この反応はチアミン塩酸塩を触媒として用い


ている. ベンズアルデヒドのみでは反応は進みにくい. このため, 粗収量はチアミン塩酸塩
の触媒としての能力に依存すると考えられる. チアミン塩酸塩の TON を求める. ここでは,
一旦粗生成物が全てベンゾインになったとして考える. TON は生成物の物質量/触媒の物質
量であるので,

0.0339𝑚𝑜𝑙
= 4.4
7.69 × 10−3𝑚𝑜𝑙

4.4 となる. この値は明らかに低く, 触媒としての働きは弱いと考えられる. このため, 粗


収率が低くなったと考えられる.
参考文献
Fujifilm ホームページ 製品情報
標準化学用語辞典第二版 過飽和

(b)ベンゾインの塩素化

日時 2023/7/5 (水)

目的

ベンゾインを塩化チオニルと反応させ, デシルクロリドを生成する.

試薬・生成物の情報

使用・生
分子量
密度(g/ml) 融点(℃) 沸点(℃) 成量 当量
(g/mol)
(mol)
9.47×
ベンゾイン 212.24 132~137 344 0.34
10-3
塩化
118.97 1.63~1.67 -104.5 80 0.0277 1
チオニル

デシル
230.69 63~69
クロリド

ヘキサン 86.18 0.66 -95 69 必要量


酢酸エチル 88.11 0.898~0.902 -83.6 77 必要量

実験操作

12:52 オーブンで 3 時間加熱した生成物と箱の合計の重さを測定した. 9.9021g であった.


12:58 100ml スリ付きナスフラスコの風袋を測定した. 69.6046g であった.
13:07 2.0103g のベンゾインを量り取り, 100ml スリ付きナスフラスコに入れた.
13:25 塩化チオニル 2.0ml を先ほどのナスフラスコに入れた.
13:40 100℃のオイルバスで 15 分加熱した.
13:51 TLC で反応終了を確認した. (展開溶媒は酢酸エチル:ヘキサン=1:4 のものを用いた)
14:20 ヘキサン 5.0ml を入れてエバポレーターで 5 分間共沸を行った.

結果
TLC の結果を以下に示す.
右と中に出ている大きなスポットの Rf 値は 0.53 で, 左と中に出ているス
ポットは 0.28 である. 左に打ったものはベンゾインなので, Rf 値 0.28 のス
ポットはベンゾインである. Rf 値 0.53 のスポットは生成物のデシルクロリ
ドであると考えられる. 右に出ている小さなスポットはテーリングが原因
だと考えられる.

塩化チオニルを入れて加熱した時, 5 分ほどたつと固体が消え, 薄黄色の溶液になった.


加熱を続けると, 徐々に色が濃くなり, 15 分たった時には黄茶色になっていた.
最後にヘキサンを入れてエバポレーターにかけた後, 黄茶色のオイル状の物質が生成した.
箱の重さは 4.3017g なので, 得られたベンゾインは 9.9021-4.3017=5.6004g である.
よって, ベンゾインの収率は,

5.6004𝑔
× 100 = 35.90%
147 × 10−3 𝑚𝑜𝑙× 0.5 × 212.24𝑔/𝑚𝑜𝑙

35.9%となった.

考察

100℃で加熱している時に発生している気体は二酸化硫黄と塩化水素であると考えられる.

塩化チオニルの沸点を調べると 80℃であった. これにより, 100℃のオイルバスで加熱した


際には塩化チオニルは気体になっていたと考えられる. 液体状態よりも気体状態のほうが
反応性が高いため, 100℃で加熱したと考えられる. 具体的には, 気体状態のほうが反応容
器中で容易に拡散するため, 目的の反応相手に対して広い表面積で衝突でき, より衝突す
る回数が増えることにより反応性が上がると考えられる.

参考文献 Fujifilm ホームページ 製品情報

(c)還元

日時 2023/7/6 (木)

目的

デシルクロリドを, NaBH4 を用いて還元し, スチルベンを生成する.

