Respiratory Failure For EMTs, NS, Regidents and Other ERscholer.

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やすくするために既出のさまざまな文献
や資料から画像やデータを勝手にお借り
しておりますが、ご本人には直接の承諾
を得ておりませんので、剽窃とならない
よう使用時は必ず自分の理解だけのため
に使用するか、または改変し、参考文献
表示をして下さい。
呼吸不全と呼吸療法
さて、質問です
①  呼吸は気道管理・肺疾患が良ければ呼吸不全にならない?

②  酸素はどこで消費される(必要とされている)?

③  貧血であっても呼吸困難とはならない?
生物とは
• 生けるものすべてにエネルギー産生が必要
   (おけらだって、アメンボだって生
きている)
• もちろん植物だって呼吸をしている
  呼吸とは→光合成の反対で、酸素を用
いて   
  エネルギーを生み出す行為。
• 植物は日中は光合成で炭素固定しているが、
夜間光がないと二酸化炭素を排出しており、
植物も光合成していることがわかる
種々の微生物のエネルギー源と炭素源
エネルギー源 炭素源 微生物の例(電子供与体)

シアノバクテリア、光合成細菌、緑藻類
太陽光 CO2
( H2O )

太陽光 有機物 好色非イオウ細菌( H2 、有機物)

硝化細菌( NH4 )、鉄細菌( Fe2+ )、


化学物質 CO2 水素細菌( H2 )、イオウ酸化細菌
( S )、メタン細菌( CH4 )
多くの細菌、菌類、酵母、硫酸塩還元細
化学物質 有機物
菌  (有機物質、発酵性基質)
エネルギーのやりとり
• 光合成      • 呼吸         
                  
       

ην
CO2 + H2O     →   C6H12O6  + 
O2    ←
ATP
今日勉強する目標
1. 呼吸の目的を理解すること。
2. 呼吸の解剖生理を理解すること。
3. 呼吸不全の病態として、どの部位がどのよ
うに悪化するかを理解すること。
4. 呼吸不全の指標は何によって評価するの
か?説明出来ること。

来学習吧!
「呼吸」とは?
• 広義の呼吸(外呼吸)
息を吸ったりはいたりすることで、
肺の中に空気を取り入れる行為。
「換気」。

• 狭義の呼吸(内呼吸)

外界から生体内に酸素を取り入れ、
細胞内(ミトコンドリア)でエネルギーを得るもの。
広義の呼吸

吸気
呼気

横隔膜挙上 横隔膜降下
狭義の呼吸

×
解糖系
細胞質基質=解糖系

乳酸

ミトコンドリア
= TCA サイクルと電子伝達系

TCA サイクル
細胞の構造 細胞質基質=解糖系

マトリックス(液体)= TCA サ
イクル
電子顕微鏡像
ミトコンドリア
= TCA サイクルと電子伝達系

酸素はここで使われます
クリステ(平板)=電子伝達系
呼吸困難
呼吸不全の諸症状
解剖
解剖
• 気道:吸気時:胸腔内圧が陰圧のために引っ張られ
て広がる。呼気時:胸腔内圧が陽圧になり圧迫され
閉塞する⇒これを防止するために気管軟骨が存在す
る。

• 加湿と異物除去:繊毛円柱上皮が 12Hz で運動し異


物を排除
⇒ 繊毛運動は気道内温度 24℃ 湿度 60 %以下で停止
する。
⇒ 胚細胞が粘液を分泌、異物を吸着し動けなくする。
呼吸に使われる筋肉(換気運動~呼吸筋による胸郭運動)
⇒ 吸気呼吸筋:横隔膜・外肋間筋・肋軟骨間筋・肋骨挙筋・斜角筋
群・胸鎖乳突筋・浅胸筋群(大胸筋・小胸筋・鎖骨下筋・前鋸筋)
• 横隔膜は最大の収縮範囲( 250 ~ 400C ㎡ ×10cm )だが、骨格筋によ
る組成で赤色筋肉であり、持続力あるが、瞬発力に劣る。
• 咳嗽反射などでは外肋間筋による作用で肋骨を尾側外側に広げるよ
うに作用し、骨格筋だが白色筋優位で瞬発力でこちらが作用する。

⇒ 呼気呼吸筋:腹筋群・内肋間筋・最内肋間筋・胸横筋
• 腹筋群は収縮することで横隔膜を頭側へ挙上し大きな呼気を促す。
• 咳嗽反射などでは、内肋間筋・最内肋間筋が肋骨を頭側内側に縮め
る作用を有し瞬時の収縮で咳嗽を促す。
呼吸に関する表現方法
<< 用語の説明 >>
※volume
  TV( 一回換気量 )→1 回の呼吸運動によって、気

正常な呼吸波形

 ・肺に出入りするガスの量
  IRV( 予備吸気量 )→ 安静吸気位から、さらに吸入
 できるガス量
  ERV( 予備呼気量 )→ 安静呼気位から、さらに呼

 できるガス量
  RV( 残気量 ) → 最大呼気位で肺内に残存したガ

※capacity
  IC( 最大吸気量 )→IRV+TV
  FRC( 機能的残気量 )→ERV+RV
  VC( 肺活量 )→IRV+TV+ERV
  TLC( 全肺気量 )→IRV+TV+ERV+RV(=VC+RV)

時間

呼吸機能検査によって積算された呼吸波形
自発吸気の呼吸仕事量 WorkOfBreath
は、肺や胸郭の弾性抵抗(エラスタン
WOB とは ス)と、気道などで生じる粘性抵抗
(レジスタンス)によって規定される

⇒ 気道の狭さに影響
抵抗が上がると流速が早くなる

⇒ 容器の硬さ
抵抗が上がると容器が
拡がりにくくなる
WOB の考え方( Nunn らの学説)
WOBE=V( 一回換気量 )×E (エラスタンス)

WOBR=V( 気道流速 )   ×R (レジスタンス)
WOB=WOBE+WOBR

集中治療学会専門医テキスト 
呼吸困難とは
正常な労作で、息苦しさ等 呼吸困難は、分時換気量が増加した
不快な感覚を自覚した状態。 ことによる自覚症状である。

自覚症状は、 分時換気量の増加は、
① 労作による分時換気量の増加 ① 呼吸仕事量の増加
② 気道抵抗の増加による呼吸仕事量の増加 ② 酸素消費量の増加
③ 呼吸筋力の低下により必要換気量が維持 ③ 大きな胸腔内圧の変化
不能

   の様な場合に自覚症状が増悪する。 などの異常状態を伴い、血液ガス異常・精神
的興奮が加わる。

しかし、明確な定義はない
呼吸相における分類
① 吸気性呼吸困難
上気道から頸部気管の胸郭外の狭窄による呼吸困難
② 呼気性呼吸困難
下気道、胸郭内の気道狭窄による呼吸困難
③ 混合性呼吸困難
①② 以外の疾患:
呼吸器系⇒肺うっ血、その他の肺疾患、胸膜、横隔膜
循環器系⇒心不全、血管系
その他⇒細胞内呼吸障害など他すべて
具体的な各種疾患の特徴的呼吸所見
上気道狭窄:吸気に一致した喘鳴・狭窄音を伴う。
気管支・細気管支狭窄:呼気時間の延長・呼吸数の増加
慢性気管支炎・肺気腫:気道抵抗に対抗する呼吸筋の仕事量増加により
運動時の呼吸仕事量の増加が著しくなる。酸素消費量の増加。
心疾患:左心不全に伴う肺静脈上昇により肺うっ血・肺水腫が起こり気道
抵抗増加・肺弾性低下のため呼吸仕事量が増加する。
貧血:労作中に急激に起こり重篤な呼吸困難。
心因性呼吸困難:リズム不整で深呼吸様。過換気による過換気症候群と
して手足のしびれ・頻脈・失神等を伴う。
診察における特徴的な呼吸パターン
呼吸パターンの異常とは、呼吸数・リズム・深さ・吸気呼気時間などの異常

Kussmaul 呼吸:努力性でない大きな一回換気量、安定したやや頻呼吸。
        →糖尿病性昏睡・尿毒症

Cheyne-Stokes 呼吸:過換気と低換気が交互に繰り返される。
          →小児・高齢者・頭蓋内圧亢進・昏睡

失調性呼吸: ataxic   breathing  完全に不規則な呼吸 . 短期間に止まってしまう


浅~深い呼吸 →延髄下部障害による呼吸抑制

起坐呼吸:仰臥位で呼吸困難、坐位で消失
      →肺うっ血に特徴的
診察における特徴的な呼吸パターン(その他用
語)
Kussmaul 呼吸
Cheyne-Stokes 呼吸
失調性呼吸
Biot 呼吸
群発呼吸 cluster   breathing
陥没呼吸
シーソー呼吸
振り子呼吸
動揺呼吸
起座呼吸  orthpnea
呼吸困難における鑑別
① 気道閉塞:気流抵抗の上昇

② 肺実質性疾患:拡張の抵抗

③ 血管性疾患:換気血流比不均衡

④ 胸郭横隔膜疾患:胸郭横隔膜に対する抵抗が上昇  呼吸筋疲労

⑤ 受容体の刺激や中枢性によるもの

⑥ 酸素運搬能関連の低下、組織酸素代謝

⑦ 心理的:上記診断が除外されたとき診断
呼吸困難における鑑別

① 気道閉塞による呼吸困難があるもの
 
 喘息
  COPD
 気管支拡張症
 腫瘍
 異物
呼吸困難における鑑別
② 肺実質性疾患があるもの

 肺水腫: ARDS など
 心不全:左室拡張不全・拡張障害
 間質性肺疾患
呼吸困難における鑑別
③ 血管性のもの

 大血管性:肺梗塞・塞栓症
 小血管性:肺高血圧症・血管炎・間質性肺疾患・肺
気腫
呼吸困難における鑑別

④ 胸郭横隔膜疾患:
胸郭横隔膜に対する抵抗が上昇  呼吸筋疲労
⑤ 受容体刺激

重要な化学受容体
中枢性化学受容体
主として動脈血
末梢性化学受容体 CО 2分圧の上
主として動脈血 昇
О 2分圧の低下 に依存する
延髄
に依存する
頸動脈小体
総頚動脈
1. 脳幹・大脳における呼吸中枢
⑤ 受容体刺激

2. 中枢~末梢に分布する化学受容体

3. 気道・肺・呼吸筋に分布する機械受容
体  
 酸素消費の増大に伴う換気調節 

CO2

nerveⅨ

nerveⅩ nerveⅩ
O2 • 筋内の乳酸上昇
DO2 での化学受容体
• 胸壁の圧受容体
CO=HR×SV からの求心神経

CVP SVR RR
⑥ 酸素運搬能低下

酸素運搬は以下の手順で行われている。
この手順が失われると呼吸困難となる。

◎ 肺胞で赤血球に結びついて酸素化ヘモグロビン
になり、二酸化炭素は肺胞に放出。

◎ 心臓のポンプ作用で大動脈経由で末梢に送出。

◎ 末梢で酸素が放出。血中に二酸化炭素が溶出。
輸送担体としての赤血球
赤血球の特徴
骨髄で作られ、肝臓脾臓で壊される
血液幹細胞で M-CSF により分化誘導される
葉酸や B12 が DNA レベルで分化を助ける
ヘム蛋白は 2 価鉄イオンにより作られている
胃内因子と B12 により小腸から B12 が吸収
酸素解離曲線は Hb や pH 、体温、 DPG が関係
Hb 酸素解離曲線
CO2 ↓
左方移動 DPG ↓ Hb=150 g /l
pH ↑
血中酸素化 Hb 濃度・酸素濃度 ( mmol/l )
体温 ↓
8

CO2 ↑
DPG ↑
右方移動 pH ↓
体温 ↑
4

酸素を物理的に溶解した場合

0 40 静脈血 100 動脈血


酸素分圧( mmHg )
条件によって異なる→生体の反応
酸素分圧高値では
ボーア効果 酸素親和性高

静脈血で酸素分圧
血中酸素化 Hb 濃度・酸素濃度 ( mmol/l ) 低値となると酸素親
8 和性低くなり酸素が
放出されやすい

4
悪条件であれば右方移動して
悪条件で
酸素を放出しやすい体制にする
分圧低下
(低分圧でも酸素をひねりだす)

0 20 40 60 90 100 酸素分圧( mmHg )


静脈血 動脈血
呼吸困難における鑑別
⑦ その他・心理的:上記診断が除外されたとき⇒除外診

呼吸不全
呼吸不全とは
呼吸不全とは、気道~組織におけるガス
交換の異常により酸素の摂取・炭酸ガス
の排出が傷害された状態。

室内空気呼吸時の PaO2 (動脈血中酸素


分圧)が 60mmHg 以下となる異常状態。

・ PaCO2 (動脈血中二酸化炭素分圧)が
45mmHg 未満をⅠ型呼吸不全、
45mmHg 以上をⅡ型呼吸不全に分類。

・慢性呼吸不全とは、呼吸不全の状態が少なく
ても 1 ヶ月以上続くもの。
呼吸不全の病態生理

 呼吸連鎖の三つの経過
   (1) 口から肺胞へ、酸素を吸入         
   (2) 動脈血を介し肺胞から全身の組織へ、酸素運搬  
   (3) 末梢の静脈血から肺胞へ、二酸化炭素の運搬

呼吸不全はこれらの経過中での機能不全によりおこる。
血管を通って二酸化炭素の排出
⑶ 二酸化炭素の排出

これらいずれの場所に異常が起こっても呼吸不全となる

組織から二酸化炭素の産生
組織での酸素代謝
呼吸不全と解剖生理学的関係
⑵ 全身組織へ酸素運搬

体循環での酸素運搬
心機能
肺動静脈機能
ガス交換
⑴  口から肺胞までの酸素吸入

肺コンプライアンス

気道抵抗
呼吸筋
呼吸中枢
mmHg    hPa (ヘクトパスカル)  mb (ミリバール)
とは・・・
• mmHg とは、水銀( Hg )が押し上げる圧を㎜単位で示したもの。ちなみ
に、 1 気圧が水銀柱を押し上げる圧は 760mmHg 。

• パスカル( Pa )・キロパスカル( kPa )・ヘクトパスカル( hPa )こ


れらはいずれも SI 単位系に基づく圧の表記法。
• Pa とは、 1m2 に 1N (ニュートン)の力のかかる圧。       
        実際日常に使用するにはあまりにも小さすぎるので、
キロパスカル( kPa )・ヘクトパスカル( hPa )が使用される。ヘクト
パスカル( hPa )は従来圧の単位として使用されてきたミリバールと
正確に一致するので気圧の単位として使用。

