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経営戦略論B

第10回
コカ・コーラ社 ①
青木良三

はじめに
国際戦略のケーススタディとしてコカ・コーラ社を二回にわたって取り上げる。

コカ・コーラ社は世界各国で販売を行っている典型的な多国籍企業である。

そのため、製品の国際統合(標準化)と現地適合をどうするかの問題に直面し
てきた。

今回の授業では、コカ・コーラ社のビジネスモデルについて解説する。

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1.会社概要
• 本社 米国ジョージア州アトランタ

• 2019年12月期の連結売上高は、372億6,600
万ドル(約3兆9,000億円)、純利益は89億
ドル(9,300億円)であった。

• 世界約200カ国・地域で販売している。

2.コカ・コーラの誕生
• 1853年、ジョン・S・ペンバート
ン(John S.Pemberton)がワイ
ンにコカインとコーラのエキスを
調合したフレンチ・ワイン・コカ
を精力増強や頭痛の緩和に効果の
ある薬用酒として販売を始める。
• フレンチ・ワイン・コカは人気商
品となったが、コカイン中毒の問
題と禁酒運動の先鋭化により、先
行きに不安が生じた。このため、
ワインに代えて炭酸水の風味付け
シロップとして販売することにし
た。ペンバートンのビジネスに参
加したフランク・M・ロビンソン
によって、その商品はコカ・コー
ラと命名された。販売は1886年。

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• その後、コカ・コーラの販売権は転々と
し、1888年エイサ・キャンドラーがオー
ナーとなり、「ザ・コカ・コーラ・カン
パニー」を設立した(登記は1892年)。

• 早くも1895年末には全米での販売に成功
した。成功の要因としては、①一杯5セン
トの低価格販売、②Coka-Colaのロゴや
Delicious and Refreshing(おいしく、
さわやか)のキャッチコピーなど広告戦
略の巧みさ、③原液の機密保護などがあ
げられる。なお当初の販売先は薬局で、
お店の一角のファウンテンで販売される
炭酸水向けの濃縮シロップであった。

3. 瓶詰め販売方式とフランチャイズ・システム

• 1899年、弁護士のベンジャミン・フランクリン・トーマスとジョセフ・ブラウン・
ホワイトヘッドは、キャンドラーからコカ・コーラの瓶詰め権利を取得した。

• 二人は、瓶詰め会社「ザ・コカ・コーラ・ボトリング・カンパニー」を設立し、
これを「ペアレント・ボトラー」(フランチャイザー)と呼び、全米に瓶詰め工場
を建設するため、各地域の企業家に働きかけ「ローカル・ボトラー」(フランチャ
イジー)とした。

• このフランチャイズ・システムが奏功し、全米に瓶詰め工場を建設することができ
た。

• 瓶詰めにして販売するというアイデアは画期的であった。

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【質問1】

瓶詰めにして販売すると、
コカ・コーラ社、消費者の双方に
メリットがあります。それは何か?

【答え】

瓶詰めになると、コカ・コーラ社は、ファウンテンのメンテ
ナンスが必要な薬局ルート以外に、小売業者を通して消費者
に販売できるようになる。販売ルートが一気に広がる。

一方、消費者は、薬局に行かなくても、街にある小売店から
コカ・コーラを買うことができ、さらにそれを好きな時に、
自宅などの好きなところで飲めるようになる。

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コカ・コーラは製造業だが、
フランチャイズ・システム
を導入

キャンドラー
時代の流通経路

• コカ・コーラ社が製造した
シロップは樽詰めされて、
①ファウンテン用シロップ
の卸売業者から薬局などに
設置されたソーダ・ファウ
ンテンへのルートと②地域
のボトリング会社から小売
業者へのルートに分かれる。

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ペアレント・ボトラーと
地域のボトリング会社

• ペアレント・ボトラーからシロップ
を仕入れた地域のボトリング会社は、
炭酸水や砂糖など加えてコカ・コー
ラを完成させ、瓶詰めして販売する。

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【質問2】

フランチャイズシステムを導入すると良いのは、
どういう場合か?

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【答え】

良いビジネスプランを持っているが、資金不足の場合や
ライバル企業よりも早くアメリカ全土をカバーする製造
販売網を作りたい場合など。

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【質問3】

儲かるビジネスなら、フランチャイズシステムではなく、
自社で製造、販売した方が良いのではないか?

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【答え】

儲かるビジネスであっても、自社で製造販売網をもたな
い方がもっと儲かる場合がある。それがコカ・コーラの
という商品の特性にあった。あとのスライドで説明する。

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【質問4】

なぜコカ・コーラ社は、製造業であるにもかかわらず、
フランチャイズシステムを導入したのか?