試薬・生成物の情報

分子量 使用量
密度(g/ml) 融点(℃) 沸点(℃) 当量
(g/mol) (mol)
デシル
230.69 63~69
クロリド

NaBH4 37.83 1.07 36~37 500 0.0147 1


Zn 65.38 7.13 0.0158 1.1
酢酸 60.05 1.05 16.7 118 0.350 24
ヘキサン 86.18 0.66 -95 69 必要量
酢酸エチル 88.11 0.898~0.902 -83.6 77 必要量

実験操作

13:19 20ml のエタノールを生成物の入ったナスフラスコに入れ, ドライヤーで加熱して溶


かした.
13:20 氷浴に入れてマグネティックスターラーで攪拌した.
13:25 0.5578g の NaBH4 を量り取った.
13:29 NaBH4 を攪拌中のナスフラスコにゆっくりと加えた.
13:34 pH 試験紙で pH を確認した. この時, pH は約 8 であった.
13:36 0.2462g の NaBH4 を追加した.
13:45 TLC で反応を追跡した. (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル=4/1 左, 中 原料 右, 中
反応溶液)
14:00 1.0334g の亜鉛を量り取り, 攪拌中のナスフラスコに入れた.
14:20 氷浴から取り出して酢酸を入れ, 還流管を取り付けて 80℃の湯浴に入れた.
14:34 攪拌を開始した.
15:34 湯浴から取り出した.
15:42 TLC で反応を追跡した. (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル=4/1 左, 中 デシルクロラ
イド 右, 中 反応溶液) また, 365nm の光を当て, 色を確認すると, 青紫色に発光した.
16:02 氷浴中にナスフラスコを入れた.
16:15 ジエチルエーテル 50ml を入れて白色固体を溶かし, 静置した.
16:34 100ml の三角フラスコにデカンテーションし, その溶液に 365nm の光を当てると青
紫色に発光した.
16:35 沈殿物が残ったナスフラスコにジエチルエーテル 20ml を入れて 365nm の光を当て
ると少し青紫色に発光した.
16:39 三角フラスコにデカントした後, ジエチルエーテルを 10ml 入れ, 再びデカントした.

結果

TLC の結果を以下に示す.
一回目
上のスポットの Rf 値は 0.63, その下のスポットは 0.45 である. 左と中には
原料を打っているので, Rf 値 0.63 のスポットはデシルクロリドであると考え
られる. 右と中に出ているスポットはデシルクロリドのカルボニルが還元さ
れてヒドロキシ基になった物質であると考えられる. 反応剤に NaBH4 を用
いており, ヒドロキシ基の極性が高いことからも妥当である.
二回目
一番上のスポットの Rf 値は 0.78, その下のスポットは 0.59, さらにその下は
0.43 である. 一番上のスポットは生成物のトランススチルベンであると考え
られる. その下はスポットが小さく濃度が低いと考えられるので, 反応で余
ったデシルクロリドであると考えられる. 一番下は前段階でのデシルクロリ
ドのカルボニルがヒドロキシ基に還元された物質であると考えられる.

亜鉛を加えて攪拌すると, 溶液は灰緑色に変化した.
1 時間攪拌した後, 溶液は薄い黄色に変化した.
ジエチルエーテルを 50ml 加えて白色固体を加えた時, ナスフラスコの底に灰色の粘土状の
物質が沈殿した.

考察

NaBH4 はヒドリド反応剤なので, カルボニルを還元してヒドロキシ基に変換していると考


えられる.

灰色の粘土状の物質は, 収支から考えると, ZnCl(CH3COO)であると考えられる.

酢酸の役割は, 課題の反応機構にも示したように, プロトンの供給源である. 塩酸などの強


酸よりも扱いが簡単であるため, 酢酸が用いられたと考えられる.

80℃で還流管を取り付けて加熱した理由を考える. デシルクロリドの沸点は約 65℃であり,


80℃は沸点を超えているため気体状態で存在していると考えられる. つまり, 還流管は気
体のデシルクロリドが系外へ出ていかないようにするためである. 反応目的分子との接触
回数が増えるため, 気体状態に変化させたと考えられる. また, この温度より高温にすると
次は沸点が 118℃の酢酸が揮発し始めてしまうため, 80℃が反応に最適な温度であると考え
られる.