• ミリバール( mb )とは、従来気圧の単位として使用された。 1 平方 cm
あたり 1 キロダインの圧。 1 気圧は 1013mb=1013hPa 。今は hPa に置き
換わったのでほとんど使用しない。 ラジオメーター社 HP 諏訪邦夫の血ガス博物館より
高度に伴う気圧の変化

ラジオメーター社 HP 諏訪邦夫の血ガス博物館より
組織での酸素など物質拡散の業績でノーベル賞受

クロー August Krogh(1874-1949) デンマークの生理学者


Astrup P, Severinghaus JW. History of Blood Gases, Acid and Bases. Munksgaard, Copenhagen. 1986. より。
肺胞でのガスの拡散の仕方
 ー理論的背景ー
1. 気道が次第に枝分かれして断面積を増し、最後に肺胞表面積
( 100m2 )に拡大する。「テニスコートの広さ」は約
264m2 ( 11m×24m ) で、 100 m2 は約半分。

2. 肺胞付近では「ガスの流れ」はほとんど存在せず、気体は分子
で動く。一回換気量の 500ml が 2 秒で動くとすると、 1 秒間の流
速は 250ml を 100m2 で割るので、 2.5μL/ 秒となる。これは分子
拡散の速度に近いほど遅くなる。

そこで・・・
フィックの拡散の法則
定常状態(拡散による濃度が時間に対して変わらない時)

拡散量(単位面積、単位時間当たりの)は、濃度勾配に比例
する
D は定数
Ji = - D i(∂Ci/∂x)

非定常状態(拡散による濃度が時間で変わる時)

拡散現象での濃度は拡散方程式により示される

∂Ci/∂t =Di(∂2Ci/∂x2) 拡散流束 J は位置 x において濃度勾配に比例


拡散ですべてを説明してもいいか
• 実は・・・
1940 年代、ボーアの弟子のクローのさらに弟子のユシング (Ussing
HH:1911- 没年不明)の業績で同位元素の使用による分析を使い測定
している。
ユシングが能動輸送を明らかにしたにもかかわらず、その時点では
肺のガス交換は拡散によると確立したとみなされ、誰も疑問に思わ
ずそのままになっている。
しかし、本当に拡散で間違いないのか?フィックの拡散の法則は無
限の広さを仮定して成立するので、肺胞のように狭い範囲では大幅
な修飾が必要なはずで、また組織での酸素拡散を示すクローの円柱
モデルの計算にも間違いや疑問が指摘されていると Agutter 氏は指
摘している。

現時点で、酸素レベルが細胞膜や内部の化学反応に影響するメカニ
ズムがいろいろ判明している。エネルギーをつかって酸素を移動す
るメカニズムは見出されていないのでこの問題は今のところ拡散と
いう以上の根拠はない。
酸素動力学(大気から肺胞まで)
• 吸入酸素分圧
大気中 O2
  PAO2=FIO2= 760×0.21
= 約 160mmHg
       

• 気管支での酸素分圧
  PAO2=FIO2× ( PATM-PH2O )
      = 0.21× ( 760-47 )
     = 約 150mmHg
では肺胞での分圧は?
O2
肺胞内では? O2
O2
O2
肺胞内では?

O2 O2

O2

CO2 に変換された
酸素 O2

100%の酸素が
CO2 に変換される
( 1:0.8 の割合で)
co2
Hb
呼吸商: RQ ( Respiratory Quotient )
たんぱく質
エネルギー

グルコース
+ O2 CO2 + H2O
脂肪酸

酸素が生体内で CO 2に変換される割合

0.8
RQ = CO 2 産生量  / O2 消費量
•  • 

       ( VCO2=200ml/min )     ( VO2=250ml/min )


肺胞方程式
• 肺胞での酸素分圧
   PAO2=FIO2× ( PATM-PH2O )
     -PACO2[FIO2 +( 1-FIO2 ) /RQ]
肺胞内に拡散して CO2 に変換されずに CO2 となって変換され
いる二酸化炭素 残存した酸素の割合 消費された酸素の割合

限りなく 限りなく1

PAO2=FIO2× ( PATM-PH2O ) -PACO2/RQ


肺胞方程式
以上から簡略化されて以下のように示される。

• 肺胞気酸素分圧
  PAO2=FIO2× ( PATM-PH2O ) -PACO2/RQ
     =0.21× ( 760-47 ) -40/0.8
     =149.73-50
     = 約 100mmHg

PAO2 :肺胞気酸素分圧、 FIO2 :吸入気酸素濃度、 PATM :大気圧


PH2O :飽和水蒸気圧、  PACO2 :二酸化炭素分圧、
RQ ( Respiratory Quotient ):呼吸商
肺胞方程式
• 肺胞気酸素分圧
  PAO2=FIO2× ( PATM-PH2O ) -PACO2/RQ

PACO2 は CO2 産生量に比例、肺胞換気量に反比例


P ACO2 は
RQ=CO2 産生量 / O2 消費量
• 
CO 2産生量( VO2×RQ )と肺胞換気量( VA )
VO2= 酸素消費量 で規定される
• 
PAO2=FIO2× ( PATM-P•H2O
  ) - VO2×RQ /RQ ×VA
=FIO2×713-k ( VO2 /VA ) :kは定数
肺胞での酸素分圧は、吸入酸素濃度、酸素消費量、肺胞換気量に左右される。
肺胞換気量と肺胞気酸素分圧
② :①のような低酸素時は、 30% 酸素投与で
30 8.5kPa(64mmHg) の上昇が得られ、肺胞低酸素から脱しうる。
(一般に FiO2 が1%上昇すると PAO2 が 7mmHg 上昇するといわれている。)

肺胞気 PAO2 ( mmhg ) 200 FiO 2= 30%


肺胞気 PAO2 ( kPa )

③ 吸入酸素濃度低下の酸素分圧の低下の場合、肺胞換気量で補うことができる。
20 150 FiO 2= 21%

100
10
① :同一酸素濃度で 4L から 2L へ低換気となった場合、
50
PAO2 が 100 から 50 へ低下し、低酸素脳症となる。

0 0
2 4 6 8 10

PAO2=FIO2×713-k ( VO2 /VA ) :kは定数 肺胞換気量( l/min )


「肺胞低酸素は酸素投与で補える。」というお話し。
逆に「投与酸素分圧の低下による肺胞低酸素」の場合肺胞換気量で補える。
肺胞換気量と PAO2 と酸素消費量の関係

吸入気 O 2=21%
150
20

0 0 l/min
肺胞気 PAO2 ( mmHg )
1
消費 量 VO 2=
l/ min
in
酸素 00
肺胞気 PAO2 ( kPa )

2 l/m
00
=
VO
2
100 =4
VO
2

10
酸素消費量が増加した場合、
50
同じ肺胞気 PAO2 を得るために、
それだけ換気量を増やさなけれ
ばならない
0
0 2 4 6 8
PAO2=FIO2×713-k ( VO2 /VA ) :kは定数 肺胞換気量( BTPS : l/min )
酸素動力学
• 肺胞方程式
   PAO2=FIO2× ( PATM-PH2O ) -PACO2/RQ
       =FIO2×713-k (•  VO2 /VA ) :kは
定数
• 肺胞方程式では、肺胞内の酸素化をよくするため
に、以下が大事な3つの因子である。

  吸入酸素濃度、酸素消費量、肺胞換気量
例として
• 気管支ぜんそくで SpO2 が低下した。
→ 気道抵抗が上昇し、 1 回換気量低下し、肺胞換気量が低下し
たために PAO2 低下。
• 敗血症で SpO2 が低下した。
→ 酸素消費量の増大による PAO2 低下。
• 登山でめまいがしたら高山病といわれた。
→ 吸入酸素濃度の低下から PAO2 低下。
心肺停止時の影響
• 呼吸停止した場合換気量が無くなる。
• この場合時間の経過とともに PAO2 低下するが、呼吸しなくても
肺胞に残っている酸素が存在する(機能的残気量: FRC )。
• 人の正常人の FRC は 2.5 Lであり、呼気中 O2 を 16% とすると
400ml の酸素が存在することになる。安静時は酸素消費量は
250ml/min であるから約2分もつことになる。
 心臓マッサージだけでもよりよい理由

全力で押した 少し手を抜いて
押した

青=大動脈圧

赤=内頚動脈圧

豚での実験
Yannopoulos et.al.   Resuscitation   2005,65,363-372
充分な胸腔内再充満を得ること
全力で押した 少し手を抜いて押した

100%   75%
押す 戻す  戻す w/o : without
⇒ 呼吸無しでやる方が面積大

=拍出量増大
Yannopoulos et.al.  
Resuscitation   2005,65,363-372
 充分な胸腔内再充満を得ること

押す指の本数が
2 本で 4 倍
5 本で 3 倍
押さないと 130 倍死亡
EMS での研究 Aufderheide Resuscitation 2005,64,353-362
血管を通って二酸化炭素の排出
⑶ 二酸化炭素の

これらいずれの場所に異常が起こっても呼吸不全となる
排出

組織から二酸化炭素の産生
組織での酸素代謝
呼吸不全と解剖生理学的関係
⑵ 全身組織へ酸素運搬

体循環での酸素運搬
心機能
肺動静脈機能
ガス交換
⑴  口から肺胞までの酸素吸入

肺コンプライアンス

気道抵抗
呼吸筋
呼吸中枢
自発吸気の呼吸仕事量 WorkOfBreath
は、肺や胸郭の弾性抵抗(エラスタン
WOB とは(再掲) ス)と、気道などで生じる粘性抵抗
(レジスタンス)によって規定される

⇒ 気道の狭さに影響
抵抗が上がると流速が早くなる

⇒ 容器の硬さ
抵抗が上がると容器が
拡がりにくくなる
WOB の考え方( Nunn らの学説)(再
掲)
WOBE=V( 一回換気量 )×E (エラスタンス)

WOBR=V( 気道流速 )   ×R (レジスタンス)
WOB=WOBE+WOBR

集中治療学会専門医テキスト 
人工呼吸器管理の適応
• 酸素化障害
• 換気血流不均衡・肺胞低換気:気道肺胞に障害を来す全て
• 拡散障害:肺胞膜の障害
• シャント:肺血管のシャントや肺胞の虚脱

• 換気障害
• 閉塞性換気障害
• 拘束性換気障害
• 混合性換気障害 手術や重症病態でこれらが予測される場合も含む
換気障害

一気に呼出させる
VC :肺活量    ⇒努力呼気曲線
volume
TV( 一回換気量 )→1 回の呼吸運動によって気道・

拘束性換気障害(=エラスタンス↑) 肺に出入りするガスの量
IRV( 予備吸気量 )→ 安静吸気位からさらに吸入で
きるガス量
% VC =実測 VC÷ 予測 VC ERV( 予備呼気量 )→ 安静呼気位からさらに呼出で
きるガス量
RV( 残気量 ) → 最大呼気位で肺内に残存したガス

閉塞性換気障害(=レジスタンス↑) capacity
IC( 最大吸気量 )→IRV+TV
FRC( 機能的残気量 )→ERV+RV
FEV 1%= FEV 1 SEC (一秒量) ÷FVC (努力性 VC ) VC( 肺活量 )→IRV+TV+ERV
TLC( 全肺気量 )→IRV+TV+ERV+RV(=VC+RV)
換気障害

閉塞性換気機能障害を来す疫患 拘束性換気機能障害を来す疾患
1. 気道疾患に由来する閉塞性換気障害 1. 肺疾患に由来する拘束性換気障害
気管支喘息、慢性気管支炎、びまん性汎細気 a. 肺組織の硬化:特発性問質性肺炎
管支炎、気管支拡張症など 特発性肺線維症、過敏性肺炎、膠原病肺
放射線性肺炎、じん肺症、肺結核後遺症
2. 肺疾患に由来する閉塞性換気障害 b. 肺組織の減少:肺炎、無気肺、肺切後
肺気腫、肺嚢胞症など c. サーファクタントの欠如

3. 胸郭に由来する閉塞性換気障害 2. 肺以外因子に由来する拘束性換気障害
筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症、多発性 a. 胸郭の拡張障害:胸郭変形 ( 後側弯症等 )
筋炎、ギランバレー症候群 強直性脊髄炎、胸膜肥厚、胸水など
b. 神経筋疾患:横隔神経麻痺
4. その他 重症筋無力症、筋ジストロフィー、多発性筋炎
軟骨軟化症など ギランバレー症候群、低栄養の呼吸筋力低下
血管を通って二酸化炭素の排出
これらいずれの場所に異常が起こっても呼吸不全となる

組織から二酸化炭素の産生
組織での酸素代謝
呼吸不全と解剖生理学的関係

体循環での酸素運搬
心機能
肺動静脈機能
ガス交換
肺コンプライアンス

気道抵抗
呼吸筋
呼吸中枢
ガス交換(肺胞から血液循環への移行)
• 肺胞と肺毛細血管はガス交換の際平衡となり理論的
に PAO2 (肺胞内酸素分圧)と PaO2 (肺動脈内酸素分
圧)は等しい。

• 何らかの原因で PAO2 と PaO2 の間に較差が生じる。こ


れを示す指標として肺胞気動脈血酸素分圧較差: A-
aDO2 を用い、肺胞におけるガス交換の指標にする。
PAO2

       A-aDO2= PAO2-PaO2


Pa O 2
肺胞気動脈血酸素分圧較差
A-aDO2
A-aDO2
= PAO2-PaO2
= {FIO2× ( PATM-PH2O ) - PACO2/RQ} -
PaO2
= { 0.21× ( 760-47 ) -40/0.8 }-90
では、 A-aDO2 の開大をきたす病態とはなに
=99.73-90=9.73
が考えられるでしょうか。
酸素化異常をきたす病態

シャント 換気血流不均衡 拡散障害


特に重要なこの 3 つに集約
ガス交換の障害機序
① 換気血流比不均等

 正常換気血流比 (VA/Q)=1
   VA( 肺胞換気量 ) と血流量 (Q) の不均等
 i)換気が血流に対して極悪・・・・ (VA/Q<1)  →  P a O2↓( シャント様変化 )
                  無気肺・肺炎・肺挫傷・肺気腫
 ii)換気に対して血流が極悪・・・・・ (VA/Q > 1)  →  P a O2↓( 死腔様変化 )
                  ショック・肺水腫・肺塞栓
ガス交換の障害機序
② シャント 
  換気良好であるが、肺血流自体に通過障害があり、 換気さ
れた酸素が血液に運ばれない 

③ 拡散障害
 1)気道内拡散障害
 2)肺胞血管膜などの膜障害
 3)血中への拡散障害
 但し、多くは血管透過性亢進による肺胞の間質性浮腫
                   ( 肺水腫・間質性肺炎な
ど)
ガス交換の参考指標
A‐aDO 2 (PAO 2 とPaO 2 の酸素分圧較差)を習ったけど
もっと簡便なのないの?   

