第11回コカ・コーラ社2

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経営戦略論B

第11回
コカ・コーラ社 ②
青木良三

はじめに

今回の授業では、コカ・コーラ社の海外進出と歴代の
経営者の経営方針について解説する。

コカ・コーラ社は、国際統合(標準化)と現地適合
(現地化)の問題をどのように解決したのか説明する。

日本コカ・コーラの経営の特徴についても解説する。

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1. 海外展開の歴史
• 1926年、外国部を設置。
• 1929年には、28カ国に進出した。アメリカ国内のコカ・コーラ・ビジネス
の仕組みをそのまま海外に持って行った。(次のスライド参照)
• 1930年、アメリカ、カナダ、キューバ以外の諸国でコカ・コーラの販売・
宣伝を目的に「コカ・コーラ・エクスポート・コーポレーショ(CCEC)」
設立。
• 1940年頃には、コカ・コーラは70カ国で販売された。
• ロバート・ウッドラフは、第二次大戦中、軍隊に属するすべてのアメリカ人
にたいして、1杯5セントでコカ・コーラを提供すると宣言。
• 1946年には、コカ・コーラのボトリング(瓶詰め)工場は世界155カ所にあ
り、そのうちの3分の1以上が政府の補助金を使って建設されたといわれる。
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戦時中の展開で得た成果は、①世界中の若者が
コカ・コーラの味に馴染んだこと、②59施設が
無償で政府から払い下げられたこと、である。

コカ・コーラの海外進出は、アメリカ政府の後
押しと軍との関係もあって、「コカ・コロニ
ゼーション(コカ・コーラ植民地化)」と批判
された。フランスでは、1940年代後半に、コ
カ・コーラがアメリカ帝国主義の象徴であると
訴え、反対運動が起きた。
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2. 歴代CEО(最高経営責任者)の
国際戦略
イ.ロベルト・ゴイズエタ(1981年~96年までCEO)
キューバ出身、 「限りなき国際成⾧」
• ゴイズエタは、アメリカ市場と海外市場との差異は、商品
の普及率の違いだけと考えた。海外市場に進出すれば、
もっと成⾧できる、つまり成⾧余地があると考えた。
• また、ゴイズエタは、海外進出によって成⾧すれば、規模
の経済が働き、自社の競争優位性が益々高まると考えた。
コカ・コーラを愛飲する人は世界中におり、国境は消滅し
たも同然と考えた。
• コカ・コーラにとって全世界はひとつの市場であるから、
アトランタの本社が世界各地域の拠点をコントロール
(中央集権化)するのは当然であり、広告宣伝などの標準
化が実施された。 5

ロ.ダグラス・アイヴェスター
(1997年~2000年までCEO)
「前任者の路線継承」

• 就任後、世界経済が後退し、コカ・コーラ
の需要が低迷した。アイヴェスターは、
景気後退を一時的と考えたが、需要の回復
は期待はずれに終わった。このため、アイ
ヴェスターは、成⾧率の鈍化を隠そうと押
し込み販売を行った。原液の値上げを準備
している最中に、取締役会で解任された。

写真の人物がアイベスター 6

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ハ.ダグラス・ダフト(2000年~04年までCEO)
オーストラリア出身、「現地化(ローカルに考え、ローカルに行動)」

• ダフトは「世界はより柔軟な対応、責任、現地の感性を求めている
のに、我々はより中央集権的な意思決定を行い、手段を標準化し、
従来我々がとっていたマルチローカル・アプローチからどんどん離
れている。もし我々の現地の同僚が現地に即した正しいアイディア
や戦略を見出し、それが我々の根本的な価値観、方針、整合性や品
質に合っているなら、彼らはそれを実行する権限と責任を持つべき
である」と考えた。
• この考えに基づいて、ダフトは、本社の社員をレイオフし、現地に
任せる方針を示した。この時、グローバル規模の広告はもう作らな
いことにしたため、優秀なマーケティングの人材が流出する結果を
招いた。
• こうした改革にもかかわらず、この現地化は現地の準備が整わない
まま実行されたため、コカ・コーラの販売数量は鈍化を続けた。
• 2002年には本社にマーケティングの管轄が戻されたが、販売数量
の伸びが目標に届かず、株価の低迷が続いたため、ダフトは2004
年に退任した。