デカンテーションについて説明する. 「溶液中の沈殿などの固体を溶液から分離する方法の
一つ.容器を静置して固体を沈降させたのち,容器を静かに傾けて上澄み液だけを流し出す
操作をいう.古くは傾瀉といった.
」今回は亜鉛や亜鉛化合物などの沈殿物を取り除くため
にデカンテーションを行った.

デカンテーションの際にジエチルエーテルを用いた理由は, 沸点が 34.6℃と非常に低く,


後の工程であるエバポレーションをする際にすぐに蒸発するためである.

デカンテーション後の溶液に 365nm の光を当てると溶液は青紫色に発光した. ここで, 目


的生成物であるトランススチルベンはその構造から, 長いπ共役を持つことが分かる. π
共役系は 365nm 付近の光を吸収して蛍光を示すため, 溶液の中にはトランススチルベンが
含まれていると結論づけられる.

参考文献
Fujifilm ホームページ 製品情報
標準化学用語辞典第二版 デカンテーション

(d)ワークアップ

日時 2023/7/7

目的

トランススチルベンの粗生成物を洗浄し, 乾燥, ろ過, 溶媒留去し, トランススチルベンを


精製する.

試薬・生成物の情報

分子量 使用・生
密度(g/ml) 融点(℃) 沸点(℃) 当量
(g/mol) 成量
(mol)
トランス 4.52×
180.25 0.97 123~125 305~307 1
スチルベン 10-3
HCl 36.46 1.49 -114 -85 必要量
NaHCO3 84.01 2.159 270 必要量
NaCl 58.44 2.165 必要量
Na2SO4 142.04 2.68 必要量
エタノール 46.07 0.789 78 必要量

実験操作

13:10 三角フラスコで保存しておいたトランススチルベンの溶液を分液漏斗に入れ, 0.1M


HCl で 2 回洗浄した.
13:25 TLC で反応を追跡した. (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル=4/1 左, 中 水層 右, 中
有機層)
13:41 NaHCO3 50ml を入れて分液した.
13:42 有機層を取り出し, 飽和 NaCl 水溶液 50ml を加えて再び分液した.
13:45 溶液に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させた.
13:48 200ml スリ付きナスフラスコの風袋を測定した. 83.8542g であった.
13:51 先ほどのナスフラスコに溶液を綿栓ろ過した.
13:55 エバポレーターを使い, 空気中で溶媒留去した.
14:10 200ml スリ付きナスフラスコ+粗生成物の重さを測定した. 85.6720g であった.
15:05 合計 15ml のエタノールを加え, 攪拌し続けて固体を溶かし, その後クランプに挟ん
で栓をし, 静置した.

結果

TLC の結果をに示す.
一番上のスポットの Rf 値は 0.93 である. スポットの濃度が高かったためか, テ
ーリングを起こしていた. 365nm の光を当てたところ, 一番上のスポットのみ
が青紫色に発光した. このため, 目的物であるトランススチルベンは生成した
と考えた.

エバポレーター終了後, ナスフラスコ内にはクリーム色の固体が析出した.
粗生成物の重さは, 測定結果より, 85.6720-83.8542=1.8178g であった.
化学量論比を考えると, ベンゾインの物質量がそのままトランススチルベンの物質量とな
る. よって, 粗収率は,

1.8178𝑔
× 100 = 106.43%
2.0103𝑔
× 180.2𝑔/𝑚𝑜𝑙
212.24𝑔/𝑚𝑜𝑙

106.43%となった.

考察

洗浄で塩酸を用いた理由は, トランススチルベンまで反応しきっていない化学種をプロト
ン化させ, 反応を進行させてトランススチルベンまでもっていくためである.

洗浄で重曹水を用いた理由は, 溶液中に残っている酸性物質を取り除くためであると考え
られる. デシルクロライドのカルボニルがヒドロキシ基に置き換わった化合物はこの段階
で排除されると考えられる.

粗収率が 106%と高かった理由は, ナスフラスコ内の溶媒が完全に蒸発しておらず, 固体に


配位していたため, 質量が大きくなっていたと考えられる.
スチルベンは, トランス型のほかに, シス型構造も考えることが出来る. しかしながら, ト
ランス異性体が平面的であるのに対して, シス異性体はベンゼン環上の水素同士の立体反
発により, 平面と比べて大きくゆがんでいる. このため, 反応の遷移状態はトランス異性体
を生成する時のほうが安定であると推測される. このため, トランス異性体がより多く生
成すると考えられる.