(ヒント)答えはいくつかありますが、ここで答えてほ
しいこととの関連でヒントを出すと、それはコカ・コー
ラの成分と関係がある。

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【答え】

実はコカ・コーラの成分は、ほとんど炭酸水である。コカ・
コーラのエキスはほんの少ししかはいっていないん。という
ことは、自社が単独で、アメリカ全土でコカ・コーラを販売
すると、輸送費が巨額となり、コカ・コーラを低価格で販売
できなくなってしまう。

このため、顧客の近くに工場を建設する必要があった。アメ
リカ全土に多くの工場を建設するには、巨額の資金を必要と
するので、フランチャイズシステムを導入することにしたの
である。

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【質問 5】

コカ・コーラ社が地域のボトリング会社に独占的な製造
販売権を与えたのはなぜか?

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【答え】

地域のボトリング会社同士で競争が起きないようにするため
である。競争が起きると、値引き販売が始まり、儲からない
ビジネスになり、コカ・コーラのブランドイメージも悪化し
てしまうからである。

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• 1903年、アメリカ食品医薬品局(FDA)とコカ・
コーラに含まれているカフェインの毒性やボトリング
工場の衛生問題を巡り、裁判が起きた。最終的に、コ
カ・コーラが裁判に勝ったが、原液のカフェイン量を
減らさざるを得なかった。

• コカ・コーラのイメージ・ダウンを避けるため、キャ
ンドラーは健康的なイメージを強調する広告宣伝を
行って対抗した。1912年には全米一広告費を支出する
会社となった。

• 1916年、類似品対策のため有名なウエストのくびれた
瓶のデザインが採用された。

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4. ロバート・ウッドラフ(Robert W.Woodruff)

• 1919年、アーネスト・ウッドラフがキャンドラーに「ザ・コカ・
コーラ・カンパニー」の買収を持ちかけ認めさせる。

• 1923年、アーネストの息子、ロバート・ウッドラフが社⾧に就任。
以後、ロバートは60年以上も同社トップの座を占めた。彼は名経
営者として名高い。

• ロバートは、グッドウィル(good-will、のれん、信用、営業権、
友好関係)の重要性を意識した経営を行った。具体的な取り組み
は、①製品の標準化と②品質管理の徹底、である。あと一つ付け
加えれば、コカ・コーラの購入機会をより多く人々に提供するこ
とであった。商品を売り込む「セールスマン」をソーダ・ファウ
ンテンが間違いなくコカ・コーラの指示にしたがって調合してい
るかをチェックする「サービススタッフ」に置き換えた。
ロバート・ウッドラフ

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ロバート・ウッドラフ
の経営政策

• 製品政策
① 製品の標準化
② 品質管理の徹底

• 流通政策
サービススタッフ
ボトリング会社のコントロール

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5.コカ・コーラの
ブランド価値
世界最大のブランドコン
サルティング会社、イン
ターブランド社が2001年か
ら毎年調査している「ベス
ト・グローバル・ブラン
ド」では、コカ・コーラが
IBMやマイクロソフトを抑
えて10年連続トップを続け
ていが、残念ながら2013年
に3位に低下した。
それでもそのブランド価
値は、2021年で575.35億ド
ルと算定されている。飲料
メーカーとしては善戦して
いるといえよう。

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【参考】ブランド価値算定の方法
• インターブランド社のブランド価値算定の方法についての説明は省くが、一般に
ブランド価値の算定は以下の点を勘案して行われる。

① 価格プレミアム
製品の機能や品質が同程度でもそのブランド製品の方が高く売れる。利益率が
良くなる。

② 顧客ロイヤルティ
そのブランド製品に対する顧客ロイヤルティが高く、繰り返し購入してくれる。
⾧期間にわたり売上げが安定する。

③ 成⾧性
ブランド認知度が高ければ、海外進出がしやすくなる。その結果、そのブランド
製品の売上高成⾧率は高くなる。

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おわりに
コカ・コーラ社は、製造業であるにもかかわらず、フランチャイズシステムを導入
した。

過去のコカ・コーラ社の経営者は、広告宣伝を重視し、ブランドを高めることに
力を入れてきた。

とくに伝説的な経営者、ロバート・ウッドラフは、製品の品質管理を徹底し、
コカ・コーラの味のばらつきを抑える努力をした。これは、製品の標準化である。

こうした努力の結果、コカ・コーラ社は、ブランドランキングの上位を占めること
ができた。

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