A-aDO2= PAO2-PaO2= {FIO2× ( PATM-PH2O ) - PACO2/RQ} - PaO2   

2 つの要素だけ取り出して   比で比べれば簡単だ!
簡便な指標としては
P / F比 ( PaO2とFIO2の比 ) がある
  300 以上が正常(例えば健康人: 100/0.21=476 )

これを使えば違うFIO2でも比較可能となる
例)FIO2 40 %・ PaO2100 の患者  100/0.4=250
  FIO2 80 %・ PaO2100 の患者  100/0.8=125
Acute Respiratory Distress Syndrome (ARDS)
急性呼吸窮迫症候群      

外傷・敗血症などの侵襲により炎症が過度におこり、高サイトカイン血症に
始まる各種メディエータの過剰産生のため正常な肺組織が傷害される急性の
酸素化障害を主体とする呼吸不全

  両側の肺微小血管内皮の血管透過性が亢進し、非心原性肺水腫  
  を発症、重篤な低酸素血症状態に陥る
           

聴診にて、両側にびまん性に水泡音( coarse crackles )が聴か



胸部 X 線像にて肺野全体に両側びまん性浸潤影がみられる。
肺胞隔壁の透過性が増加
⇒ 非心原性肺水腫きたす ARDS の病態
外傷・敗血症など

サイトカイン産生と
DAD 肺への流入

好中球と毛細血管の
接着

肺胞内に好中球から放出される
活性酸素やタンパク分解酵素 炎症細胞による肺胞
の破壊( DAD )

ARDS
NEJM2006   Peter
肺胞性浮腫
DAD
びまん性肺胞損傷
好中球浸潤

硝子膜形成

肺血管内皮
肺胞上皮損傷
N.Matsuda   2016
ARDS の変遷
• 1950 年~ベトナム戦争から帰る重症外傷者に肺以外
の外傷から肺透過性低下する病⇒ respirator lung
syndrome
• 1967 年 Ashbaugh と P ettyらによって adult
respiratory distress syndrome が初めて発表された。
• 1994 年 AECC に ARDS は acute respiratory distress
syndrome と統一された。 2000 年に ALI の概念が追加。
• AECC によって診断基準が作られたころ、国際医学会
では RCT 、多施設研究や大規模スタディーが流行りは
じめたが、 ARDS も必要と考えられた。そのためにす
こしでもデーターを多くしようと内容は単純・簡便な
基準となった。
AECC : American-European consensus conference   on  
ARDS
ALI : Acute Lung Injury

ARDS の変遷
• 実は肺の生理学的な面のみでの評価。
 ⇒病因の生化学的・免疫学的・病態生理学的な過程に基づく評価をしていない
• 肺以外の臓器の異常も評価対象になっていない。
 ⇒ ARDS 患者で純粋に呼吸不全が原因で死に至る割合は 9-16%
• ARDS でおきる DAD との正診率は 50% しかない。(なかなか生検に至りにくい。)

AECC 基準から
①“ 急性“の意味があいまい
このため ②PEEP などがある場合 P/F 変わる
③ 胸部 X 線の信憑性があいまい
④ 肺動脈楔入圧の髙い ARDS がある
上記をうけて、 2011 年に ESICM は新しいガイドラインを
提唱したそれがベルリン基準である
しかし、正診という点で根本は変わっていない。 ⇒ さらに診断基準の改善が求められる。
ARDS の診断基準
ベルリン定義より

JAMA2012
ARDS診断基準
急性肺障害
急性肺障害
旧 新
200 < P/F < 300

ALI < 300 ( PEEP>5 ㎝ H2O )

100 < P/F < 200 ARDS


ARDS ( PEEP>5 ㎝ H2O )

P/F<200 P/F < 100


( PEEP>5 ㎝ H2O )

①P/F < 200 ( PEEP 関係なく) ①P/F < 300 ( PEEP 考


② 両肺に浸潤影 慮)
(びまん性でなくてよい)
③PCWP < 18mmHg ② 両肺に浸潤影
(うっ血性心不全の否定) ③ 心不全とか他の要因を
完全に否定して下さい
旧・ ARDS 新・ ARDS

AECC
The American-European Consensus Conference   Am J
Respir Crit Care Med. 149:818-24,1994
ESICM   ATS   SCCM
European Society of Intensive Care Medicine
The ARDS Definition Task Force   JAMA2012
Acute Respiratory Distress Syndrome (ARDS)
急性呼吸窮迫症候群       
AECC(American-Europian Consensus Conferenc アメリカ - 欧州合意カンファレンス )
① 低酸素血症の重症度は P a O2/FiO2 比!   ALI300 以下、 ARDS 200 以下・・・だった
② 胸部レントゲン上の両側性の浸潤像
③ 肺動脈楔入圧が18mmHg以下⇒心原性肺水腫 の除外

ベルリン基準( 2012 年 6 月)の変更点


ALI という概念をなくし、 ARDS を 3 段階 (MILD 300- ・ MODERATE 200- ・ SEVERE
100-)
胸部レントゲン所見は両側に存在すれば、浸潤の大小は問わない
肺動脈楔入圧が髙いものもある
Acute Respiratory Distress Syndrome  ~ The Berlin Definition ~ JAMA. 2012;307(23):2526-2533
Acute Respiratory Distress Syndrome  ~ The Berlin Definition ~ JAMA. 2012;307(23):2526-2533
ARDS に対する治療
人工呼吸の目標
 酸素化の維持 ( 酸素毒性と人工呼吸の合併症を回避しつつ )

一般的には 動脈血中酸素飽和度O2の維持は少なくとも 92%


 (肺障害防止の為最初の 24-48 時間以内に吸入酸素濃度を 65% 以下に減らすのが目標)

中等度~高度の PEEP( 呼気終末陽圧 ) が必要 .

人工呼吸は急性肺障害を引き起こす可能性があることを念頭にする

他に薬剤治療 ( ステロイド、プロスタグランディン製剤、好中球エラスターゼ阻害剤など )
人工呼吸器管理の適応(再掲)
• 酸素化障害
• 換気血流不均衡・肺胞低換気:気道肺胞に障害を来す全て
• 拡散障害:肺胞膜の障害
• シャント:肺血管のシャントや肺胞の虚脱

• 換気障害
• 閉塞性換気障害
• 拘束性換気障害
• 混合性換気障害
人工呼吸器の合併症   
人工呼吸器関連肺障害
  High pressure は 肺胞壁の破裂を起こし、その結果 縦隔気腫、肺気腫 , 緊張 性
気腫気腹、皮下気腫 を引き起こす。→最高気道内圧をなるべく低く保つ。

酸素中毒
 酸素は還元作用をうけて活性酸素→過酸化脂質となり細胞膜障害を起こすので、
出来るだけ高濃度酸素は避ける (Fio2:0.5 以下 )
  

他の合併症
気道内圧上昇 , 体液貯留 , 腎不全 、低ナトリウム血症、鼻孔や口腔の局所的外傷 、
気道損傷、副鼻腔炎 , 人工呼吸器関連肺炎 (VAP) 、換気血流不均衡
自発呼吸と人工呼吸器(陽圧換気)
自発呼吸
吸気:胸腔内圧陰圧、外気を吸引
呼気:胸郭の弾性収縮

人工呼吸
吸気:吸入気を肺内に送る
呼気:気道内の圧力減少による呼出
陽圧換気の影響
背中側の横隔膜が動くので
吸気は背中側に多く供給。
胸腔内圧は陰圧:静脈灌流大
血液も下葉側に多く集まる。
⇔ 換気と血流が合致。

陽圧換気は肺を押し広げるため腹側へガスが
移動
胸腔内圧上昇:静脈灌流小
頭蓋内圧上昇や肝うっ血が起きやすくなる
血液は背側の下葉へ。
⇔ 換気と血流はミスマッチ
陽圧換気の影響
• 高い気道内圧による気胸・皮下気腫・縦隔気腫などの圧外傷
• 高い気道内圧による直接的な肺胞上皮障害
• 胸腔内圧上昇による肺リンパ流の抑制⇒肺間質水分量増加
• コンプライアンスや体位による換気 / 血流比の悪化
• 長期の呼吸筋使用による廃用萎縮・協調障害

• 胸腔内圧上昇:右心房圧上昇・静脈灌流量減少
• 肺血管抵抗の増加:右室後負荷増加血圧低下・右心拍出量低下
• 心室中隔圧迫:左室コンプライアンス低下・左心拍出量低下
• 心拍出量低下:腎血流↓・ ADH ・レニンの増加・尿量減・水分増
VILI/VALI  人工呼吸の功罪
機械的人工呼吸は、人工呼吸が治療となるとともに、肺障害
となりうる両刃の剣
⇒ 人工呼吸と自発呼吸の差異・肺の構造の特殊性
⇒ 病的肺の肺内コンプライアンスの多様性
Barotrauma   :高い気道内圧による圧損傷
Volutrauma   :ー回換気量が高いためによる容量損傷
Atelectrauma  : lowPEEP による虚脱⇔再解放による損傷
Biotrauma    :サイトカインによる炎症
Oxotrauma    :高濃度酸素

結果、治療としては肺保護戦略が用いられる
  LOW   TV & PIP   / PERMISSIVE   HYPERCAPNEA
lowTV:6-8ml /kg lowPIP:lowPLATEAU 30cmH2O>
  OPENLUNG   APPROACH⇒RECLUTMENT maneuver
lowTV:6-8ml /kg lowPIP:lowPLATEAU 30cmH2O>
肺リクルートメント法
傾向として以下の場合の成功率が高い。
・使用圧が高い ・加圧時間が長い ・ ARDS/ALI 発
症からリクルートメント施行までの日数が短い

リクルートメントの実際
●40-40 ( forty-forty )( Anesthesiology 2002; 96: 795-
802 )  40cmH2O の PEEP を 40 秒間維持する。 
Gattinoni や Crotti の報告は否定的な見解も散見さ
れる。
●35-30 ( ARDS ネットワーク  Crit Care Med 2003;
31: 2592-7 )  35cmH2O の PEEP を 30 秒間維持す
る。
●Amato らの方法 ( Am J Respir Crit Care Med
1995; 152: 1835-46 )  15cmH2O 換気圧の状態から、
5cmH2O ずつ PEEP をアップさせて  45cmH2O まで
血管を通って二酸化炭素の排出
これらいずれの場所に異常が起こっても呼吸不全となる

組織から二酸化炭素の産生
組織での酸素代謝
呼吸不全と解剖生理学的関係

体循環での酸素運搬
心機能
肺動静脈機能
ガス交換
肺コンプライアンス

気道抵抗
呼吸筋
呼吸中枢
輸送担体としての赤血球
赤血球の特徴
骨髄で作られ、肝臓脾臓で壊される
血液幹細胞で M-CSF により分化誘導される
葉酸や B12 が DNA レベルで分化を助ける
ヘム蛋白は 2 価鉄イオンにより作られている
胃内因子と B12 により小腸から B12 が吸収
酸素解離曲線は Hb や pH 、体温、 DPG が関係
2-6DPG
• 赤血球の中で酸素をヘムとつなげる酵素

O2

O2

RBC 2-6DPG RBC


Hb 酸素解離曲線
CO2 ↓
左方移動 DPG ↓ Hb=150 g /l
pH ↑
血中酸素化 Hb 濃度・酸素濃度 ( mmol/l )
体温 ↓
8
右方移動
CO2 ↑
DPG ↑
pH ↓
体温 ↑
4

酸素を物理的に溶解した場合

0 40 100
酸素は水に溶けない・・・
酸素分圧( mmHg )
条件によって異なる→生体の反応
酸素分圧高値では
ボーア効果 酸素親和性高

静脈血で酸素分圧
血中酸素化 Hb 濃度・酸素濃度 ( mmol/l ) 低値となると酸素親
8 和性低くなり酸素が
放出されやすい

4
悪条件であれば右方移動して
悪条件で
酸素を放出しやすい体制にする
分圧低下
(低分圧でも酸素をひねりだす)

0 20 40 60 90 100
酸素分圧( mmHg )
血流のおさらい
• 肺循環:右心系
体循環(大静脈)
→ 肺を経由し左心系へ
全身に発射前に弾を込める

• 体循環:左心系
肺静脈
→ 体循環(全身の主要臓
器)に弾を発射する
赤血球が酸素を運ぶ
心臓(ポンプ)
=押し出す


肺の中は酸素多い(分圧高)

肺=酸素取り込む
100 % ヘモグロビン酸素化

組織 左心系
酸素を物理的に血漿に溶解した場合
組織=酸素受取る 0 40 100
酸素分圧( mmHg )
細胞内へ
組織は低い
パルスオキシメーター
しくみ:血液中のヘモグロビンの酸素化を評価
経皮的にレーザーを当てた時の吸光度の変化をみることで、
今の酸素化ヘモグロビンの相対的濃度を容積脈波として計測
する

装着部分は指、足、耳、鼻、前額にモニタリング用のプロー
ブが販売されているが、救命士は基本手指での計測である。
 
SpO2 は何をみている
の~分光光度法とその応用について~

100 % ヘモグロビン酸素化

組織の吸収 水の吸収

酸素を物理的に血漿に溶解した場合
100
静脈血 動脈血 0 40
酸素分圧( mmHg )
吸光度

SpO2 は何をみているのか









ビン
測定誤差大

測定誤差大

モグ 測定誤差 酸素化 H b比率
化ヘ 100 %
酸素

組織の吸収 水の吸収

波長
       酸素化ヘモグロビン 0 40 100
PaO2 ∽ SpО2 =酸素化ヘモグロビン+還元ヘモグロビン 酸素分圧( mmHg )
そして・・・

パルスオキシメーターの
SpО2 値は PaО2 値に相対

   PaО2 値   SpО2


SaО2 )値
  低酸素では酸素の
40Torr 75% 受け渡しが多い
50Torr 85%
60Torr 90%
70Torr 93% ある程度飽和する
と酸素の受け渡し
80Torr 95%
が減る
問題
以下の空欄に当てはまる値を入れよ
PaО2 値    SpО2 ( SaО2 )値
    
イ 40Torr    75%
50Torr     ロ 85%
60Torr    ハ 90%
70Torr    ニ 93%
ホ 80Torr    95%
90Torr    へ 97%
SpО2 = SaО2 じゃないんです!
実は・・・    
SaО2 = O2Hb/ ( Hb+O2Hb+ COHb+ MetHb )
⇒ 分画的酸素飽和度: Hb と結合するすべての値を分母にしてい
る。
 主に採血で測定する値。 SaО2 の a は artery (動脈)の意味。

SpО2 = O2Hb/ ( Hb+O2Hb )


⇒ 機能的酸素飽和度: Hb と結合するのは酸素限定して分母にし
ている。
 主にパルスオキシメーターなど体表面で測定。 SpО2 の p は
pulse (脈)の意味。
問題