参考文献 Fujifilm ホームページ 製品情報

(e)ベンゾインの硝酸酸化

日時 2023/7/10 (月)

目的

ベンゾインを硝酸で酸化し, ベンジルを合成する.

試薬・生成物の情報

使用・生
分子量
密度(g/ml) 融点(℃) 沸点(℃) 成量 当量
(g/mol)
(mol)
9.38×
ベンゾイン 212.24 132~137 344 1
10-3
硝酸 63.01 1.38 -42 82.6 0.153 16
ヘキサン 86.18 0.66 -95 69 必要量
酢酸エチル 88.11 0.898~0.902 -83.6 77 必要量
エタノール 46.07 0.789 78 必要量

実験操作

12:57 1.9911g のベンゾインを量り取り, スリなしの 100ml ナスフラスコに加えた.


13:34 ナスフラスコに硝酸 7ml を入れ, 90℃のオイルバス内で加熱した.
14:06 湯浴から引きあげた.
14:08 TLC で反応を追跡した. (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル=4/1 左, 中 ベンゾイン 右,
中 反応溶液)
14:20 30ml の純水をナスフラスコに加えた.
14:42 スチルベンの吸引ろ過を行った.
14:49 0.8149g のスチルベンが生成した.
15:05 ベンジルの吸引ろ過を行った.
15:17 2.0418g のベンジルの粗収量が得られた.
15:22 エタノール 3ml を加えて湯浴で溶かし, 静置した.

結果

TLC の結果を以下に示す.
Rf 値は, 上のスポットから順に 0.75, 0.70, 0.55, 0.48 であ
る. 左はベンゾインの原料なので, 右に打った反応溶液に
おいてベンゾインは残っていない. 一番大きく表れている
スポットは主生成物のベンジルであると考えられる. 残り
二つのスポットについては, 考察の項で詳しく述べる.

ナスフラスコに硝酸を入れた直後, 溶液は白色になり, 泡が発生していた.


加熱中, 褐色の気体と白色の気体が発生した.
湯浴から引きあげた時, 黄色の溶液となった.
得られた物質は黄色の固体であった.

スチルベンの収率を求める. 得られたスチルベンは 0.8149g で, 理論収量は 1.7068g である


から,
0.8149𝑔
× 100 = 47.4%
1.7068𝑔
47.4%である.

得られたベンジルの粗収率を計算する. 初めに用いたベンゾインは 1.9911g であるので, 理


論上得られるベンジルは,

1.9911𝑔
× 210.23𝑔/𝑚𝑜𝑙 = 1.97𝑔
212.24𝑔/𝑚𝑜𝑙

粗収量は 2.0418g なので, 粗収率は,

2.04𝑔
× 100 = 103.5%
1.97𝑔

103.5%となる.

考察

TLC のスポットで出ていた二つの副生成物について考える.
上から二番目のスポットは, ベンゾインのヒドロキシ基が分子内のカルボニルに攻撃して
オキサシクロプロパンの骨格を持つものであると考えられる. 構造を以下に示す.

下から二番目のスポットとして考えられるのは, 多数のベンゾインが水素結合した構造で
あると考えられる. カルボニルの酸素が別のベンゾイン分子のヒドロキシ基に結びつくこ
とにより水素結合を形成し, 水素結合で結びつくことによって極性を少し軽減することが
出来ると考えられる.

ナスフラスコに硝酸を入れた直後に発生した気体は, 二酸化窒素であると考えられる. こ
のことはその後発生した気体の色が褐色であること, 課題 1 の反応機構などから推測され
る.

30ml の水を加えた理由について考える. まず, ベンゾインはヒドロキシ基を持ち, 極性が


高いために水に溶けやすい. 水に溶けることにより, 硝酸との接触が良くなり, 反応が促進
されると考えられる. また, 硝酸は強力な酸化剤であるため, 濃度が高いと反応が制御でき
なくなる可能性がある. 水を入れることによって, 濃度を抑え, 反応が暴走することを防い
でいると考えられる.