ニ. ネヴィル・イスデル(2004年~08年?
CEO)アイルランド出身

• イスデルは「前任者たちは急激に方針を転換しすぎた」と
考えた。前任者たちの考え方は両極端であるため、両者の
折衷的な考え方をした。
• すなわち、海外進出すれば高い成⾧を期待できるという考
えや規模の経済に対する考えを修正した。コーラの⾧期的
な販売量成⾧率目標を3~4%に引き下げるとともに、売
れ筋商品の販売に注力して規模の経済を追求するというや
り方をやめた。
• アトランタの本社の権限を見直し、中央集権化、標準化は
緩和された。
• イスデルは、ある国の市場で成功したアイディアを、国境
を越えても付加価値をもたらすかの観点から評価すること
にした。

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• 例.日本ではコーラの需要が必ずしも多くないため、
日本コカ・コーラは「ジョージア缶コーヒー」など
商品開発に注力し、「総合飲料会社」としての地位を
築き上げた。これは、アメリカ本社でも、現地化成功
のモデル・ケースとして高く評価された。
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• 以上から、歴代のコカ・コーラ社のCEO
コカ・コーラ社 の国際戦略は、ぶれが大きく、確立した
パターンがあるとはいえない。グローバ
の国際戦略は ル企業のイメージが強い、コカ・コーラ
揺れている 社であるが、その国際戦略は依然として
模索中という状況にある。

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【質問】

本のタイトルになっているが、『コークの味は国ごと
に違うべきか』(パンカジ・ゲマワット著)、この問
題をどう考えるか?

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【答え】
ゲマワット教授によれば、世界市場は完
全統合の状態になく、セミ・グローバリ
ゼーションの状態にある。世界をひとつ
の市場と考えることはできない。このた
め、コカ・コーラ社は完全統合(これま
での説明では標準化)した製品で、世界
中で販売する国際戦略は失敗する。
もちろん、コカ・コーラは標準化されて
いるが、ローカルの日本コカ・コーラが
開発したジョージアも必要になる。現地
適合しなければ、現地に受け入れられな
い。

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• 1970年代にライバルのペプシが行った「ペプシ・チャレンジ」と銘打ったコカ・
コーラとペプシ・コーラの目隠し味覚テストで、6対4でペプシが選ばれるという内
容のCMが放映された。この放映に合わせ、ペプシ・コーラの販売攻勢が強まり、市
[余談] 場シェアを伸ばした。

カンザス計画 • 事態に強い危機感を募らせたコカ・コーラ社は、コカ・コーラのリニューアルに取り
組み、1985年4月に「ニュー・コーク」の発売とこれまでのコカ・コーラの製造中
止を決めた。これが、カンザス計画である。
• しかし、「ニュー・コーク」は消費者の猛烈な反発を招き、抗議の電話が殺到し、同
年6月には1日8000本に上った。他に4万通の抗議の手紙が寄せられた。
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[余談]カンザス計画(続き)

• 予想を裏切る事態の展開で、コカ・コーラ社は、3カ月足らずで元の
コカ・コーラを「コカ・コーラ・クラシック」と名付けて再発売し、
今日に至っている。
• アメリカの経済誌『ビジネス・ウィーク』は、「80年代最大のマー
ケティングの失敗」と皮肉った。
• この“事件”から、コカ・コーラの味が消費者の圧倒的な支持を得て
いることが分かった。カンザス計画が本来の目的から評価すれば失
敗であったが、消費者にコカ・コーラの味を再認識させるキャン
ペーンと捉えれば、“大成功”であったといえる。