• SaО2 は      と言われ下の式で示された値を示す。       

  主に動脈血採血で測定する値で知る事が出来る。
• SaО2 =      
ロ ÷  (      +      +      +
ハ ニ ホ へ
      )

• SpО2 は      と言われ下の式で示された値を示す。       
  主にパルスオキシメーターなどの体表面で測定する機器で測定される。
• SpО2 =      
チ ÷  (      +      )
リ ヌ

• 選択肢:① O2Hb (酸素化ヘモグロビン) ② HHb (還元ヘモグロビン) 


③ COHb (一酸化炭素ヘモグロビン)  ④ MetHb (メトヘモグロビン) 
              ⑤分画的酸素飽和度 ⑥機能的酸素飽和度
パルスオキシメーターが SpО2≠SaО2 の
場合
• 一酸化炭素中毒: 660nm での吸光度が CОHb と同じであり SpО2 が高く
表示。 SpО2= ( О2Hb + CОHb×0.9 ) ÷ 全 Hb のため。
• メトヘモグロビン中毒: 660nm での吸光度が MetHb 同じであり SpО2 が
高く表示。
• メチレンブルーなどの医療用色素は影響する。ビリルビンは影響しない。
• 貧血( 2.3 ~ 8.7g/dl )は低酸素時に SaО2 よりも SpО2 が低く検出される。
• うっ血性心不全は静脈圧が高いと SaО2 よりも SpО2 が低く検出される。
• 大動脈バルーンパンピングが入っている場合も低く検出される。
• 末梢循環不全や血流の途絶では SpО2 は検出されない。
• 体動、シバリングでも第 5 世代でDSTアルゴリズムが発展し検出可能
になった。
問題
• パルスオキシメータが動脈血中酸素飽和度とのデータが解離することが知
られている。次の文章に適切な言葉を入れよ。


• 一酸化炭素中毒は SpО2 値が   高  く表示される。

• メトヘモグロビン中毒は SpО2 値が   高  く表示される。

• メチレンブルーなどの医療用色素は SpО2 値が   低  く表示される。

• 黄疸では SpО2 値が  等し  く表示される。

• 貧血( 2.3 ~ 8.7g/dl )は低酸素時に SpО2 値が   低  く検出される。

• うっ血性心不全は静脈圧が高いと SpО2 値が   低  く検出される。

• IABP が入っている場合 SpО2 値が   低  く検出される。

• 青いマニキュアをしている場合 SpО2 値は   低  く検出される。
酸素運搬について考えてみよう

今、肺で酸素化されたばかりの
動脈血 100ml を採血したとする

血液中の赤血球の 100 %が酸素と結びついた


酸素化ヘモグロビン

成人男性のヘモグロビンの
血中濃度は 15g/dl 前後

そして Hb と結合する酸素は…
Hb1g と結合できる酸素は 1.34ml
例えば1 dl (100ml) 中に 15g あれば

   1.34×15≒20ml/dl
                 となる

1L(1000ml) 中に
約 200ml の酸素

1 分子のヘモグロビンに 4 個の O2
以上から 100ml の動脈血に含まれる酸素量は

酸素化ヘモグロビン= 100 %     酸素化していないヘモグロビン=ほぼ0%

100ml 中のヘモグロビン量は
ヘモグロビン濃度は 15g/dl なので               
15g
採血 100ml           とすると 1g 中に 1.34ml の酸素が結合する
( 1dl=100ml )
ことが可能。

15g
これを
のヘモグロビンでは
溶存酸素量 15×1.34ml = 20ml の酸素が存
という。  溶存酸素量( CaO2 )= 1.34× Hb×SaO2  
1 分間に末梢へ運搬される酸素量
は・・・

O2
心臓から 末梢まで

末梢
1 分間で送る酸素の量

酸素がどのくらい末梢に運搬されるかの指標。  
⇒心臓が押し出す赤血球の量、すなわち心拍出量
が増えればそれに比例して運搬も増える。
酸素供給量(運搬酸素量)
DO2 =CO (心拍出量) ×CaO2 (溶存酸素) =CO×(1.34×Hb×SaO2)
組織に取り込まれる量

O2

動脈血( SaO2   100 %) 静脈血( SvO2   75 %)

酸素摂取量
 =(組織に入る前の運搬酸素量)-(組織から出た後の運搬酸素量)

   VO2    =    CO×CaO2 - CO×CvO2


     =    CO×(CaO2 - CvO2)
        =    CO×1.34×Hb×(SaO2 - SvO2 )
組織前後の酸素飽和度の差
酸素運搬システムまとめると・・・
• 血液の酸素含量
    CaO2 = (1.34×Hb×SaO2) + (0.003×PaO2)
• 酸素供給量
    DO2 =CO×CaO2
     =CO×(1.34×Hb×SaO2)
• 酸素摂取量
    VO2 = CO×(CaO2 - CvO2)
      = CO×1.34×Hb×(SaO2 - SvO2 )
• 酸素摂取率
    O2ER = VO2/DO2×100 (%)
問題  100ml の動脈血に含まれる酸素量は?

酸素化ヘモグロビン= 100 %     酸素化していないヘモグロビン=ほぼ0%

(一般的な 25 歳標準日本人成人男性の体格で、血中の)
⇒100   ml 中のヘモグロビン量は 
ヘモグロビン濃度は  15   g/dl                  
ア イ ア
15   g
採血 100ml          
とすると 1g 中に  ウ 1.34   ml の酸素が結合することが可能であることがわ
( 1dl=100ml )
かっているから、
    15   g のヘモグロビンでは  15  g ×1.34
ウ   ml エ
=  20   ml の酸素
が存在。
これを溶存酸素量という。  溶存酸素量( CaO2 )= ウ 1.34× Hb×SaO2
オ カ  
酸素供給量を実際に計算しましょ
う   
(運搬酸素量)

DO2 = 1.34×Hb×SaO2×CO
• Hb ;15.0 g/dL 0.15g/ml
• SaO2;100 % 100 %=1
• CO;5 L/min 5000ml/min
DO2 =1.34×0.15×1.0×5000
    1000 mLO2/min
酸素摂取量を実際に計算しましょう   
酸素摂取量
 =(組織に入る前の運搬酸素量)-(組織から出た後の運搬酸素
量)

VO2 = DaO2 - DvO2


    = CO× 1.34×Hb×(SaO2 - SvO2)
  CO;5 l/min Hb ;15.0 g/dl   SaO2;100 %   SvO2;
75%
  VO2 =100×(100-75)=1000 - 750=250
 正常では VO2 は DO2 の4分の1 !?
式上、動静脈では CO もHb同じ、 SaO2 は一般的に約 100 %
                     → SvO2 の変化をみればよい
酸素摂取率  
O2ER = VO2/DO2×100 (%)

=250/1000×100

=25%
酸素摂取の調節
~限界酸素輸送能~

500
酸素供給量から予測される病態   

DO2 = 1.34×Hb×SaO2×CO
RBC

• Hb からは…      →     
貧血(出血、溶血)
• SaO2            呼吸不全(肺)
→ 
 赤血球の酸素結合能低下
• CO = SV×HR       心不全、脱水、

 心拍出量(前負荷・後負荷) 循環不全
 
呼吸不全 ≠ 肺
酸素がしっかりと組織に取り込まれることに
着目した研究

N Engl J Med, Vol. 345, No. 19 , 2001


そのまえに・・・
敗血症とは
③ 心臓が頑張って
④ 敗血症性ショック 血圧を維持しようとする
とは血行が破たん (しかし、いつか破たんする)
している状態
すなわち組織低酸素  血圧=心拍出量 × 末梢血管抵抗
⇒ 酸素依存が高い 末梢が広がると抵抗↓
組織ほど早い段階で
臓器不全に陥る

① 菌などから原因となる
       物質が放出される

② 敗血症性ショックで末梢広がる
⇒ 後負荷(左心系圧)が軽減する
敗血症の基本的な治療
組織酸素化を ② 血管内容量が著しく
増加したことに関して⇒
早期回復せよ ※ 細胞外液の急速投与
⇒ 内腔が広いため血液の絶対量が
不足している
※ 水分量の評価にモニタリング
が必要な場合がある
⇒ 急速な水分補正により前負荷と
後負荷のミスマッチから心不全に

① 菌などから原因とな
る物質が放出に対して ③ がばがばの末梢血管に
⇒ 対しては⇒
※ 早期の抗生剤投与
※ 膿があればドレナージ
十分な輸液のあとに、
※α-stimulator 、 domapine 投与
※ エンドトキシンが原因であれ
※ 効果ない場合 vasopressin 投与
前負荷と後負荷

ポンプ前後の圧力を示し
ポンプ前圧=静脈還流による影響
ポンプ後圧=末梢血管抵抗による影響
という圧がかかることで血液が供給される

負荷圧⇒血液量

女子医大 hp 改編
前負荷と後負荷
一回拍出量
strokevolume

前負荷
preload
後負荷
afterload

今中ら 日集中医誌 2010;17:279 ~ 286.


酸素がしっかりと組織に取り込まれることに
着目した研究

N Engl J Med, Vol. 345, No. 19 , 2001


EGDT

敗血症治療における
早期組織酸素不足を
補う治療を行うこと

N Engl J Med, Vol. 345, No. 19 , 2001


敗血症の患者組織酸素を維持せよ !
< CVP8 なら 
CVP
⇒ 輸液しろ !!
CVP 前負荷足りない
8 ~ 12
< MAP65mmHg なら
MAP
⇒ 血圧上げろ !!
MA P 組織まで届かない 前負荷
> 65 CVP
後負荷
ScvO2 < 70 %で
S CVO2 心拍出量あげろ
MAP

ScvO2 < Hb7.0 なら輸血し


> 70 %

ゴール! N Engl J Med, Vol. 345, No. 19 , 2001
Early-Goal Directed Therapy
• 敗血症性ショックで来院した 263 人を 2 群に
前向きコホート
• 一方は通常治療もう一方は EGDT に則って
• In hospital mortality  
EGDT 30.5 % VS Conventional 46.5%
( P = 0.009 )
• 同様に、 28 日、 60 日生命予後にも明らかに EGDT 側に有意差
がでた
現在知られる一般的な敗血症治療⇒ SSC2005 の原点に
N Engl J Med, Vol. 345, No. 19 , 2001
101   B-63  
血中濃度が多臓器不全の進行の指標となるのはど
れか.

a. クエン酸
b. 酢酸
c. 乳酸
d. 尿酸
e. 酪酸
103   G-16
多臓器不全でみられるのはどれか. 3 つ選べ

a. 尿量減少
b. 低酸素血症
c. 乳酸アシドーシス
d. 血清アルブミン増加
e. 血清クレアチニン減少
26  まず行うべき治療として適切なものはど
106 F -26   27 れか

a.アトロピンの静注
78 歳の男性で意識障害。 b.新鮮凍結血漿の輸血
7 日前からの上腹部痛+発熱。 c.生理食塩水の急速静注
2 日前から段々悪くなってきて d.アルブミン製剤の点滴静注
意識レベルJCSⅡ -10 、心拍 e.分子鎖アミノ酸製剤の点滴静注
数 112 bpm、血圧 82/58 mm 27  この患者の循環状態の重症度を評価
Hg、呼吸数 24 bpm、SpO するための検査で適切なものはどれか
297% ( 3Ⅼ 投与) 39 度眼球結膜
黄染、右季肋部圧痛。 a.血糖測定
b.血液培養検査
c.動脈血乳酸値測定
d.血清アルブミン測定
e.へパプラスチンテスト
SIRS と敗血症
• 敗血症とは、感染に対する制御不能な宿主反応に
起因した生命を脅かすような臓器障害。
• 今までの敗血症の定義は SIRS (全身炎症反応症候
群)の病態すべてにあてはめて考慮していたが、
それであると風邪であったり、その他の軽い病態
でも適応となってしまい、感度特異度に信憑性が
無かった。
• 今回 2016 年発表された Sepsis 3 study の結果を受
けて、感染症が疑わしい前提で一定の項目を満た
す患者を絞り込むことになった。
敗血症の旧定義と新定義
旧 新
敗血症は炎症反応の一部 敗血症は臓器障害あるものとして評価
循環不全や臓器不全はそのあと評価する

qSOFA 臓器障害
SOFA

感染症 SIRS

SOFA (循環不全・臓器不全・・・)
Sepsis 3 study
旧 新
SIRS 基準 qSOFA 法

qSOFA2 項目陽性
感染症+ SIRS2 項目
(感染症に伴う炎症反応) 感染症+ SOFA2 項目
(感染症に伴う臓器障害)

旧・敗血症 新・敗血症
輸液に反応ないショック = 敗血症性ショック
臓器障害がある場合=重症敗血症 The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3)   JAMA. 2016 Feb
23; 315(8): 801–810.
Sepsis 3 study
• 新しい敗血症の診断方法で分類治療した結果報告。

• qSOFA 法 (sBP100 以下、 R22 以上、 GCS15 未満を


各 1 点とし 3 点満点中 2 点以上となった場合要精
査)⇒ 2 点以上で死亡率が 14 倍。
• 精査として SOFAscore を使用し、 2 点以上で敗血
症と診断。⇒ 2 点以上で死亡率 10 %。
• さらに、昇圧剤の使用があり、かつ、乳酸値
2mmol/l  ( 18mg/dl )以上の場合、敗血症性
ショックと診断。
 ⇒死亡率 46.5% The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3)   JAMA. 2016 Feb
23; 315(8): 801–810.
SOFAscore
セルフ テスト
①  酸素はどこでエネルギーにされる

②  脳出血や心不全などは呼吸に直接
関係ない  ○か × か?