スチルベンの粗収率は 106.43%であり, 収率は 47.4%である. 粗収率と比べて収率がかな


り低く, 多くの不純物が含まれていたことが分かる. エバポレーター時の溶媒が残ってい
たことに加え, 先ほど述べた副生成物も含まれていると考えられる. 特にエポキシを持つ
副生成物は極性が高いため, 分液の際に水層へ移動すると考えられる. これにより, 不純物
を取り除くことが出来, 収率は低くなったと考えられる.

参考文献 Fujifilm ホームページ 製品情報

(f)ベンジルキノキサリンの調製

日時 2023/7/11 (火)

目的

ベンジルと o-フェニレンジアミンを反応させて環状のイミドであるベンジルキノキサリン
を合成する.

試薬・生成物の情報

使用・生
分子量
密度(g/ml) 融点(℃) 沸点(℃) 成量 当量
(g/mol)
(mol)
ベンジル 210.23 94~97 346~348 1.99× 1
10-3
o-フェニレ 2.00×
108.14 103~104 1.005
ンジアミン 10-3
ヘキサン 86.18 0.66 -95 69 必要量
酢酸エチル 88.11 0.898~0.902 -83.6 77 必要量
メタノール 32.04 0.791~0.793 64 必要量
.
実験操作

12:48 氷浴にろ過前のベンジル溶液の入ったナスフラスコを入れた.
13:00 スパーテルで掻き出して氷冷したエタノールで洗いこみを行った.
13:19 1.9366g のベンジルが生成物として得られた.
13:25 0.4191g のベンジルをスリなし 50ml ナスフラスコに入れた.
13:34 0.2168g の o-フェニレンジアミンも同様に加えた.
13:50 ナスフラスコを 110℃のオイルバスに入れ加熱を開始した.
14:34 TLC で反応を追跡した. (展開溶媒 ヘキサン/酢酸エチル=4/1 左, 中 o-フェニレン
ジアミン 右, 中 反応溶液)
14:50 再び TLC で反応を追跡した. (展開溶媒, スポット位置は同じ)
15:00 オイルバスから引き上げた.
15:02 メタノールを 10ml 入れて加熱してドライヤーで加熱して溶かした.
15:37 氷浴で放冷した.
17:24 ナスフラスコからスパーテルで固体を掻き出し, 氷冷したメタノールで洗いこみを
した. その後, 固体をろ紙に挟んで乾燥させ, 収量を測定した. 0.3379g のキノキサリンが得
られた.

結果
TLC の結果を以下に示す.
一回目の TLC は加熱開始から 45 分後に行ったも
のである. 上のスポットから順に Rf 値が 0.70,
0.58, 0.08 となった. 二回目は加熱開始から 1 時
間後に行ったものである. Rf 値が上から順に 0.70,
0.58, 0.43, 0.08 となった. 左側にあるスポットは
o-フェニレンジアミンであり, 右側に出ているス
ポットがキノキサリン関連の物質である. UV で
一番色が濃く見えていたのは一番上のスポット
であった. これが主生成物のキノキサリンである
と考えられる. 二回目で反応が進んだ段階で見え
るようになった Rf 値 0.43 のスポットが副生成物
であると考えられる. 詳細については考察の項で
述べる.

一回目 二回目
キノキサリンの収率を求める. mol 数に変換した時, ベンジルと o-フェニレンジアミンでは
ベンジルのほうが少ないため, キノキサリンもベンジルと同じ mol 数生成すると考えられ
る. 実際に得られたキノキサリンは 0.3379g なので, 収率は,

0.34𝑔
× 100 = 60.7%
0.4191𝑔
× 282.34𝑔/𝑚𝑜𝑙
210.23𝑔/𝑚𝑜𝑙

60.7%となる.

ベンジルと o-フェニレンジアミンの混合物を加熱すると, 黒色の溶液へと変化した.


メタノールを加えて溶かして静置したところ, クリーム色の小さな粒が溶液表面上に多数
浮き始めた. 一時間以上氷冷した後にもう一度見たところ, 大半が沈んでいた.
ろ紙で乾燥する前に得られた固体は褐色と白を合わせたような色であった.
乾燥した後は, 褐色の溶媒が失われたため, 先ほどと比べて比較的白に近い色の固体が得
られた.

