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2022/11/16

11月21日 8回目 グローバル企業文化 その2 グローバル企業文化とは?


企業の国際化4段階と組織のグローバル化
*本社と海外子会社の企業文化の重合
7講
回義
目が
講少 多国籍企業の企業文化を考える場合、親会社と海外子会社との関
義し 係において、本社文化と子会社文化の維持や変化をどのように捉える
資遅
料れ かにより、図表4-6に示すような類型化が可能であるとされている。
のて
後い
半ま
かす 第1は,文化の統一と浸透,維持を重視する視点であり本社文化を
らの 変えず,海外子会社文化の変化を目指す「文化浸透アプローチ」であ
始で る。企業文化は調整と統合のための重要なメカニズムとみなされる。
ま、
り 8 グローバル経営においては経営理念や価値の共有化ということである。
ま回
す目 第2は,親会社の価値,文化の浸透は困難であり,逆に,海外子会
。講 社の社員の意欲やパフォーマンスを低下させるという仮説から提起さ

は れている「文化融合アプローチ」である。親会社と海外子会社の企業文
、 化ともに変化させるという第3の企業文化の創造である。両文化のハ
イブリッド化により,新しい文化へと変革・進化させるのである。
https://www.peoplefocus.co.jp/topics/?p=3820

第3は,企業文化の多様性とその維持を重視する「異文化シナジー・ 第4は、親会社の価値や文化の現地化、ローカル化,インサイダー
アプローチ」である。異文化間のシナジーを最大化するのが焦点となる。 化を目指す「ローカル化アプローチ]である。「郷に入っては郷に従
それは,マルチ・カルチャー え」による完全な適応や順応、同化を意味し、インサイダー化を意味
チーム(multi-culture team) することになる。
のマネジメントなどを含む,
多様性のマネジメントに このようなグローバル企業文化は、
おけるメリットを最大化し,
デメリットを最小化する ①浸透・現地化(創成/遭遇期)
多様性のマネジメントに ②シナジー・重合(交流/変革期)
他ならない。 ③融合(創造/深耕期)
(図表4-2参照)
という3段階のプロセスで発展を仮定できる。多くの研究者が最終段
階のハイブリッド化「ハイブリッド経営」を提唱しているが、その具体
的内容はあいまいであり、重合、融合の詳細なプロセス、内容の明
確化が研究課題として残されている。

ハイブリッド hybrid
異種のもの同士が組み合わされて,新しいものができること。また,新しくできたもの。

社会化によるグローバル統合メカニズムとしての企業文化
それは,管理者の派遣やローテーションを中心とする「社会化による
J.R.ガルブレイス&A.エドストーム(Galbraith&Edstrom 1976)は、 コントロール戦略」のことである。
管理者の子会社への派遣、ローテーションはコントロールの重要な戦 「社会化」とは心理学用語であり,個々の人々が社会の価値,慣行
略であり、社会化を通じてコミットメント、企業価値、文化をもたらすとい を他者との相互作用を通じて学習し内面化していく過程のことである。
う新しい視点を提示した。 このような「社会化」は,子会社の文化の相互理解とコミュニケーショ
それは、海外子会社への管理者の派遣は単なるポジションの補充や ンを可能にし,組織全体へのコミットメントを創造する。管理者の派遣
育成のためだけではなく本社と子会社間の調整およびコントロールの の頻度と数が多ければ,情報ネットワークは強化され,社会化はさら
メカニズムであるという主張である。派遣管理者とローカル社員との相 に進む。子会社社員の組織全体へのコミットメントは高まり,企業文
互作用や文化学習により、情報ネットワークの構築と社会化の過程に 化の共有度が高まるのである。
より組織開発をもたらすといい、「社会化によるコントロール(control by このように「社会化」は企業文化の形成であり,グローバル企業文
socialization)」と呼んでいる。
化の強化に他ならない。言いかえれば,多国籍企業が世界中に分散
する子会社や組織メンバーを調整・統合する統合メカニズムであり,
重要なマネジメントツールなのである。
コミットメント(commitment)とは、ビジネスの場では業務や業績目標に対して
「責任を持つ」「約束をする」という意味で多く用いられます。また、会社や組織
への「コミットメント」という使い方をする場合もあり、その際も組織に所属して
いるだけでなく、その一員として貢献する意欲が高い状態のことを表します。
https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000217/

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グローバル企業文化はどう構築するのか
これらの施策の中で,直接的に企業文化を構築するためのソフト面
*マネジメント・ツールとしての企業文化
(組織心理学/内面化)で重要とされるのが,「コア・カルチャーの形
企業文化は,経営におけるひとつのマネジメント・ツールとして認知さ
成」や「グローバル・シンボルの構築]であろう。
れてきた。とくにグローバル経営における,企業グループ組織間,組織
メンバー間の統合にとって重要なファクターとなる。このような企業文
化の変革・操作は「文化エンジニアリング」とも呼ばれている。
グローバル経営に重要なグローバル協調を強める3ファクターとは、
①企業文化(共有価値システムと慣行),
②共有情報(コミュニケーションによる共有知識),
③グローバル・システム(経営制度)である。(図表4 -7参照)。
エンジニアリング
各ファクターの具体的なマネジメント施策としては, engineering
大学では、自然科学
①コア・カルチャーの形成, と数学を基礎とし、
②グローバル・シンボルの機能, 時には人文社会科学
の知見を使って、公
③グローバルHRM, 共の安全や福祉、健
④グローバル情報ネットワークと会議, 康などのために快適
な環境や有用な事物
⑤グローバル・プロジェクトの編成があげられている。 を構築するための学
問と定義されること
もあります。