③  肺胞内酸素分圧を良くするための
3つの因子をあげよ        
         A B C
セルフ テスト
④  次の患者の P/F 比、 A-aDO2 を
それぞれ算出しなさい
FIO2=60 %  PACO2=55torr PaO2=60torr
FIO2=30 %  PACO2=55torr PaO2=60torr

⑤A-aDO2 が悪化する3つの病態を挙げ
よ                

⑥   ARDS の重症度分類をかけ
セルフ テスト
⑦  100 ml の血中に酸素がどのくらい含有す
るか?(成人男性 15g/dl として)

⑧ 酸素運搬に必要な3つの因子
                    
⑨ 酸素摂取量は簡易的に     を測定するこ
とで、組織の状態を評価することができる
セルフ テスト
⑩ 血圧を規定する因子は何か

⑪ 敗血症性ショックの病態について説明しろ

⑫ EGDTは敗血症治療の原点となる研究である
が、この研究の優れた点はなにか

⑬Sepsis 3と敗血症について説明せよ
How fun ?
二酸化炭素の測定
二原子分子である CO2 のエネルギー
CO2 の基準振動と 4 つの振動モード

二重縮重し た振動で、この振動数の赤外線に吸収される。
FT-IR 法:フーリエ変換 赤外分光光度計
( Fourier Transform Infrared Spectroscopy )
• ビームスプリッターで二つに分けられた光の干渉強度を観測し、
得られた時間依存干渉パターン(インターフェログラム)を
フーリエ変換し、スペクトルを得る方法。
ND-IR 法 :非分散型赤外線吸収法
( Non Dispersive Infra Red )
• ガス特有の吸収波長領域を利用したガス濃度の計測方式のこ
と。吸収波長領域とは、ガスが吸収する波長の赤外領域のこ
とで、 CO2 は 4.26μm の波長の赤外線を吸収するため、 CO2
濃度が高ければ赤外線量が減り、それによって濃度を測定す
ることができる。
カプノメータ(二酸化炭素呼出曲線描出
機)
仕組み:赤外線での二酸化炭素の吸光度を測定し、濃度を計測。
意味: etCO2≒PACO2=PaCO2 との考え方
カプノグラム(二酸化炭素呼出曲線)の見方
① 「換気状態・呼吸停止」②「人工呼吸器の接続」③「気管チューブの位置」④
「呼吸器と自発のミスマッチ」⑤「患者の代謝変化」が理解できる。そのため、
① では患者自発や換気有無の確認。②③気管チューブ位置(抜け、屈曲、痰の有
無、片肺挿管、閉塞)。③ファイティング④気道確保器具の異常
を確認する。
さらに
酸塩基平衡が悪ければ⇒波形が上昇しやすい
酸素化が障害があれば⇒気道の異常を注意して①-④の確認
カプノメーターのサンプル採取方法
カプノメータの呼吸相とその意味
( Fletcher )
(動脈血中二酸化炭素分圧)

(呼気終末二酸化炭素分圧) Ⅳ相
吸気が始まる
Ⅰ相 呼気吸気混在
⇒ 上気道などの換気に
関与しない気体
解剖学的死腔

Ⅱ 相(呼気開始相)       ▼
⇒ 気道内と一部の肺胞気 その患者の
一回
Ⅲ 相(呼気平坦相)
⇒ すべて肺胞気

呼吸時間
ボリューメトリックカプノグラムの呼吸
相 etCO2 (呼気終末二酸化炭素濃度
SⅢ

PACO2
PCO2 ( mmHg )

α角 (平均肺胞気二酸化炭素分圧)
(二酸化炭素分圧)

SⅡ

呼吸量(ml)
呼吸サイクル中の肺胞気二酸化炭素分圧
( PACO2 )の変化
P A CO2 ( mmHg )


① 血流によって CO2 は肺胞側にシフ
(二酸化炭素分圧)


② ② 吸気初期から上昇し、後半吸気ガ
スに希釈されていく。
40

③ 呼気に転じて上昇し始め吸気初期
まで上昇していく。

肺胞 死腔 死腔
分画 分画 肺胞 分画
分画
注意すべきカプノメーターの波形

気管支攣縮、チューブ屈曲 低換気

気管支攣縮は下気道閉塞で呼気終末のC О2 上昇          肺胞低換気では、呼気C О2 が一定の値まで下が


注意すべきカプノメーターの波形
• 自発呼吸出現 • 過換気:呼出の CО2 が低下
⇒ 呼気終末に不規則な呼吸
注意すべきカプノメーターの波形
挿管チューブ漏れ • 再換気
注意すべきカプノメーターの波形
• 食道挿管や心停止、回路リーク
注意すべきカプノメーターの波形(積算波
形)
• 心肺蘇生中の CPR 適正化

過換気から呼吸数の補正 自己心拍再開から循環不全の補正
死腔について
設定は
ある人に1分間 5L を換気させたいと考え

  A さんは 1 回換気量 500ml で 10 回/分で換気設定
         500ml×10 回= 5L /分
  B さんは 1 回換気量 250ml で 20 回/分で換気設定
         250ml×20 回= 5L /分

正しいのは ?   ① A さんが正しい


          ② B さんが正しい
          ③ A さん B さん両方とも正し
答えは④

なぜかな?
人工呼吸器の設定は機械側の換気量

死腔量 150ml を引いた実際の換気量は?


  A さんは 1 回換気量 500-150=350ml
         350ml×10 回= 3.5L /分
  B さんは 1 回換気量 250-150=100ml
         100ml×20 回= 2   L /分

つまり本当は 1 回換気量+死腔量を加味しなければ、実際の換気
量を考えることはできない
死腔の考えはなぜ必要?
• すいとんの術~なんて子供のころお風呂場で遊
びませんでしたか?そのとき、実際やってみて
どのくらいもちました?
• 頑張るんだけどなんか苦しくて途中であきらめ
ちゃう
• 苦しくなる理由には何が考えられるでしょう
か?

筒が細いから?
何度もやってると吸い込むのも吐くのもできない
太くしてみるけど長くはいられない。
死腔ってなに?
この部分は換気されない

呼気 吸気
では、すいとんの術の前と後では?
   正常     すいとん(死腔増)

非換気部分
100ml チューブ =死腔

150ml 気管、気管支

つまりは実際に
350ml 肺胞 換気しているのは
肺胞のみ

チューブが長くなれば
一回に必要な 一回に必要な 1 回換気量中の換気
部分が減少し、
換気量  500ml 換気量  600ml 空気の出し入れに
150/500×100 250/600×100 パワーが必要になる
死腔換気率
Vd/Vt =P d CO2/PACO2
     = (PACO2 - PECO2)/PACO2
    ≒ (PaCO2 - PECO2)/PaCO2
       (肺動脈血中 CO2 分圧-呼気 CO2 分圧) ÷ 肺動脈血中 CO2 分圧

呼出された CO2 は肺胞と CO2 濃度が同じ。空間が一定であれば圧力と体積


は比例するから、気管に残った CO2 分圧を測定すれば、死腔換気率になる

気管→死腔部分 Vd

一回換気量
   Vt
肺胞→実際に
有効換気されている部分
死腔を計算しよう
(   PaCO2  -  PECO2   )   ÷   PaCO2
(肺動脈血中 CO2 分圧-呼気 CO2 分圧) ÷ 肺動脈血中 CO2 分圧

人の平均的な 1 回換気量:体重の 10 分の1


平均的な死腔量は 1 回換気量の 30 %
すいとん
死腔換気率
     =P d CO2/PACO2
Vd/Vt
     = (PACO2 - PECO2)/PACO2
    ≒ (PaCO2 - PECO2)/PaCO2
     = 1- PECO2/PaCO2
     

つまり、一回換気量が同じであるとき
呼気中 CO2 分圧が上がれば死腔換気は
肺動脈血中 CO2 分圧が上がれば死腔換気減る
ストローと竹筒 ~筒が細いから苦しいのでは?

断面積と換気流量の関係
⇒ ベルヌーイの定理
流体のどの位置でもエネルギー(流速・圧・質量・位置)の積は等し

呼吸では、質量・位置は考えるほどではないので、圧・流速を考える
気体の流量について
• Hooke の法則
• 流量 [m3/s] =配管の断面積 [m2]× 流速 [m/s]
  ⇒流量 [L/s] = ( 管の直径 [mm])2 / (4×1000)×π× 流速 [m/s]

• ボイルシャルルの法則
  k( 一定 ) =絶対圧力P × 体積V/温度T   
   ⇒温度一定のとき体積は圧力に反比例する  

• 1mol( 分子の個数が 6.02×1023 を表す単位 ) の時の質量 [g] を分子量といい、


1mol 時の気体は体積 22.4[L] となる。標準状態 (0℃ 、大気圧 )
血管を通って二酸化炭素の排出
これらいずれの場所に異常が起こっても呼吸不全となる

組織から二酸化炭素の産生
組織での酸素代謝
呼吸不全と解剖生理学的関係

体循環での酸素運搬
心機能
肺動静脈機能
ガス交換
肺コンプライアンス

気道抵抗
呼吸筋
呼吸中枢
酸の産生と二酸化炭素の関係
細胞外液 細胞内液
ヒトの体内の主な電解質
血管内 間質内
• H+(水素イオン:アシドーシスの元)
• OH- (水酸化物イオン:アルカローシスの元)
• ナトリウム
• カリウム
• カルシウム
• マグネシウム
• 重炭酸イオン
• リン酸イオン

ではブドウ糖は?=基本的に電離はほとんどしない。
⇒ イオン化(電離)するものを電解質という
⇒ 溶媒中で高率に電離するものを強酸(強アルカリ)という
細胞内電解質に対する活動電位
電解質の出入りがない場合
• 電解質による電位差や受容体の障害が起きることによ
る様々な障害が生じる。(⇒神経伝導・筋収縮などそ
の他種々の細胞活動障害)
酸とは・・・
Brensted の定義
• 酸は H +を放出するもの
• 塩基は H +を受け取るもの

Arrhenius の定義 塩基
• 酸は H +を解離する物質
• 塩基は H- を解離する物質

NaOH  ⇔  Na + +  OH-   


Lewis の定義
酸 塩基
• 酸は電子対のドナーである
細胞内の酸

飯野 , 日本腎臓学会雑誌 2001;43(8):621-63
酸の産生
• ヒトは栄養素を摂取すると大量の酸を産生する。特に炭
素を中心とした栄養素(糖・脂肪)が基本であるために、
人のからだでは炭素を処理した結果、大量のC О 2が酸
として排泄される。( 15000 ~ 20000mmol/ 日)

• これらは主に呼吸により肺から体外に排泄される。

• これ以外にも蛋白などが分解されると不揮発酸   
(例えば NО 3 - や SО 42-)が生成するが、これらは気化
しない(揮発しない)ために、主に腎臓で排出される。
酸を発生する栄養素とその酸の種類
酸塩基の負荷と生体内での反応

呼吸や腎臓で処理され
るスピードは遅い。
⇒ 細胞外液にある緩衝
系において結構な量の
酸が処理が瞬時にされ
ている。
生体での酸の排泄
• 通常の酸としてH+を排泄すると、組織障害が起こる
ために、酸をイオン化しない形にして体外に排泄する。

• 主に以下の通り

1. 緩衝作用(分単位)
2. 呼吸による揮発酸排泄(時間単位)
3. 腎臓による不揮発酸排泄(日数単位)
① 緩衝作用
【血液】
• ヘモグロビン
HHb⇔Hb -+ H +
• 重炭酸 様々な緩衝作用が秒で働いて
H2CО3⇔HCО3- + H + 酸による細胞障害を防いでいる

【細胞内】
• 蛋白質
蛋白= H  ⇔ 蛋白- + H +
• リン酸・骨緩衝系
H2PО4  ⇔  HPО4- + H +
② 呼吸による酸の排泄 ~全体の6割~
• 肺胞側
• 血管内 HCО3- +血管内 H +⇔ H2CО3⇔ 肺胞 CО2 + 血管中の水 H2О

• 末梢血管側
• - +
③ 腎機能による尿中への酸の排泄
• 近位尿細管を中心とした HCО3 -の再吸収
• 皮質集合管における H +の排泄(リン酸化・アンモニ
アの排泄)
• 時間がかかる。たくさんの酸は処理できない。

硝酸や硫酸など分解できない不揮発酸の処理に当たる。
近位尿細管でのHC О 3 -  の再吸収
• ヒトの HCО3 の再吸収は
近位尿細管で 8 割以上
が行われる。
• GFR = 100ml/min
   = 144 L / 日
• HCО3 の濾過は、
24mEq/l×144 L / 日
= 3456 mEq/ 日
• 細胞外液に含まれる
HCО3 絶対量= 240mEq
→ 実は再吸収されている
α 間在細胞でのリン酸によるH+の排泄
• 尿中には

① リン酸化
PО43-→HPО 42-→ H2PО4-  
による H +の処理

② アンモニア化
NH3 + H + → NH 4+
による H +の処理
R hCG = Rhesus C Grycoprotein
アンモニア
の排泄

• グルタミンからアンモニウム+
 となり、原尿中に排泄される
過程で、尿細管中のN a ー K -
2 CL 共輸送体のチャネルで再吸
収され、さらにH+と結合しN
H3となって分泌されることに
より排出される。
• 分泌されるR hCG は pH が低下
すると表現系として現れる
皮質集合管における細胞・輸送体の働き
• 主細胞:ナトリウムの再吸収、 K 排泄

• α 間在細胞: H +の排泄と HCО 3 - の再吸収


  →アシドーシスの時に H +排泄に働く
• β 間在細胞: HCО3- の排泄と H +の再吸収
  →アルカローシスの時に HCО 3 - の排泄に働く

HCО 3 -/C L交換体とH+ / ATP ase を作用させアル


カリを改善する
アニオンギャップ

• 揮発酸( CО 2)
に対する気化しな
い酸( NО 3 - や
SО 42-)を示す
指標

アニオン(陽イオ
ン)-カチオン
(陰イオン)= AG
AG が変化する病態
① 代謝性アシドーシス
② それ以外の病態
【 AG 上昇】
• 高リン酸血症、高アルブミン血症
【 AG 低下】
• アニオン上昇:高 K 血症、高 Ca 血症、高 Mg 血症、リチ
ウム中毒、多発性骨髄腫
• カチオン低下:低アルブミン血症
• 誤測定:ヨード中毒、ブロマイド中毒、サリチル酸中毒、
偽性低 Na 血症
AG が変化
する病態
名称について
• 血中 pH が低下するとアシドーシス、上昇するとアルカローシ

• 初めに呼吸によって起きると呼吸性
• 初めに代謝によって起きると代謝性と呼ぶ。

• 代謝性アシドーシスは代謝が原因で起きた血液の酸性化
• 呼吸性アルカローシスは呼吸が原因で起きた血液のアルカリ化
代謝性アシドーシスの原因
① 酸の増加:乳酸アシドーシス、ケトアシドーシス、中毒

② 塩類の喪失:下痢、近位型尿細管性アシドーシス、他

③ 腎の機能低下:腎不全、遠位型尿細管性アシドーシス、

代謝性アシドーシスによる影響
《急性代謝性アシドーシス》 《慢性代謝性アシドーシス》
白血球機能低下
骨疾患発生や悪化
心室性不整脈発症
発育遅延
動脈拡張、低血圧
昇圧剤反応低下 耐糖能異常
インスリン作用低下 腎疾患の進行
リンパ球機能低下 筋肉疲労増加
細胞エネルギー産生低下
アルブミン合成低下
アポトーシス亢進
精神状態変化
β 2mg増加
インターロイキン産生
酸素解離曲線左方移動
代謝性アルカローシス
• 尿細管 ENaC へ Na の到達が増えて取り込みが亢進し、
相対的に K や H +が血管内に分泌されるもの。