考察
2 回目の TLC で, 右側に出ているスポットの内, 上から二番目と下から二番目のものにつ
いて構造を考察する. o-フェニレンジアミンの極性が一番高く, キノキサリンの極性が一番
低いことを考えると, その間の中間体がスポットとして表れている可能性が高い. 二つの
中間体が考えられ, その内キノキサリンに近い方の構造をもつ化合物が上から二番目, も
う一方が下から二番目のスポットであると考えられる. 二つの中間体の構造を以下に示す.

下から二番目 上から二番目
初めにナスフラスコに入れた化合物は二つとも固体であった. しかし, オイルバスで加熱
後は溶液になっていた. ここで, o-フェニレンジアミンの融点は約 103℃, ベンジルの融点
は約 95℃, オイルバスの温度は 110℃であるので, 初めにベンジルが融解し, 続いて o-フェ
ニレンジアミンが融解したと考えられる.

オイルバスから引きあげた後, 溶液が黒色に変化していた理由を考える. 固体を取り出し


た時に茶色に染まっていたため, 実際は茶色の溶液だったと考えられる. ここで, 今回用い
た o-フェニレンジアミンとベンジルの当量関係を確認すると, わずかながら o-フェニレン
ジアミンのほうが多く含まれている. このため, 残った o-フェニレンジアミンの色がその
まま溶液の色になったと考えられる.

これまでの再結晶では, フラスコの底の中心から徐々に固体化し, その後全体に広がって


いくという析出の仕方だったが, 今回は粒状の固体が多く出来上がり, それが液面に浮い
ているという析出の仕方だった. なぜこのように析出したのかを考える. ベンジルキノキ
サリンは, 芳香環を多く持っている. ベンゼン環は平面分子であるため, ベンジルキノキサ
リン全体で見ても平面構造を持つと考えられる. , このため, 分子同士が重なりやすく, 接
する面積が大きくなるために, ファンデルワールス力が働き, 分子同士が凝集しやすくな
っていると考えられる. また, 芳香環によるπ-πスタッキング相互作用が働いている可能
性も考えられる.

ベンジルキノキサリンの粗収率は 103.5%だったのに対し, 収率は 60.7%にまで減少した.


精製する前に固体をろ紙で挟んで乾燥させたとき, 生成した固体は非常に多くの溶媒を含
んでおり, 乾燥しきれなかったことが粗収量が多くなった原因であると考えられる.

参考文献 Fujifilm ホームページ 製品情報


課題
1
反応機構 C(b)において, SNi 反応で立体選択性を持つ物質が生成する. このことについて考
察する. SNi 反応とは, internal nucleophilic substitution の略であり, 分子内で起こる求核置
換という意味である. ボルハルトショアーにも本実験に似たような反応があるが, SN2 反応
として紹介されている. 違いは, ピリジンを用いていることである. アルコールが塩化チオ
ニルに攻撃し, その後ピリジンが塩基の役割を果たし脱プロトン化する. その後, 脱離して
いる塩化物イオンが SN2 反応を起こし, OSOCl が脱離して立体が反転した生成物が得られ
る.
しかし, 今回の実験ではピリジンを用いていないため, 塩化物イオンが代わりに脱プロト
ン化を行う. すると, ピリジンを用いた際に余っていた塩化物イオンが使われてしまい, 炭
素を攻撃する化学種がなくなる. このため, 分子内に残っている Cl を使う必要がある. 一
旦 OSOCl 基が脱離し, その後 Cl-が脱離した面と同じ面から攻撃するため, 四員環のよう
な遷移状態を取り, もとのアルコールから立体の反転していない物質が生成する.