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3. 日本コカ・コーラ株式会社

ィ.歴史
• 1956年、高梨仁三郎(「日本のコカ・コーラの父」と呼ばれる)が東京飲料株式会
社(現・東京コカ・コーラボトリング)を設立。
• 1957年、ザ・コカ・コーラ・エクスポート・コーポレーションが全額出資子会社の
日本飲料工業株式会社を設立(58年に日本コカ・コーラに社名変更)。
• 両社の設立によって、コカ・コーラのフランチャイズ・システムが日本でも発足した
(次のスライド参照)。
• 1972年には、ボトラーが17社となり、北海道から沖縄までをカバーした。

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• 図の右上にザ・コカ・コーラのカンパ
ニーがある。同社の100%出資子会社が
日本コカ・コーラである。日本でもフラ
ンチャイズシステムが導入されている。

• 日本コカ・コーラが、ペアレント・ボト
ラーとなって、各地域のボトリング会社
に原液を供給している。その見返りに、
代金を受け取っている。

• なお、この図では、ボトラー17社とある
が、現在は合併により、5社に減ってい
る。

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【質問】

国際展開する上で、フランチャイズ・システムを
利用すると、どんなメリットが得られるか?

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【答え】

投資リスクを抑えることができる。
進出当時、コカコーラの味が日本人に受け入れられるか
未知数であった。

失敗しても、工場建設などの設備投資は、ボトリング
会社が行うので、コカ・コーラ社は巨額の資金を失う
心配はなかった。
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ロ.日本コカ・コーラの強み

①「ルートセールス」と呼ばれる問屋を介さない直接販売方式
• これは、自社の社員が直接、酒屋やレストランなど小売業者
に配送するシステムである。

②自販機設置台数で他社を圧倒
• 現在、日本では約180万台の飲料自販機(屋外)があると見
られているが、そのうちのおよそ半数をコカ・コーラの自販
機が占めている。
• 自販機を展開していく際に、商品品目数を増やす必要が生じ
たため、日本コカ・コーラは商品開発に注力した。その結果、
炭酸飲料、コーヒー飲料、スポーツ飲料、茶系飲料、水、
果汁飲料、エネルギー飲料、アクティブライフスタイル飲料
の8つのカテゴリーに広がり、800以上の製品品目数に達し
た。

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【質問】

日本コカ・コーラにとって、
ルートセールスのメリットは何か?

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【答え】

ルートセールスのメリットとしては、
まず顧客との信頼関係を築きやすいことが
あげられる。

他に、定期的に顧客を訪問するので、
顧客の生の声を聞け、商品の提案などがしやすい。

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【質問】

自販機での販売は、飲料メーカーにとって
メリットが大きいといわれる。

それはどんなメリットか?

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【答え】

スーパーなどでの販売と違い、安売りされにくく、
ほぼ希望価格で販売できる。したがって、利益率が良い。

スーパーなどでの販売は、販売量を稼ぐためであり、
またブランドを浸透させる狙いもある
(とくに新製品の場合)。

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清涼飲料水市場で、コカ・コーラは業界トップ

日本コカ・コーラの強み、先ほど
の8つの製品カテゴリーについて、
有力商品を持っていることである。

いくつか製品ブランド名をあげる
と、コカコーラ、ジョージア、
アクエリアス、爽健美茶、
い・ろ・は・す天然水、ファンタ
などがある。

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おわりに
コカ・コーラ社の歴代経営者は、国際戦略において、国際統合(標準化)と
現地適合(現地化)の間で揺れていた。

現在のコカ・コーラ社の国際戦略は、コカコーラのような標準化した製品と
ジョージアや爽健美茶のような現地化した製品を組み合わせて現地の人の
ニーズに対応している。

日本コカ・コーラの強みは、ルートセールスと自販機の設置台数の多さである。
自販機の魅力を高めるため、取扱製品数を増やす必要があり、製品の開発に力
を入れている。

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