• 集合管に直接作用する行為(アルドステロンの上昇な
ど)が起きて、一次的に Na の取り込みが亢進し、 K や
H +が血管内に分泌されるもの。

• 腎不全による HCО3 分泌不全


皮質集合管における主細胞の働き
尿細管腔 血管側
皮質集合管における α 間在細胞の働き
尿細管腔 血管側
皮質集合管における β 間在細胞の働き
尿細管腔 血管側
代謝性アルカローシスの分類
① 集合管イオンチャネルを二次的に刺激
1)CL欠乏症行群→消化管からの喪失(嘔吐)や腎性喪失(利尿薬)

② 集合管イオンチャネルを一次的に刺激
1)ミネラルコルチコイド過剰→原発性アルドステロン症、クッシング
症候群、先天性副腎過形成、レニン分泌腫瘍、薬物
2) AME 症候群→ Liddle 症候群、 11βОH 酵素欠損

③ アルカリの摂取投与、排泄障害
1 )腎不全、食事での CL 摂取不良
代謝性アルカローシス
代謝性
アルカローシス
呼吸不全に対する治療
気道確保
 経鼻エアウェイ: NPA ・経口エアウェ
呼吸不全の治療 イ: OPA
 緊急気道確保  Difficult Airway
Management
• 酸素療法   バックバルブマスク: BVM
• 鼻カニュラ   ジャクソンリース回路
• 簡易酸素マスク   ラリンゲアルマスク: LMA
• オキシアーム   WBチューブ: WBA
• 経皮気管内カテーテル
• ハイフローセラピー( HFOT ):一回換気量以上の酸素ガスを投与する治療法
• ベンチュリーマスク
• リザーバー付きマスク・リザーバー付き鼻カニュラ
• ネブライザー式酸素吸入装置:インスピロンⓇなど
• 高流量鼻カニュラ( High flow nasal cannula; HFNC ):例)ネーザルハイフロー TM など

• 人工呼吸器管理( NIPPV / IPPV )・ VAP ・抜管( SAT/SBT )


• 人工肺( ECMO )
• 液体呼吸
• 投薬 呼吸促進剤・浮腫治療・利尿薬・ステロイド
• リハビリテーション
気道確保
DAM ( DAS )
酸素療法
定義
 ヒトの体内の酸素の不足状態(低酸素血症)に対し、
適量の酸素を投与することで、吸入気の酸素濃度
( FIO2 )を高め、生体内酸素不足を改善しようという
治療法。
適応

PaO2<60mmHg
 あるいは
SaO2<90 %

COPD など CO2 貯留患者でない者: SaO2 94 %~ 98 %


COPD など CO2 貯留患者    : SaO2 88 %~ 92 %
酸素ボンベと流量計の構造
酸素流量計(レギュレーター)
  フロート式     ダイヤル式
フロート式
ダイヤル式
ガス配管

ちなみに・・・

笑気
酸素ボンベ

ボンベ容積とガス残量の関係
用手的換気器具
BVM
ジャクソンリース
• 高流量の酸素ガス圧によりバッグを膨
らます為、ガスがないと使用できない。
• 100 %酸素を源とするので、高濃度酸
素の投与ができるが、逆に、酸素濃度
を中程度など下げることが難しい。
• バッグの押し具合により加圧圧力を感
じ取りやすいという利点
• CO2の再呼吸がある。ガス流量に依
存してCO2の再呼吸が起こる。
主な低流量酸素投与デバイス
• カニュラ
• リザーバー付きカニュラ
• マスク
• オキシマスクⓇ
• リザーバーマスク
鼻カニュラ
経鼻で酸素投与する器具。
酸素流量と吸入酸素濃度の関係は患者の 1 回換気量に依存。
    低換気⇒酸素濃度上昇
    過換気⇒酸素濃度低下
口呼吸の患者には推奨できない。
酸素流量 6l/min 以上は吸入酸素濃度の上昇が期待できない。
マスク
経鼻/経口で酸素投与する器具。
酸素流量と吸入酸素濃度の関係は患者の 1 回換気量に依存。
    低換気⇒酸素濃度上昇
    過換気⇒酸素濃度低下
酸素流量は 5l/min 以下はマスク内に貯まった呼気ガスを再吸収。
酸素流量は 5l/min 以上で吸入酸素濃度は 40 %以上となるため、
低濃度酸素吸入には適さない。
リザーバー付きマスク
経鼻/経口で酸素投与する器具。
酸素流量と吸入酸素濃度の関係は患者の酸素流量に依存。
    低換気⇒吸入酸素濃度は酸素流量
    過換気⇒マスク外大気の吸入や呼気再換気の危険
酸素流量は 6l/min 以下はマスク内に貯まった呼気ガスを再吸収。
酸素流量は 6l/min 以上でリザーバーバック内に十分な酸素を貯
めることで高濃度酸素を吸入させる方式。
リザーバーマスクの膨らみ=患者の呼吸状態。       
 酸素流量・マスクフィット・呼吸数や換気量など注意が必要。
デバイスによる酸素濃度のちがい ( 参考 )

酸素流量が上昇する毎に
ある程度の Fio2 が上昇。

低流量では比例的に Fio2 が上昇。

高流量になるほど Fio2 が上昇しなくな


 ⇒デバイスの構造上の限界
主な高流量デバイス
• ベンチュリーマスク
• ベンチュリーネブライザー
いま吸っている酸素量は?
今    L/ 分 = 1000x    /60 ml/ 秒
Ti 秒間に吸気する酸素量は   Ti = 1000x    /60 ml  …①
Ti 秒間に吸気する空気量は  Vt-① ml
そのうち Ti 秒間に吸気する空気中の酸素量は
           0.21×② = 0.21×(Vt-① ) ml   …②
よって 合計酸素量は  ① +② = 0.21×Vt + 0.79×①  …③
FiO2 =③/Vt ・ 100 = 21+ 79①/Vt
  = 21+79/Vt ・ 1000×    L×Ti/60 = 21 + 1317 ・ Ti/Vt ・   L
今 Vt* = Vt/Ti と置くと、 FiO2 = 21 + 1317/Vt* ・   L
高流量鼻カニュラ酸素療法( HFNC )
• 定義:加温・加湿した一定濃度の酸素を、鼻カニュラ(鼻腔カニューレ)を介し
て高流量で投与する高流量酸素システム。
• 適応:自発呼吸が保たれている
が、呼吸仕事量が増加している患者
低流量酸素で対応できない場合。
気管支喘息の増悪
慢性閉塞性肺疾患の増悪
肺炎、肺水腫、うっ血性心不全
急性呼吸窮迫症候群( ARDS )
睡眠時無呼吸症候群
• 禁忌:
• 自発呼吸消失
• 気道確保不能
• 循環動態不安定
• 患者が非協力であるなどの症例
利点:
導入の簡便さ。酸素化の改善・呼吸回数の減少・呼吸困難の改善。酸素
ブレンダーにより、高流量( 60 L/min )のガスを流すことができ、鼻カ
ニュラでも FiO2 ( 21~100% )を供給することが可能。
排痰促進:最適な加温・加湿(温度 37°C 、絶対湿度 44mg/L )は、上気
道にある粘膜絨毛のクリアランスを増強させる。
呼吸仕事量の低下:高流量により鼻咽頭腔の解剖学的死腔(約 150 ml )
が洗い流されることで換気補助となる。
PEEP がかかる:呼吸サイクルによる気道陽圧で 2~5 cmH2O 程度の PEEP
がかかる。口の開閉や性別などによって変化。
マスクに比べ食事や飲水が容易にできることから快適性が向上。

欠点:
酸素流量が大きいため配管が必要。専用のアタッチメントが必要。
非侵襲的陽圧換気( NPPV )
• 定義
• 適応
• メリット
• デメリット

日本呼吸器学会 NPPV ガイドライン


NPPV (非侵襲的陽圧換気法)
• 定義:気管挿管や気管切開などの高度な気道確保を行わずに、
マスク等で機械による陽圧換気を行う方法をいう。
• 利点:導入が簡単であること。気管挿管を行わないため、本人
の苦痛に対する鎮痛鎮静を行う必要性が減ること。そのため、
食事や会話など意思疎通を必要とした日常動作が可能となる。
• 適応:心不全や COPD の急性増悪が適応。
• 欠点:マスクフィットが必要となるためマスクが密着している
ことが重要。マスクが密着することに対する不快感・搔痒感・
疼痛・潰瘍・精神的圧迫感、気道が絶えず開放しているため、
送気の呑気とそれによる胃内空気貯留からの吃逆・嘔気嘔吐・
噯気(おくび)などが注意必要。リーク補正に多大な送気量が
必要となるため、従来の呼吸器では難しく専用呼吸器が必要。
不穏・意識障害患者、喀痰を頻回吸引が必要な患者は適応外。
長期在宅酸素療法の効果と生存
酸素でも NPPV でも有効

JAMA. 2017;317(21):2177-2186
HOT
• COPD 患者において ,  重度の低酸素状態の患者では , 長期酸素療法
(LTOT) は効果的( Chest. 2010 Jul;138(1):179-87.)
• 右心負荷、肺性 P 波患者、多血症患者( HT > 56 %)において有意差あり。
• 中等度の低酸素 (PaO2 56-65), 症候性の COPD 患者に対する LTOT の効果は
不明 .
• LOTT trial: 中等度低酸素血症を認める COPD に対する酸素療法の効果を
評価した open-label RCT.   (N Engl J Med 2016;375:1617-27.)
• Study の導入前 1-3 ヶ月以内に COPD 急性増悪を呈した患者群では酸素投与
群の方が死亡 , 入院リスクが低かった (HR0.58[0.39-0.88])
• ・ 71 歳以上の高齢者でも酸素投与群の方が予後 ( 死亡 , 入院リスク ) が良
い (HR 0.75[0.57-0.99])
• ・ QOL が低い患者群 (Quality of Well-Being Scale score <0.55) も予後が良くな
HOT 患者の %IBW と生存率
人工呼吸器管理
ラジオメータ社 HP  諏訪先生寄稿

歴史
しくみ

トリガーセンサーなど省略
駆動系
ブレンダー
*エアウォーター 尾崎らの実験 2007

等価回路における人工呼吸器回路の力学
インピーダンス(回路内総抵抗)

=気道抵抗 =胸郭コンプライアンス 吸入気気道内圧P aw


大気圧P atm
胸郭コンプライアンス C
横隔膜・呼吸器圧 Pms
抵抗器 コンデンサ 移動距離・拡張距離 V
ベローズ・横隔膜断面A

電源 =呼吸器(機械換気)
=横隔膜(自発呼吸)
人工呼吸器・自発呼吸における
動力源
  V (距離)= C (コンプライアンス) × E (力)
   E (力)=移動距離 ÷ コンプライアンス
速度=距離の微分方程式
代入
    速度= dV (距離) /dt
      = dC (コンプライアンス) ×E (力) /dt
∫ (速度) dt = C (コンプライアンス) × E (力)

   ∴  E = 1/C ・ ∫(速度) dt


両端を積分して微分をなくす
*日本光電 桑山らの実験 1993

実験系から呼吸仕事量の算出*( CMV )

**

** Campbell のダイヤグラムより。 Campben.E.J.M. : The respiratory muscles and mechanics of


breathing . Chicago : Year Book Publishers ; 1958 .
実験系から呼吸仕事量の算出
( SPONT )
実験系から呼吸仕事量の算出( A/C )
• 気道内圧ー胸腔内圧(≑食道内圧)=経肺圧

• 患者呼吸仕事量( WOB p)
= -∫ (⊿ Pes×flow×⊿ t)
      十( Tidal volume ) 2 / Ccw / 2

※⊿Pes :吸気食道内圧 - 安静時食道内圧


※ Ccw :胸郭コンプライアンス
人工呼吸器における運動方程式
回路内圧=気道抵抗 × 気道流速+一回換気量 / 胸郭コンプライアン

呼吸仕事量 WorkOfBreath は、

気道などで生じる粘性抵抗(レジスタンス)

肺や胸郭の弾性抵抗(エラスタンス)
により規定される
さまざまな呼吸設定
PBW : predict body weight

VCV

• VCV とは一定流量のもと、一定換気量の設定することで出来る
換気モードのこと。
• 気道内圧が高くても吸入量を維持したい患者に最適。
• 一回換気量の目標値は 6 ~ 8ml/kg ・ PB W(動物実験では 6ml/kg ・
PB W)
• プラトー圧が 25 ~ 30cmH2O
• 上記呼吸器の設定をきちんと行うことで VILI/VALI の予防となる
SerpaNetoA,et.alCurrOpinCritCare2015 ; 21:65-73

• Drivingpressure =一回換気量 / 呼吸器系コンプライアンスも研究


されており、呼吸器設定の調整が必要となっている AmatoMB,et.al   NEJM2015 ; 372:747-55
• 分時換気量を維持するために呼吸回数で補う。
• VCV では量に対し一定なため、気道内の状態
に応じて気流の分布が一定にならない。
( Flow Asynchrony )
• VCV での設定で吸気流量が時間に伴って漸減
する漸減波に切り替えることにより、平均気
道内圧の上昇、酸素化の改善、換気分布の不
均等、正常肺胞の過膨張、に対処することが
出来るが、患者予後の改善に寄与するという
エビデンスはない。
VCV における波形と呼吸相とその意味

PEAK Plateau

気道抵抗

胸郭コンプライアンス

PEEP
• 気道抵抗=( Peak 圧ー Plateau 圧) /  送気流量
⇒ 矩形波のみ(漸減波は送気流量一定でないのでダメ)
   正常値 (非挿管患者) 1 ~ 2cmH2O/L/sec
       (挿管患者)   10cmH2O/L/sec

• コンプライアンス=一回換気量 / ( Plateau 圧ー PEEP )


   正常値 (非挿管患者)    cmH2O/L/sec
       (挿管患者) 50 ~ 100cmH2O/L/sec
PCV
• PCV は一定の気道内圧で一定の時間換気する換気モードである。
• 吸気圧の設定により分時換気量が決まるため、これを呼吸回数
で分割すると一回換気量が設定できる。 VCV は吸気流量だが、
PCV は吸気時間による調節が必要となる。
• 呼吸器送気時間終了と患者吸入時間終了が合わない場合同調が
得られない。( CYCLE   ASYNCHRON Y)
• COPD など閉塞性疾患の場合、時定数が高くなり、送気時間を
延ばすと、呼気時間を圧排し AUTOPEEP が発生、胸腔内圧上昇
や血圧低下、 CO2 貯留の原因となるため注意が必要となる。
PCV における波形と呼吸相

吸気終末 PEAK =コンプライア


ンス

気道抵抗

胸郭コンプライアンス

PEEP
内山 日本臨床麻酔科学会誌  35 ( 1 ) 89-97   2015

具体的な呼吸器設定(調節換気⇒補助換気)
調節換気(人工呼吸による換気が主,筋弛緩薬が使用されることあり)
⇒ 補助換気(自発呼吸努力の補助が主)

①Assist Control ( A/C )モード,もしくは Control mechanical ventilation ( CMV )モード



・ Control ventilation いわゆる調節呼吸,強制換気のみの呼吸.
・ Assist ventilation 自発呼吸努力で強制換気をトリガーし強制換気で補助.