反応機構 D(b)において, 生成物は Z 体となる. この選択性について考察する. 中間体にお


いて, E1cb 脱離が進行する. この反応は, β水素が初めに塩基によって引き抜かれてカルボ
アニオン中間体が生成し, 脱離基がアニオンとして解離してアルケンを生成する機構で進
行する. E1 反応は, まず脱離基が脱離してからプロトンが脱離するため順番が異なる. E1cb
反応が優先で起こるのは, カルボアニオンが安定である基質, 脱離基の性能が良くない場
合, β水素の酸性度が低い場合などである. 今回は脱離基の性能があまりよくない酢酸イ
オンを脱離させようとしているため, 先に遊離の酢酸イオンがプロトンを引き抜き, その
後酢酸イオンが脱離すると考えられる.

この時, 立体障害によって中間体の構造に寄与の差があるため, 寄与の大きい中間体で反


応すると考えると, 生成物は Z 体となり, 選択的に進行すると考えられる.
2

まず, フィッシャーインドール合成について説明する.
アルデヒドやケトンとアリールヒドラジンとの反応で生成するアリールヒドラゾンを酸触
媒の存在下で加熱する. それにより, シグマトロピー環化反応が起き, 置換インドールが生
成する. 反応機構を以下に示す.

まず初めにアミンがカルボニル炭素を攻撃し, イミンを生成する. プロトン移動が起こっ


た後, claisen 転位様の芳香族的な電子の移動により二つのイミンを生成する. その後, プロ
トンの脱離による電位の流れでイミンのπ電子がもう片方のイミンの窒素に攻撃し, 五員
環を生成する. 最後にアンモニアが抜けることにより, インドール環が生成する.

ビシュラー・メーラウ インドール合成

この反応の出発物質はアニリンとα-ハロカルボニル化合物である. 反応機構を以下に示す.

アニリンの窒素の lone pair がα-カルボニル化合物のハロゲンの根本に攻撃し, ハロゲンが


脱離する. 次に, 二つ目のアニリンがカルボニル炭素を攻撃してイミンを生成する. 次に,
イミンの窒素に結合しているフェニル基のπ電子が良い脱離基であるアニリンの隣の炭素
に攻撃し, アニリンが脱離する. その後プロトン脱離と電子の移動により, インドール環が
生成する.

バートリ インドール合成

この反応の出発物質は芳香族ニトロ化合物とアルケニル Grignard 試薬である. 反応機構を


以下に示す.

初めに芳香族ニトロ化合物の酸素にアルケニル Grignard 反応剤が攻撃し, もう片方の酸素


からの電子の押出によってビニルアルコキシドが脱離する. その後, もう一度アルケニル
Grignard 反応剤が NO 置換基の酸素を攻撃する. フィッシャーのインドール合成と同様に
claisen 転位様の環状電子移動が起き, 分子内にイミンのアニオンとカルボニルが生成する.
イミンのアニオンがカルボニル炭素を攻撃し, 五員環となる. その後, プロトンの脱離によ
る電子の流れでイミンはアミンになる. 最後に酸付加で水を脱離することによりインドー
ル環が生成する.

ビシュラー・メーラウインドール合成とバートリインドール合成について, フィッシャーイ
ンドール合成とどのような点で異なるかを説明する.

フィッシャーとビシュラーの方法では, 窒素の五員環の方に置換基を導入することが出来
る一方, バートリの方法ではベンゼン環に置換基を導入することができる. 最終的に合成
したい化合物に合わせて反応を変え, 適切な位置へ置換基を導入することが出来る. フィ
ッシャーの方法とビシュラーの方法は反応機構が似ているが, フィッシャーインドールは
酸触媒を用いて反応を進行させているが, ビシュラーの方法ではもう一つのアニリンを触
媒的に用いている. また, フィッシャーの方法では副反応が多く起こる可能性が高い. 例え
ば, アリールヒドラゾンが N-メチル化あるいは重合を起こしてしまい, 副生成物が多く得
られる可能性が考えられる.

参考文献
Miyata, O.; Kimura, Y.; Muroya, K.; Hiramatsu, H.; Naito, T. Tetrahedron Lett. 1997, 62,
425.
Bischler, A. et al. Ber.1893, 26, 1336.
Möhlau, R. Ber.1882, 15, 2480.
Bartoli, G.; Bosco, M.; Dalpozzo, R.; Palmieri, G.; Marcantoni, E. J. Chem. Soc., Perkin Trans.
11991, 2757.
Bartoli, G.; Palmieri, G.; Bosco, M.; Dalpozzo, R. Tetrahedron Lett.1989, 30, 2129.