そして、これらの信条を踏まえた企業文化はSOFTと呼ばれ、
コア・カルチャーの形成 ①Speed(スピード)②Openness(オープン)③Fairness(公平性)
コア・カルチャーとは、組織の中核となる価値および行動規範のこ ④Transparency(透明性)という言葉で表現されている。
とである。コア価値としての経営理念は、ミッション(mission)、メタ・バ
リュー(meta value)と表現されることもある。 デルでは人材の採用時にも、企業文化の育成と維持を心がけており、
重要なのは、内容の普遍性と独自性、形式としての明確性、完結 「デルの企業文化にフィットするか」がきわめて重視されている。その結
性であろう。例えば,デル(Dell)は,米国本社のほか世界37カ国に現 果、組織メンバーの価値観(意思決定)と行動様式(企業評価)が驚く
地法人を持ち,あらゆる国籍の社員4万6,000人が勤務する多国籍 ほど一致するようになったという。
企業である。デルは、多文化集団である社員をつなぐのが企業文
化であるとして、コア・カルチャーの構築と浸透に力を注いでいる。 また、派遣管理者白身が旧企業文化を体現したシンボルとしての役
デルの在り方を示し、企業文化の基礎、世界共通の指針となって 割は重要である。「シンボリック・マネジャー(symbolic manager)」(Deal
いるのが“Soul of Dell(デルの魂)”である。この詳細を著したブック &Kennedy、1982)とは、シンボルの構築、すなわち言葉としてのキャッ
レットがデルの社員全員に配布されている。その内容とは、 チフレーズ,杜内外の儀式や各種行事、イベントの開催などを積極的
①Customers(お客様) に行う管理者である
②Dell Team(デル・チーム) シンボリック・マネジャー(象徴的管理者)
T.ディールと A.ケネディによると,超一流の企業は強い文化を持っており,それを維持する
③Direct Relationship(ダイレクトな関係) ことが重要である。文化を維持するには,文化の基盤となる確固たる理念,文化を形に表し
④Global Citizenship(グローバル・シチズンシップ) た儀礼・儀式,文化を伝達するコミュニケーション・ネットワークなどが必要とされるが,中で
も重要なのが文化の体現者である英雄,すなわちシンボリック・マネジャー である。従来有
⑤Winning(勝利)の5点に要約されている。 能とされてきたのは,分析能力に優れた合理的管理者であるが,リーダーシップ型として言
行一致の体現者である象徴的管理者のほうが重要である。

日本企業におけるグローバル企業文化の構築
日本企業がグローバル
企業文化を構築する方法は、
2つに大別されるという。
(根本,1990)
それは、グローバルな
共通理念とその浸透を目指す
「理念(principle)アプローチ」
と、行動規範や行動様式の
浸透、構築を目指す
「躾(discipline)アプローチ」
である(図表4-8参照)。

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理念アプローチには,
①人材交流,人事異動、教育・研修などのグローバルHRM,
②グローバルなプロジェクトチームの形成、
③グローバル会議の開催などがある。
すでに既述した派遣管理者,またはグローバル・マネジャーやインパト
リエイトなどの人材交流による理念浸透・価値観の共有・文化形成は,
とくに重要であるとする日本企業も少なくない。

躾アプローチとは,例えば,日本の5S(整理、整頓、清潔、清掃、躾)
運動および朝礼などである。
ものづくりを基本とする日本企業の海外子会社(とくにASEAN諸国)
では,5Sという基本的行動を習慣化・共有化しようとする運動である。
それには派遣管理者のモデル行動が重要となる。これは「ものづくりの
精神」と同様に,技術・技能の伝承にもつながっている。日本における
「ワザ」の教育方法は、「カタチ」を真似て、そこから「カタ」に気付く、そ
れはさらに基本的精神である「カ」を体得することにつながる。古くから
デザイン方法論で議論されてきた「カ(化)」「カタ(型)」,「カタチ(形)」
に対応するものであるとされている。 https://www.kaizen-base.com/contents/5s-42461/

http://www.mia.co.jp/column/2008/07/01.html

「コア・バリューの共有」について
グローバル企業の社員が人種、言語、文化の差を超えて共通の価値観を共有することは、トッ
プマネジメントがリーダーシップを発揮する上で必須である。社員が異質性を超えて、共通性と
普遍性を共有できなければ、組織のチームワークは成り立たない。異質性と多様性は遠心力
として機能し「組織のダイナミズム」を強化する。それに対して、価値観の共有は求心力であり、
異質性と多様性を維持しながらもそれと矛盾することなく、「組織の堅固性」を強化する。
トヨタの「トヨタウェイ」など、グローバル企業は、経営理念のエッセンスを「コア・バリュー」として https://www.toyotahome.co.jp/kigyou/csr/employee.html
経営の求心力の源泉にしていることは有名である。

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