発 ②Synchronized Intermittent Mandatory Ventilation ( SIMV )
度 設定換気回数までは自発呼吸を強制換気で補助し,それ以上の自発呼吸努力には
合 Pressure support ventilation ( PSV )で補助を行う.

③Pressure support ventilation ( PSV )
多 自発呼吸努力に合わせて設定レベルまで気道内圧を上昇させる.
吸気相の陽圧レベルだけが設定され, 吸気の速さ(吸気流速),吸気時間,吸気量は自発に依存し同調性
がよい
強制換気の種類
• 従量式 volume control ventilation ( VCV )
⇒ 一回換気量と吸気流量が固定された方法
決まった一回換気量を送気できるが、気道内圧や流量の自在性がない

• 従圧式 pressure control ventilation ( PCV )


⇒ 吸気圧と吸気時間が固定された方法
吸気流量の自由度がより高く,同調性はよいが一回換気量が不定.

• 圧規定従量式 pressure regulatedvolume control ventilation ( PRVCV )


⇒ 規定の一回換気量を送り込むよう吸気圧をコントロールする方法
その他 特別な呼吸器設定
①High frequency oscillation ( HFO )
最高気道内圧を上げずにできるだけ高い平均気道内圧を得ることを目的とする.
自発呼吸努力は考慮されておらず,筋弛緩薬を用いることもある.
②Airway pressure release ventilation ( APRV )
肺胞の開存を目的に高い PEEP 値と自発呼吸努力を用いる換気モードである.
自発呼吸努力に対する換気補助機能については考慮されていないが,低 PEEP 相を作ること
によって換気の補助を行う.
③Proportional assist ventilation ( PAV )
呼吸器系のコンプライアンスと気道抵抗を想定して呼吸筋発生圧を算出し,自発呼吸
努力に適合性の高い補助換気を行う.
④Neurally adjusted ventilatory assis ( t NAVA )
横隔膜筋電図を測定して自発呼吸努力強度に比例した換気補助を行う.理論的に自発
呼吸努力との適合性が優れた補助換気法である.
人工呼吸器設定における不同調の原因
不同調の内訳は次の 3 つに分けられる.
⑴ 吸気相の開始タイミング
⑵ 吸気相から呼気相への転換タイミング
⑶ 吸気流量と吸気圧のコントロール
⑴ 吸気相の不一致
・ Auto triggering
自発呼吸努力がないにもかかわらず吸気相が開始される状態。

原因
回路のもれ。心拍動。回路内の液貯留。体動。

適切なトリガー閾値を設定する必要がある.吸気トリガーまでの
時間は短く,それに要する仕事量は少ないほうがよく,トリガー
閾値は誤動作のない最も鋭敏なレベルに調整する.
⑴ 吸気相の不一致
・ Ineffective triggering
患者の自発呼吸努力が存在するにもかかわらず吸気相が開始しない状態。

原因
不適切なトリガー閾値設定。

内因性 PEEP の存在。吸気努力がトリガー値や内因性 PEEP 値に到達しな


いと吸気努力が口元まで伝わらないため, ineffective triggering やトリ
ガー遅れの原因となる.
内因性 PEEP の発生原因は呼気相の気道抵抗増大や一回換気量と比較し呼
気時間が不十分な換気設定が要因となる.
⑵ 吸気相から呼気相への移行の問題
PSV では吸気相の最大吸気流量から流量低
下割合によって呼気相への転換タイミング
を決定する(ターミネーション設定)。
多くの人工呼吸器では最大吸気流量 25 %
程度に設定されているが,低コンプライア
ンスの患者では早めに終了し,気道抵抗が
大きな患者では逆に吸気相が長くなりやす
い。このターミネーション設定を変更する
ことが可能な人工呼吸器では流量波形と気
道内圧波形を参考に設定を変更することが
可能となる(図 4 )
⑶ 吸気流量と吸気圧のコントロール
一定の流量パターンで吸気を行う強制換気と比較して PSV は患者の
自発呼吸との同調性がよいと考えられているが,実は患者では呼吸
努力は常に一定ではないにもかかわらず, PSV では常に設定した気
道内圧を上昇させるという一定の圧補助しか行わない.このため,
患者の吸気努力の強さとの不一致と患者の肺メカニクスとの不一致
が起こりうる

強い呼吸努力ある場合、 PSV の初期吸気流量を早くし,吸気圧の立


ち上がりを早くする。逆に安静な呼吸では早すぎる初期吸気流量は
患者に不快感をもたらす.多くの人工呼吸器では PSV の初期流量レ
ベルの調整が可能である. 流量波形や気道内圧波形に注意を要する。
PAV モード

• Pmus + Paw = R ・ V ・ + 1/C ・⊿ V


コンプライアンス C と気道抵抗 R から
呼吸筋の発生圧 Pmus を計測。
気道内圧 Paw を適正レベルに維持する。

• PAV +モード
コンプライアンス C と気道抵抗 R を自
動計算しすべてを自動に行う。
その他
• バッキング:閉塞した状態で
• ファイティング:呼気吸気がかち合う
• ブレススタッキング:一回の呼吸相に 2 回以上吸気努力が生じ

本日は詳細な機序は挙げず用語のみ
呼吸器にあるパラメータ( PB980 )
1 )換気・呼吸状態を示すパラメータ
  AUTO   PEEP   and   aplied   PEEP
 分時換気量  Minute   Volume  ( VE )
 動肺コンプライアンス  Compliance,Dynamic ( CDyn )
 静肺コンプライアンス  Compliance,Static ( Cstatic )
 レジスタンス(平均)  Resistance,Mean ( RAwM ) 3 )呼吸仕事量に関するパラメータ
 レジスタンス(高値)  Resistance,Expiratory ( RAwE )  呼吸仕事量(呼吸器)
Work of Breathing , Ventilator ( WOBv )
 一回換気量(吸気時)  Tidal Volume , lnspired ( VTins )
 呼吸仕事量(患者側)
 一回換気量(呼気時)  Tidal Volume , Expired ( VTexp ) Work of Breathing , Patient ( WOBp )
 呼吸数(回 / 分) Respiratory Rate ( RR )  流速 / 吸気量曲線   Flow/volume   curve
 吸気圧 / 吸気量曲線  Pressure/volume   curve
2 )患者と人工呼吸器の同調性を示すパラメータ(波形表示)4 )ウィニングに関するパラメータ
 気道内圧  Airway pressure ( PAw )  浅速換気指数  Rapid shallow breathing index ( f/VT )
 食堂内圧  Esophageal pressure ( PEs )   Respired   Drive  ( P0.1 )
  Inspiratory   Time   Fraction  ( Ti / TToT )
 気道流速  Flow ( V )
  Pressure   Time   Product  ( PTP )
 一回換気量 Tidal volume ( VT )   Pressure   Time   lndex  ( PTI )
1 )換気・呼吸状態を示すパラメータ
AUTO PEEP   and   aplied PEEP
分時換気量  Minute Volume   ( VE )
動肺コンプライアンス  Compliance,Dynamic ( CDyn )
静肺コンプライアンス  Compliance,Static ( Cstatic )
レジスタンス(平均)  Resistance,Mean ( RAwM )
レジスタンス(高値)  Resistance,Expiratory ( RAwE )
一回換気量(吸気時)  Tidal Volume , lnspired ( VTins )
一回換気量(呼気時)  Tidal Volume , Expired ( VTexp )
呼吸数(回 / 分) Respiratory Rate ( RR )
2 )患者と人工呼吸器の同調性を示すパ
ラメータ(波形表示)
気道内圧  Airway   pressure  ( PAw )
食道内圧  Esophageal   pressure  ( PEs )
気道流速  Flow  ( V )
一回換気量 Tidal   volume  ( VT )
経肺圧
⊿ 気道内圧
=⊿肺容量 × 呼吸器エラスタンス
=⊿肺容量 × (肺エラスタンス+胸郭エラスタンス)
=⊿経肺圧+⊿胸腔内圧

肺容量 × 肺エラスタンス(肺の伸びやすさ)=⊿経肺圧
肺容量 × 胸郭エラスタンス(胸郭の硬さ)=⊿胸腔内圧
                           (⊿胸腔
内圧 ≑ ⊿食道内圧)
⊿ 経肺圧=⊿気道内圧ー⊿食道内圧
3 )呼吸仕事量に関するパラメータ

呼吸仕事量(呼吸器) Work   of   Breathing ,  Ventilator  


( WOBv )
呼吸仕事量(患者側) Work   of   Breathing ,  Patient  ( WOBp )
流速 / 吸気量曲線   Flow/volume   curve
吸気圧 / 吸気量曲線  Pressure/volume   curve
時定数
満員電車で昇降時、
『早く降りてくれないかな!乗換え間に合わないよ』
はじめに降りた人はどんどん先に行くのに、
自分は車内に取り残されてなかなか降りれない。
なんて経験ありませんか?

また、喉が渇いている時に、
『喉渇いたからいっぱい飲みたい!』
最初は勢いよく飲んだけど、意外と飲み込むのに時間がかかって
口に溜まるにつれ、むせたりしたなんて経験ありませんか?
電車は扉のサイズ、飲み込みは喉の口径により飲み込む量が決まってしまってるんです
e-1 = 1/e ≃ 1/2.71828 ≃ 0.368    

時定数
y=y(t)
任意の時間の乗客数 N(t) とすると乗客数の変化率は乗客数に反比例し

  dN(t)/dt=-αN(t)    α は指数減数係数   
e-1 ≃ 0.368     
となります。 t = 0 での乗客数 N0 とするとこの微分方程式の解は

  N(t)=N0 ・ e-αt ・・・①

であり初期値の e-1 倍までの時間と定義され、①式は、

  N(τ)=N0 ・ e-ατ= e-1 ・ N0    と変形でき、


  指数減数係数が決まれば
  α ・ τ = 1   ・・・② 時定数も決まってしまう

が得られ、このことから τ (時定数“タウ”)は α (指数減数係数)の逆数ということがわかります。


乗客減少はドアが狭ければ狭いほど遅くなり、
客が混んでいれば客数が増えて内圧上昇すると考えると、
車体容量が小さいほど満員(内圧↑)となり流出は速くなる
α =客数(気道内圧) / 車両容量(胸郭) / ドアの間口(気管径=気道抵抗)
100 %
肺容量

 ②式を用いて変形すると、

τ =ドアの間口(気管径=気道抵抗) / 客数(気道内圧) / 車両容量(胸郭)

37 %
指数減数係数(体格の特徴⇒
14 % 身長体重性別人種)が決まれば
N(t)=N0 ・ e -αt
5%
2%
平均的な体格の特徴がわかり
0.7 % 時定数も決まってしまう
N = 100 % 時定数
τ =ドアの間口(気管径=気道抵抗) / 客数(気道内圧) / 車両容量(胸郭)

レジスタンス   エラスタンス

τ =気道抵抗 / 気道内圧 / 胸郭

また、時定数は

τ =呼気一回換気量 / 最大呼気流量

であることが知られていることから、時定数の上昇がどの
因子によって起こっているのか注視することが重要である。
4 )ウィニングに関するパラメータ
 浅速換気指数  Rapid Shallow Breathing Index ( f/VT )
  Respired   Drive  ( P0.1 )
  Inspiratory   Time   Fraction  ( Ti / TToT )
  Pressure   Time   Product  ( PTP )
  Pressure   Time   lndex  ( PTI )
浅速換気指数
: RSBI ( Rapid shallow breathing index )
• 自発呼吸時の呼吸回数(回/分)を一回換気量( L )で除した
もの
• 105 以上で呼吸筋の疲労を示す
• ウイニングの指標として必要な項目
気道閉塞圧( Respired   Drive)
• 気道閉塞圧( Respired   Drive) : P0.1 (気道閉塞状態において
吸気開始から 100msec 後に生じた圧)∞ 呼吸中枢出力の指標
• 呼吸数や分時換気量、横隔膜筋電図に並ぶ簡易的な理解で
ok !
• 測定方法:吸気と呼気が異なるポートから流出入する re-
breathing valve 付 T 字管で、呼気終末に吸気ポートを閉塞し、
吸気に転じてから 0.1 秒後 の気道内圧を測定する方法。
• 3.5 以上に抵抗が大きいときサポート不足。
• 1.6 以下に低いときは過剰サポート。
 吸気時間 Inspiratory   Time   Fraction  
( Ti / TToT ) =呼気時間の割合の評価
吸気時間比: Inspiratory   Time   Fraction  ( Ti / TToT )

一呼吸サイクル時間  TTOT

吸気時間  Ti 呼気時間  Te

IE 比: Inspiratory   Time/ Expiratory   Time   Ratio ( Ti / TE )

吸気 呼気

一呼吸サイクル
竹内  人工呼吸  Jpn J Respir Care 2015 ; 32 : 177-84

PTP
吸気相の食道内圧への陰圧のふれを時間積分したもの。
呼吸に対する仕事量の評価。
WOB より PTP の方がよりよく相関すると報告されている※① 。
PTP 40cmH2O ・ sec/min 以下は呼吸努力量が少なすぎで呼吸筋廃
用をもたらすかもしれないとされることを考慮すると、人工呼吸
器離脱困難者では、 PTP を 50 ~ 150cmH2O ・ sec/min 程度に
なるようにサポート圧を設定しなくていけない。

   PTP =∫ Pmus ・ dt   ≒ ( Pmus-max×Ti ) /2× 呼吸数( cmH2O ・ sec/min )

※①   McGregor M . J Clin Invest. 1961 ; 40 : 971-80.


また、 PTP を利用した tension time index ( TTI )は、以下の式
で求められるが、 TTI が 0.15 以上では呼吸疲労を起こし、人工
呼吸器からの離脱は困難ではないかと考えられている※②③。
TTI =発生筋力 / 最大筋力 × 吸気時間 /1 呼吸サイクル時間  
TTI = PTP/ ( Pmus-max×Ttot )
    Pmus-max :患者吸気圧( Pmus )の最大値
    Ttot : 1 呼吸サイクル時間

※②Bellemare F, J Appl Physiol Respir Environ Exerc Physiol. 1982 ; 53 : 1190-5.