3
まずは, シクロペンタジエンとの反応を考える. シクロペンタジエンと無水マレイン酸に
よって, Diels-Alder 反応が起こる. シクロペンタジエンはアルキル基が結合しているため電
子豊富なジエンであり, 無水マレイン酸は, エステルが結合しているため, 電子不足のジエ
ノフィルである. Diels-Alder 反応では, ジエンの HOMO とジエノフィルの LUMO が軌道
間相互作用することによって六員環構造を形成する. ジエンが電子豊富であるとジエンの
HOMO のエネルギーが上がり, ジエノフィルが電子不足であると LUMO のエネルギーが
下がる. これによって軌道間のエネルギー差が小さくなり, Diels-Alder 反応が起こりやすく
なる. また, 無水マレイン酸はπ軌道を持つカルボニルを分子内に持っている. このπ軌道
がジエンの HOMO と相互作用して安定になることが出来るので, この反応は endo 体優先
で進行する.
次に, フランをジエンとして用いる場合を考える. フランはジエンの隣に電気陰性度の大
きい酸素が結合しているため, シクロペンタジエンに比べて電子不足なジエンとなる. こ
れにより, フランの HOMO はシクロペンタジエンのそれよりもエネルギー準位が下がる
と考えられる. また, シクロペンタジエンで見られたジエンの HOMO と無水マレイン酸の
カルボニルのπ軌道の相互作用は, フランにおいてはジエンの電子が不足しているために
効果が減少すると考えられる. ここで, Diels-Alder 反応の endo 体と exo 体では, エクアト
リアル位で結合している exo 体のほうが熱力学的には有利である. 軌道相互作用により遷
移状態が安定化されるために endo 体が生成するが, その相互作用が減少するフランとの反
応では, 熱力学的に安定な exo 体が生成すると考えられる.

参考文献 https://www.chem-station.com/odos/2009/06/diels-alder.html

4
ベンゾイン縮合の反応において, 生成物の一つにスチルベンがあった. この分子について
調べた. スチルベンは, 分子全体にπ共役系が広がっている芳香族分子である. π共役系を
持っているため蛍光の性質を示し, 蛍光増白剤の原料として用いられている. 以下に構造
を示す.
スチルベンの物理的性質を述べる.
化学式: C14H12
分子量: 180.25g/mol
融点: 123~125℃
沸点: 305~307℃ 744mmHg
比重: 0.97g/ml at 25℃
外見: 結晶または結晶性粉末
色: 白~ややベージュ

蛍光増白剤の具体的な構造として以下のようなものが挙げられる.

上の物質の物理的性質を述べる.
融点 >300℃
密度 1.414
外見 固体
色 薄緑から緑
水溶解度 17.6g/L at 20℃
上の図において赤丸で囲んだところにスチルベン骨格が使われている. 考えられる合成手
順を述べる. フェニル基のパラ位にボロン酸やハロゲンを入れて, カップリング反応で二
つを繋ぐ. もう片方のパラ位は保護されているため, つないだ後に H2SO4, SO3 と反応させ
ることにより, オルト位にスルホ基を導入する. この化合物は, π共役系の分子であり, 紫
外線を吸収する. それによって青色の光を発し, 衣服の黄ばみを打ち消す役割をしている.
参考文献
Fujifilm ホームページ 製品情報
https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB5221132.htm
062101289 藤井康平
段階を踏んで有機分子を合成する経験が出来てよかったです. 実際の有機合成へのいい経
験になったと思います. 初めは操作に時間がかかっていましたが, 回数を経るにつれて効
率を上げることが出来ました. 共通実験で再結晶が上手くできずに苦労しましたが, 今回
は比較的高い収率で生成物を得ることが出来ました. 少し自信になりました. 自分は将来
有機化学に関わる可能性があるのでこの経験を大切に残りの実験も頑張りたいと思います.
最後に, 実験を支えてくださった TA の皆さん本当にありがとうございました. 特にベンゾ
イン縮合を担当してくださった甲斐さん, 千原さんとても頼りになる存在でした. 感謝し
ています.

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