※③ Vassilakopoulos T   Am J Respir Crit Care Med. 1998 ; 158 : 378- 85.
実際の P-V カーブ
から仕事量の求め方

竹内ら  人工呼吸  Jpn J Respir Care


2015 ; 32 : 177-84
PEEP について
BTS   GUIDELINE   Thorax. 2008 : 63 ; S1-S68
NPPV から気管挿管
への適応因子

GOLD 日本委員会によるガイドライン
COPD における人工呼吸器管理の設定
• 導入初期には呼吸筋疲労の軽減と換気量の確保を目的に A/C あるいは SIMV + PS
• 気道抵抗が高いため、従量式換気( volume control ventilation : VCV )を用いた場合は最高気道内
圧が 高値となり、従圧式換気( pressure control ventilation : PCV )を用いた場合は適正な換気量
を得るのに高い 吸気圧が必要となるので注意。
• 換気を得るために一回換気量を減じてある程度の高 CO2 血症は許容する場合がある。
• 自発呼吸があると PCV や PSV の 吸気圧を下げることができる場合があり、同調性が 改善する
ように設定呼吸回数や PEEP 値、トリガー レベルを調節する。駄目な場合は鎮静レベルを上げて
自発呼吸を抑制し、調節換気を選択、長期化する場合は気管挿管を選ぶ。
• FIO2 : SpO2 90 〜 92 %を目標に、可能な限り低い値 に設定。
• トリガー: 流量トリガーで 2 L/min あるいは圧トリガーなら− 2 cmH2O に設定する。(最近は自
動)
• 内因性 PEEP の 8 割程度の PEEP をかけることによ り、呼吸仕事量の軽減が得られる。通常は
5 〜 10cmH2O に設定するが、 PEEP が高くなると肺の過膨張を来 たしやすいので注意する。
• PSV では呼吸数が 30 回以下となるように PS レベ ルを設定する。
• PIP + PEEP で高気道内圧に維持すると循環動態に影響を与える場合があるので注意。
VALI ( ventilator-associated lung injury )
• 容量外傷(容量負荷: barotrauma   VILI 提唱※ 1 )
• 圧外傷(圧負荷: volutrauma   人工呼吸器関連障害 VALI として圧が関
連していると考えた )
• 肺胞肺障害(拡張 - 虚脱負荷: atelectrauma           
ARMA study⇔PEEP 最低限とし肺の換気を抑えると死亡率低下※ 3 )
• 駆動圧の概念 気道内圧が 0 となる吸気終末圧ー呼気終末圧のこと
ARMA study で PIP + PEEP が高くても、 PEEP が高い症例は死亡率が下
がった。 AMATO らはこのこのことを駆動圧の低下による肺保護の結果
と考えた。(実際では一回換気量が多めに算出され上昇していまうこ
とがあった。※ 4 ) ※1Gattinoni L   Crit Care Med 40(1): 94-100, 2019
※2Muscedere JG, Crit Care Med 149(5): 1327-1334, 1994

• 経肺圧の概念※ 5 ※3 Amato MB   AmJ Respir Crit Care Med 152(6 Pt 1): 1835-1846, 1995
※4 Amato MB,   N Engl J Med 372(8): 747-755, 2015
※5 Papazian L,   N Engl J Med 363(12): 1107-1116, 2010
気道内圧

従量= Plateau 期末期圧           従圧=吸気圧末期圧


刈谷ら クリニカルエンジニアリング ,2019
肺生理学的機序
• 呼吸循環への影響
• 肺サーファクタントへの影響
• 肺形態への影響

従来 LIP に合わせるとすべての肺胞が開く
とされていた設定方法だが、 GIANOTTI ら
の研究により CT での確認がされ、
各 PEEP 圧による末梢肺胞の解放圧は
それぞれ異なるため、この P - V カーブ

あくまで正規分布曲線を見ている
PEEP の意味~至適 PEEP とは
• 酸素化改善のための PEEP
• MINIMAL   PEEP
• 最大酸素運搬を目標とした PEEP
• VALI 予防目的とした PEEP

岡元 日本集中治療医学会誌 2003; 10: 155 ~ 16


至適 PEEP

⊿ 気道内圧
=⊿肺容量 × 呼吸器エラスタンス
=⊿肺容量 × (肺エラスタンス+胸郭エラスタンス)
肺炎などで肺の状態が悪い場合
=⊿経肺圧+⊿胸腔内圧 肺炎により肺エラスタンス即ち
経肺圧が上昇している。
祖父江俊樹ら 循環制御 41 ( 1 ) 41_5
PEEP の循環への影響
• 循環動態に影響を与えない圧
即ち TMP を下げるには、経肺
圧を下げる⇔⊿肺容量を最も
低い位置に維持すること。

• 肺胞内血管系と肺胞外血管系
の交わるところが最も肺血管
抵抗が低く換気ができるとこ
ろでそれが FRC と考えられる

Lumb AB: The pulmonary circulation. In Nunn’s Applied Respiratory Physiology  の図より祖父江ら改変
VAP
抜管
BAKKAN

PAKKA ~ N
ウィニングの流れ
手術や原疾患の治療・強制換気 痰排出量
自発呼吸頻度
AC/CV ・ CMV カフリークテスト
SIMV + PEEP SBT

PSV ・ PAV
CPAP
抜管 /NIPPV ・高流量酸素投与
鎮静・鎮痛深度 人工呼吸器管理

Pain    鎮静: RASS/SAS


Analgesia 鎮痛: VAS/NRS/BPS/CPOT
Delirium せん妄: ICDSC 合併症: VAP/VALI/DVT など
喉頭浮腫の危険因子
⒈ 長期挿管( 36 時間~)
ウィニングによる失敗 ⒉ 女性・ 80 歳以上
⒊ 太い挿管チューブ径
⒋ 筋弛緩・鎮静なしでの挿管
※ 人工呼吸器管理患者の 20 %が失敗する。 ⒌ 外傷での挿管
※ 人工呼吸期間の 40 %がウィニング労力に費やされている。
⇒ 人工呼吸器管理に失敗すると合併症の発生率の向上に寄与す
る。
VAP/VALI/DVT などの発生と相関。
※ 抜管後喉頭浮腫は 30 分以内が 82 %、 5 分以内が 47 %
※ 再挿管となる患者の死亡率は 43 %

VAP 関連  NEJM1994 ; 330 ; 1056-


死亡関連  JAMA2002 ; 287 ; 345-
喉頭浮腫  Lancet2007 ; 369:1083-
再挿管   Chest1997;112:186-
人工呼吸器管理の依存原因
1  神経障害 ・中枢神経障害
・末梢神経障害
ハイリスク抜管
2. 呼吸障害 ・力学的呼吸負荷の増大 ⒈ 栄養状態不良(呼吸筋が痩せ)
・呼吸筋力(固有筋力,持久力)の低下 ⒉ 高度の肥満
⒊ 腹圧が高い(腹部手術後、腹水)
  代謝動態の不均衡 ⒋ 胸壁が硬い(胸壁浮腫、膠原病)
  栄養状態の悪化 ⒌ 痰や唾液の垂れ込みが多い
⒍ 中枢神経疾患
  酸素需要供給バランスの悪化 (無呼吸、誤嚥、意識レベル↓)
・ガス交換能の悪化 ⒎ 肝硬変・低アルブミン血症
(高度の胸水・腹水)
  酸素供給不全 ⒏ 長期間の挿管状態(2週間以上)
  肺 / 血管血流比の不均衡
3. 循環障害 ・呼吸負荷による循環動態の破綻
4. 精神障害 ・鎮静剤,鎮痛薬の投与
・長期患者の呼吸器依存
ウィニング開始前の判定
1. 呼吸不全の原因が改善している
2. 酸素化が改善し適切である
・ FIO₂ ≦ 0.4 で PaO₂ ≧ 60mmHg ・ PEEP ≦ 5 ~ 8cmH₂O ・ P/F 比> 150 ~ 300
3. 呼吸性アシドーシスがない
4. 循環動態が安定している
・心拍数≦ 140 回 /
分・低血圧がない ( ドパミンまたはドブタミン< 5μg/kg/ 分 ) ・貧血がない( Hb ≧ 8
~ 10g/dL )
5. 発熱がない(体温< 38℃ )
6. 代謝動態が安定している(電解質に異常がない)
7. 意識レベルが適切である
ウィニング可否の指標
カフリークテスト
• 抜管後喉頭浮腫( post-extubation laryngeal edema )の予測のために行う
• 質的評価:カフデフレートし音(声漏れ)の確認。
• 量的評価:カフデフレートし人工呼吸器で吸気量-呼気量の量の差(カフリー
クボリューム)を測定し評価する。

• カフリークボリューム 110ml をカットオフ値で PPV0.8/NPV0.98 。

カフリークテストは陰性でも抜管後喉頭浮腫の発生を完全否定出来ない。

( Chest 1996;110:1035- )
ATS ・ ACCP の呼吸器離脱 ガイドライン
2016
• 抜管基準を満たしたが、抜管後の気道狭窄リスクが高い患者 * では、
カフリークテストを施行すべき
( Recommendation : Conditional 、 Evidence : Very Low Quality )
  *高リスク群:
    外傷による挿管、 6 日間以上の挿管、径の太い挿管チューブ、女性、自己抜管後の再挿

• カフリークテストに失敗したが、他の抜管基準は満たしている成人
患者では、抜管の 4 時間前までにステロイドの全身投与を行うべき。
カフリークテストの再施行は不要。
( Recommendation : Conditional 、 Evidence : Moderate-Quality )
JSEPTIC
長野氏作成の表
SAT ( Sedation and Agitation Trial )
( 1 ) SAT 開始安全基準 ( 2 ) SAT 成功基準
以下の状態でないことを確認する。基準に該当す ①② ともにクリアできた場合を「成功」、できない
る場合は、 SAT を見合わせる。 場合は「不適合」として翌日再評価とする。
□ 興奮状態が持続し、鎮静薬の投与量が増加して ①RASS :- 1 ~ 0
いる 口頭指示で開眼や動作が容易に可能である。
□ 筋弛緩薬を使用している ② 鎮静薬を中止して 30 分以上過ぎても、以下の状
態とならない
□ 24 時間以内の新たな不整脈や心筋虚血の徴候
□ 興奮状態
□ 痙攣、アルコール離脱症状のため鎮静薬を持続 □ 持続的な不安状態
投与中
4
□ 頭蓋内圧の上昇 □ 鎮痛薬を投与しても痛みをコントロールできない
□ 医師の判断 □ 頻呼吸(呼吸数≧ 35 回 / 分 5 分間以上)
□ SpO2 < 90 %が持続し対応が必要
□ 新たな不整脈
SAT 成功基準の評価
1.鎮静薬の投与を減量、もしくは中断する。
2.中止から 30 分経過後、 SAT 成功基準を満たしているかを評価する。 RASS として- 1 ~ 0    
3.鎮静薬を中止して 30 分以上過ぎても、以下の状態とならない

□ 興奮状態 持続的な不安状態
□ 鎮痛薬を投与しても痛みをコントロールできない
□ 頻呼吸(呼吸回数≧ 35 回 / 分、 5 分間以上)
□SpO2≦90% が持続して対応が必要な場合
□ 新たな不整脈の出現
□ 人工呼吸器(グラフィックモニター、実測値)の変動  
SBT ( Spontaneous Breathing Trial )
SBT 開始安全基準
原疾患の改善を認め、①~⑤をすべてクリアした場合、 SBT を行う。それ以外は SBT を行
う準備ができていないと判断し、その原因を同定し対策を講じたうえで、翌日再度の評価を行う

① 酸素化が十分である ③ 十分な吸気努力がある
□ FIO2≦0.5 かつ PEEP≦8cmH2O のもとで SpO2 □ 1 回換気量> 5ml/kg
> 90% □ 分時換気量< 15L/ 分
□ Rapid shallow breathing index
( 1 分間の呼吸回数 /1 回換気量 [L] )< 105 回 /min/L
② 血行動態が安定している □ 呼吸性アシドーシスがない( pH > 7.25 )
□ 急性の心筋虚血、重篤な不整脈がない
④ 異常呼吸パターンを認めない
□ 心拍数≦ 140 bpm □ 呼吸補助筋の過剰な使用がない
□ 昇圧薬の使用について少量は容認する □ シーソー呼吸(奇異性呼吸)がない
( DOA ≦ 5μg/kg/min 、 DOB ≦ 5μg/kg/min 、 NAD
≦ 0.05μg/kg/min ) ⑤ 全身状態が安定している
□ 発熱がない
□ 重篤な電解質異常を認めない
□ 重篤な貧血を認めない
□ 重篤な体液過剰を認めな
SBT 成功基準評価

以下の基準全てを満たしているかを評価

□ 呼吸回数< 30 回 / 分
□心拍数< 140 回 / 分、新たな不整脈や心筋虚血の徴候を認めない
□過度の血圧上昇を認めない
□以下の呼吸促迫の徴候を認めない( SBT 前の状態と比較する)

1.高度な呼吸補助筋の使用
2.シーソー呼吸(奇異性呼吸)
3.冷汗
4.重度の呼吸困難感、不安感、不穏状態 
抜管手技の実際
⑴ 必要に応じて 24 時間前のステロイド剤を投与。
⑵ 鎮静剤の中止・変更(ドルミカム⇒プロポフォール。プレセデックス、フェンタニルは中止しなくてよい。)
⑶ 胃内容物の逓減、経管栄養の中止。
⑷ 高度バリアプリコーション( N95 +フェイスマスク)をしてベットサイドへ。患者に抜管の説明と呼吸の指導。
⑸ 抜管後の酸素投与デバイスの準備と、再挿管の準備(挿管チューブは同じ太さと少し小さめを用意)。
⑹ 抜管する人は頭の上に立ち、すぐに再挿管できるようにする。ベッドの高さを調節。
⑺ ジャクソンリースでもんでみる(用手リクルートメント、 SpO2 を 100% にし、チューブ内外を事前に吸
痰)。
⑻ 気管チューブの固定をはずす。
⑼ カフのエアーを抜き、気管チューブを抜去する。※吸引抜管か加圧抜管かは事前に決めておく。
⑽ 口腔内を吸引し、酸素投与デバイス(ベンチュリーマスクやハイフロー)の装着。
⑾ ギャッチアップし、まず喉頭部、次に肺野(左右・背中)を聴診する。狭窄音や左右差に注意。
⑿ SpO2 が落ち着くまでは場を離れない。呼吸数、努力呼吸の有無、精神状態を最低 30 分はそばで観
察。

⒀ 血液ガスチェック・レントゲンチェック(無気肺、誤嚥など)  急変時の連絡先を教えておく。
※ 吸引抜管(気管チューブの先端に吸引チューブがくるようにし、チューブと一緒に痰を吸引しながら抜く。)
※ 加圧抜管(ジャクソンで陽圧をかけながら、あるいは呼吸器で PEEP をかけながら抜く)
ECMO
• 別項
リハビリテーション
• ICU-AW 予防
• PICS

別項
質問

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